怠惰のヒーローアカデミア   作:赤貞奈

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体育祭編に突入です




体育祭
準備の夢


____襲撃から2日後____

 

「皆ーーーー!!朝のHRが始まる。席につけーーーー!!」

 

僕の貴重で優雅な睡眠から無理矢理に叩き起こす声が聞こえてきた。

 

いつもと変わらない聞き慣れた委員長の声だ。

そして、それはいつもと変わらず僕の睡眠を邪魔する。

僕は伏せていた顔を少し上げる。前に居たのは飯田君だった。

「飛鷹伊君!!毎日昼寝ばかりで……君は学校に何の為に来ているんだ!!」

 

——え? 何って睡眠ですけど。

 

「先日の件の時は学校にさえ、来ていなかったじゃないか!!君も誇りある雄英生ならば、全国の見本となるような生徒を心掛けることが当然だろう!!」

 

——先日の件?僕が学校を欠席した?何それ?全く身に覚えが無いんだけど。

確かにこの前寝坊して遅刻はしてしまったけど、その後は普通に救助の訓練(・・・・・・・・)をした筈だよな。

他に思い出せることはないし。……うーん。

 

まぁいいや。『思い出せないっていうことはそこまで大事なことでは無い』っていうし。それより、頭を酷使し過ぎて、眠気が更に大きくなったし、もう一度寝ようかな。

「じゃあ、おやすみ。」

 

僕はそれだけを言い残し、再び眠りにつく。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「あ、おい、待て!!眠るな!!僕の話を聞けーー!」

「おはよう。……そして、飯田。お前は黙って座れ」

 

飯田が飛鷹伊の言動に叫ぶと同時に扉が開き、1ーA組の担任である相澤が入ってきた。

 

「そんな!……理由を聞いてください!!僕は……」

「座れ」

「飛鷹伊君が……」

「座れ」

 

「……はい」

 

飯田は必死に弁明するが相澤の言葉の圧力によって渋々と席に座った。

 

飯田の顔は悔しさに染まり、「僕が正しい筈なのに……」と未練たらたらだったと思えば、「そうか。これも社会の理不尽を知らせる為の教育の一つか」と今度は目を細め、顎に手を置きながらブツブツと言い始める。

 

「ていうか、先生無事だったんですね!!」

 

誰かが言った。

それをキッカケにクラス中の生徒が騒ぎ出す。

いつも通りに現れた相澤だったが、その顔は包帯で乱雑に巻かれており、口どころか、鼻や目にも覆われている。

ドアップで顔を見れば包帯の隙間から、ギリギリ目を見つけることができる程だ。

 

「俺の安否はどうでも良い。何よりまだ戦いは終わってねぇ」

 

「!?」

 

相澤の発言にクラス中が更に騒ぎ出す。

 

「戦い?」

「まさか…」

「まだ敵が…」

 

三者三様の反応が起こり、それを聞いた生徒たちの中に緊張が走る。

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

「クソ学校っぽいの来たあああ!!」

 

その緊張は次の相澤の言葉で崩れた。

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

____四時間目 現代文終了____

 

 

キーン コーン カーン コーン♪

 

授業の終わり——食堂が開く時間が始まることを告げるチャイムが僕の耳を揺らす。

その情報が神経により僕の脳に伝わるまで約0.1秒。

だが、僕はそんな退屈な一瞬(0.1秒)よりも早く、本能的に、起き上がる。

 

僕が1日の中で唯一寝起きが良い時、それがこの時間だ。

ビクッ!!

 

突然動き出した僕に驚いたのか隣の人の体が震えた。

 

しかし、僕は些細な事など気にも止めず、我先にと教室から出ていく。

 

「飛鷹伊君!!廊下は走るな」

 

後ろから何か聞こえてくるが、僕はその事実を瞬間的に忘却し、自身の全力を賭けて、廊下を駆ける。

 

 

——何故、僕がこんなにも急いでいるのか、教えよう。

 

それはズバリ学食についてだ。

 

つい最近知ら得たことだが、どうやら雄英の食堂には先着7名の幻の学食があるようだ。

 

それは、『クッキングヒーロー ランチラッシュ』さんほどの腕を持っていでも、一桁程の人数分しか作れない程、調理工程が圧倒的に多いそうだ。

だが、それは言い換えれば、圧倒的に『美味い』ことに他ならない。

どんな物でも手間暇は多く掛けた方がより良い物を作れる。

これは、世界の絶対的な法則であり、森羅万象に通ずるものである。

だから、僕は駆ける。その行動に、それ以上の理由もそれ以下の考えもない。

 

「おい、飛鷹伊。ちょっと止まれ。話がある。」

——誰だか知らないが、そんなことで今の僕が止まると思うなよ!!

 

「……ったく。面倒くせぇな」

 

!!!?

 

僕の背後から、包帯が伸びてくる。包帯はまるで蛇のように伸縮自在に僕の身体中を巻きついてきた。

 

——何故に包帯が!!?……だが!!……包帯如き引き千切ってしまえばいい。

 

そう思った僕は渾身の力を込めて、包帯を引っ張る。

しかし、包帯は引き千切れなかった。

その現実に僕が驚いている間に包帯は次々と僕に巻きついていく。

 

包帯に勢いを削がれた僕の体は少しずつ速度を落としていく。

 

——しかし!!……僕の執念(食欲)がこの程度で止まると思うな!!

 

僕は流れるように『個性』を発動する……

 

「いい加減人の話を聞け!!」

 

……ことができなかった。

 

僕の体に包帯が更に巻きつき、ついに指一つ動かせることができなかなった。

 

——『個性』を消せる。そんなことができる者を僕は一人しか知らない。

 

「なんで僕を止めるんですか!!相澤先生!!」

僕は激情に駆られ、こんな惨状を起こした元凶に対して叫ぶ。

 

「……話があるって言っただろ」

 

そんな僕の様子を見て、相澤先生はため息を一つついた。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

相澤先生に捕まった僕は、相澤先生に荷物のように引き摺られていく。

 

その間に何故包帯が千切れなかったかは相澤先生が教えてくれた。

 

どうやら、相澤先生の顔に巻きついている包帯は特別性だそうだ。 炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ『捕縛武器』だと かなんとか、そんな難しい話を聞くにつれ、僕の頭は理解を拒否してしまう。

 

包帯によって視界が塞がれたことも眠気を誘う一因となった。

 

そして、そのまま、眠気に全てを委ねようとした時……

 

「おい、寝ようとするな!!というか、この状況でお前はどうして寝れるんだ!?」

 

再び相澤先生の声が聞こえてきた。

 

仕方なく湧き上がる眠気を振り払い、僕の包帯による拘束を解いている相澤先生の方に顔を向ける。

「それで、話って何ですか?」

 

「まず、お前に聞くが、HRに俺が話していた事を聞いていたか?」

 

「当然です!!……全く聞いていませんでした!!」

 

僕は右手を真っ直ぐ上に上げて、大きく、はっきりとドヤ顔で言う。

 

——この僕が、1日の四分の三を寝ることに費やす、この僕が、…HRという貴重な睡眠時間を削るわけないでしょう!!

 

「……分かってはいたが、ここまで吹っ切れられると怒りもないな」

 

そこで相澤先生は大きく溜息を吐き、僕に説明する。

 

「二週間後に体育祭が開催されるんだ」

 

——ふむふむ。この学校にも体育祭はあるんだな。初日に行事などはないとか言ってた気がするし、ないと思っていたんだけどな。

 

「ウチの体育祭はヒーロー志望者にとって、最大のチャンスだが……お前は興味ないだろう?」

 

「はい、全く」

 

相澤先生の質問に対して、僕は答える。

 

「だから、お前にも、やる気を出させる為の話をする」

 

——ここからが本題のようだ。……だけど、自分で言うのもアレだが、僕のやる気なんて、そうそう出せるものではないぞ

 

僕がそんな事を考えていると、相澤先生は口を開いた。

 

「—————————————————————」

 

「やります!!それはもう全力で!!」

 

相澤先生の言葉は僕のやる気を出させるには十分すぎるものだった。

 

「後、一つ付け加えておく」

 

僕のテンションの変わりように、若干引きながら相澤先生は言った。

 

「今回の体育祭。『霊』呼ぶの禁止な」

 

相澤先生の言葉は僕のやる気を削ぐには十分すぎるものだった。







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