最終更新の後から、進路について、大変忙しくなり、執筆の時間を取ることができませんでした。
しかし、おかげで第一志望校には合格することができました。
また、長期間の活動停止にも関わらず、待ってくださってもらい本当に有難うございます。
まだ、新生活に慣れておらず、前より、執筆の時間が取れず、より更新が不定期になると思いますが、どうぞご容赦下さい。
最後になりますが、こんな拙作でございますが、これからもよろしくお願いします。
残りのGWに連続更新するつもりなのでどうぞご期待下さい。
ここは雄英高校のある一室。
壁には絢爛豪華な装飾を施され、その装飾に相応しい調度品が負けじと自身の輝きを主張している。
「話とは何でしょうか?」
一人の声が聞こえる。オールマイトの声だ。静寂が室内を支配し、張りつめていた空気はその声に払拭された。
その声色には緊張の色が見え、背中には一筋の汗が滴り落ちた。
「君は私に隠し事をしているね」
一人の声が聞こえた。根津の声だ。
オールマイトの正面に位置する根津は自身の見解を率直に示す。
「……隠し事と言うのは何のことでしょうか?」
根津の言葉にオールマイトの表情に些かの陰りが生じる。しかし、直ぐに顔を引き締め、事もなげな顔で問うた。
しかし、根津は一瞬の変化を見逃さなかった。
「今回の事件は『雄英に襲撃してきた敵ヴィランは二人のヒーローが身を呈して奮闘し、君が応援に駆けつけ敵ヴィランを無事撃退した』とメデイアは報道している。……が、僕はそれに違和感を感じるんだよ」
根津はそこで間を置き、右手の人差し指を立てた。
「一つ目の違和感は生徒達の容態だよ。彼等は意識を失っていたね……気絶の原因は多岐にわたる。痛みによるショックや過度の精神的疲労、大量出血などがあるね。まだ子供である彼等には酷な体験だろう。心が病み、精神が壊れても不思議では無い。しかし、生徒達の容態は正常だ。…………あれ程の大事件に巻き込まれたにも関わらずにね」
そこで話を一区切りし、根津は上向に立てていた人差し指をオールマイトの方に向ける。
「二つ目の違和感は、君自身さ。………君がUSJに向かってから、再び私の所に戻ってきた時、君はどちらとも『個性』を使っていた。……今回の襲撃は大変大規模だ。いくら君でも、手加減していては撃退出来なかっただろう。すると君はその間、絶えず『個性』を使用していたことになる。………………その時間は大幅に活動限界を超えているんだよ」
根津は最後にそう締め括ると、口を悠々と閉じ、オールマイトに視線を向ける。
その円らな瞳の奥には理知的な光が伺える。
「……………………流石です」
最初こそ、 オールマイトは根津の観察眼と洞察力に呆然としていたが、微々たる情報でそこまで考察する根津に、尊敬の念を抱く。
「君は昔から良くも悪くも嘘をつくのが苦手だからね。直ぐに解ったよ」
根津は昔を思い出すかの様に遠い目をし、顔に微笑を浮かべる。
そこには先程までの緊迫した空気など無く、穏和な空気が漂うだけだった。
その後、オールマイトが事の顛末を話すが、それは根津にとっても直ぐには信じ難い話だった。
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飛鷹伊少年が倒れた後、第一に周囲の警戒をしながら生徒達の安全
を確保した。警戒を怠り、追撃を許されたら笑えないからな。
そして、広場で倒れていた飛鷹伊少年を、起こさないように慎重に運び、他の生徒と並べるようにそっと床に下ろした
次に他の教師達に連絡を入れる為、USJ内の各所に散らばる緊急連絡用の通信機を取りに行った。
飛鷹伊少年が最後に『母親を呼べ』と言っていたが、それは緊急性を要しないし、後でいいだろう。
私は一番近い入り口にある通信機を取りに行く為、背後を警戒しながら入り口に向かう。
ツンツン
入り口から小気味よく扉をつつく音が聞こえてくる。
私が恐る恐る扉を開けると、言うなれば弾丸のように、例えるならば暴走列車のように私の腹部に『何か』が突っ込んできた。
——ふむ。何故かこの状況に既視感を覚えるのだが私の気のせいなのか?
「って!痛い痛い!!そこは弱いんだよ!!」
『何か』は私の腹部……正確にいうと左脇腹の上……分かりやすく言うと『私の弱点』を正確無比に貫いていた。
「クル? ……クルッポ!!」
私の体にダイレクトアタックを繰り出した『何か』は私の存在にやっと気づいたようで、奇声を上げながら、私から離れていった。
「……ハト、なのか?」
その身体は白のペンキを上からぶちまけたみたいに染まっており、唯一白く染まっていない紅色の目はじっと私を見つめている。
——しかし、何故だ?この敷地にはネズミ一匹入らないことが売りの鉄壁のバリケートがあるはずだが?
「……クック、クルックル?」
私がハトの存在を不思議に思っていると、ハトは私のことなど御構い無しに上空へ飛翔し、何かを探すような仕草をしながら、USJ内を飛び回る。
そして、ハトはその『何か』を見つけたようで、その近くにゆっくりと降り立った。
私はその先を見下ろす。
その先にいたのは……
「………飛鷹伊少年?」
私は驚き、思わず呟いてしまった。
ハトは彼の目の前で静かに着地する。
目を閉じ、眠ったままの彼をハトは静かに見守っていた。
「あなた・・・は誰ですか?」
その静寂に耐えられなかった私は口を開ける。
——なぜこんな質問をしたのか言った後に私自身も分からない。どこからどう見ても、『ハト』であるものに対し、私が発した言葉は『あなた』、人に対して使うべき言葉だ。
「……クルッポ」
そんな出鱈目な質問に返ってきたのは一声。こちらを振り返ることもせず淡々と響く音。
ハトでもなくかといって、動物と話せるような『個性』も持っていない私には当然その意味は分からない。
私は何も応えれずにいた。
そんな中飛鷹伊少年の胸にヨチヨチと乗る。
ツンツン
そして、ハトは飛鷹伊少年の胸をつつく。……いや、つつき続ける。
すると、彼の胸元を中心にうっすらと淡い黄緑色の靄が広がる。
靄は優しく彼とハトを包み込む。その光景はとても幻想的だった。
それは五秒にも満たない余りにも少ない時間。しかし、私はそれが何分にも感じた。
「クルック」
ハトが一つ鳴く。
それを皮切りにして、靄はゆっくりと霧散していく。
そして、完全に靄が霧散すると、ハトはその細い足で飛鷹伊少年の隣で倒れている爆豪少年の胸にヨチヨチと乗り、飛鷹伊少年にしたことを爆豪少年にも行った。
「……何をしているんだ?」
私の質問にはまたもや応えず、次はその隣の切島少年に……次は轟少年に……
ハトは次々に1—Aの生徒達全員に同じように行った。
「クルッポ!!」
全員にその行為を終えると、直ぐに飛び立ち、私など目もくれずそのまま真っ直ぐと入口を出て行ってしまった。
「……なんだったんだ、一体」
時間にするとあっという間。しかし、それは私の心の中で大きく残り続けるだろう。
私は次々に浮上する疑問を無理矢理抑え込むが、抑え込めきれず、一言呟き、しばらくの間、呆然と立ち止まっていた。
見直してみた後、文体の違和感が凄かったです(汗)
ちなみにですが『ハト』についてはもうこの作品に登場しています。
前回の最後がヒントであり答えでもあります。
この話でUSJの章は終わりです。
次話は閑話としまして、死柄木達の方について書くと思います。
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