怠惰のヒーローアカデミア   作:赤貞奈

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剣豪の夢

 

 

「……はぁ………はぁ……………うっ!」

 

深呼吸をしようとするが、全身から伝わる痛みによって、その行為は妨害される。

 

俺は無限に出てくる脳無というヴィランによって、全身に酷い怪我を負い、地面に倒れる。

「ふふふ、流石ですね。オールマイト用にと改造された脳無を相手にしよもや此処まで耐えるとは。流石はエンデヴァーの最高傑作と言われる程は有りますね。」

 

自身を黒霧と名乗った、全身が靄の様なもので覆われているヴィランは、輪郭の分からぬ顔で微笑を浮かべ、賞賛していた。

 

「はぁ………はぁ…。」

 

俺は奴に言い返そうとする。

 

しかし、その口からは乱れた呼吸音しか発せられない。

 

俺は親父の欲求を満たすためだけに産まされ、育てられた。

奴はその目標を達成するためにはどんなことでもする。

例えそれが、自分の妻だろうと。

だが、俺はそんな屑の道具にはならない。

俺はクソ親父の『個性』は使わない。

使わず一番になることで、奴を完全否定する。

 

だが、現実は非情だ。

 

過信か油断か、それとも単純に実力差か。

「善戦した方ですが所詮は学生。精々、後の余生を噛み締めてください。」

(黒霧)は俺が戦闘不能だと確認すると、すぐさま、踵を返す。

 

俺はこんなところでは死ねねぇ。

俺にはやることがあるんだよ。

俺はこんな所で…こんな所で………………

 

 

「待ちやがれ、悪党ども。」

 

不意に背後からそんな言葉が聞こえる。

その声は聞き覚えのある声。

 

俺は最後の力を振り絞り、背後を見る。

 

そこにいたのは、全身を金色の派手な和服に身を包む少年だった。

 

その少年の顔は見覚えのある顔だ。

 

「子ども一人によってたかって気絶するまで甚振るとは………この俺が成敗してやるよ。」

 

その少年は、俺の越えるべき相手、飛鷹伊 零だった

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

____土砂ゾーン____

 

 

コンクリートの瓦礫や樹木の切り屑、石の破片などが大量の土砂によって覆いかぶされ、その姿をくらます。しかし、土砂を差し置いて、辺り一面を支配するのは氷河である。

 

そこに響く、一つの声。

 

「子ども一人によってたかって気絶するまで甚振るとは………この俺が成敗してやるよ。」

 

その声の持ち主は金色の和服に身を包んだ少年だ。

 

「……………成敗ですか。どこから、どうやって此処に来たのかは知りませんが。まだ子供じゃないですか。余り、大人を舐めては困りますよ。」

 

黒霧は少しの怒気を含み威嚇をする。

 

「大人?群れないと、子供をいじめることも出来ない臆病で弱虫が大人というのか?それは知らなかったな。」

 

しかし、少年は威嚇には意にも介さず、おどけた口振りで答えた。

「舐めているのですか?……いいですよ。その喧嘩買ってあげましょう。」

 

黒霧はそう言うと、近くにいた脳無を数体、少年に突撃させていった。

 

「少し待て。」

 

しかし、少年は 、待ったをかける。

 

「今更何ですか。まさか、冗談だった、とは言いま……」

黒霧が挑発をしようとするが、その言葉を遮り、少年は宣言した。

 

 

「どんな悪党でも……例え、弱いくせに調子に乗っている奴だろうと、名を名乗るのが俺の流儀だ。俺の名は宮本武蔵。二天一流の開祖だ。」

 

少年は自身を宮本武蔵と名乗る。

 

「ふふふ。そんなハッタリで私が怯むとでも。それに武器もないのに私達と戦うのですか。」

 

しかし、黒霧はその言葉を嘘と捉える。

もしかしたら、自分を『宮本武蔵』と名乗る程なのだから、余程剣に自信があるのかもしれない。

しかし、彼の手元には何も無い。例え、少年が本当の事を言っていたとしても、何も出来ないだろう。

 

黒霧はそう考え、脳無の攻撃を止めない。

 

「さっき行った事を訂正する。お前らは臆病で弱虫で馬鹿で無知だ。」

 

一閃。

 

少年は突撃してきた脳無達を切った。

 

「本当の剣豪は剣は選ばないんだよ。」

 

 

少年が手に持つのは細いコンクリートの破片。

少年はこの細いコンクリートの破片で脳無達を切ったのだ。

 

それは叩けば折れるようなもの。

そんなもので人体を切断するには、どれ程の技量が必要か、剣に素人の黒霧でも理解できた。

 

だが、

 

「彼等はそれぐらいの傷なら問題ありません。」

脳無達は、黒霧の言った通りに、切断されたはずな箇所がしっかりと結合されている。

 

「何だ。てっきり雑魚かと思ったら、こんな隠し玉があるとは。………面白い!!」

 

少年の腕がぶれる。

 

瞬間、脳無達は細かく切り刻まれた。

 

「……………何!!!」

 

「これぐらい切れば復活はしないか。」

 

少年が呟く。

 

 

「まだだ!!」

 

黒霧は自身の『個性』を使い、少年を囲む様にこの場にいる全ての脳無を出現させた。

 

だが、その脳無達も同じ様に切り刻まれる。

 

「後はお前だ。」

 

少年は直ぐに、脳無をワープさせた黒霧の靄が閉じ切る前に自ら入り込み、黒霧の目の前にワープする。

 

そして、そのまま、唯一靄に隠れていない、首元を切断する。

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

____暴風・大雨ゾーン____

 

エリア全体を巨大なドームの中にあり、そこは、豪雨が降り注ぎ、暴風が荒れ狂う。まるで、台風が同時に訪れたかの様な天候だ。

 

「はぁー。折角のチャンスなのに、切るのがこんな奴らとは、もっと強い奴と一戦交えたいな。」

 

少年が一言愚痴を漏らす。

少年の格好は木綿の布を色付けせずにそのまま縫い付けたかの様な質素で簡素な和服。

そんな少年の周りには悲壮感が漂っている。

 

「まぁいいや。どうやら武蔵もいる様だし、あいつよりより仕事を上手に熟せば(こなせば)、達成感は湧くだろう。」

 

少年はそう自己解決し、敵の居場所を探る。

 

「見つけた。」

 

少年は一言呟き、直ぐに移動する。

 

「……くそ!!」

 

敵…黒霧は、近づいてくる少年に焦りを覚え、『個性』を使って脳無を出現させた。

 

 

しかし、

 

「遅いよ。」

 

少年は出現した脳無達を柳が風を受け流すかの様にユラリと避ける。

 

そして、黒霧の下まで行き着いた少年は靄に隠れていない体部分を狙い、切り裂く。

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「SMASH!!……………SMASH!!…SMASH!!!SMASH!!!SMASH!!!」

 

私は間髪入れずに集まってくる脳無達を、まるで無双系のゲームの様に次々と殴り倒していった。

 

ていうか、多いわ!!!絶対さっきより増えているだろ。

飛鷹伊少年はワンパンで倒せるとか言っていた。

……確かに倒せるよ。倒せるけど………『数の暴力』って言葉知ってる?

私は心の中で愚痴を漏らす。

当然だが、誰も反応はしない。

 

「……………っ!!」

そんな馬鹿な事を考えている間にも脳無は攻撃の手を止めない。

 

そのうちの一発が肩を掠った。

 

どうやら、活動限界も近いらしい。

 

だがせめて、飛鷹伊少年が皆を救出するまでは、絶対に倒れない!!

 

私は意識をより一層固め、向かってくるヴィランをバッタバッタと、倒していった。

 

しかし、

 

「SMASH…………くっ!!」

 

そのうちの一体には、その攻撃が全く効かず、更には反撃をさせられた。

 

 

その一体は他の脳無より早く走り、強靭な肉体を持っていた。

 

アレがオリジナルだ。

 

私はそう直感的に判断する。

 

タイムリミットは、後三分。

その間に、オリジナルは絶対に倒す。

 

何故なら私は『平和の象徴』なのだから!!!

オリジナルの脳無は私に向かって正拳突きをする。

 

私はそれを見極め、向かってくる拳を自身の拳を使い防ぐ。

私の選ぶ策は『真っ向からの殴り合い』。

 

幸いにも、他の脳無達は拳圧からでる風圧により、近づいてこれない。

 

無効ではなく吸収ならば、限度があると思うからだ!!!

それならば更に上からねじ伏せればいい!!!

 

例え、それで活動限界を縮めたとしてもだ!!

 

ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!

 

 

「ヴィランよ、こんな言葉を知ってるか!!?」

 

私は叫ぶ。

 

PlusUltra(更に向こうへ)!!」

 

 

その一撃により、オリジナルの脳無はUSJのドームをぶち破り、遠くへ飛んでいった。

 

「お疲れ様です。こちらも救出完了しました。後はゆっくり休んでください。」

 

その後、動けなくなった私の前に、白衣を着た飛鷹伊少年が現れ、私を生徒達の元に移動させた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

____セントラル広場____

 

零が救出作戦を開始してから、約7分程経つ。

 

「とうーちゃく!」

 

そう言いながら、少年…佐々木小次郎は、脇に常闇と口田を抱え、戻って着た。

 

「やった!!……やっと武蔵に勝てた!!」

 

佐々木小次郎は武蔵より早く任務を終わらせたことに感激し、涙を流していた。

 

「……………完了。」

 

「終わりましたよー。」

その後、少し経つと斎藤一が戻り、上杉謙信が帰還。

 

「たのしかったー。」

 

「この俺が、速さで負けた…だと………!!」

 

続くように沖田総司、武田信玄が戻る。

 

「ふぅ〜。満足した。」

 

救出作戦が始まってから10分ギリギリに宮本武蔵が帰還した。

 

「集まりましたか。それじゃあ………………………」

 

その言葉を言い終える前に、 アインシュタインを憑依させた零は、オールマイトを迎えにいった。

 

その間にも、偉人達の言い争いは続く。

 

「やっと武蔵に勝てたぞー!!」

「ふん!それは速さだけだろ。倒した数は圧倒的に俺の方が多いわ!!『急いては事を仕損じる』という言葉があるように早ければ良いっていう事じゃないんだぞ。」

「はじめー、何体たおしたー?」

「……………三体だ。」

「くそ!!なんでお前が俺より早いんだよ!?」

「いやー、賑やかですねー。」

 

偉人達は今回の任務で一番活躍したのが誰のかを決めあっていた。

 

「何なんだね、このカオス空間は!!」

 

オリジナルの脳無を倒し、満身創痍である筈のオールマイトが一言目に言い放ったのはツッコミであった。

 

「オールマイトは休んでいてください。」

 

オリジナルの零は、この場の異質な雰囲気は華麗に無視し、オールマイトに労いの言葉をかける。

 

「後は、僕の仕事ですので。」

そう言いながら、『ハンス・ドリーシュ』の憑依を解除する。

 

その瞬間、今まで言い争っていた、、偉人達の姿はポンという音を立て、消えていく。

 

残ったのはオリジナルの零、一人だけ。

 

そして、残った零はこう唱える。

 

英雄憑依(ヒーローポゼッション): 卑弥呼。」




ヒーローメモ⑨

クラス:偉人級

名前:宮本武蔵

才能《センス》:【二天一流】 鬼っぽい事は大体できる。

アイテム:金色の和服



佐々木小次郎の方は『個性と霊の能力説明』の方に書いておきます。

もしよかったら、誤字・脱字の報告、アドバイスなど、ドシドシ送ってください。


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