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アイフリードの救出に成功したベルベット達は一路バンエルティア号の停泊している桟橋に到着。ベンウィック達はアイフリードの生存を知ると歓喜に湧くもの、涙を流すものなど、様々な形で大騒ぎになった。それからアイゼンの指示で亡くなった団員を荼毘に付した後バンエルティア号はリオネル島を出航。借りた船はその後ろに付いて行く形で島を後にした。アイフリードは大事を取り船長室で休養を取っている
「四聖主の復活か・・・確かに、それが叶えば、カノヌシの領域を抑えることができるでしょうね」
甲板に置かれている樽に座っていたグリモワールがアイフリードからもたらされたの情報を元に推測を立てる
「カノヌシが封じている聖隷の意思も解放されるかもしれません」
「きっと対魔士に従わない聖隷も出てくるよ」
「対魔士の戦力を大きく削げるわね」
エレノアとライフィセット予想が確かなら、今現在対魔士に従っている聖隷はカノヌシの力によって強制的に使役されている。ベルベットの考えも当たっておりそれがなくなれば反旗を翻し離反し聖寮の戦力は大幅に低下する。対魔士が業魔と戦えるのは聖隷の力が加わっているからこそなのだ
「そもそも、カノヌシによる霊応力の増幅がなくなればほとんどの対魔士は、以前の様に聖隷そのものを認識できなくなるはずじゃ。儂の様に元から才能があれば別じゃがのー」
「私も・・・ライフィセットが見えなくなる?」
「それはやってみねばわからん」
エレノアの疑問も然り、アルトリウスやメルキオル、シグレなどのトップは生まれながら強力な霊応力を持つ者はカノヌシの力がなくとも問題はないだろうがエレノアの様に一等は兎も角二等対魔士はまず脱落するだろう
「エレノア」
「・・・なら、やってみましょう。どんなことになっても後悔はしません」
ライフィセットが不安そうにエレノアを見るがマギルゥの言う通りこればかりはやってみないとわからない。エレノアは覚悟を決める
「しかし、四聖主って神様なんだろ?叩き起こして兵器なのか?」
「地水火風を司っている奴らじゃ。自然のバランスが大きく乱れるやもしれん」
ロクロウの質問にマギルゥが予想を立てる。自分らがやろうとしている事は世界の在り方を一変させるかもしれないのだ、大あれ小あれ天変地異が起きても不思議ではない
「平気じゃなさそうだなぁ」
「しかも復活させる方法は、おそらく――」
「開門の日と同じだとすれば、緋の夜に地脈点に"生贄″を捧げること・・・」
「誰かを殺すの!?」
ベルベットは自身の経験とこれまでの情報を元に一つの答えにたどり着く。あの日の夜弟が祠に投げ込まれた事が決定的だった
「″殺すこと″が生贄の本質じゃないわ・・・必要なのは″穢れなき魂″よ」
「ふぅむ・・・じゃとしたら、ベルベットは既に持っておるのではないか?」
グリモワールの補足にマギルゥはあることに気付きベルベットに問いかける。ベルベットもそれを理解し目を開く
「喰らった対魔士たち・・・!」
「誂えたように、お主は喰らった力を撃ち出せる喰魔じゃ。高位対魔士共の魂なら生贄として申し分あるまいて」
「オスカーやテレサの魂で四聖主を・・・」
「試してみる価値はある。次の日の夜はいつ?」
「暦によれば、降臨の日の三年後・・・もうすぐよ」
グリモワールは日にちを計算し長く見積もって大体の予想を立てる
「う~ん時間が足りるかな。四聖主は別々の場所に眠ってるんだろ?」
「ええ。各々地脈の奥底に眠っているはず・・・でも″地脈浸点″を利用すれば、一気に全員を目覚めさせられるかもしれないわ・・・」
「地脈浸点?」
ロクロウの疑問にグリモワールが一つ助け船を出す
「地脈の流れは基本水平なんだけど、極稀に縦の流れがあるの。力が地脈の底に潜っていく場所を″地脈浸点″・・・逆に奥底から力が沸き上がってくる場所を″地脈湧点″というのよ・・・」
「ふむふむ。その地脈浸点を使えば、地脈の底におる聖主どもに、一度に生贄を届けられるやもしれんの」
循環し尚且つ全ての地脈に繋がる地脈点があるなら大幅に時間を節約できる。それを選択しない余地はない
「場所は?」
「ミッドガンド領の北部に、浸点が一つあるわ。最近大きな神殿が建ったらしいけど・・・」
「そこは″聖主の御座″じゃ!カノヌシがおる本拠地じゃし~」
「あら、マズいわね・・・」
グリモワールが提案したところは選りによって自分らが手ひどくやられた聖寮の本拠地。そこに行くなど死にに行くようなものであり当然却下である
「・・・湧点じゃダメかな?同じように地の底に繋がってるんでしょ?流れに逆らうことになるけど――」
聖寮、アルトリウスとメルキオルはカノヌシの力を行き渡らせ易くかつそれを利用されないため、そしてそれを予想して要塞化したのだろう。だが湧点なら手付かずである可能性がある
「押し込んでみせろって言うのね」
「湧点は、そこにあるんだ?」
「恐らくキララウス火山のあたりだろう」
そこにアイゼンがやってくる
「アイゼン」
「大丈夫だ、話は済んだ」
「キララウスといえば、ノースガンドの最北にある火山じゃな。氷と溶岩の地獄じゃが」
「まさに。キララウス火山こそ最大の湧点よ」
「要するに、その火山に対魔士の魂をぶち込めばいいんだな」
「そうすれば四聖主が復活し、カノヌシの領域を封じられる。あくまで推論ですが・・・」
浸点より明らかに聖主覚醒の難易度は高い。だが現時点でそれしか方法はない
「あたしは賭けるわ」
「僕も」
二人の決意に皆は言わずとも付いて行くだろう
「ノースガンド領に向かうぞ。キララウス火山はヘラヴィーサの北だ」
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ベルベット達がこれからの行動を決めていた頃。ケンはアイフリードの船長室で左眼のスキャンモードを使い彼の様態を確認していた
「損傷した内臓はほぼ回復したようですが脊椎、背骨の一部が損傷しています。足に違和感はありますか?」
「ああ、あの時から左足がうまく動かねえんだ」
「・・・どうやらアイゼンさんの一発が効いたようですね」
ケンは左眼から送られてくる情報を見る。アイフリードの証言が確かなら脊椎が損傷により歩行障害を起こしている、これでは手の施しようがない
「・・・すみません、この怪我は自分ではどうすることもできません・・・杖などの補助がなければ歩行は難しくなるでしょう」
「お前が謝る事じゃねえだろ、本当なら俺はあの時死んでたんだ。それをお前とあのボウズが俺の命を拾ってくれたんだ」
「・・・」
アイフリードは左脚を摩りながら答える
「これは戒めだ、部下を傷つけ、命を奪った俺へのな。一生十字架を背負って生きていく、あいつ等の為にもな」
「・・・」
「それにこれからの事はアイゼン達に任せると決めたんだ。そしていつかはベンウィックが次の船長だ、それまで色々叩き込んどかねぇとな」
その時扉が開きアイゼンが部屋に入ってくる
「どうだアイゼン、これからの事は決まったか」
「ああ、まずカノヌシの領域を封じるためキララウス火山へ向かうそこの地脈点を利用する」
「キララウス火山・・・ノースガンド、こりゃ寒さが脚に響きそうだぜ」
「ほう、天下のアイフリード海賊団の船長は寒さ如きで弱音を吐くとは。そろそろ引退か?」
アイフリードが毒づくとアイゼンは腕を組みながら煽る。それにアイフリードが反応し船内から調達した資材で制作した杖をを取り立ち上がる
「引退だぁ?馬鹿言うんじゃねぇよ。脚は不自由になっちまったがそれ以外はこの通りまだピンピンしてるぜ」
「ふっ」
アイフリード未だ衰えず、それを確認したアイゼンは口元を緩ませた
~
アイフリードを部屋に残しケンとアイゼンは甲板に出た。ヘラヴィーサに着くまでは今しばらく時間があり皆自由に過ごしている。ベルベットは縁に座り海を眺め、ロクロウはクロガネと何やら話している
「・・・そうか。金剛鉄征嵐は簡単に折れたか」
クロガネはロクロウから刀がどうなったかを聞いていた
「ああ。やられたのはカノヌシにだが、シグレが相手でも同じだっただろう」
「硬いだけでは・・・な・・・すまなかった。柄にもなく″無心″などと自惚れた・・・」
「自惚れていいさ、お前の腕は間違いなく超一流だ。次の刀、期待してるぜ」
「お前は・・・まだ俺を信じてくれるのか?」
「当然だろう。世界のどこに金剛鉄を刀にできる鍛冶がいる?」
クロガネの質問にロクロウはきっぱりと答える。世界で最も硬く加工も難しいである伝説の金属を武器にできる職人はクロガネにおいていないはずである
「そんな名工が、何百年も迷って悩んで足掻いた末に生まれる刀を、俺は振るってみたい」
「・・・ロクロウ」
「それとも、もう號嵐に勝つのは諦めるか?」
ロクロウの言葉にクロガネは鼻で笑う
「諦めた男の顔に見えるか?」
「ははは!全く見えないな!」
クロガネは頭があった場所に手をやる。言葉の綾も込めてロクロウはそう言い切った。その様子を見ていたベルベットにライフィセットが声を掛ける
「後悔は順調だよ」
「問題は、アルトリウス達の″儀式″とやらにどの程度の時間が掛かるかだ」
アイゼンは聖寮が行おうとしている儀式についてベルベットに質問する
「アイフリードは″鎮めの儀式″って言ってた。恐らくカノヌシの力を解放するためのものよ」
「だろうな。ベルベットの″絶望″とライフィセットを喰えていない以上、完全ではないはずだが、発動すれば・・・」
「人の意思が奪われる」
アイゼンが言いかけた言葉をエレノアが続ける。もしそうなれば生きていながらも死んでいる、ただ利用されるだけの傀儡になり果てる。そんな未来にエレノアは恐怖する
「『そして、醜い人の業は鎮まり、穢れは生まれなくなりましたとさ。めでたしめでたし』というわけじゃなー」
先ほどまでモアナの遊び相手をしていたマギルゥが近づきながら結末を述べる
「意思が消える・・・昔の僕みたいに・・・?」
以前テレサに使役され意思を封じられていた時の自身を思い出すライフィセット。だがそれは無理矢理打ち切られる
「・・・何かが来る!」
ライフィセットが正体がわからないなにかに感づき声を上げた。その時、ローグレスの北聖主の御座から光の柱が天に向かって伸びカノヌシの印が現れそこから無色の波動のようなものが広がっていく。その波動に飲み込まれた人達は直前まで談笑していた者、買い物、遊んでいた子供たちは動きを止め次の瞬間まるで機械の様に意思の感じられない行動を取り始めた。ゼクソン港も波動に飲み込まれ港の商店で小競り合いが起きようとした時、その喧噪も一瞬で止まり野次馬諸共別々に行動し始めた。その波動も遂にはバンエルティア号にも届いた
「これは・・・領域!」
「うん、カノヌシのだ!」
このような芸当ができるのはカノヌシしかいない。その時彼女らの後ろから呻き声のような声が聞こえた
「あ・・・・うっ・・・」
「うあ・・・・あっ・・・」
モアナと一緒にいたベンウィックと船員の一人が目が虚ろになり明後日の方向を見ている。これがカノヌシの野郎としている事なのだ
「意識を奪われた!?」
「まだ完全には意識を封じられておらん。ロクロウ!全員殴って目を覚まさせい!」
「任せろ!」
マギルゥがロクロウに指示を出す。ロクロウがそれに応えベンウィックの方へ歩き出したその時、彼の頭の上に拳骨が落ちる。ベンウィックは激痛でしゃがみこみ頭を抑える
「イッッテェェェッッ!!!」
「アイフリード海賊団とあろうものが俺のいない間にこんなに腑抜けになったのか?」
ベンウィックの背後にアイフリードが立っており隣にいた船員には杖で脛を叩く
「~~ッッ!!!」
「奴らを正気に戻すのは俺に任せとけ、ここでビシっと気合入れ直してやるとするか」
アイフリードはそこから一人一人正気に戻すべく歩きはじめる
「俺が殴るよりよっぽど効き目がありそうだ」
「儂らが意志を奪われなくてホント良かったわい・・・」
「ここはアイフリードに任せる、アイゼン!」
「ああ、一旦近くの港に着ける!ゼクソン港だ」
ベルベットの合図に呼応してアイゼンが舵を取り、本来のルートから外れゼクソン港へと向かった
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「うう・・・頭の中を引っ張られてるような感じがする・・・」
波止場のしゃがみ込み頭を摩るベンウィック
「気合を入れろ。意識を刈り取られるぞ、アイフリードの拳をまた喰らいたいのか?」
「ヒィ・・・!それだけは勘弁してくださいよ~~!!」
アイフリードの拳骨を思い出し怯えるベンウィックを他所にライフィセットはゼクソン港の異様な雰囲気を感じ取る
「これって・・・」
彼らの視線の先には市場特有の喧噪もなく王国兵士の前に整列している老若男女の住人の姿だった。そこから別の所からアイフリード海賊団と取引している船止めの男が此方に歩いてきた
「あ、船止めの!貴方は無事だったのですね!」
エレノアは面識のある人物が此方に向かってきたので安心して今の状態を聞こうとしたが男は歩みを止めない
「いや・・・私は無事でいてはいけない。私は利を貪った。他人を蹴落とし、利用した。特級手配犯にまで手を貸して、事業の拡大を図った・・・」
男は歩みを止めることなく波止場の縁まで向かう
「醜すぎる穢れ、許されざる業だ」
「え・・・?まさか!!」
エレノアは男が何をしようとしているのか気づき走る。寸での所で男を捕まえ海へ飛び込むことを阻止する
「止めてください!」
「穢れは、失くさなければならない。私は、死ななければならない。死ななければ。死ななければ」
機械仕掛けの人形のように尚も歩みを止めない
「違う!そんなのって!」
カノヌシとアルトリウスのいう理想世界がこの状態というならば鎮静という名の選民思想、業のない人間などこの世にいない、死を強制するやり方にエレノアが必死に否定する。そこにベルベットが後ろから回り込み男の胸倉を掴み顔面を殴る
「ぐっ!!」
男は倒れ動かない。気絶したようだ
「死ぬのは勝手よ。けど、"死ななければならない″ってのは気にくわない」
「己が穢れを自覚そた者は自ら命を絶つか。実に無駄のない″理″じゃな」
鎮静化した世界による道理や摂理にとって都合の悪い因子を持つ人間を自ら死に追い込む。諍いのないだけで実際の所は今まで以上に悲惨な世界だ
「舵を奪うどころか、生き死にまで押し付ける気か・・・ふざけやがって」
「何が起こってるのか調べるわよ。それとも見たくない?」
「・・・見たいはずないでしょう・・・」
エレノアは聖寮の目的が自身の目で起きている事に愕然としている。それをベルベットが煽る形で気遣いながら判断を迫る
「でも、それ以上に逃げたくありません!」
聖寮の真意を突き止めると決めたエレノアの目に迷いはなかった
「まずは、この力の影響範囲を確かめる。ローグレスまで行ってみましょう」
「わかった。アイフリード、留守は任せるぞ」
杖を突きながら波止場に降りたアイフリードにそう伝える
「行ってこい。こいつらがまた変なこと言い始めないよう見張っとくからよ。しかし、これがあいつ等の真の目的だとしたら迷ってる暇はねえぞ」
「ああ、わかってる」
~
ローグレスの血翅蝶のアジトに向かうまでの間、現状を調査した。食事に対する個の道理を消し去られ生きる、活動するだけの糧食の配給へと変わり果て、街を彩っていた花や植木果てはシンボルである噴水まで無駄だと破壊されそうになり。子供達と仲良くしていた動物達は労力と食糧の浪費と判断され食事も与えられず虐待紛いな事をされていた。だが僅かだがそれに抵抗しようとする住民もいたが領域の影響下である以上それも長くは持ちこたえられないだろう。物理的に元に戻すことも考えたがこの状況下で行った時どうなるかわからない以上手出しができない。アジトに到着した一行はタバサに合うべく扉を開けたがそこに彼女の姿はなく代わりに兵士を連れた青年とそれに応対するアジトの男性がいた
「酒場など不要だと言い続けてきた甲斐があった。もはや、心水を求める者など、この街にはいない。大人を惑わし、堕落した人間を生み出す悪の誘いなど、元より存在してはならないのだ。酒場と呼ばれた店は、歴史の遺物となるべきだ」
「赤聖水も心水も、商うべきではないと私も言い続けてきた。これからは、この酒場だった場所を食糧の配給場所として、活用するべきだ」
青年の隣にいた商人の男性が酒場を取り潰し配給場所にするよう要求する
「味は問わない。空腹を満たし、生命活動に必要な栄養が得られるものならそれでよい。食事は楽しむべきものではないのだ」
青年の最後の言葉にライフィセットが不満を露にする
「お腹が減るのは、生きてる証拠・・・食べる事を楽しまなかったら、生きるのも楽しくない・・・そんなの嫌だよ」
その頃ケンはタバサを探す為先に二階の宿泊部屋に向かう。その扉の前で一人の女性が立っている、ケンに気付いているのかいないのかブツブツと呟く
「仲間たちは、この部屋で償いを果たした・・・私も・・・続かなければ・・・」
その言葉と意味にケンは一瞬わからなかったが少し考えた後理解した。女性をどかしドアノブに手を掛けようとした時ドアの隙間から匂いが漂う、それに構わずドアを開けたケンの目の前には所狭しと文字通り自身の罪を償った者達が壁に寄り掛かったり床に倒れている姿だった
「・・・・」
「それが理・・・でも・・・ううぅ・・・こ、怖いよ・・・母さん・・・・」
後で目が虚ろながらも涙を流す女性。だが危険性を考えどうすることもできない、部屋の中を見回し目視と左眼のスキャン機能でタバサがいない事を確認した
「ここにはいない・・・別の場所に避難したか、それとも・・・いや、確かめない事にはな」
ケンがドアを閉めたと同時にロクロウが階段を上がってくる
「どうだ、居たか?」
「いえ、いませんでした」
「・・・・わかった」
ケンの顔と扉から感じる異様な雰囲気を感じ取ったロクロウは何も言わずそう返した。その後エレノアとライフィセットが上がってきたがロクロウが説得して止め、タバサと連れ戻されたであろうパーシバルの捜索を再開する。最後の場所である王宮へと向かった
「意思の残ってる人、もういないのかな・・・?」
「きっといます。いるはずです」
その時どこからか声が響く
「ママァ・・・」
「子供の泣き声!?」
ベルベットがそれに気づいたと同時に上空から背中から翼を生やした人型が王宮の正門へと続く通路へと飛んで行く。一行は直ぐ様後を追う
「ママ・・・!こわいよぉ、ママァ~!」
「感情を出してはダメよ!」
「さもないと、こいつらが・・・」
少女がローグレスの異様な状況からの不安と恐怖で泣き叫ぶのをタバサが必死で宥める。パーシバルは二人を守るように前に立つ、少女の傍に母親がいない事から恐らく住人と同じになったのか、それとも彼らの周りを飛ぶ人型に処理されたのか定かではない
「パーシバル王子とタバサ!」
「意思を失くしてない!」
そこにベルベット達が駆けつけ二人が無事であることを確認する。パーシバルを取り囲んでいた人型が意思を剝き出しにしているベルベット達に気付き先に始末しようと手に持った武器を構える
「王都の中に業魔が!!」
「違う!、こいつは聖隷よ!」
ローグレスがこのような状態であるから業魔が侵入してきても不思議ではない。槍を構えるエレノアの横に立つベルベットがそれを否定する。業魔のような穢れを発していないこの人型は聖隷で間違いない。人型の聖隷、複数の天啓の使いは槍状の武器を構えベルベット達に向かってきた
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第48話 終わり
来月は少し忙しくなりそうで投稿できるかわかりません。申し訳ありません