~ケン視点
「まずは装備を。この先の部屋に武器がありました。」
今僕たち三人はこの監獄から脱出するため、シアリーズさんと僕のの来た道を引き返している。
シアリーズさんの言っているのは自分が通った部屋のことか、物資が積んであったので武器の一つや二つはあるだろう。部屋へ続く扉を開ける。倒れたままの兵士ももちろんいる。
「騒がれてはいません」
「・・・当然ね」
この二人はシアリーズさんが片したのか、言葉から察っすると息の根を止めていたようだ。
「この部屋で装備を整えましょう」
そう言うと物資のほうへ歩き出す、しばらく調べる。
「囚人から没収した品が保管してあるようですね」
没収品、この量だとかなりの人数になる。
「ロープか、これは使える」
ベルべットさんはロープを手に取る。
「・・・すごい刀」
次は大太刀がでてきた、かなりの業物に見える
「その太刀は・・・
シアリーズさんが驚く、此処ではそれほどの物なのだろう。
「あたしには大きすぎる」
当の本人は興味なさげ、どう見ても振り回すタイプじゃなさそうだし。
「いいのですか?號嵐は希代の名刀ですが・・・」
「どんなにすごくても、使いこなさなきゃ意味がない」きっぱり言う。
「そうですか・・・ケンさん、貴方はどうですか?貴方ほどの力と技量ならこの刀を使いこなせるでしょう。」
自分を見て言う。確かにこの刀は素晴らしい物だ、だが鼻っから使うつもりもない。武器なんて使ったことないし防御に徹する自分の戦いには合わない。
「いえ、僕も必要ないです。」「そう・・・分かりました」
そんな話をしているとベルベットさんの方から何やらゴソゴソ音が聞こえた。何事かと思い、そちらを向くとベルベットさんは没収品から手頃な服や布、装飾品を取り、着替えようとしていた。
(やれやれ)僕は後ろを向く、一声ぐらいかけてもいいのに。
「見てもいいわよ?気にしないから」「少なくとも僕は良くないですよ」
ため息を吐きながら背負っていたリュックを床に降ろし、中身を探る。食糧に水、医薬品が入っている。あとは大きめの皮袋いっぱいの硬貨、この世界では[ガルド]だっけ。それを仕舞い、代わりに水の入った容器を取り出し、喉を潤す。
「あの、いくつか聞いてもいいですか?」「?あ、はい、何でしょう」
シアリーズさんに話掛けられた、何だろう。
〜シアリーズ視点
「見てもいいわよ?気にしないから」「少なくとも僕は良くないですよ」
彼は後ろを向いたまま呆れたような感じで答える。背負っていた大きなカバンを降ろし、中身を確かめるように探っている。持ち物を確かめたと同時に何かの容器を取り出し、口を付ける、中身は水のようね。私は気になったことがあるので思い切って聞いてみる。
「あの、いくつか聞いてもいいですか?」
すると彼は気付いて。
「?あ、はい何でしょう」そう答えた。
「あなたは何処から来たのですか?ここは島、何か手段が無ければここには来れないはずですが」
「あ〜自分は旅の者でして小舟で当てもなく航海してたら嵐で壊れちゃいまして。沈みかけの舟で遭難してる途中で此処に流れ着いたんです」
彼は詰まりながらも答える。怪しいがそのことはどうでもいい、本題は次。
「ではあの時彼女に打ち込んだ力、あれは何ですか?あれを打ち込んだ時彼女の中から穢れが消えるのを感じました。あなたは聖隷なのですか?」
「穢れが消えた?(可笑しいな、あの技はあくまで沈静化させるため技で浄化なんて・・・)えっと、あれは旅の途中で教わったんですよ。誰にも喋るなって言われてますんで・・・(嘘だけど)それに自分はそんな大層な者じゃないですよ。僕はただの人間です。」荷物を背負いながら答える。
「そう」やはり彼なら・・・
話している内に彼女が着替え終わったようね。
〜
ベルベットは着替え終わって新しい服の感触を確かめるかのように体を動かす。服装は赤と黒を基調とした露出が高い物だ。これじゃさっきのと変わらないような気もするが。
「よし」 何を持ってよしなのか
「準備はよろしいですか」二人は目で答える。「なにをしている!」
3人は声のした方を見る、そこには白に金と青が縁取られた服と兜をまとった男がいた。手には剣と盾を持っている。
「きをつけて!ただの兵士ではありません 二等対魔士です」
「お前たちなにをしていると聞いているんだ!!」対魔士は剣を構えつっこんでくる。こっち3人なんだけど。あとケンは無視、荷物持ちとでも思われてるんだろうか。意識が二人に集中している隙ににケンは横から剣を持った腕と肩を掴み相手の勢いを利用して体勢を崩し、押えこもうとした。だがそれと同時にベルベットが男の顔に蹴りを入れる。
「ガフッ!」男が蹴られて仰け反ったところでシアリーズが火球を放ち、男を吹き飛ばす。
「ぐあああ・・・・!」
男はそのままうごかなくなった。えげつないなこの人たち。
「慣れたものね」
「行ったはずです。私はもうあの方の聖隷ではないと」
それを聞いたベルベットは歩き出す。数歩歩いて立ち止まる。
「船の用意は?」
「ここが島だとご存じだったのですね」
「ええ、凶悪犯を集めた監獄島ってことも、業魔が大勢収監されてるってことも。
「・・・港は島の表と裏の一つずつ。私の船島の裏手に着けてあります」
「了解、裏の港ね」
そう言ってまた歩き始める。そしてケンの前で止まる。
「・・・ふん!!」
横目でケンを睨み、鼻を鳴らしまた歩き出す。当の本人は「僕嫌われてんのかな」とぼやいた。
「あ、そうだ、これどうぞ」ケンはベルベットとシアリーズにある物を渡す。
「・・・なにこれ」「これは一体」
銀色の包み紙の上に茶色い包装紙が巻かれた板状の物、そうチョコレートだ。リュックの中にこれだけ異常に入っていたので二人にもお裾分けすることにした。全部食べたら糖尿になりそう。
「チョコレートです。これから休めるかも分かりませんし。少なくとも腹に何か入れたほうがいいと思いまして。」
「私は味がわからないから要らな「人の厚意をむげにするのはいただけませんよ」っ!うるさいわね分かったわよ!」ケンから荒っぽくチョコを取り上げる。それを噛み砕くように食べる。途端に動かなくなる。
「どうしたんです?もしかして腐ってました?」ケンはベルべットの顔を覗き込むように見る。
「!?うるさい見るな!!」ベルべットがケンの顔面にパンチを放つ。
「えっ!?ああすいません」パンチを後ろに下がり避けつつ謝罪するケン
「たくほら行くわよ!!」ズカズカ扉の方へ向かうベルべット。シアリーズとケンは顔を見合わせ頭に?マークを浮かべながらも後に続いた。
~ベルべット視点
「あ、そうだ、これどうぞ」男から何か渡される
「・・・なにこれ」
「チョコレートです。これから休めるかも分かりませんし。少なくとも腹に何か入れたほうがいいと思いまして。」
あたしは業魔になって以来血の味しかわからない。こんなもの喰っても意味ない、第一食べた感覚もない。
「私は味がわからないから要らな「人の厚意を無下にするのはいただけませんよ」っ!うるさいわね分かったわよ!」
そう言ってあたしはアイツからチョコを奪い取り齧り付く。まったく、姉さんぶってこんなことしても意味なんか・・・その瞬間無くしたはずの感覚が蘇る。
甘い・・・!?甘い!?なんで!?どうして!?
「どうしたんです?もしかして腐ってました?」あたしが固まっているとアイツが心配そうにのぞき込んでくる
顔を見られたくなくて咄嗟に拳を振るう
「!?うるさい見るな!!」「えっ!?ああすいません」しっかり避けた。コイツはホントに!!
「たくほら行くわよ!!」あたしは扉に向かった。調子狂うわまったく
~
それから3人は裏の港に向けて走っていた。その道中聖隷の魂とやらを見つけた、これを集めれば協力を取り付けることができるとのこと。それからしばらくしてシアリーズが注意を促す。
「警備が来ます。数は二人」「こっち」物陰に隠れる「あんたはそっち」「・・・へい」やっぱ嫌われてるのかな
隠れたと同時に警備が話しながら歩いてくる。
「聞いたか?島の外周道が立ち入り禁止になった。地盤が緩んで崩落の危険があるらしい」
「監視塔の下を通る道か。元々間道だし、問題はあるまい」
「港を繋ぐ近道だったんだがな・・・」
(港を繋ぐ外周道・・・監視塔の下・・・)
そこへもう一人の巡回がやってきた。
「警備兵が数名、所在不明になった。何者かが島に入り込んだらしい。全対魔士は二隊に別れ、表門と裏門に集合せよ」
「了解。これで袋のネズミですね」「油断はするな。賊がネズミとは限らん」「「はっ!」」
警備が走っていくのを確認し、物陰から出る。
「さすがに手強いですね」「なら、こっちも戦力をそろえる。牢獄はどこ?」なんかしでかすぞこの人。
「この階にあるはずですが・・・囚人たちを巻き込むのですか?」
「そうよ。利用できるものは利用する」
確かにここをでるにはその方が騒ぎに紛れて逃げられる可能性も高くなる。ベルべット達は牢獄のある部屋に向かった。扉を抜けると対魔士が一人と重厚な鎧を着た兵士が一人。計二人いた。
「!?なんだ貴様らは!」相手の対魔士が気づく。
「あたしが対魔士を相手する!あんたらそっちの鎧の方をやって!!」「わかりました」「へーい・・・」
ベルべットはそう言い。突っこむ。
「では自分が抑えますので、攻撃はお願いします」「はい」ケンとシアリーズは構える。
「でいやっ!」衛兵はケンに向かって獲物を振りおろす。
「ふんぬっ!」裏拳で剣の腹を叩き軌道を曲げる。次は盾で殴り掛かってくる、盾の表面を滑るように横流れの一回転で躱す。その隙をついて横っ腹に両手を当て、押す。相手は自分の勢いにのって大きく体勢を崩す。
「竜神楽!」シアリーズが爆炎を起こし衛兵に向かって放つ。
「ぐあああ!」衛兵は炎に晒され悲鳴を上げる。だが持ちこたえたようでよろめきながらも立っていた。ケンはすかさず腕と襟を掴み一度引いて体勢を崩し。シアリーズの方へ放る。
「羽二重!」手の動きに合わせて前後に炎が走る。
「があああ!!」二度目の熱に晒されそのまま倒れる。衛兵は動かなくなった。
「あなたの技には目を見張るものがありますね」「いえ、自在に炎を出せるあなたに驚きますよホント」
「終わったわ」ベルべットの方も片付いたようだ。
「さて・・・」そのまま周りの独房を見る。しばらく観察してシアリーズの方を見る。
シアリーズは頷くベルべットは正面の独房に向かい叫ぶ
「聞け!今から檻を開ける!全員でこの島を出る!」「うおお!?マジかよ!?」周りが騒がしくなる。
「二手に分かれて表門と裏門へ向かえ!門を突破すれば船が手に入る!」
「でも、対魔士守ってるんだろう?ここから生きて出られたのはバン・アイフリードって海賊だけなんだぜ?」
「ヤツだって、メルキオルとかいうジジイ対魔士が連れ出したんだ。自力で出たわけじゃねぇ」
(・・・海賊アイフリード?・・・メルキオル・・・)「強制はしない!この檻で生きたい奴は残ればいい!」
俺はやるぜぇ!やってやる!やってやるぞ!俺もだ!檻を開けろネエチャン!不味い餌にも飽きたとこだしな!
「シアリーズ」その呼びかけでシアリーズは術を解く。それと同時に囚人は勢いよく外にでる。
「行くぜ!!対魔士を殺せ!」「ほかの牢も開けろ!」
「これで警備の目は、あいつらに集まる。こっちは監視塔を探すわよ島から外周道に降りて、港に抜ける」
ベルべットはそういい次の扉に向かう。
「・・・共に戦うのではないのですね」「言ったでしょう。利用するって」そのまま歩いていった。ケンとシアリーズも後を追う。ついでに色々な話も聞けた。
~
監視塔を探すため次の扉をくぐると砕けた爺さん言葉で話しかけられた。
「いやはや、わびもなしかぇ?」そのまま止まり周りを見るベルべット、その後ろに道化のような衣装を着た女性がにやにやしながら立っていた。
「!?」すかさず刺突刃を出し横に振るう。女性は分かりきったように上半身を前に倒して躱した。
「ふぅ・・・なんじゃの、主らは?スヤッと安眠しとる儂を起こしおってからに。まさに極楽から地獄!と思ったら、マジ牢獄じゃし!この切なさ・・・わかるじゃろ?」オーバーなリアクションで話す女性。 この人ちょっと苦手なタイプだ・・・とケンは思った。
「あなたは・・・?」シアリーズが問いかける、やめといた方がいいよ?こういうの後々面倒だから。
「よう聞いた!」手を叩いて合わせる「自分で言うのもうれしいが、儂こそは八紘四海を股にかけ、ドラゴンも笑う大魔法使い!」またもやオーバーに言う
「その名も、マジギギカ・ミルディン・ド・ディン・ノルルン・ドゥ!略してマギルゥと覚えおけぃ!」最後に歌舞伎みたいな構えをした、ちょっときついな。
「マギルゥ?」
「違~う。『トナリノキャクハヨクカキクゥキャクダ』の『カキクゥ』のアクセントで『マギルゥ』じゃ」3人は無表情だ。
「はぁ~、かく力説してもわかりあえぬ。人とは悲しいものじゃて・・・ま、どーでもいいがの♪」そう言うとツカツカと去っていく。
ベルべットとシアリーズは逆の方向に歩いていく。ケンも続いていこうとしたがなにか腹部に触られる感触があった。ケンは自分の体を見るといつのまにかマギルゥが前から腹筋を弄って恍惚な表情を浮かべていた。女性に触られたことがないからしどろもどろしてしまう。
「ちょっ!?ちょっとー!?何してるんですかあなた!!」「おほー♪睨んだとうりいい体じゃの~♪一見堅そうに見えて柔らかくて見事な筋肉じゃの~♪足も腕もええの~♪顔は・・・男らしくて好みじゃ♡」どこまで本気なんだこの人。
「さすがにダメですよ!」「じゃあ、頼めばええのかぇ?」「ちがう、そうじゃない」
今度は頬を擦り付け始める。さらに尻をも触ろうとしている。逆セクハラもいいとこだね。さすがにまずいので手を掴んで引きはがす。
「なんじゃ?もう終わりか?もう少し堪能したいんじゃがの~まあ、いいか♪また触らせてくれよな~」そして今度こそ去っていく。ああ疲れた。
「おい!何してるんだ!早くしろ!」 「へーい・・・」ケンはベルべットの元へ走る。
~マギルゥ視点
「うっしっし、いや~久しぶりにええもんに触れたの~♪久しぶりに楽しめたわい♪」
マギルゥは心底嬉しそうだ。
「ふむ~どうしようかの~ここにいてもつまらんからに・・・そうじゃ♪」なにかしでかしそうだねこれ
「あちゃ~あいつの名前聞くの忘れてた~・・・まっいっか♪直接聞けばいいんじゃし~♪」マギルゥはふと考える
(あいつの反応を見るに女と付き合うたことがないとみた。これは楽しめそうじゃ~♪)
笑みを浮かべながらケンたちの方を見た。
第3話 終わり
最後まで閲覧いただき、ありがとうございます。戦闘描写はどうでしたか?マギルゥの喋りを書くのは難しいですね。
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