テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜   作:スルタン

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回線復帰したので再開します。待たせてすいませんでした


第19話

 

 

ベルベットとロクロウ、アイゼンとマギルゥの4人はエレノアとライフィセットを捜しつつ遺跡を探索している。因みにここはイボルグ遺跡、名前の由来すら残されていない太古から在る遺跡。扉や壁の様式で地の聖主ウマシアの紋章があることからウマシアを祀る為の聖殿かもしれないが詳細はまるで分からない。資料集漁りながらだと大変。

遺跡の奥に進み外に出るとそこにはエレノアが立っていた。エレノアが4人を見据える

 

「てっきり逃げたと思った」

 

ベルベットが腕を組む

 

「姿を消したことは謝罪します。覚えず、別の場所に出てしまいました」

 

みんな、人にポンコツとか言っちゃいけないぞ!お兄さんとの約束だ!

 

「ライフィセットは?」

「私の中で眠っています。容態は落ち着いたようです」

 

ベルベットの質問にエレノアは己の胸に手を当て答える

 

「エレノア・・・だっけ?あたしが勝ったら、器として死ぬまで従ってもらうわよ」

「承知しました。代わりに、あなたが負けた時は命をもらいます」

 

その言葉と同時に構えるエレノア、アイゼン達はベルベットから少し離れる

 

「サシでやるのか」

「一人で十分よ」

 

アイゼンに聞かれ短く返すベルベットはエレノアと戦うために歩き出す。エレノアとベルベットが間合いを開け対峙する。ベルベットは左手を前にし、エレノアが槍を廻しながら同じく構える。一瞬の静寂の後両者が走り出す。業魔手に変えた左手でエレノアの頭部を引き裂かんと振りぬくもエレノアはそれをしゃがむ事でギリギリで躱す。今度はエレノアが槍を突き上げベルベットの首を狙う

 

「フッ!」

 

ベルベットは首を傾け刃先を躱し刺突刃で柄を横から払うように逆の方向へ逃がす。それと同時に体を捻り後ろ回し蹴りで攻撃する

 

「くぅ!」

「ちっ!」

 

エレノアは反応に一瞬遅れるが直ぐに後ろに下がる、ベルベットは攻撃を避けられたことに舌打ちをしつつも追撃を掛けるため刺突刃を踏み込みながら振りかぶる。エレノアもそれに合わせ槍で防ぎながらも反撃を加える

 

「せいっ!やぁ!!」

 

エレノアが徐々に攻勢に出始め槍のリーチを生かしながらベルべットの射程範囲外から攻撃する間合いに入ることができないベルベットは後ろに下がりながら隙を伺う、エレノアは槍の連撃から平行線の戦いを変えるべく槍を地面に突き立てそれを軸に跳躍する

 

「蔓落!!」

 

ベルべットの頭上高くからの踵落としに対応すべく己も技を繰り出す

 

「飛燕連脚!!」

 

エレノアの踵落としとベルベットの回し蹴りがぶつかり合いお互いに弾かれる

 

「くぅ!」

「あうっ!」

 

二人とも大きく吹き飛ばされる。エレノアは空中で体制を立て直し着地、ベルべットは地面を滑りながら止まる。伏せられた顔を上げる両者は闘志は消えておらずそのまま走り始める

 

「はあぁぁぁ!!」

「でやゃゃゃ!!」

 

ベルベットの刺突刃とエレノアの槍の切っ先がお互いに迫る

 

「空破絶掌撃!!」

「裂駆槍!!」

 

両者の獲物がかち合い火花を散らす、ベルベットはそれを狙っていたかのように素早くエレノアの懐に飛び込む

 

「しまった!?」

 

エレノアが急いで身を引こうとしたがそれより早くベルベットの蹴りが彼女を捉える

 

「遅いっ!」

「ああっ!?」

 

蹴りを受けたエレノアが膝を着き、そこにベルベットが刺突刃を突き付ける

 

「勝負ありよ」

「『勝利を確信しても油断するな』!」

 

エレノアが顔を上げ素早く槍を振り上げベルベットにつき返すがそこで止める

 

「・・・なぜ止めた?」

「あなたは、器の私を殺せない。同じ条件で戦ったまでです」

「勝ったら殺すんでしょう!」

「それはそれ、勝負は勝負です」

 

そこまで聞いたベルベットは観念したかのように武器を下す

 

「面倒な奴ね・・・けどっ!」

 

そこまで言い目を見開いたベルベットは素早く横から掴み一度捻った後自分の方に引っ張ると同時にエレノアの脚を引っ掛ける。エレノアは突然のことで反応できず転んでしまう。起き上がろうとしたエレノアにベルベットが槍を突き付ける

 

「『剣を抜いたら迷うな。非常な戦いは非情をもって制すべし』よ」

「アルトリウス様の戦訓・・・!なんて不甲斐ないっ!」

 

エレノアは顔を背ける目に涙を浮かべる。まーた泣くんだからホント

 

「約束は・・・守ります。あなたの命令に従う――」

 

エレノアがベルベットが握っている槍を掴む

 

「私が死ぬまで!」

 

掴んだ手を自分の方へ引き寄せ己の首に突き立てようとした時

 

だめっ!!

 

ライフィセットの声がエレノアの中で響いた時エレノアの腕が止まる

 

「体が動かな・・・!?聖隷が器に・・・干渉するなんて・・・」

 

そこまで言うと同時に倒れ気を失うエレノア。そこから光が飛び出しライフィセットが現れる

 

「ライフィセット!もう大丈夫なの?」

「・・・うん」

 

ベルべットの心配していた事に申し訳なさそうに答える。戦いが終わったことでアイゼン達が後ろから歩いてくる

 

「器になった反動がでたようだ」

「儂も覚えがある。高熱を出して、しばらくは目を醒まさんじゃろうて」

「足手まといを連れてどこだかわからん土地を進むのは危険すぎるな」

「こいつが回復するまで休もうぜ、ケンを捜すのも明日だ。道連れなんだろう?ライフィセットの器なんだから」

「・・・そうね」

 

ロクロウの言葉にベルベットは上を見上げ呟いた

 

 

エレノアが目を醒ますまで遺跡の中で急速をとることになったベルベット達。ベルベットはロクロウやアイゼンにライフィセットが夜風に当たりに外に出たことを聞き自身も外に出るとライフィセットがいた。ベルベットがライフィセットに近づく

 

「無理しちゃだめよ。まだ」

「・・・ごめんなさい」

「なんで謝るの?」

 

ライフィセットが手を握り込む

 

「僕・・・ベルベットの命令破っちゃったから・・・」

 

ベルベットが片膝を着いてライフィセットに目線を合わせる

 

「おかげで、あたしは生きてる」

 

ライフィセットがベルベットを見てまた顔を伏せる

 

「・・・僕、ベルベットが死んだら嫌だと思った。だから・・・助けたかったんだ」

「・・・ごめん。偉そうなこと言って、あたしは、あんたをモノ扱いしてた」

 

ベルベットの謝罪にライフィセットが首を振る

 

「一緒に行くって決めたのは僕だよ。ベルベットは、どうするか聞いてくれた」

「これからも?きっとまた酷い目に合うわよ」

 

ベルベットが立ち上がり横を向く

 

「・・・まだ戦うんだね、ベルベットは」

「退けないのよ。あたしは」

「それでも・・・僕はベルベットと一緒に行く」

 

幼いながらも決意を見せる分彼も成長していることがうかがえる

 

「・・・そう」

「ここ、どこだかわからないし」

「それもそうよね」

 

ライフィセットの言葉にベルベットが笑みを浮かべる、が、そこに水を差すような声が響く

 

「いやはや、モノよりイキモノを弄ぶ方が残酷じゃというに・・・」

 

案の定マギルゥがにやけながら二人に歩み寄る

 

「・・・どういう意味?」

「聞きたいのはこっちじゃ。仇を前にして爪痕一つ残せんかったんじゃぞ。これからどうするか、策はあるのかえ?」

 

ベルベットは自分の胸に拳を当てる

 

「・・・認めるわ。カノヌシの力は想像をはるかに超えてた。けど、あたしはあきらめない。何度だって、あいつらに喰らいついてやる」

「折れる方に100ガルド」

「は?」

 

マギルゥの突然の賭け疑問符を浮かべるベルベット

 

「お主の牙が折れる方に100ガルド掛けたんじゃよ。お主が生きておったせいで、ロクロウとの賭けに負けてな。10ガルドとられてしもうた。それにケンが生きておったらまた10ガルドとられてしまう、それを取り返したいんじゃ」

 

ベルベットは呆れて手を上げる

 

「・・・勝手にすれば」

「おお、賭け成立じゃな♪これでお主に同行する楽しみができたわい」

 

指を鳴らし大喜びするマギルゥ。楽しむからこそこの賭けなのだろうか。捻くれだろうか、そこで腕を組む

 

「ヒマが潰せれば、あとはどーでもいいんじゃがな」

 

そこでライフィセットがあることを思い出す

 

「ベルベット、カノヌシのことだけど、これ・・・」

 

ライフィセットが懐から一冊の本を取り出す

 

「離宮から持ってきた本?」

「うん。でね、この表紙の紋章って・・・」

 

ライフィセットが本の表紙をよく見せる

 

「神殿にあったのと同じ!これ、カノヌシのことが書いてあるの!?」

「うん。古代語だから読めないけど・・・」

 

落ち込むライフィセットにマギルゥが助け船?を出す

 

「しょげるな、坊よ。グリモワールという儂の知人なら解読できるやもしれん」

「ほんとう?」

「・・・かどうかは、聞いてみなければわからんがな」

「どこにいるの?その知り合いって」

 

ベルベットの問い詰めにマギルゥは腕を頭の後ろに組む

 

「さてのう。最後の便りは、サウスガンド領のイズルドからじゃったが」

「当てにならなさそうな当てね」

「そこにあがいて見せるのが、お主の仕事じゃよ~」

「ふん。ご期待通りにやってみせるわよ」

「せいぜい折れんようにのう」

 

 

それから暫くして休息をとり皆が寝静まった後、一人エレノアが目を覚ます。起き上がり周囲を見ると皆それぞれの場所で眠っている。ロクロウが尻掻いてておっさんくさい

 

(私は・・・業魔に看病されてたのか・・・)

 

その事実に声を出さぬように口を押える。ほら泣くぞ?すぐ泣くぞほ~ら泣くぞ

 

(未熟ッ!未熟ッ!なんという失態だ!)

 

エレノアはベルベットの方を見て立ち上がる

 

(この罪を償うには・・・)

 

エレノアは取り出した槍を見、ベルベットに近づくも思うことあってか今度は槍の刃先を自分の首元に当てる

 

(こうするしか・・・!お許しください、アルトリウス様)

 

その時エレノアの横で光が溢れ始める、そこには光を放つ球体が宙に浮かんでいた。その光は遺跡の外へと向かっていった。エレノアはその正体に気づいたのかそれを追いかけ走り始める。エレノアが走り去った後ベルベットとアイゼンが顔を上げる、早い話が起きてた。遺跡の外へ出ると球体が止まる

 

「これはメルキオル様の・・・交信聖隷術!」

 

その聖隷術からアルトリウスの声が響く

 

「メルキオルに地脈を辿らせてみれば、妙なことになっているようだな」

 

エレノアがすかさず膝まづき、頭を垂れる

 

「アルトリウス様!この失態は・・・」

「・・・顔を上げなさい、エレノア。お前に、導師の特命を授ける」

「導師の特命!」

「ライフィセットと名乗る聖隷を保護し、ローグレス聖寮本部に回収せよ。なお、この特命は特等対魔士以上の機密事項とする」

「あの聖隷を守って、王都に連れ帰れと?」

「しかも内密にだ。巧ず器になれたのは好都合だな」

「ですが、あの者は器である私の行動に干渉できるのです」

 

エレノアは表情を曇らせる

 

「聖隷が意思をもつなら、それを操れば済むことだ。導師アルトリウスの名において、特命完遂に必要な以下ある行動も許可する」

 

エレノアは驚きながらも口を挟む

 

「業魔に従うことも含めてですか!?そこまでするとは、あの聖隷は一体・・・」

「・・・できないか?」

 

アルトリウスに焚きつけられエレノアは拳を握り込み伏せていた顔を上げる

 

「屈辱は屈辱は所詮一時の感情。“理と意志”こそが、災厄を斬り祓う剣。この命は、アルトリウス様の教えに従って使います」

 

一時の間を経てアルトリウスが再び話す

 

「まもなく地脈が閉じる。以後は、独自の判断で任務を果たせ・・・ふむ、その様子ではあの男はそちらに来ていないようだな」

「え?は、はい。今のところ見てはいませんが・・・」

 

アルトリウスの突然の言葉に戸惑いながらも答えるエレノア

 

「まあ、よい。どのみちあの傷では長くはない。お前が気にする必要もあるまい」

「は・・・はい」

 

エレノアが立ち上がり空を見上げている後ろの物陰でベルベットとアイゼンが今までの話を最初から最後まで聞いていた。スパイにすらなっていないという

 

「聞いたな」

「ええ」

 

アイゼンがベルベットに小声で話す

 

「スパイの話はそうだがケンも何とか逃げれたらしい。問題は奴が生きているかどうかだが・・・今回ばかりは駄目かもしれんな」

「そうかしら」

 

ベルべットが戻るため歩き始めアイゼンも同じく付いていく

 

「その言い方からして、生きていると確信しているのか」

「あいつのしぶとさはあたしとロクロウとマギルゥがよく知ってる、あいつを殺すには首を刎ね飛ばすしかないでしょうね」

「ふっ、それもそうだな」

 

 

それから夜が明け辺りも明るくなりいよいよ出発の時間となった

 

「起きたな。具合はどうだ?」

「問題ありません」

 

ロクロウの気遣いに表情を変えることなく受け答えをするエレノアにライフィセットが話しかける

 

「あの・・・もうあんなことしないでね。痛いのは怖い・・・でしょ?」

「・・・大丈夫。私は、もう逃げません」

「僕はライフィセット。よろしくね、エレノア」

「え・・・ええ、こちらこそ」

 

聖隷にここまで話しかけられたことがないのだろう驚きながらも返事をするエレノアにベルベットが警告する

 

「逃げようとしたら、あんたの手足を喰って動けなくするわよ。生きてさえいれば、器の役割は果たせるんだから」

 

ヒェッ・・・

 

「・・・その必要はありません。私は、あなたとの決闘の前に“誓約”をかけました。『負けた場合、相手に従う』という枷によって自身の力を引き上げる術です。一度発動した術は自分でも解除できない。私は、あなたとの約束を守らざるを得ないのです」

「ふぅん、誓約・・・ね」

 

ベルべットが訝しむのも無理はない、自決しようとしてた時点で矛盾出まくりなんですがそれ・・・

 

「なら、さっそく質問に答えてもらうわよ。聖寮はカノヌシを使ってなにをする気なの?」

「・・・もちろん業魔を消し去ることです。開門の日から続く大災厄の時代を終わらせるために」

 

そこにアイゼンが割って入る

 

「具体的に、どうやって業魔を消す?願えばカノヌシが業魔を皆殺しにするとでもいうのか」

「そこまでは・・・知らされていません。カノヌシの祭祀は聖寮でも機密事項で、メルキオル様が取り仕切っていることくらいしか・・・」

 

エレノアが答えている最中にアイゼンとベルベットが目で会話する

 

「やっぱり、カノヌシの正体を知るにはライフィセットの古文書を解読するしかなさそうね。古代語を読めるっていうマギルゥの知り合いにあたってみるか」

「サウスガンド領のイズルトに行けば、そやつの手掛かりがあるはずじゃよ」

「その前に、ここがどこか調べんとな。まずは人か集落を探すんだ」

「ははは、わからんことだらけでなんとも頼りないなぁ」

「それでも、知ろうとしないと。ずっとわからないままだよ」

「応!こりゃ一本とられた」

 

お、そうだな

 

「こんな聖隷もいるのね・・・」

 

驚くエレノアにベルベットが釘を刺す

 

「エレノア、あんたの役目はライフィセットの護衛よ。相手が対魔士でも守り抜きなさい。逆らえば・・・」

「わかっています!逆らえないと言ったでしょう」

 

エレノアが先に歩き出したのを確認しベルベットがライフィセットに耳打ちする

 

「いい、ライフィセット。エレノアが妙な行動をとろうとしたら、すぐにとめるのよ」

「でも、エレノアは悪い人じゃないと思う。それに“誓約”で約束は守るって・・・」

「“誓約”なんて嘘に決まってる。あれは命を懸けて使うようなものよ」

「じゃ。複雑な術式と試練を経て、やっと完成するめんどくさい術じゃよ」

 

元対魔士であるマギルゥが言うからにはエレノアが嘘をついている可能性が高いのは間違いない

 

「いったでしょ。あいつの目的は、あんたを連れ去ることなの。女を見かけで判断しちゃだめよ」

「う、うん・・・」

 

はたから見ると姉と弟のようにも見える

 

「そうじゃぞ・・・というかそもそも悪者はベルベットの方じゃけどな」

「・・・否定はしないわよ」

 

 

今現在ベルべット達がいるのはブリギット渓谷。風と水の浸食で出来た棚状地が複雑な重なりの谷でアイルガンド領中央部の険しい谷、今でも地殻変動が起きており地形が変わりつつあるらしい。僅かな足場と足場につり橋を張り、なんとか交通を確保している。道中にライフィセットが煌鋼という希少鉱石を見つけ、アイゼンがそれを元にエンドガンドかアイルガンド領であろうと推測する彼の知識は何度も助けられる。

 

「あんた、ちょっといい?」

 

更に進むとその先に革の鎧を着た一人の男が立っている。ベルべットは聞き込みをするためにその男に近づくが当の本人はベルべット達をを見るや否や怯えだす。そりゃまあ女性組やライフィセットはともかくロクロウやアイゼンのような者がいたらビビるのも無理はないが・・・

 

「ひっ!刀斬りの仲間か!?」

「は?」

 

男は震えながら剣を取り出しなぜか謝りながら斬りかかる

 

「俺が悪かったー!」

 

「謝りながら斬りかかるな」

 

男の剣をロクロウが受けとめいなす、男はがむしゃらに剣を振るうがそれはあまりにも大振りかつ直線で見切られやすくロクロウに触れることさえできない

 

「なんでこうなるのよ!」

 

その横からベルベットが面倒そうな表情を浮かべ横から男の兜越しに踵落としを見舞う

 

「あだぁ!!」

 

かなり痛かったようで片手で頭を押さえながら数歩下がる、それを見逃さずロクロウは小太刀を回しながら急接近し一閃

 

「斬!」

 

その剣閃は男の獲物である剣の三分の一を一刀両断した

 

「剣が・・・斬られた!?」

 

男は観念したのか身を屈め命乞いを始める

 

「ああ・・・業魔様・・・命だけは勘弁してくれぇ・・・」

「だから話を聞きなさいって」

 

ベルベットは腕を組み、指を叩いている。相当いら立っているがライフィセットがエレノアを紹介する

 

「怖がらないで。この人は対魔士だよ」

 

ライフィセットに詰まりながらも合わせるエレノア

 

「わ・・・私は一等対魔士のエレノアです。落ち着いて話を聞かせてください」

「確かに対魔士だ・・・けど、なんで対魔士がこんな奴らと一緒に?」

「極秘任務の途中なのです。ここがどこか教えてもらえませんか?できれば港の場所も」

「どこって・・・アイルガンド領のカドニクス島だ。この渓谷を進めば港に出る」

 

男は先の渓谷を指さす

 

「バンエルティアにシルフモドキ(つなぎ)飛ばす(つける)

「お願い」

 

そこにロクロウが気になっていたのか質問する

 

「もうひとつ。刀斬りってのはなんだ?」

「ああ・・・最近、この辺りで暴れてる業魔でな。剣士ばかりを狙って、その刀を叩き斬るんだ。一等対魔士まで何人もやられてる」

「だから“刀斬り”か」

「そいつの刀は異国でつくられた業物でな。盗んでやろうと棲家を探してたら、襲われちまったんだ」

「異国の業物・・・」

 

異国という言葉に続いて業物と来てロクロウが反応する

 

「あんたも気を付けた方がいい。背中の大太刀、刀斬りに見つかったらやばいぜ」

「応、やばそうだな」

「しっかし、業魔相手に盗みを働こうとは自業自爆じゃな」

 

自爆はわざといったね

 

「へっ、バカすぎたよ・・・」

 

肩を項垂れる男にエレノアが近づき諭す

 

「きっと、これを機に足を洗えということです。業魔に殺されなかった幸運な命を、もう悪事で穢さないでください」

「・・・」

 

今この男にはエレノアが聖母マリアか天使に見えたのだろう

 

 

港に出るために渓谷を進む一行、その中でロクロウが一番早く目の前にある以上に気づく

 

「・・・」

「なに?」

 

ライフィセットは皆が止まる中一人だけ疑問符を浮かべるが彼が前を見るとそこには黒い気を纏った武者甲冑が立っていた

 

「敵よ」

 

でしょうね。武者甲冑が刀を抜き構える、ロクロウにはそれに見覚えがあるようだ

 

「その刀、征嵐か」

「異国の業物を振るう業魔・・・あんたが刀斬りね」

 

刀斬りは言葉を発することなく獲物を振りかざし走り始める。ロクロウが前に出て最初の一太刀を小太刀で受け止める

 

「問答無用か!」

 

受け止めている横でマギルゥが術を詠唱する

 

「言語道断蒟蒻問答怨敵退散じゃ!アクアスプリット!」

 

水球が迫る中刀斬りがロクロウを押し返し刀を振り、それを切り裂く

 

「い、一度とならず二度まで~!?」

「崩牙襲!!」

「シェイドブライト!!」

 

口をあんぐりさせて脱力するマギルゥの傍でベルベットの踵落としとライフィセットの聖隷術二段攻撃、これには刀斬りも少し戸惑ったのかベルベットの攻撃は躱すことができたがライフィセットの術が命中する。刀斬りは少し効いたのか僅かにのけ反る。ベルべットは初段が不発に終わろうが関係なく刺突刃で追撃する

 

「はっ!でやっ!!」

 

刀斬りと切り結ぶベルベットだが刃物の熟練度はあちらの方に分があるのだろう徐々に押し返される刀斬りの後ろからアイゼンとエレノアが強襲を掛ける

 

「蹂躙しろ!ウィンドランス!」

「連なれ真紅!霊槍・獣炎!」

 

風の槍と火球が刀斬りの背中辺り大きく体制を崩す。そこでマギルゥが挽回するべく別の聖隷術を唱え始める

 

「ぬぬぬ、このままではこの話で儂の活躍する場面がなくなってしまう!これでどうじゃ!!ブラッドムーン!」

 

ベルベットが気づき後ろに跳ねるように距離をとるとそこに赤い球状の霊場が現れ刀斬りを包み込みダメージを与える。が一連の攻撃が命中しても相手は対して傷ついていない

 

 

「ほげ~」

「なんて固い奴!」

 

灰になるマギルゥに毒づくベルベット、その横からロクロウが前に出て小太刀を構える

 

「まかせろ」

「ちょっと!?」

 

ベルべットが答える間もなく当のロクロウはそんなのお構いなしに刀斬りに斬りかかる

 

「破ぁ!!」

 

霊場が晴れたと同時に刀斬りに一太刀浴びせ尚も斬りかかろうとするが相手も好きにはさせまいと刃と刃をかち合わせる。何度も切り結ぶ中迂闊に攻撃できないベルベット達は周りからそれを見守るしかない、だがウエイトと体格差もあるのだろうかロクロウが大きく弾き飛ばされる

 

「ぐああっ!」

 

地面を滑りながらも素早く立ち上がり顔を上げる、その目はぎらつき業魔の部分である目は赤く光る

 

「・・・斬り甲斐があるぜ」

 

刀斬りが迫るのを阻止すべくライフィセットが聖隷術で援護をする

 

「ロクロウ!」

 

ロクロウが走る横で光弾が通り過ぎ刀斬りを大きく吹き飛ばす。その光景を見たロクロウが立ち止まり後ろを振り向く

 

「邪魔をするな!!」

 

戦いの邪魔をされたロクロウが激昂し今度はライフィセットに斬りかかる

 

「ひっ!」

 

そこにエレノアが槍を構えライフィセットの前に立つ

 

「仲間を殺す気ですか!!」

 

そこにベルべットも加わる

 

「なら、あんたを殺す」

 

その言葉で我に返ったロクロウは先ほどの殺気が嘘のように静まり返る

 

「・・・すまん。つい熱くなった」

 

二人はそれを聞いて武器を収める。ロクロウは刀斬りが去った方角を見る

 

「知っている奴なのか?」

「刀だけな。あれは“征嵐”って刀だった」

 

アイゼンが横目での問いかけにロクロウが答える

 

「セイラン・・・?」

 

マギルゥもそれについて何か知っているようだがベルベットが急かす

 

「なんだっていいし、刀に用はないわ。港に急ぐわよ」

 

 

「ライフィセット、さっきは悪かったな」

 

ロクロウが先ほどの事でライフィセットに謝罪する

 

「僕・・・ロクロウがやられると思って・・・」

「わかってる。あれは、お前の“意志”だったんだよね」

「・・・だと思う」

「ならいい。俺も『手を出すな』とは、はっきり言わなかったからな。次にああいうことがあったら、必ず言う」

「助けちゃ、いけないの?死ぬかもしれないのに・・・」

「そうだ」

「・・・どうして?」

「俺にもよくわからん」

「えっ?」

「俺には、どうしても斬りたい奴がいる。そいつを斬りたい、そいつに勝ちたい。そのために剣の腕を上げなきゃならん」

「勝ちたい人・・・」

「剣の勝負でな。あいつに勝つためなら、なんだってする。どれだけ血を流そうが、命を落とそうが、人の心をなくそうが。そう思い続けてるうちに本当に人間じゃなくなっちまった」

 

意地故に業魔になったロクロウ、そこまでしてなぜ勝ちたいのかライフィセットが聞き出す

 

「・・・なんで、そんなに勝ちたいの?」

「はは、それもわからん。業魔だからそうなのか、そんなだからごうまになっちまったのか・・・とにかく、命より大事なことなんだ」

「命・・・よりも・・・」

「けど、助けてくれたことは恩にきるよ。死んじまったら、あいつを斬れないからなぁ」

「う、うん・・・」

 

ライフィセットが先に歩いていくが後ろからエレノアがロクロウに口を挟む

 

「今のが命の恩人にかける言葉ですか!」

「なにがだ?俺はホントのことしか言ってないぞ。それに、なぜお前が怒る?」

「おかしいとすら思わないとは・・・やはり業魔ですね」

「ああ、業魔だ」

「・・・」

 

会話がかみ合わない

 

 

カドニクス港に出るためにはヴェスター坑道を通る必要がある、港と行動は直接線路が繋がれており坑道から産出された鉱石資源を速やかに港へ運び入れられるような構造になっている。今ベルベット達はその行動に入るようだが・・・

 

「むむう~、きいた覚えがあるんじゃがのう・・・」

 

ロクロウとアイゼンの後ろで必死に思い出そうとするマギルゥ、そのまた後ろのライフィセットがエレノアに先ほどの事で感謝を述べる

 

「・・・エレノア。さっきは、助けてくれてありがとう」

「私は・・・命令通り、あなたを守っただけです」

 

詰まりながら答えた言葉に命令というフレーズにライフィセットはまだ苦手意識があった

 

「命令通り・・・」

「もちろん、命令されなくても誰かが業魔に襲われていたら助けますけど」

「おきれいなことね」

 

ベルベットの煽りにエレノアが文句の一つでも返そうとした時マギルゥが大きな声を上げる

 

「思い出した!」

「な、なにをよ?」

 

ベルベットエレノアとライフィセットが驚く

 

「世にも悲しい征嵐の由来をじゃよ。さ~て、お立ち合い!それは、いつ、だれが打ったのか、知る者はおらぬ。じゃが、誰もがその切れ味を認める太刀があった。その刃風は猛獣の如く號び声をあげ、山をも吹き飛ばす嵐を呼んだ。この世にふたつとないその太刀を、人は神の刀――神刀と讃えた」

「神の刀・・・それが征嵐ですか?」

 

エレノアの質問にマギルゥが制する

 

「話はここからじゃ。さような神刀に魅せられた男がおった。名はクロガネ。稀代の才を持つ刀鍛冶じゃ。そやつは心血を注いで神刀を超える刀を打とうとし、自らの刀に“征嵐”の名を与えたという・・・『號ぶ嵐を征する』という意味じゃな」

「すごい刀はできたの・・・?」

 

ライフィセットの質問にマギルゥが首を横に振る

 

「いいや。クロガネは何十度も神刀に挑んだが、その数だけ征嵐は折られ、砕け散った。絶望したクロガネは、神刀の持ち主に首を刎ねられたとも、自ら命を絶ったとも言われておる。もう何百年も昔の話じゃ。じゃが、奴の神刀への恨みは征嵐と共に今も生き続けているとかいないとか・・・」

「何百年も続く恨み・・・か」

「よくある怪談話ですね。さっきの刀も、何者かが銘をマネただけかもしれません」

「かもの。じゃが、もしあれが本物の征嵐なら、儂らは枕を高くして眠れんぞ」

「なんで?」

 

そこまで聞いていたロクロウが口を開く

 

「クロガネが倒したかった“神刀”こそ、俺の生まれたランゲツ家に代々伝わる太刀――“號嵐”だからな」

「・・・」

 

3人は黙ったままだ

 

「野郎が、また襲ってくる可能性があるわけだな。急ぐぞ」

 

アイゼンが皆を急かし坑道に入っていった

 

 

坑道内部は人はおらず寂れている、嘗てここで採掘で人がいたであろうがあちこち痛み、朽ち、繁栄と衰退を思わせる

 

「・・・ライフィセット、ちょっと」

「なに・・・?」

 

ベルべットが小声でライフィセットを呼び止める

 

「命令じゃなくても助けるなんて言葉、真に受けちゃだめよ。対魔士は、聖隷をモノのとしか思ってないんだから」

「でも、助けてくれたのは本当だから・・・」

「恩を感じるのは仕方ないけど、あんまり嬉しそうな顔しないの」

「・・・ごめん」

「謝って欲しいわけじゃなくて・・・あいつには、こっちの警戒が鉄壁だって思わせておきたいの。いくらあんたと親しくなっても、あたしの方が優先だって意識させたいわけ」

「ええっと・・・どうすればいいの・・・?」

「つまり・・・わかりやすくいうと・・・あたしを一番、エレノアは二番にしなさいってこと」

「・・・わかった。ベルべットが一番で、エレノアは二番」

「そう、あたしが一番・・・って、なに言ってるのよ、あたし・・・」

「大丈夫。ちゃんとわかったよ?」

「そうじゃなくて・・・」

 

・・・これ要約するとただ単にエレノアに嫉妬してるだけなんだよねこれ

 

 

奥に進むと金属音のぶつかるおとが坑道内に響く。ベルベット達がその音の源に急ぐと先ほどの武者甲冑の刀斬りと刀を持った一人の男とその横に猫が一匹がいた。刀斬りのすぐ傍に折れた刀が落ちている。ロクロウがその男を見ると目つきが変わる

 

「む、無念・・・」

 

刀斬りが言葉を漏らす

 

「おいおい、おもしれぇ業魔だなぁ!刀より体の方が硬ぇってか」

「こいつは・・・?」

 

ベルベットの後ろでエレノアがその人物が誰なのかすぐに分かった

 

「シグレ様!聖寮に二人しかいない特等対魔士です」

「特等・・・メルキオルと同格か」

 

アイゼンの声に気づいたのかは分からないがシグレと呼ばれた男がこちらを向く。中井さんも大変だよね先端恐怖症なのに刃物キャラの役多くて

 

「おう、エレノアじゃねぇか。なんだお前、業魔に捕まったのか?それとも裏切ったか?」

 

シグレは鞘に収めた刀で肩を叩きながらエレノアに聞き出す

 

「わ、私は――」

「ま、どっちでもいい。好き勝手やってる俺が言えた義理じゃねぇわな」

 

シグレが背後の地面に刺さっている刀身を横目で見る、しっかし、今日はアタリだった。まさか“征嵐”に出会えるとは思わなかったぜ」

 

シグレの傍にいた猫が話しかける

 

「シグレ、なんかすっごく睨んでる子がいるわよ。無視しちゃかわいそう」

「はっはっは、悪ぃ、悪ぃ!昔から弟をイジメちまうのがクセでな。なぁ、ロクロウ」

「弟!?」

 

ベルベットの言葉に皆の視線がロクロウに集まる

 

「変わらないな、シグレ」

「バカ野郎!メチャクチャ強くなってるっての。そっちこそ相変わらず、俺を斬るなんてできもしないことを考えてんのかぁ?」

「ロクロウが勝ちたい人って・・・お兄さんなの!?」

 

驚くライフィセットの横で小太刀を構えるロクロウ

 

「こっちも、あの時の俺じゃないぜ」

 

ロクロウの業魔の部分の目が光る

 

「おおっ!?お前、業魔になったのか?そりゃあ、おもしれぇ!」

 

聖隷の猫が光となってシグレの中に入る

 

「だがよ、結果まで変わるかな?」

 

シグレが鞘から刀を抜く

 

「おれの號嵐(しんうち)に、號嵐(かげうち)を折られてションベン漏らした“あの時”とよ」

 

言葉が終わると同時にシグレが上段から振り下ろす。その剣気が空気を震わせ嵐のように吹き荒れる。ロクロウがその圧に怯むことなく立ちふさがる

 

「こいつは俺が斬る。ライフィセット、今度は手を出すなよ」

「・・・う、うん」

 

ロクロウがそれを聞いてシグレに向かって走り出す

 

「破ァ!!」

「おっと!」

 

號嵐と小太刀がぶつかり合い火花を散らす

 

「何年ぶりだ、お前と斬り合うのは?」

「死んで後悔しろ!あの時、俺を殺さなかったことをな!」

 

お互い距離を取り先にロクロウが仕掛ける

 

「斬っ!」

 

初段の突きを半身で躱されるがすかさずもう片方の小太刀で喉を掻っ切ろうと振るうが

 

「おらよ!」

「ぐっ!?」

 

シグレが號嵐の柄頭で下から弾いていとも簡単に防がれてしまう。ロクロウが空いていた小太刀を振るい脇から攻めるが

 

「遅ぇって」

 

腕を掴まれ捻り上げられ投げられる

 

「ぬおおっ!?」

 

受け身を取り立ち上がり前を見た瞬間そこには號嵐を振りかざし斬りかかろうとするシグレが眼前に迫っていた

 

「おいおい!こんなもんかよ?もっと攻めて来いよ!つまんねぇよ!」

「くっ!!」

 

シグレが上段の振り下げや切り上げ、横薙ぎの斬撃でロクロウを追い詰める。ロクロウは小太刀で嵐のような攻撃をなんとか受け流すのが精いっぱいだ。

 

「なんだよ前とは違うんじゃなかったの・・・かぁ!!」

「ぐわああ!!」

 

ひと際強い攻撃にロクロウが耐え切れず吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。ここまでされたのにも関わらずロクロウはすぐさま立ち上がる。まったく闘志は衰えていない

 

「ほぉ、あれ喰らって立ち上がるか、さっきの言葉は嘘じゃあねぇようだな」

「あぁそうだ!お前を斬るまで何度でも立ち上がってやるさ!!」

「さすが業魔だ、悪くねぇ」

「うおおおッ!!!」

 

ロクロウとシグレ、両者が走り出す。お互いの獲物が一閃でかち合い火花が散る、そこから二閃、三閃と続きシグレの横薙ぎをシグレが躱し両者が振り向きざまにもう一度斬り合うもロクロウの方が大きく下がる。シグレが號嵐を振り上げ、持ち直したロクロウが小太刀を交え今までで一番の金属音が響く。お互いの刃が拮抗するがシグレが押し出しロクロウが弾き飛ばされる

 

「ぐああっ・・・!!」

 

ロクロウが地面を跳ねながらも止まり顔を上げるがそこにシグレの號嵐が目の前に突き付けられる

 

「だが、ここまでだな」

「ロクロウ!!」

 

ライフィセットが叫ぶが助けてはいけないと言われている側ら、代わりにエレノアが槍を構えて走り始める

 

「え・・・体が勝手に・・・!?」

 

そこに空気を引き裂いてロクロウの片方の小太刀が飛びこんできてエレノアの槍を弾く

 

「邪魔をするなっ!!」

 

激昂したロクロウが己の背負う大太刀を抜く。が、その刀身は三分の一もない

 

「勝負はこっからだ」

「ほう・・・今度は折れねえか」

 

號嵐を担ぎ隣の猫の聖隷をだす

 

「今日はここまでだ」

 

シグレの宣告にロクロウが聞くはずもなく走り出す

 

「シグレェッ!」

 

シグレが號嵐を向け制する

 

「はやるな。今のお前が強えぇ刀を持ったら、面白ぇと思ったのさ。そこの爺さんに打ってもらえ、で、もういっぺんやろうや」

「爺さん・・・?」

 

ロクロウが刀斬りを見る

 

「その業魔はね、クロガネっていうのよ」

「征嵐の刀鍛冶!」

 

猫の聖隷の言葉に驚くライフィセット。無理もない、何百年も前の刀鍛冶が在命しているのだから

 

「この先のカドニクス港で待っててやる。俺を倒さねぇと島からは出られねぇぜ」

「勝手なことを!」

「気に食わなきゃ、かかってきな」

 

舌打ちするベルベットにシグレが煽り號嵐を横に振るう。その剣圧にベルベット達は動けない

 

「くっ・・・!」

「はっはっは!せいぜい精進しろよ、業魔ども!」

 

シグレが後ろ手に手を振り港の方へ歩き出すがそれをエレノアが止める

 

「シグレ様、私は特命を――」

 

シグレは含みを持った顔を浮かべエレノアの言葉を遮る

 

「ああ、エレノア。お前マジで裏切りやがったんだな。次に会ったら叩き斬る」

「う・・・」

 

そして今度こそシグレが立ち去る

 

「野郎、まだ本気を見せてないぞ」

「けど、全員でかかれば・・・」

 

毒づくアイゼンにベルベットが提案するがそれをクロガネが止める

 

「無駄だ。だが策はある」

「どんな手だ、クロガネ?」

「・・・ついて来い」

 

ロクロウの質問にクロガネは別の方へと進む。ロクロウもそれについて行く

 

「ロクロウ・・・」

 

ライフィセットが呼び止めるが本人はそのまま奥へと進んでいった

 

「ベルベット、ロクロウを追わないの?」

「・・・あいつの戦いよ。あたしには関係ない」

「だが、船着き場にはシグレが陣取っている。イカれた野郎だが、俺たちを見逃すようなマヌケとは思えん」

「その通りです。シグレ様は、剣技ならアルトリウス様をも凌ぐ最強の剣士ですから」

 

やたら得意げに話すエレノア

 

「ネコに睨まれた袋のネズミじゃなー」

「クロガネは、なにか考えがあるみたいだった」

「・・・わかった。それを聞いてみましょう」

 

ライフィセットの説得に観念したベルベットは一同クロガネとロクロウは進んだ方へ足を向けた

 

 

第19話 終わり

 




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