テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜   作:スルタン

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続いていきます。今回はそれなりです


第12話

 

管理室から入手した鍵を使い、海門を開く装置へと続く扉を開ける

 

「よし、開いた!」

 

ロクロウの声とほぼ同時に遠くから大きな音が響く。少年は思わず体を縮める。ベルベットが音の正体を聞く

 

「今のは?」

「バンエルティア号が近づいている合図だ、急ぐぞ!」

 

アイゼンが急ぐよう促し、先に進む

 

「わかった。とっとと海門を開けるわよ」

「うん、とっとと!」

 

少年はベルベットの言葉の一部を真似て後を追う

 

「あの少年、だいぶ話すようになったじゃないか」

「ええ、ベルベットさんのお陰ですよ」

 

ロクロウの言葉にケンが答え、二人も後に続いた。やがてそれらしい部屋を見つけ中に入る。実に大きなレバーがある、それだろう

 

「これが門を開ける仕掛け・・・」

「一つ目の、だな」

 

少年が呟く、アイゼンが付け加える

 

「海門は巨大な二枚の扉だ。開ける仕掛けも左右に二つある」

「なるほどな」

 

ベルベットが装置に近づきレバーを操作する。一見重そうだがすんなり動いた。歯車が多い程負荷が軽くなるがこれもその類だろう

 

「よし!もう一つの仕掛けを探すわよ」

 

ベルベット達は装置のある部屋から屋上へ梯子を使い反対側のもう一つの装置を見つけ操作する。巨大な鉄の扉がゆっくりと開き始める

 

「これで全開!」

「バンエルティア号と合流する。船着場に降りるぞ」

 

一行は合流ポイントに向かうためもう一度屋上に上がりまた反対側へ進む。だが全員が進む中屋上の真ん中にアイゼンが殴り飛ばした王国兵がいた。だが様子がおかしい

 

「好きにはさせんぞ・・・ここはワシの・・・」

 

全員が身構える。正確には四人だが。少年はベルベットから受け取った羅針盤を見ながらそのまま歩いていた。転んだら危ない、というかこういう状態でそこまでできるのは大したものである。ポ◯モンGOでもあるまいに、それほど好きなのだろう

 

「ワシの要塞だああっ!!」

 

王国兵が突如業魔に変わる。少年が漸く気付くが遅すぎた。業魔が少年に向かって体当たりを仕掛ける、少年は咄嗟のことで反応できない。ベルベットが少年の腕を掴み、引き寄せる

 

「ああっ・・・!」

 

少年の手から羅針盤が離れてしまう。転がる羅針盤に業魔が通り過ぎる。業魔は止まりベルベット達の方を向き唸り声を上げる

 

「ちっ!こいつも業魔病に!」

「ふん!だが前より随分マシだ」

 

ベルベットの舌打ちにアイゼンは皮肉たっぷりに付け加える。業魔、ガーディアンはベルベット達ににじり寄る

 

「羅針盤が」

 

少年は己が持っていた羅針盤の心配をしている。ベルベットとロクロウがガーディアンに突っ込み刺突刃と小太刀で各々斬りかかる、が刃がガーディアンの前足に当たった瞬間一寸も切り裂くことも出来ずに弾かれる

 

「くうぅ!」

「うおっ!」

 

二人は反撃と言わんかの如く足を振り上げるガーディアンからすぐ様飛び退く。二人のいた場所に振り下ろされた足がめり込み大きなへこみができる

 

「なんて硬さ・・・」

「くぅ〜手が痺れるぜ」

 

二人は腕を抑えたり手を振りながら感想をいう。どうやら相手は細かな動きは出来ないもののパワーと防御に優れているようだ。だが相手はもっぱら前足で防御している。異常に肥大化しているのもその為だろう。ケンは少年に指示をする

 

「なるべく頭や胴体を狙って見て。多分頭も硬いだろうけど足程じゃなさそう、出来れば腹も見せてくれればいいんだけどね」

「う、うん・・・」

 

少年は羅針盤のことが気掛かりのようだ

 

「後で一緒に探そう。今はこの事態を打開する事に専念しないと」

「・・・うん!」

 

アイゼンがベルベットとロクロウの間を駆け抜け隙をついてガーディアンの頭に拍子を叩き込む、正拳から繰り出される圧縮された空気が打ち出され、直撃するが少し怯む程度であまりダメージがない。ダメ押しに拳と蹴りを叩き込むが前足で塞がれる

 

「ちぃっ!」

 

アイゼンがバク転して距離を取る

 

「何か策はないか・・・」

 

アイゼンが静かに思案する、ロクロウが一太刀入れようとするがガーディアンがすかさず足を引っ込め防ぐ、刃が通らない

 

「ぐっ!これじゃ埒が開かんぞ!」

「であぁ!!」

 

ベルベットが間髪入れずに頭に向けて紅火刃で斬りかかる。炎を纏った刃が頭部を捉えるがアイゼンと同じく怯む程度で致命打とはならない

 

「これでもダメか・・・うあっ!?」

 

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるベルベットにガーディアンの前足が横ぶりに振るわれベルベットを殴り飛ばす。ベルベットはすぐ様空中で体制を整え着地する

 

「大丈夫か!?ベルベット!」

 

ロクロウが声をかける

 

「たいした事ないわ。でも、少しキツイわね・・・」

「あの固い防御をなんとかしないとな」

「・・・一つだけあるわ」

「そうなのか?」

「でも、それにはかなり近づかないと意味がないの。如何にかして隙を作らないと」

 

ベルベットの"空破絶掌撃"なら硬い装甲を破る事ができる。だがその為には敵に接地する必要があり危険度が高まる。そうしている間にもアイゼンと少年が聖隷術でガーディアンに応戦している

 

「なんとか反撃の糸口を見つけないとな」

「・・・僕が攻撃して隙を作りましょう。あの敵、さっきから胴体を庇ってるみたいですからあそこなら皆さんの攻撃が通るはずです」

「何でもいいから早くして。船が来るまで時間がないのよ」

 

ロクロウが呟き、ケンが名乗り出、ベルベットが急かす

 

「では行きます」

 

ケンが意を決してガーディアンに向かって進む。ガーディアンもケンに気付き躙り寄る。ケンは止まり両手を振りかざしてウルトラショットを連続で放ち始める

 

「ふん!はっ!」

 

片手でのウルトラショットは両手で撃つよりパワーは下がる。尚更連射する物なら威力はかなり下がる、ガーディアンは前足で防御し耐える。ケンは尚も放ち続ける

 

「ケンの奴大丈夫か?あれじゃ足止め程度にしかならないぞ?」

「一体何するつもりなの?」

 

ロクロウとベルベットはケンの行動に疑問を抱くガーディアンは光弾を防ぐのに夢中で横がガラ空きだ。

 

「そういう事ね!」

 

ベルベットが気付く。ケンは攻撃を止めガーディアンの横に素早く回り込む

 

「これなら!」

 

ガーディアンの横っ腹にドロップキックをする。前しか見ていなかったガーディアンはまともにくらい横倒しになる、一番の弱点であろう腹が剥き出しになる

 

「今です!」

「白黒混ざれ!シェイドブライト!」

「蹂躙せよ!ウィンドランス!」

 

螺旋の光弾と風の矢が胴体に命中するガーディアンは初めて大声を上げる。それをロクロウは見逃さない

 

「さっきのお返しだ!風辺剣!」

 

距離を詰め拗らせた腕を高速で回しながらの一突き。衝撃波を生み出しそれがまた胴体に刺さる

 

「行け!ベルベット!」

 

ロクロウが声を上げ、ベルベットがすかさずガーディアンの頭に拳を打ち付ける

 

「くらえ!空破絶掌撃!」

 

腕から刃が勢いよく飛び出し頭に直撃する。ガーディアンが声を上げながら大きく仰け反る。ベルベットがトドメにかかる

 

「容赦しない!」

 

ベルベットが跳躍し、右足を回し上げそれが赤く光る。振り上げた足を下ろしガーディアンの頭を荒々しく叩きつける、反動で浮き上がる

 

「消えない傷を、刻んで果てろ!」

 

追撃する為自身も飛び上がり刃で斬り裂き地面に叩き落とす。トドメにベルベットは業魔手を繰り出す

 

「リーサル・ペイン!!」

 

ダメ押しの業魔手の一撃が決まり、ガーディアンが沈黙した。

 

 

戦いが終わりそれぞれ構えを解く。倒したガーディアンを尻目にベルベットとロクロウが端に近づき下の様子を確かめる。下は業魔が我が物顔で闊歩している。少年とケンは一緒に羅針盤を捜している

 

「船着場は業魔の巣だ。あれじゃ船に乗り込まれちまうな」

 

ロクロウがそれを言った直後、また大砲の音が響く

 

「ちっ時間がない」

 

ベルベットは顎に手をやり何か考え、アイゼンに聞く

 

「アイゼン、船に止まらずに海門を抜けるよう指示できる?」

 

ベルベットの考えにロクロウが質問する

 

「それなら船は助かるが、俺たちはどうする?」

 

それに対しベルベットは

 

「この下を通る船に飛び移る」

 

大胆である

 

「お・・・おう!?」

 

そう言われて驚きの余り言葉が出ないロクロウ

 

「それしかないでしょ。アイゼン、何とか合図を--」

「必要ない。バンエルティア号は海門を突っ切る」

「伝えなくても?」

「俺も同じ策を考えた。アイフリード海賊団の流儀だ」

 

アイゼンはそれを言うと後ろを振り返りながら口角を上げる

 

 

程なくしてバンエルティア号が見えた。船は波を立てつつ海門を進む

 

「本当に真っ直ぐ来た!」

「こっちも行くわよ!」

 

 

ベルベットが船に乗り込む為反対側へと移動を始める、ロクロウとアイゼンもそれに続く。その横で少年とケンは今だに羅針盤を探している

 

「おぉ・・・無事で済むかな?」

 

下を見ながら呟くロクロウ。恐怖なのかあるいは楽しみなのか、恐らく後者だろう

 

「死神に保障してほしいか?」

 

その隣でアイゼンがいじったらしく言う。そんな中少年は地面を見ながら捜し。ガーディアンの足元に落ちている羅針盤を見つける。少年はすかさず走り寄ると同時にロクロウとアイゼンは飛び降り、ベルベットは寸前で気付く

 

「ちょっ、なにを!?」

 

少年は羅針盤を拾い上げ安心した表情を浮かべるが突然ガーディアンが動き出し驚愕に変わる

 

「ひ・・・!?」

 

ガーディアンが足を振り下げ少年を叩き潰そうとする。少年は横に跳びのき躱すが間髪入れずにもう一撃、風圧で少年の体は宙に吹き飛ばされる

 

「うわぁぁぁ!!」

 

少年と羅針盤は一緒に吹き飛ばされるが必死に手を伸ばし羅針盤を掴む。ベルベットは少年の元へ駆ける。彼女の脳裏には三年前、祠に落ちて行く弟の姿が浮かんだ。ベルベットは自然と叫んだ

 

「ライフィセット!!!」

 

ガーディアンが前を通り過ぎようとするベルベットに足を振り上げた瞬間横から砲弾が飛来しガーディアンに直撃する

 

「うあああぁ・・・」

 

落下する少年の手をベルベットが掴み左手でヘリを掴み壁に足をかける

 

「まったく、あんたは!」

「ごめんなさい・・・」

 

怒っているというより世話がやけるという雰囲気のベルベットと謝る少年。ベルベットはその言葉を聞き穏やかな表情を見せた。

 

「大当たりぃ〜〜〜っ!!」

 

バンエルティア号からマギルゥの声が響く、なぜか大砲の横で大はしゃぎ。ロクロウとアイゼンがロープを滑り降り甲板に着地する

 

「さっすが儂じゃのー♪」

 

撃ったのはマギルゥだった

 

「さっさと行くわよ」

「うん!」

 

ベルベットはヘリに力を込める。がその時ヘリが突然崩れる、先ほどの戦いであちこち損傷していたのだ

 

「しまった!?」

「うわっ!?」

 

ベルベットと少年はそのまま落下を始める。業魔手に変え壁を

引っ掻こうにもとても間に合わない。祠でアルトリウスに左腕を切断され落ちて行く瞬間と重なる

 

(そんな・・・!あの時と同じ・・・こんなのって・・・)

 

ベルベットはスローモーションで離れて行くヘリを見つめながら心の中で叫ぶ。その時逆光の中から一本の腕が伸びベルベットの左腕を掴む

 

「間に合った」

 

そこにはケンがいた。ベルベット達とは離れた所で探していたのだ

 

「あんた・・・」

「大丈夫ですか?今引き上げます」

 

ケンはベルベットを少年ごと引き上げる

 

「さぁ、急ぎましょう。船が離れてしまう前に」

「えぇ」

 

三人は走って船の方に向かう。幸いにも間に合う距離だ

 

「行くわよ」

 

ベルベットは少年の手を取り飛び降りる

 

「うわあああ〜〜〜!!」

 

少年は叫び声をあげる。ケンも後に続く

 

(あれ破けないよな・・・)

 

そんな事を心の中で思いながら飛び降りる。三人はバンエルティア号の天幕に落ち、無事帰ることができたのだった

 

 

程なくして海門を抜けたバンエルティア号の甲板でベルベットと少年は息を切らせて膝をついていた。ケンは仕切りに腕や足首を回している

 

「ふう・・・」

 

ベルベットは息を整え立ち上がる

 

「お見事!」

 

ベンウィックが言う

 

「まずは命の恩人への感謝が欲しいのう?」

 

マギルゥの言い分にベンウィックのツッコミが入る

 

「いやいや、触るなって言ったのに大砲いじって暴発させたんでしょ!」

「そ〜じゃが、あれはいい暴発じゃよ〜」

 

結果オーライとばかりのマギルゥ。面々は呆れたと言わんばかり仕草を見せた。少年はベルベットの方を向いて頭を下げる

 

「ごめんなさい」

 

ベルベットはやれやれという感じの仕草をし、片膝をついて羅針盤を持った少年に目線を合わせる

 

「ちゃんと持ってなさい。そんなに大事なら」

 

ベルベットは言い聞かせるように言う。アイゼンが一歩出て手を出す

 

「貸せ。進路を出す」

 

少年はアイゼンを見るとそっぽを向いて拒否する。アイゼンは一瞬驚くも直ぐに笑みに変わる。彼の意志を見たのだろう

 

「・・・なら。お前が羅針盤を見ろ」

 

その言葉に少年の顔に笑みが出る

 

「うん!」

「ただし、読み間違えたらサメの餌にするからな」

「!?」

 

アイゼンの言葉に固まる少年

 

「しっかりね」

 

ベルベットが鼓舞する。そんな中少年はベルベットに聞く

 

「あの・・・『ライフィセット』って?」

 

ベルベットは自然と叫んだため気にしてなかったのだろう。改めて言われて少し口ごもりながらも答える

 

「・・・名前よ、あんたの」

 

少年はそれを繰り返す

 

「僕の名前・・・ライフィセット」

「いい名前じゃないか」

 

ロクロウが賛同する

 

「マギルゥほどじゃないがのー」

 

一言余計なのは実にマギルゥらしい

 

「海峡を抜けるぞ。進路を取れ、ライフィセット!」

 

ライフィセットに指示を出すアイゼン

 

「うん!進路は・・・ローグレス!」

 

仕事を任されたライフィセットはローグレスの方角に指をさした

 

 

 

 




通算UA1万越え、誠にありがとうござます。こんな駄文を読んでいただける事に深い感謝を申し上げます。これからも執筆頑張っていこうと思います

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