テイルズオブベルセリア 〜争いを好まぬ者〜   作:スルタン

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今回はヘラヴィーサから脱出する直前と直後のお話で短いですが今回で一区切りつけて見ます


船の上で

 

ベルベット達は出航した船の上で残ったケンを遠くから見ていた。

 

「おいダイル、やっぱり船を戻せ!このままじゃケンがやられちまうぞ!」

「すぐには無理だぜ!時間が掛かりすぎる!」

 

ロクロウがダイルに指示をするが拒否される。今の状態で引き返すのは命取りだし船のスピードも限界まで遅くしてある

 

「あやつ一体何考えとるんじゃ!?一等対魔士二人相手に敵うわけなかろうに!」

「・・・あのバカ!!」

 

マギルゥの言葉にベルベットが吐き捨てる。あの二人に加えて二等対魔士の増援が来れば幾らケンでもどうなるかわからない。その時ケンが両手を構え、それに反応したエレノアが槍を構えケンに突っ込む。ケンが放った光線がエレノアに向かう

 

「お、ケンのやつ手から何か出しおったぞ?見たことない術じゃの」

「あいつ・・・!」

「まずいぞありゃ!」

「何がまずいんかえ?」

「あの技は目の前で見たからな、あれはあくまで火を消し止める技だ。攻撃するためのものじゃない」

 

ベルベットとロクロウは知っている。あの水色の光線だ、あれは攻撃ではない。それに気付いた時光線は真上に曲がり急上昇する。エレノアの槍がケンを刺し貫く。後ろ姿しか見えないが刺されたのは確かだ。だがエレノアの後ろから巨大な火球が迫ってくる、テレサの誤射だ、その時ケンがエレノアを庇うように素早く移動し火球を背中で受ける

 

「はぁ!?あやつはな〜にしとる!」

(なんで涙目対魔士なんか庇って!)

 

ケンが放った光線は空中で弾け光の粒子が火を消し止めて行く。槍を引き抜き何かを話した後ダイルが操船する船に向かって走り始める。

 

「あやつまさか本当に水の上でも走る気かえ?」

「いや、それはないだろう」

 

マギルゥの冗談に冷静に返すロクロウ。ケンが足場ギリギリまで走りジャンプする。あまりの衝撃に足場が吹き飛ぶ、ケンが近づいてくる。船に到達する寸前に体勢を整え腰の短剣で船体を突き刺ししがみつく

 

「あんちゃんを引き上げてくれ!手が離せん!」

「承知!」

 

ダイルの指示にロクロウが答える。ロクロウがロープを掴みケンのところに向かい垂らす

 

「ケン!これに捕まれ!」

「すいません。ありがとうございます」

 

ケンがロープをつたいよじ登る、ロクロウも引っ張り手助けする。

 

「あんちゃん大丈夫か?かなり酷い怪我だぞ?」

「まぁ・・・流石に背中の攻撃は痛かったですよ・・・」

 

ケンはそう言いながら手近な箱に座る。少しこたえたようだ、声に少し元気がない

 

「ケン、見せろ」

「・・・」

 

ロクロウの声でケンは上着全部とボディースーツを破りながら脱ぎ捨てる。腹部はエレノアの槍が深々と刺さった痕とと背中は酷い火傷を負っている。ここで今まで黙っていたベルベットが少年と手を繋いだまま近づいてくる

 

「・・・あんた、一体どういうつもり?」

「と・・・いうと・・・」

「さっきの行動よ、やろうと思えばあの涙目対魔士を盾がわりにする事が出来たはず・・・なのにあんたはあろう事か抵抗もせずに槍を受けた。そしてあの女の術から彼女を庇った。なんであんな事をしたの・・・答えて」

 

それを聞いたケンは少し疲れた声で答える

 

「・・・まぁ、対峙した時抵抗しないと言っちゃいましたからね。それにわざと刺される事で精神的動揺を起こして隙も作れましたから・・・ただあの人の攻撃の誤射は自分でも予想していませんでした・・・無意識で庇ってました」

 

ロクロウから応急処置を受けながら話す。ベルベットはもう一つ聞く

 

「ついでに聞くけど。なんで火を消したの?」

「確かに・・・あの商戦組合がした事は良くない。ですが、あの街には普通に暮らしている人をいる。全てを燃やし尽くしたらあそこに住む人たちが露頭に迷う事になる・・・今回の騒ぎで遅かれ早かれ因果は自分に返ってくるという事を思い知らせただけです。彼らも分かった事でしょう」

「・・・わかったわ、この話はこれでおしまいね」

 

ベルベットはそう答え質問を切り上げる。少年はベルベットと手を握ったままケンの顔を見る

 

「・・・」

「・・・?」

 

それをよそにロクロウとマギルゥはケンの傷を診る

 

「こりゃ酷いな・・・治るには時間が掛かるぞ」

「うへ〜・・・こりゃ今まで見た中で一番酷いの・・・」

「そういえばおまえダイルにやったようなアレは使えないのか?」

「・・・すいません。自分には使えないんですよ、アレ」

 

二人の言葉に反応したのか手を繋いだままケンの背中に回る

 

「ちょ!?ちょっとあんた!?何してんのよ!」

 

ベルベットをよそに片手をケンの背中に翳す。白い光が傷を照らす

 

「・・・お・・・」

 

光が治ると火傷が治っていた。次に腹部に翳す

 

「おお・・・これは」

「聖隷は命令なしには動かんはずじゃがの、坊はやっぱり変わっとるの、それにしても・・・ほえーこれほどまでとわの」

 

腹部の刺し傷も光が治ると塞がり治っていた

 

「・・・ごめんなさい・・・傷痕は・・・治せなかった」

 

途切れ途切れに謝る少年。ケンは優しく少年の肩に手を置く

 

「いや、ありがとう助かったよ。借りができてしまったね」

「・・・」

 

ケンは少年にお礼を言う。相変わらず黙ったままだが

 

「これまてケン、少し休んだらどうじゃ?怪我は治ってもお前さんだ〜いぶ疲れとるようじゃし?なんなら添い寝してもええんじゃぞ?」

「・・・なんかマギルゥさんが言うと怪しく聞こえますけど、ここは大人しく聞きますよ。あと添い寝は必要ありませんよ」

「うむ♪素直なやつはいろんな意味で好きじゃぞ♪」

 

ケンはダイルに預けていたリュックから替えの服を取り出し船内に入っていった

 

 

 

 

 




かなり短い文章の投稿ですがいかがでしたでしょうか。ご意見ご感想お待ちしております

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