バカとテストと緋想天   作:coka/

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第6話

時は遡り、教室前での会話。

 

「あ、そいういえば天子。お前、点数ってあるのか? テストの名前消して0点なんだろ?」

 

試召戦争をやろうと決め、軽く話し合いをしていると、急に雄二が聞いてきた。

 

「ああ、そのことなら一応問題ないはずよ? 名前を消したのは苦手科目()()だから」

「ほう、なら苦手科目の点数は残ってるわけだ」

「ええ、そうね。他の科目に関しては、一回戦争が終われば補充できるし」

「そうだな。んじゃ、最初は天子の苦手科目を主体にして行くか」

「ちょ、雄二。それは流石に天子が厳しいんじゃ?」

 

私の負担を心配したのか、そんな事を言ってくる明久。

 

「大丈夫よ明久。今回私は前線には出ないから」

「え、そうなの? じゃあ、良いのかな?」

「いいんだよ。んじゃ、クラスの連中を焚きつけるとするか!」

「「うん(ええ)!」」

 

 

 

 

 

 

時は戻り、現在。

 

「『試獣召喚(サモン)』」

 

そう言い、私は自分の召喚獣を召喚した。

 

魔法陣と共にデフォルメされた私そっくりな召喚獣が現れる。

 

服装は桃と葉っぱのついた黒い帽子と白のブラウス、空色のロングスカートにロングブーツといった普通のものだ。

ブラウスの一部は、エプロンや前掛けのようになっていて、そこに虹色の飾りがついている。

また、胸のところには赤色、腰には青色の大きなリボンがあるのも特徴的だ。

そして、肝心の武器だが……

 

 

 

その小さな手には何も握られてはいなかった。

 

 

「はっ、何だその貧相な装備は! 武器も()ぇとか、そこの『観察処分者』より酷いじゃねぇかよ! て、ことはだ、点数も相当低いってことだよなぁ?」

 

目の前の男子生徒は私の召喚獣を見てそんな事を言う。

別に事実なので私は何も言い返さない。

点数のこと以外は。

 

「そう思うんなら、さっさと貴方の召喚獣を召喚して、確認してみればいいじゃない」

「はん、そうさせてもらうさ! 『試獣召喚(サモン)』っ!」

 

彼が自分の召喚獣を呼び出すと、既にその頭上に点数が出ている。

そして、私の召喚獣にも点数が現れた。

 

 

Eクラス かませ犬(雑魚)  数学 104点

 

 

「はっ、どうだ!! 数学は俺の得意分野だからな、Eクラスでは一番高いんだぜ? それに比べてお前の点数は―――――」

 

 

Fクラス 比那名居天子   数学 119点

 

 

「な、なんだと!? Fクラスのくせに俺より点数が高いだとぉ!?」

 

私の点数を見てEクラスの彼は驚いていた。

 

「そ、そうか、お前も俺と同じように数学が得意なんだな! だからその点数なんだろ!」

 

と、そんな事まで聞かれる。

………さっきまでの余裕はどこに行ったのよ。

 

それにしても、数学が得意ねぇ。

私がそれを言っちゃうと、島田さんに怒られそうなんだけど。

なんて考えていると明久が口を挟む。

 

「いや、天子は数学は苦手だよ」

「ああ、あとは英語もな」

 

ちょっと、雄二までバラさないでよ!

まぁ、言ってしまったものは仕方がない。

 

 

私は数学と英語が大の苦手だ。

数学はまだ100点を切ることはないが、英語に関しては良くても80点代までしか点数を取れない。

90点以上をとることはまず無いと言っていいわね。

 

なお余談だが、この時の点数はテスト数枚だけで取った点ではない。

時間内上限無制限テスト。

私はこれをフルに活用し、苦手科目に関しては自分の解ける問題のみを答え、残りは完全に捨てている。

ここが普通の学校だったなら、その時の私の数学や英語の点数は30点にも満たないだろう。

酷い時は1桁や0点の時もあるしね。

 

つまり私は、苦手科目は一度に数十枚以上のテストを受けているということになる。

………なんと言うか、本当に私Aクラスに行けていたのかしら?

 

 

 

閑話休題。

さて、今は目の前の敵を倒さないとね。

 

「さてと、もういいかしら?」

「クソ、ちょっと点数が高いからっていい気になってんじゃねぇぞ!」

 

別になってないのだけれど……

コイツ本当にめんどくさいわね。

さっさと終わらせよう。

 

「行くわよ!」

「来やがれクソアマァ!!」

 

私は相手の召喚獣に向かって突っ込む。

まずは正拳突き。………これは簡単に避けられた。

その勢いのまま回し蹴りを繰り出す。

 

ガスッ!

 

「チィッ!!」

 

 

Eクラス かませ犬(雑魚)  数学 99点

 

 

私の召喚獣が放った回し蹴りは、相手の腕に当たったけれど点数はそんなに減ってはいない。

やっぱり無手だと全然ダメージにならないわね。

 

「嘗めやがって! 今度はこっちから行くぞ!」

 

相手は手に持った武器を振り回し、私に向かってくる。

………ダメダメね。動きが単調すぎるし、何より召喚獣の操作に全く慣れていない。

そんなんじゃ私どころか、明久すら倒せないわよ?

 

私は相手の攻撃を只ひたすら避け続ける。

 

「クソッ、なんでこっちの攻撃が当たらねぇんだ!」

 

相手は悪態を吐きつつ攻撃を続けている。

そろそろ終わらせようかな?

 

「明久! 木刀貸して!」

「え? あ、うん!」

 

私が言うと、明久の召喚獣が木刀を放り投げてくる。

そして、私の召喚獣がそれを受け取り構える。

 

 

「はっ、お前何考えてんだ? 他人の召喚獣の武器は触れることはできても、それでダメージを与えることはできない! そんなことも知らねぇのかぁ?」

 

 

そう、通常試召戦争では他人の召喚獣の武器を奪ったり借りたりして攻撃を行っても、それでダメージを入れることはできない。

そもそも、召喚獣の武器や服などの基本装備はその召喚獣専用の物であり、他人が使うことを想定していないらしい。

だからシステム上触れることはできても、自分の武器として使うことはできないのよね~

 

 

 

()()()()

 

 

私の召喚獣は勢い良く駆け出し、そのまま相手の首を狙った。

敵は余裕の表情で動こうとしない。

私は無意識に口の端を吊り上げる。

 

 

ズバンッ!

 

 

『はぁっ!?』

 

Eクラスの生徒達から驚きの声が上がる。

それはそうだろう。

 

 

Eクラス かませ犬(雑魚)  数学   0点

      VS

Fクラス 比那名居天子   数学 115点

 

 

なにせ、相手の首が切り落とされたのだから。

 

 

「戦死者は補習!」

「ちょ、ちょっと待てや! 今のはどう考えても反則だろ!! てか、なんでその女の召喚獣は他人の武器で攻撃できるんだよ!?」

 

鉄人先生が現れ、男子生徒を補習室に連れて行こうとすると、彼が声を荒げる。

なんでって言われてもねぇ。

 

「言ってなかったけどね、私の召喚獣にもあるのよ。物理干渉能力」

「なんだと!? てことは、お前も『観察処分者』か!」

 

私が『観察処分者』ですって?

失礼ね! 私は明久みたいに問題なんてあまり起こしてないわよ?

………まったく無いとは言えないけど。

 

「いや、それは違うぞ? 比那名居は『観察処分者』ではない」

 

先生が私の代わりに言う。

 

「ならなんでコイツの召喚獣は物に触れるんだよ! それができるのは『観察処分者』だけなんだろ!?」

「あら、誰も『観察処分者』だけだなんて言ってないわよ? 先生達の召喚獣も持ってるしね」

「なんだと!?」

 

元々、物理干渉能力は先生達専用の物だったらしいんだけど、明久が学園初の『観察処分者』になってしまった為に導入されたのよね~

 

因みに、私が持っている理由はひょんな事から学園長の実験に付き合わされたりしているからだったりする。

勿論、フィードバックもあるけどね。

 

「そして、物理干渉を持っている召喚獣は他人の武器で攻撃しても、ダメージを与えることができるわ」

『なるほど、だからアイツの召喚獣の首が切れたのか』

 

Eクラスの誰かがそう呟いた。

因みに、その時の攻撃力は自分の召喚獣の点数に比例する。

だから、今回みたいな状況じゃなかったらあんまりやる意味ないのよね~

 

「もういいか? さあ、お前には補習室でみっちり勉強を教えてやる」

「ちょ、コラ待てよ鉄人! あ、いやすみません。待ってください西村先生。自分で歩けますから!」

 

先生は男子生徒を引きずりながら教室を出ていった。

一瞬、彼を睨んだ時の先生の目がヤバかったんだけど、まぁ色々と自業自得ね。

 

「さてと、うるさい奴もいなくなったし。続きをやりましょう?」

「くっ……」

 

私がそう言うと、Eクラスの面々が後ずさる。

さて、そろそろかしら……

 

「よくやった天子。もう十分だ」

 

すると、雄二から声がかかる。

 

「なに言ってるんだよ雄二! このまま天子に全員倒してもらえば……」

「それは無理よ、明久。この点数じゃ、ここにいる全員を倒す前に補習室か回復試験に行く事になるわ」

「え、じゃあどうするのさ!」

 

はぁ、ちょっとは頭を使いなさいよね?

 

「貴方、誰か忘れてない?」

「へ? ……あ! てことは作戦って!」

「ああ、時間稼ぎはもう十分ってことだ!」

 

雄二がそう言うと、教室の戸が開かれる。

私たちを含め、教室内の全員がそちらを向く。

そこには、私たちの待ち人がいた。

 

『ひ、姫路さん? あれ? Aクラスは今自習中じゃ……』

 

奥の方の生徒がそんな声を上げたのが聞こえてくる。

 

「あ、あの……Fクラス、姫路瑞希。Eクラスに、勝負を申込みます! 『試獣召喚(サモン)』!」

 

姫路さんが召喚獣を呼び出す。

その姿は西洋甲冑を身に纏い、背丈の倍はあるであろう大剣を持っていた。

そして、その左腕には腕輪が付いている。

 

「な、姫路瑞希ってまさか!?」

 

Eクラス代表の中林宏美が声を上げる。

やっぱり、姫路さんは有名よね。

 

「行きますっ!」

 

そんなことを考えていたら、姫路さんが腕輪の能力を使っていた。

召喚獣は400点以上の点数を持っていると腕輪を手に入れ、特殊能力を使うことができる。

まぁ、使用条件として点数を消費してしまうんだけど。

 

どうやら姫路さんの召喚獣は『熱線』を飛ばす能力があるみたい。

 

今の攻撃で、中林宏美以外のEクラスの生徒が戦死した。

あ、姫路さんの点数が表示されたみたいね。

私は彼女の召喚獣の頭上を見る。

 

 

Fクラス 姫路瑞希  数学 412点

 

 

流石、Aクラス候補だっただけはあるわね。

苦手ではないって言ってたけど、得意科目でもないのにこの点数だなんて。

しかも、腕輪の能力を使ってこれってことはもうちょっと高かったってことよね?

 

「一撃でほとんど倒しちゃうなんて、流石はウチの切り札だわ」

「はぁ!? Fクラスの切り札は貴女じゃなかったの!?」

 

私が姫路さんを褒めると、中林宏美がそんな事を言ってくる。

 

「あら、切り札が一つだけだなんて、言ってなかったわよね?」

「な!? 騙したのね!」

「兵は詭道なり。要は、騙された貴女達が悪いのよ。じゃあ、後はよろしくね姫路さん♪」

「はい!」

 

私はその場から離れ、勝負の行方を見守る。

 

「それじゃ、行きます! ごめんなさい!」

「くっ!」

 

姫路さんはそう言うと、中林宏美の召喚獣に向かって空中回転切りを繰り出す。

 

 

Fクラス 姫路瑞希  数学 412点

      VS

Eクラス 中林宏美  数学   0点

 

 

「そ、そんな」

 

 

 

こうして、Eクラスとの試験召喚戦争は、Fクラスの勝利で幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

「やった~! すごいよ姫路さん! これも姫路さんの力のおかげだよ!」

「そんな、ありがとうございます」

 

Eクラスとの試召戦争に勝利し、今は戦後対談の最中だ。

この場には、戦死しなかった私達と中林さんを入れた五人に、回復試験を行っていた島田さん、秀吉、康太の三人が合流して、計八人がいる。

中林さんはショックで座り込んじゃってるけどね。

まぁ、クラスを変えられると思ってるだろうから仕方ないでしょうけど。

 

「これで、僕らはEクラスと教室の設備を交換できるんだよね?」

「いいや、設備は交換しない」

「え?」

 

明久が嬉しそうに聞くと、雄二がそんなんことを言い出す。

まぁ大方、クラス交換をしない代わりになにか条件をつけるつもりなんでしょうね。

 

「設備は今までのままだ。いい提案だろ? Eクラス代表さん」

「そんな、どうして」

「なんでだよ雄二! せっかく勝ったのに!」

 

明久が雄二に突っかかる。

まぁ、無理もないけどね~

でも、明久。あなた結局何もしてないじゃない。

言う権利あんまりないわよ?

 

と、そんな言い合いをしていたら、教室の戸が開けられる。

そちらを見ると、意外な人物が教室に入ってきていた。

 

「決着は付いた?」

 

そう言いながらこちらに来る女生徒。

彼女は、見た目が秀吉ソックリだった。

言わなくてもわかるだろう。

彼女は木下優子。秀吉の双子の姉だ。

 

「あれ? 秀吉、どうしたのその格好? そうか! やっと本当の自分に気付いたんだね!」

 

明久、貴方やっぱりバカね。

そもそも、本当の自分って何なのよ?

 

「明久よ、ワシはこっちじゃぞ」

「それは、秀吉の双子の姉よ」

「へ?」

 

私と秀吉がそう言うと明久は素っ頓狂な顔した。

 

「私は2年Aクラスから来た大使、木下優子。我々Aクラスは、Fクラスに宣戦布告をします!」

 

『ええーっ!』

 

私と雄二以外の皆が声を上げる。

まさか向こうから来るとわね。

流石に予想外だったわ。

 

「ちょっと待ってよ! どうしてAクラスが僕らに!?」

「さぁ、詳しくは私も知らないわ。でも、最下位クラスだからって手加減はしない。容赦なくたたきつぶすから、そのつもりで」

「まあまあ、ちょっとお付きなさいよ優子」

「っ! 比那名居さん!」

「あら、去年みたいに天子って呼んでくれないのかしら? 残念だわ」

「そ、それは……いえ、今はそんなこと関係ないわ。伝えることも伝えたわけだし、私は失礼するわね」

 

優子はそう言って教室を出ていった。

もう、つれないわね~

 

「えっと、天子。さっきの秀吉のお姉さんと知り合いなの?」

「ええ、去年からね」

 

まぁ、友人というよりはライバルみたいなものだけどね~

確か、私が『地学の天使』って呼ばれ出した頃に知り合ったのよね。

なんか懐かしい。

 

「まあ、Aクラスのことは明日考えるとしよう。さて、設備を交換しない代わりの条件だが―――――」

 

 

 

そんなこんなで私達の二年生初日が終わったのだった。

 




戦闘描写が上手く書けない!
あと、説明が多すぎる!

と言う事で、今回でやっとアニメ一期の一話分が終わりました。
長かった、実に長かった。
次回からはテンポ良く行きたいですね。(するとは言えない)

さて、今回ついに天子の召喚獣が登場しました。
見た目については原作の天子がそのままデフォルメされて、耳が少し尖っているのをイメージしてもらえばOKです。

因みに、今回天子が武器を持っていなかったのには理由があります。
ちゃんと例の剣はありますので安心してください。


さらに、今回はオリジナル設定も登場しました。
簡単に説明すると、
・自分の召喚獣は、他人の召喚獣の武器を使って攻撃してもダメージを与えられない。

・《物理干渉能力》を持った召喚獣はその限りではない。

・他人の武器を持っても攻撃力に変化はなく、自分の召喚獣の点数に比例する。

こんな感じになります。
まぁ、これを作った理由は、原作やアニメで他人の武器を使い、ダメージを与えられるのかが出ていなかった(はずだ)からです。
召喚獣に攻撃は当たるし、雄二が明久の木刀を蹴飛ばしていたので触れることはできると分かっているんですが、ダメージを与えられるかどうかまでは分かりませんでした。

どこかで出ていたら教えてください。
修正するので。

というわけで、まだまだ話したいことはありますが、今回はここまでです。
次回は幕間をやる予定です。
内容は昼食の時に起こった一悶着。

まぁ、先にこっちをやらないとフラグが無いので。

では、また次回よろしくお願います!

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