バカとテストと緋想天   作:coka/

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第4話

私達は教室に戻ると早速行動に移した。

 

「みんな、聞いくれ! Fクラス代表として提案する! 俺たちFクラスは試験召喚戦争を仕掛けようと思う!」

『え!?』

「なんじゃと!?」

「試験召喚戦争って、まさか!?」

 

教壇に立った雄二の提案を聞き、クラス中から驚きの声が上がる。

そこには、トランプをしていた秀吉と島田さんの声も含まれていた。

………というか、なんで遊んでるのよ。

一応、今って自習扱いよね?

 

「みんな、このオンボロ教室に不満はないか!」

『大ありじゃぁっ!!』

「だろうな。俺だってこの現状は大いに不満だ!」

 

雄二の隣に立っている私と明久、そして姫路さん以外の2年F組全員の叫び。

まさに、魂の叫びって感じね。

 

「だが、試召戦争に勝利する事さえできればAクラスの豪華な設備を手に入れることだってできる!」

『Aクラスだと?』

『バカな、勝てるわけがない!』

『正直、姫路さんがいれば何もいらない』

 

Aクラスと聞いて上がりだしていた士気が少し下がってしまう。

 

「確かに、俺達では二年最高峰のAクラスに勝つのは難しいかもしれない。だが、可能性がゼロなわけではない!」

 

だが、雄二はあえてそこを突く。

 

「いいか! 我々は最下位だ! 学園の底辺だ! 誰からも見向きもされない、これ以上下のないクズの集まりだ!」

 

雄二は腕をふるいながら、少しオーバーに言い放つ。

これだけボロクソに言われているのに、なんだか鼓舞されているかのように感じるから不思議だ。

彼は本当に口が上手いと思う。

 

「つまりそれは、もう失う物が無いということだ!!」

『はっ!』

 

全員が『なるほど』といった声を上げる。

いや、無いわけではないわよ?

負けたら設備のグレードは下がるし、3ヶ月間自分達から戦争を仕掛けられなくなるから。

まぁ、士気に関わるから言わないけどね。

 

「なら、ダメ元でやってみようじゃないか! それに、俺達には戦争に勝てるだけの要素が揃っている!」

『な、なんだってー!?』

 

………みんなノリがいいわね。

 

「今からそれを説明しよう。おい康太。畳に顔をつけて、姫路のスカートを覗いてないで前に来い」

「…………!!(ブンブン)」

「は、はわっ!」

 

康太は首と手を左右に大きく振りながら否定しているが、顔に畳の跡が付いている。

というか、見えたら見えたで鼻血を出すくせになんで態々覗くのかしら?

 

「土屋康太。こいつがあの有名な『寡黙なる性識者(ムッツリーニ)』だ」

「…………ち、違う!!(ブンブンブンブン)」」

 

ああ、あのあだ名ってそんな当て字だったわね。そういえば。

あと、さっきよりも康太の否定が激しくなった。

 

『な!? ムッツリーニだと!?』

『馬鹿な、ヤツがそうだというのか!?』

 

 

この学園でムッツリーニという名はそこそこ有名だ。

康太は写真撮影が趣味で、その映像や写真等を《ムッツリ商会》という自分の個人商店で販売をしている。(学園で秘密裏に)

売れ行きは上々らしく、その売上で新しいカメラなんかを買ったりしていると本人から聞いた。

 

 

 

実は、一時期私の写真を売っているのを見つけ、ちょっとお話しをした。

まぁ結果だけ言うならば、私の写真等の売上分1/3程度が私の懐に入ることになったわ。

そのかわり、たまに新作の提供をしたりすることになってるけどね~

まぁ、ちょっとしたバイトみたいなものだ。

 

 

「姫路に関しては説明する必要もないだろう。みんなだってその実力は知っているはずだ」

「えっ! わ、私ですかっ?」

「ああ、ウチの主戦力だ。期待している」

『そうだ! 俺たちには姫路さんがいる!』

『ああ。彼女さえいれば何もいらないな』

 

姫路さんは元々Aクラス並みの学力がある。

その成績は、入学して最初のテストで学年二位を取り、その後も上位一桁以内に名を残している程だ。

戦力として彼女はとても頼りになる。

というか、誰よ。さっきから姫路さんにラブコールしてる人は。

そういうのは本人に直接言いなさい!

 

「次に島田美波だ!」

「え!? ウチ!?」

『おお、確か人を殴るのが趣味の』

「いや、ウチそうゆう意味で言ったわけじゃ……」

 

………なんか、島田さんはあらぬ誤解をかけられたみたいね。

 

「島田は漢字の読み書きこそ苦手だが、数学はBクラス並みだ。十分戦力になる」

『おお!? Bクラス並み!!』

 

そうね。彼女は漢字が読めなくて他の教科の点数が低いけれど、漢字が問題文にしかない数学の成績は高い。

Aクラス戦で役に立つかは少し不安だけれど。

 

「木下秀吉だっている!」

『おお……! 演劇部のホープ!!』

『木下優子の双子の妹!!』

「だからワシは男じゃ!!」

 

………?

確かに秀吉は有名だし人気もあるけど、成績はそこまでよ?

ああ、でもあの声帯模写の技術は色々と使えそうね。

それに士気を上げるのには十分だろうし。

 

「それに比那名居天子もいる!」

 

あら? 私?

私そこまで有名じゃないわよ?

 

『比那名居さんが?』

『彼女って頭いいのか?』

「天子の成績はAクラス並だ。そして何を隠そう、天子はあの『地学の天使(アース・エンジェル)』だ!!」

『なんだと!!』

『まさか彼女が!?』

 

あ~、それ言っちゃうんだ……

 

「そう、一年時の最初の地学のテストで771点という最高得点を取り、他のいくつかの科目でも一桁台に名を連ねた、あの地学の天使だ」

『マジかよ!? すげー!!』

『てことは、比那名居さんも体調不良かなにかだったってことか!!』

『天子ちゃんマジ天使』

 

別に私が自分で付けたわけじゃないんだけど、その厨二臭い異名あんまり好きじゃないのよね~

あの時の点数だって、私の得意分野の問題ばっかりだったからだし。

 

それに、私の得意科目は地学じゃないから。

私に名乗って欲しいなら、そっちの方で作ってもらいたいわね。

 

「当然俺も全力を尽くす!」

『確かになんだかやってくれそうだよな』

『そういえば、坂本って小学生の頃は神童って呼ばれてなかったか?』

『なに!? って事はこのクラスにはAクラス並みが三人と、Bクラス並みが一人、それに秀吉が一人いるってことか!!』

 

ああ、勘違いの輪が広がっていくわ。

雄二があの神童って呼ばれていたのは小学校までの話で、今は普通にFクラス並よ?

もし行けたとしてもDクラスまでだと思うわ。

あと、秀吉は元から一人よ。

 

まぁ、これだけ士気が上がれば十分かな?

 

「そして、吉井明久だっている」

 

……シン―――――

 

その言葉を合図にしたかの様に、上がり続けていた士気が一気に下がった。

まるで株価の暴落ね。

 

って冗談言ってる場合じゃないわ!

なんで明久の名前を呼ぶのよ!?

貴方はオチをつけないと気がすまないの!?

 

「ちょっと雄二! どうして僕の名前を呼ぶのさ! そんな必要はないよね!?」

『誰だよ吉井明久って』

『聞いた事もないぞ?』

 

ちょっと待った!

なんで貴方達は明久を忘れてるのよ!

自己紹介してたし、貴方達も叫んでたじゃない!

 

「そうか。知らないなら教えてやろう。なんとコイツは、『観察処分者』だ」

 

更に士気を落とすつもりなの!?

 

『な、何ー!!』

『コイツが観察処分者だって!?』

『ヤッベー、初めて見たぜ!』

「い、いやーそれほどでも……」

 

 

私の心配とは裏腹に、雄二が明久が『観察処分者』であることを言うと皆口々に感嘆の言葉をらした。

『観察処分者』がどうゆうものなのか知らないのかな?

実際はそんなに良いものでもないのだけれど……

明久も苦笑いを浮かべてるしね~

 

そんな時、姫路さんが手を挙げる。

 

「なんだ、姫路?」

「観察処分者ってすごいんですか?」

「ああ、誰にでもなれるわけじゃぁない。成績が悪く、学習意欲に欠ける問題児に与えられる特別待遇だ」

「バカの代名詞とも言われておる」

「全く何の役にも立たない人のことよ」

「へぇ本当にすごいんですね♪」

 

姫路さんはどの辺がすごいと思ったのかしら?

 

「天子、皆の言葉が突き刺さるんだけど。もう穴があったら入りたい気分だよ」

「よしよし、可哀想に。でも、実際お前の自業自得なんだからね?」

「いや、わかってるけどさ……」

 

私は、肩を落とし頭を下げた明久を撫でながら言う。

………なんか、変な視線を感じるんだけど。特に双方向から。

 

『吉井の奴、比那名居に慰めてもらえるなんて羨ましい!!』

『比那名居さん俺も撫でてくれ!』

『むしろ僕は島田さんに蹴ってもらいたい』

『姫路さん好きだー!』

 

クラスメイト達がうるさくなってきたので私は明久の頭を撫でるのをやめた。

 

「吉井君と比那名居さんて仲がいいんですね」

「吉井ってばなにデレデレしてんのよ」

 

島田さんと姫路さんも何か言っていたようだが聞き取れなかった。

なんか変なこと考えてなければいいけど……

 

「ともかく、試召戦争に勝利さすればこんなオンボロ教室とはおさらばだ! どうだみんな、やってみないか?」

『うおおーーっ!!』

「お、おー……」

 

教室が叫び声に包まれる。

クラスの雰囲気に圧されたのか、姫路さんも拳を握り軽く掲げていた。

まぁ、みんなやる気は十分てことね。

 

「まずは手始めに、一つ上のEクラスを倒す! 明久、Fクラス大使としてEクラスに宣戦布告をして来い」

 

………雄二、貴方明久を弄りすぎだと思うわよ?

下位勢力の宣戦布告の使者って殺されたりするのが定番じゃない。

流石に殺人はないでしょうけど、ボコボコにされるのがオチよ?

 

「え、僕? 普通、下位勢力の宣戦布告の使者って酷い目に合うよね?」

 

明久でもこれぐらいは流石に分かるわよね。

よく一緒にそ~いう映画とか見てるし。

 

「それは映画や小説の中の話だ。大事な大使に失礼な真似をするわけがないだろう?」

「でも……」

 

明久は顎に手を当てながら考えている。

そんな明久の両肩を掴み、雄二は真剣な表情で言う。

 

「明久、これはお前にしかできない重要な任務なんだ。騙されたと思って逝ってきてくれ!」

 

騙す気マンマンじゃない!!

まさかこんな言葉信じないわよね明久?

 

「……うん、わかったよ」

 

明久!?

え、ちょっ、本当に行くつもり?

 

「ちょっとちょっと、本気なの明久?」

「大丈夫だよ天子。僕は雄二を信じてるから」

 

と、そんな事を言う明久。

対する雄二は少し苦笑いをしていた。

明久、貴方絶対詐欺とかに引っかかるタイプよ!?

 

そんなことを考えていると、明久は教室を出ようとしていた。

………うんも~、仕方ないわねぇ。

 

「ちょっと待って、明久。私も行くわ」

「え?」

「おい、天子」

「何よ、雄二? 私が行ったらなにかマズイの?」

「ああ、お前はウチの切り札だ。それが相手に露見すると困る」

 

まったく、本当に口が上手いわね~

私じゃなかったら信じてたわよ?

 

「大丈夫よ、私が地学の天使だと知ってる人は殆んどいないから。それに、明久が何もされなければ私は前に出ないわ」

 

そう言いながら雄二と目を合わせ、トドメを刺す。

 

「大事な大使に失礼なことはされないんでしょう?」

「ぐっ……ああ、そうだ」

「うん、じゃあ明久行きましょ?」

「え? あ、うん」

 

こうして私と明久は、隣のEクラスに宣戦布告をする為、教室を出たのだった。

 

 

 

 

 

 

「すみませ~ん、2年F組の吉井明久ですけど~」

 

明久がEクラスの戸を開け、そんな事を言う。

なんと言うか、そんな適当な言い方でいいのかしら?

 

「バカのFクラスが何の用?」

 

Eクラスの代表と思われる女子生徒が席を立ち、こちらにやって来た。

 

 

私は今明久の後ろに立っているが、身長差がある為Eクラスの生徒から私は見えていないはずだ。

………このまま無事に終わってくれるといいんだけど。

 

「僕達Fクラスは、Eクラスに宣戦布告をします!」

『なんだと!!』

『まだ初日だぞ!? 正気かよ!?』

『Fクラスは一体何を考えてるのよ!?』

『クソッタレ、部活の時間が減るじゃねぇか!』

 

明久が宣言をすると、Eクラスの生徒達から驚きの声や罵倒が返ってくる。

まぁ普通に考えれば、二年の初日から戦争なんてしないだろしね。

 

「わかったわ。それで、開戦はいつ?」

「あ、えっと午後から、つまり昼休みが終わってからで!」

 

ああ、そう言えば何時開戦とかって決めてなかったわね。

んで、丁度五時限目に開戦ね。

ナイスよ明久!

 

「なるほどね、わかったわ」

「じゃあ、よろしく。僕達は失礼するね!」

 

そう言って踵を返し、私にアイコンタクトで帰ろうと伝える明久。

良し、とりあえず無事に終わっ―――――

 

「まぁ、待ちなさいよ」

「え?」

 

Eクラスの代表さんが明久の肩を掴み、引き止めてくる。

 

ああ、やっぱり。

そうは問屋が卸さないのよね。知ってたわ。

 

「やっぱり、Fクラスに嘗められたままってわけにもいかないのよ」

「えーっと?」

「というわけで、みんなヤっちゃっていいわよ?」

『よーし、お前歯ぁ食いしばれよ!』

『おい、誰かバットか木刀持って来い!』

『ヒャッハー! バカは消毒だー!』

『知ってるかい? ボールは友達、友達はボールなんだよ?』

『野郎ぶっ殺してる!』

「え、ちょ、みんな落ち着いて!」

 

なんというか血の気が多いわね。

流石運動部系の生徒で構成されたEクラスって所かしら?

さて、このままだと明久が危ないから私が手助けしないとね♪

 

 

 

 

 

 ―――――side明久―――――

 

 

Eクラスの男子生徒の一人が僕に殴りかかってくる。

ああ、やっぱりこうなるんだ。

雄二のクソッタレ! 後で絶対ブッ殺してやるからな!!

そう思いつつ僕は目を瞑る。

 

 

そんなことを考えていたからだろうか?

普段なら絶対といって良い程忘れない、後ろにいた親友のことを僕は忘れていた。

 

 

ゴスッ!!

 

大きな音がした。

僕は殴られたと思ったが、一向に衝撃や痛みが来ない。

 

「あれ?」

「明久、ケガは無い?」

 

僕が目を開けるとそこには、ニヤリと笑いながらホウキを持った天子がいた。

多分、廊下にある掃除道具用のロッカーから持ってきたんだろう。

よく見ると、すぐ傍でさっき僕を殴ろうとした生徒が痛そうに腹を押さえながら踞っていた。

ああ、そうだ。天子がいたんだった。

 

「僕は大丈夫だけど」

「そう? 良かったわ。さて、貴方達まだやるつもり?」

 

そう言いながらホウキを上下に振る天子。

それに(ひる)んだのか、Eクラスの生徒達は後ずさる。

既に一人やられているせいか、少し(おび)えてしまっている生徒もいた。

 

「きゅ、急に現れて何するの!? あなた一体誰よ!?」

「私? 私は比那名居天子。そこのバカの友人兼今回の護衛役よ。因みに、私は一部始終を見ていたから言い訳とかは聞かないわよ?」

 

天子がそう言うと、Eクラスの面々はバツが悪そうな顔をする。

だけど、流石にこのままじゃ色々と危ない。

 

「天子、僕はもう大丈夫だからさ。ほら、もう教室に帰ろう?」

「………わかったわ」

 

僕がそう言うと、天子は渋々といった感じで頷いてくれた。

よ、良かった。本気で怒ってはいないようだ。

本気の天子を止めるのは、文字通り骨が折れそうになるから。

さぁ、早くFクラスに帰ろう!

 

 

 

「おい、てめぇ嘗めた真似してくれるじゃねぇか」

 

天子にホウキで殴られた生徒が腹を押さえながら立ち上がる。

おい、そこの名前も知らないEクラスの男子!

せっかく全部上手く行きそうだったのに、なんで煽ってるんだ!

僕の努力を返してよ!

 

「………何よ? まだやる気?」

「あたりめぇだ! やられっぱなしってわけにはいかねぇだろうが!!」

「ちょ、ちょっと止めなさいよ!」

 

これには流石のEクラスの代表さん(確認はしていないけど、他にそれっぽいのはいなさそうだし)も止めに入ってくる。

まぁ、とばっちりは受けたくないだろうからね。

 

「止めんじゃねぇよ、中林。これは俺の問題だ!」

「私は良いわよ? 体が鈍ってないか試したかったし」

 

ああ、天子の方もやる気満々だ!

このままじゃ、この教室が血で濡れることになるだろう。

こ、こうなったら!!

 

 

 

「ふ、二人共やめてよ! 僕の為に争わないで!!」

 

 

 

僕がそう言うと、Eクラスの教室が静寂に包まれる。

皆、ポカーンとした表情で口を開けていた。

ただ一人、天子を除いて……

 

「あ~あ、このバカ明久。しらけちゃったじゃないのよ」

「だ、だって天子とそこの男子が喧嘩始めようとするから」

「はぁ、もう良いわよ。………ありがとね」

「へ? 何が?」

 

なんでお礼言われたんだろう?

僕にはそれが判らない。

 

「何でもないわよ。気にしないでさっさと戻りましょう?」

「う、うん」

 

僕は疑問を抱きつつも、Fクラスの教室を出たのだった。

 

 

 

 ―――――sideout―――――

 

 

 

 

 

まったく、あのバカは何を考えてるんだか。

いや、そもそも何にも考えてないんだったわね。

 

私はEクラスの教室から出ていく明久の背中を見ながらそう思う。

さて私も行きましょうか。

っと、その前に……

 

「えっと、騒がしくしたり怖がらせっちゃったりしてごめんなさいね? ましてやまだ授業中だったのに」

 

私は頭を下げながらそう言う。

すると、一早く立ち直ったFクラスの代表らしき人、確か中林さんだったかな? が一瞬驚いたような表情をする。

多分、私の態度が急に変わったからだろう。

 

「い、いや、気にしないで? けし掛けたこちらにも非があるわ」

「というか非しかないわよね? 先に手を出そうとしたのはそっちだし」

「うっ」

 

正論を言われて言葉を失う中林さん。

 

「ま、この続きは試召戦争でやりましょ? じゃ、私も戻るわ。 午後はよろしくね?」

「え、ええ、こちらこそ」

 

言い終わった私は踵を返し教室を出る。

あ、そうだ。

 

「ああ、それと。明久に感謝するといいわよ?」

「はっ?」

「………分からないなら別にいいわ」

 

多分、本人もそのつもりは無かっただろうしね。

私も態々言うつもりはないし、明久本人に聞くつもりもない。

 

「じゃあ、またね?」

 

そう言って今度こそFクラスの教室を出た。

すると、案の定というかなんというか、明久は廊下で私を待っていた。

 

「あら、待っててくれたの? 先に戻っても良かったのに」

「いや、また天子が何かするんじゃないかと思って」

 

む、失礼ね。私は貴方や雄二とは違うのよ?

ちょっとからかってやろうかしら……

 

「つまり明久は、私を信頼していないってことね。一番の親友だと思ってたのは私の勘違いだったのかしら?」

 

私は悲しそう表情を作り明久に言う。

 

「ええっ!! いや、僕はそうゆうつもりで言ったわけじゃなくて!」

「じゃあどういうつもりよ?」

「そ、それは……」

 

明久は困ったような表情をしている。

やっぱり明久は面白いわね。

さて、そろそろネタばらしを……

 

「な~んて、冗だn」

「天子が心配だったから」

「え?」

「だから、天子が心配だったんだって。もう! 恥ずかしいから何度も言わせないでよ!」

 

このバカは急に何を言い出すんだろう?

それと明久、今のセリフはちょっと気持ち悪いわよ?

 

「気持ちわるいわ」

「恥ずかしいの我慢して言ったのに酷くない!?」

 

どうやら、口に出してたみたいだ。

………そういえば、ネタばらし遮られたんだったわね。

 

「ふふ、冗談よ」

「どっからが!? どこから冗談だったかによっていろいろ変わってくると思うんだけど!!」

 

もう、うるさいわね。

さっさと教室に戻るわよ

 

「くそぅ、理不尽だ~」

 

 

そんなことを呟いている明久を無視し、私は歩き出した。

自分の頬に、少し赤みが差していることを感じつつ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、ホウキ返すの忘れてた。

 




すみません、一時間程遅れました。

今回は遂に宣戦布告まで行くことができました。
読んでいて違和感があったかもしれないので補足をすると、

アニメ第一期の一話では宣戦布告後に夕方になっていましたが、この物語では宣戦布告~Eクラスとの戦争を初日にまとめます。
その為、今回明久が言ったように午後からの開戦となっているわけです。

さて、今回他にも色々と情報が出たり、謎が増えたりしました。
天子やその周辺の設定は一応固まってはいます。
ですが、細かいところ(今回で言えば天子の異名)はいくつか決まっておらず、その場のノリや勢いとかで決めることもあります。

まぁ、何が言いたいかというと、おかしな所は遠慮なく指摘してください。

ということで、次回はEクラス戦開始です。
その前に昼食と会議が入りますがね……
ではでは、次回もよろしくお願いします!

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