バカとテストと緋想天   作:coka/

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バカテスト【化学】

問 以下の問いに答えなさい。

『調理の為に火にかける鍋を制作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。このときの問題とマグネシウムの代わりに用いるべき合金の例を1つあげなさい』



姫路瑞希の答え
『問題点……マグネシウムは炎にかけると、激しく酸素と反応するため、危険であるという点。
合金の例……ジュラルミン』

教師のコメント
正解です。合金なので『鉄』ではダメと言うひっかけ問題なのですが、
姫路さんは引っかかりませんでしたね。



比那名居天子の解答
『問題点……鍋の消失と火災及び爆発の危険性がある点。
合金の例……洋白』

教師のコメント
問題点が大雑把な気がしますが正解です。
因みに洋白は銅・ニッケル・亜鉛の合金で、銀の代わりに使われたりもします。
よく知っていましたね。先生は比那名居さんに感心しました。



土屋康太の答え
『問題点……ガス代を払っていなかった事』

教師のコメント
そこは問題じゃありません。



吉井明久の答え
『合金の例……未来合金(←すごく強い)』

教師のコメント
すごく強いと言われても。



第3話

「あのぅ、遅れてすみません。保健室に行っていたら遅くなってしまって」

 

そう言いながら教室に入ってくるピンクブロンドの女子生徒。

彼女を見たクラスメイト達は驚きと興奮の声を上げている。

 

「姫路さん」

 

明久が彼女の名を呟くのが聞こえた。

 

そう、彼女は姫路瑞希。

振り分け試験の時に体調不良で倒れ、途中退席になった生徒だ。

この教室に居ないからてっきり再試験でもしたのかと思っていたのだけれど、遅れていただけだったのね。

 

そんな彼女は教室内をキョロキョロと見回していた。

そして私達のいる方………主に明久を見た。

 

「あ、吉井君!」

 

そう言ってこちらに近づいてくる姫路さん。

男子がブツブツと何か言っているけれど、まぁわざわざ聞く必要はないわよね?

 

「吉井君」

「なに? 姫路さん」

「痛くないんですか?」

 

あ、忘れてた。

 

「うおぉっ、僕の脊椎が生まれてこの方経験したことのない曲がり方をしているぅぅぅぅ」

「島田さん! 流石にそれはやりすぎよ! 止めなさい!!」

「…………見え、みえ」

 

私は島田さんの肩を掴み、明久から引き剥がそうとする。

あと、康太はどさくさに紛れて何をしてるのよ……

 

そんな時、一際強い隙間風が吹いてくる。

………あ。

 

「ひゃんっ」

 

島田さんのスカートがその風で少し浮いた。

その島田さんの正面には姿勢を低くした康太が居る。

ということは、必然的に……

 

「…………う、あ、うあぁ(ダクダクダクダク)」ビクッビクッビクッ

 

康太が鼻血を出しながら倒れ、悶えだした。

その康太に対して明久が叫びながら駆け寄る。

 

「ムッツリーニ! しっかりしろ!!」

「…………み、み」

「喋らないで! 今医者を呼ぶから!!」

 

いや、その前に手当しなさいよ!

尋常じゃないほどの鼻血が出てるわよ!?

 

「…………み、水色(ガクッ)」

「ムッツリーニィィィ」

 

康太はどこか満足気に気絶した。

因みに、さっきから明久が言っているムッツリーニというのは、康太のあだ名だ。

由来は『ムッツリスケベ』から来ている。

まぁ、その名に恥じない行動は確かにしてたわよね。

 

「ムッツリーニ大丈夫か!? 傷は浅いぞ、しっかりしろ! 誰か、誰か助けてください!!」

「明久、バカやってないで康太を座らせて鼻を摘みなさい! いい? 顔を上に向けちゃダメだからね?」

「わ、わかったよ!」

 

私はポケットティッシュを取り出し、詰め物を作る。

姫路さんが島田さんや雄二たちと何か話してるけど、今はこちらが先決だ。

 

「はい、明久。これを康太の鼻に詰めて」

「う、うん」

 

とりあえずこれでいいわね。

本当はタオルとかで冷やした方が良いんだけど……

そんなことを考えていると姫路さんの声が聞こえる。

 

「それじゃぁ、そこ空いてますか?」

「「え?」」

 

姫路さんは私の座っていた席を指さしながら、そう言っていた。

 

「あ~、ごめんね姫路さん。そこは天子の―――――」

「良いわよ? どうぞ?」

「え!? ちょっと天子!?」

 

明久が何か言っているのを無視して私は席を移動する。

 

「えっと、良かったの天子?」

「何がよ? どうせ席なんてどれも一緒じゃない」

 

それに、まだ自己紹介もしてなかったからね。

今変わっても特に問題はないでしょ。

 

ということで、私の席は明久の前の席になった。

………やっぱりちょっと隙間風が寒いわね。

 

「あの、ありがとうございます。えーっと……」

「あら、どういたしまして。私は比那名居天子よ」

「比那名居さんですか、私は姫路瑞希です! よろしくお願いしますね!」

「ええ、よろしくね」

 

態々お礼を言いに来るなんて、流石は優等生ね。

 

「えー、皆さんお待たせしました。自己紹介の続きをやるので、席に戻ってください」

 

福原先生が替えの教卓を持って戻ってきた。

あ、自己紹介の内容考えないと。

 

 

 

 

 

さて、あの後()()自己紹介も終わった。

 

………ええ、姫路さんの自己紹介でFクラスの馬鹿さ加減がさらに露呈したり、私の次だったあのバカが「気軽に『ダーリン』って呼んでくださいね♪」なんて馬鹿な発言をしていたけれど、無事に終わったのよ。

 

そして、早速一限目から授業かと思いきや……

 

「えー、それではこれから教室の掃除を行います」

 

という福原先生の言葉で、今は掃除中だ。

………授業はやらなくていいのかしら?

それとも、授業ができないほど今の環境が悪いということなのかしらね?

 

「けほっけほっ」

「姫路さん大丈夫? 病み上がりなんだから無理しないでね?」

「あ、ありがとうございます、吉井君」

 

ホコリを吸ってしまったのか、姫路さんが咳こみ、明久がそれを心配していた。

確か、姫路さんは身体が弱いと聞いたことがある。

そんな彼女にこの教室の環境はキツイでしょうね~

 

なんて考えていると、不意に雄二が廊下に出て行くのが見えた。

あら? サボりかしら?

クラス代表がサボるなんていい度胸よね~

私は雄二を連れ戻そうと思い、廊下に出た。

 

「って、何やってるのよ貴方」

「ん? 天子か」

 

廊下に出て私は少し驚く。

てっきり、サボってどこかに行くのだと思ってたんだけど、予想に反して雄二は教室の壁に体をあずけた状態で立っていた。

 

「サボるんだと思って追いかけたのだけど……」

「おいおい、信用ねぇな。俺は明久に話したいことがあると言われただけだ」

「ふ~ん、明久にねぇ」

 

 

ガララッ

 

「あれ、天子?」

 

教室の戸を開けて明久が出てくる。

 

「噂をすれば、来たみたいだな」

「どうして天子がここに?」

「雄二がサボると思ったのよ。で? 何を企んでいるの、明久」

「な、なんのことかな」

「とぼけても無駄よ? 雄二に話があるって事は()()()()()()でしょ?」

 

明久がクラス代表の雄二を廊下に呼び出して二人きりで話そうとするってことは、皆の前では出来ないような相談事。

つまり―――――

 

「つまり『試召戦争』について。だろ? 明久」

「ゆ、雄二!」

 

あら、セリフ取られちゃったわね。

というか、明久はなんで驚いてるのよ?

私に聞かれたら不都合でもあるのかしら?

 

「別に天子なら問題ないだろ」

「なによ明久。私が聞いたらなにかマズイの?」

「い、いやそういう訳じゃ……」

 

なら私がここに居ても良いわけね!

 

「それで? お前はなんで試召戦争をやろうと思ったんだ?」

「えっと、あまりにも設備が酷いから――――」

「「嘘ね(だな)」」

「まだ全部言ってないのに!!」

 

だって、明久がたったそれだけの理由でこんなことを言い出すとは思えないもの。

 

「勉強に興味の無いお前が、勉強用の設備の為だけに戦争を起こすなんてありえないだろ」

「そ、そんなことないよ! 興味がなければこんな学校に来るわけが―――――」

「あら~? おかしいわね。貴方がこの学校を選んだ理由は『学費の安さ』だって、よく私に言ってたじゃない」

「あー、えっと、それはその……」

 

まったく、誤魔化すにしてももっと上手くやりなさいよ。

 

「どうせ、姫路さんの為なんでしょ?」

 

私がそう言うと、明久はビクッと体を震わせた。

分かりやすすぎるわよ?

 

「やっぱりね。貴方のことだから、どうせそんなことだろうと思ったわよ」

「べ、別にそんな理由じゃないんだけど」

「はいはい、今更言い訳しなくてもいいわよ? お前の性格は私がよ~く分かってるから」

「だから本当に違うんだってばぁ」

 

明久が何かを言っているけれど、私は無視する。

 

「とにかくだ。戦争を仕掛けるってことでいいんだな?」

「あら、雄二は明久に賛成なの?」

「まあな。実は俺も仕掛けてみたいと思っていたところだ」

「え、雄二も?」

「ああ、世の中学力だけが全てじゃないって証明してみたくてな」

 

そう言った雄二の顔には、何か含みがある様に見えた。

 

「それで? 天子はどうなんだ?」

「私?」

 

聞かなくてもわかると思うんだけど。

 

「勿論、賛成よ! そんな面白そうなこと私が反対するわけないじゃない!」

「よし! 決まりだな!んじゃ、やってみるか明久、天子」

「ええ」

「うんやろう!」

 

「「「試験召喚戦争!!!」」」

 




宣戦布告までいけませんでしたorz
切りが良かった&時間がなかったので、今回はここまでです。
次回こそ宣戦布告まで行きます!

天子の自己紹介は長くなりそうだったのでカットしました。
もしかしたら、オマケや番外編などで出すかも。

アドバイスや感想待ってます!
てか、お願いします。

では、また~

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