週末の朝。
私は私服に着替えて鏡の前に立つ。
……うん、いつも通り可愛いわね!
今日は待ちに待った週末。
明久と二人で映画館に行って『ノーワールド/ゼロ』を見に行くのだ。
雄二の奴はデートだとか言ってたけど…………よく一緒に買い物とか行ったりしてるから今更よね?
……そ、そうよ、別に変に意識しなくてもいつも通りでいいんだって。
明久だって普通に映画見に行くだけだと思ってるだろうし。
それに、そんなことに頭使って映画を楽しめなくなるなんて絶対に嫌だしね~
なんて考えながら家を出ようとして、頭上にいつのも“アレ”が無いことに気が付く。
ほらぁ、考え事してたから忘れそうになったじゃない。
私は部屋に戻りキャスケットを取りに行く。
桃の飾りが付いた黒いキャスケット。
外出時にはいつも被っている私のお気に入りだ。
しっかりと鏡の前で位置を確認して被る。
……よしっ♪
さてと、それじゃ行きますか!
マンションの入り口に向かうと、珍しく明久が既に待っていた。
いつもは時間通りかまだ寝てるかなのに、待ち合わせ時間の10分前にいるなんて……
「おはよう明久、珍しく早いじゃない」
「あ、おはよう天子! 僕だって早来るぐらいはできるよ。特に今日は映画を見に行く予定だしね」
「ふーん、いつもこうだとありがたいんだけど?」
「……善処します」
「よろしい」
そんな会話をしながら私たちは映画館を目指しながら歩く。
……いつもの事だけど、さらっと車道側歩くのよねコイツ。
そのへんは姉と母親に鍛えられたのかしら?
「そ、そういえば、今日の服似合ってるよね!」
「はっ?…………お前本当に明久?」
「失礼なっ!! 僕だって服を褒めたりぐらいするよ!!」
「だっていつも二人で出かける時はそんな事言わないじゃない」
いつもは話題にすら上げないくせに、急にそんな事言われたら偽物と疑ってもおかしくはないでしょ?
そりゃ、褒められたらうれしいけどさ。
「き、今日はそんな気分だったんだよ!!」
「ぷっ、何よそれ」
思わず吹き出してしまった。
やはり、今日の明久はどこかおかしい。
何かあったのかしら?
…………あっ!
「明久、貴方前に雄二にデートって言われたこと気にしてるでしょ」
「ななななっ、な、何言ってるんだよ天子!?」
どもりながら頬を赤く染める明久。
どうやら図星だったみたいね♪
「へ~、ふ~ん、ほ~?」
「ニヤニヤしながらこっち見ないで!?」
「まさか明久が今更そんな事気にするとはね~♪」
「べ、別にいいだろ!」
明久は内心がバレて恥ずかしそうにしている。
面白いのが見れたわね!
「って、バカな事やってたら映画に遅れるわね。行くわよ明久!!」
「あ、ちょっと待ってよ天子!?」
私が軽く走り出すと、それを追いかけるように明久も駆け出し始める。
そうして、私達は映画館へと向かったのだった。
☆
「面白かったわねノーワールド」
「うんそうだね」
私と明久は喫茶店で映画の余韻に浸っていた。
原作読んでて内容は知っていたけど、やっぱりアニメとか映画になるとさらに面白くなるわよね。
後半とか何回も泣きそうになるし、ホントゾクゾクしっぱなしだったわ~
「というか、明久隣で号泣してたわね」
「天子だってポロポロ泣いてたじゃないか」
「そりゃ泣くでしょあんなの」
「うん」
そんな話を二人でしながらクレープを食べる。
今私たちがいるのは、この前明久がお土産に買ってきてくれたクレープのお店だ。
あの時食べた桃のクレープがおいしかったから、また食べたいと言って明久に案内してもらった。
私はクレープを一口切手口に運ぶ。
「う~ん♪ やっぱり美味しいわねここのクレープ」
「そうだね~、というか僕の分まで本当に良かったの?」
そう言って自分のお皿に乗っているストロベリーバナナクレープを見る明久。
「いいのいいの、こういうのは共有しないとでしょ? それに前も言ったけど食費は私の担当だしね」
「いや、でもさぁ」
明久はいまだに難色を示している。
何がそんなに気に入らないのかしら?
せっかく私が奢ってあげるって言ってるのに。
「明久」
「え、何てん――――」
「えいっ」
「んむっ!!??」
私は明久の口に無理やりクレープを突っ込んだ。
使ってるのがフォークだからいきなりやると危ないんだけどね。
「ゴクンッ――っていきなり何するのさ天子!?」
「お前がいつまでもウダウダ言ってるからでしょ? ほらさっさと食べるわよ?」
「……だからってフォークは流石に危ないんじゃ?」
「あ、やっぱりそう思う?」
まあでも、明久ならいいかなって。
「酷くない!?」
「冗談よ。それより私のクレープ食べたんだからそっちも寄こしなさいよ」
「流石に横暴じゃないですか天子さん?」
「なによ、私の奢りなんだからいいでしょ? ほらあ~ん」
「うっ、はい」
明久がクレープを切り分けて私の口に入れる。
その瞬間、パシャリという音がした。
「えっ、何!?」
「うん美味しい♪ で、どちら様ですか?」
「何で天子はそんなに冷静なのさ!?」
「いや~、すみませんね~。いい写真が撮れそうだったもんでつい」
そう言ってインスタントカメラから出てきた写真をこちらに渡してくる一人の女性。
「お二人はデートですか?」
「……まぁ、そんな所ですね。付き合ってはいませんが」
「なるほどなるほど~」
「あの、所で貴女は?」
明久が女性にそう聞くと、彼女はしまったといった顔をして自己紹介を始める。
「これは失礼しました。
「僕たちの写真を?」
「はい、そうなのですよ。バカっぽい青年と可愛い美少女って絵になると思うんですよね~」
「ちょっと、バカっぽいって何ですか!?」
「その通りじゃない」
私がそう言うと明久がさめざめと泣いた。
いつもの事だけどね。
「そ・れ・で~? いかがですか~?」
「ふむ。じゃあここの支払いしてくれればいいですよ?」
「ちょっと天子!?」
「何よ明久?」
「いや、初対面の人にさすがにそれは………」
「いえいえ構いませんよ~。むしろそれで写真を撮らせてもらえるならお安い御用ですよ!」
「じゃあ契約成立ね。明久、早く食べて終わらせるわよ」
そう話を打ち切り、私はクレープを味わって行った。
☆
クレープと紅茶を食べ終え、店の外で何枚か写真を撮った。
明久とのツーショットだったり、一人ずつだったり。
何枚か写真を撮り終わると、女性は満足したように礼を言って立ち去って行った。
「……何だったんだろうねあの人?」
「さあ?」
まあ、撮った写真は変な事に使ったりはしないという話だったので大丈夫だと思う。
因みに、私と明久は一枚ずつ写真を選んでそれを報酬として貰った。
最初のクレープのも合わせて私の手元には二枚の写真がある。
なので一枚は自分だけが写ったものにして康太にでも渡そうかと思ったが、せっかくなので明久と二人で撮ったものにしておいた。
「まあ、偶にはこ~ゆうのも良いんじゃない? それに、食事代とプリクラ代が浮いたようなもんだし」
「あ~、まあ確かにね」
「そんことより、明久。まだまだ休日の時間はあるんだから色々遊びに行くわよ!」
「了解。次はどこに行くの?」
「ん~、デパートね。服見たりゲーセン行ったりしたいし。と言うわけで、行くわよ明久!」
そう言いながら私は明久の腕を取り駆け出した。
まぁそんなこんなで、私と明久の休日は過ぎていくのであった。
―――――side???―――――
とある一室。
そこに二人の女性がいた。
「以上が今回の結果です。これでよろしかったですか~?」
白髪の女性がそう言うと、写真を見ていたもう一人の金髪の女性が顔を上げた。
「ええ、これでいいわ。引き続きよろしくね?」
「かしこまり~。ではでは、失礼します!」
そう言って白髪の女性は部屋を出ていった。
それを確認した金髪の女性がため息をついた。
「なんというかあの子といると疲れるわね。……さてと、これから忙しくなるわねぇ」
忙しくなりそうだと言いつつ、女性はとても楽しそうにニヤリと笑いながらどこかに電話をかけ始めるのだった。
フムフム、どうやらもうすぐ物語が動き出しそうですね~
ではでは~、ワタクシはそれを楽しみにしながら
さ~てお仕事お仕事♪
……あれ? もしかして見られてる? よくここに気が付きましたね?
でもまあ、どうでもいっか。
それではまた。
あれ? なんか短い?
というわけでデート回でした。
すごくあっさり目に終わった気がする。
と言うかヤマなしオチなしの普通の日常回だったような……?
個人的にはふしぎ遊戯のくだり(額に炙の文字)とか模擬試召戦争をやりたかったのですが、まあ長くなりそうだったので止めました。
因みに途中で出てきた写真家は某烏天狗二人ではありませんので悪しからず。
さて、次回は葉月ちゃん登場&死のお弁当。
アニメでは4話のお話ですね。
葉月ちゃん回想回を先にやろうかとも思いましたが、まあ後のお楽しみということで。
ではではまた来週~
バイバイ。