バカとテストと緋想天   作:coka/

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問 以下の問いに答えなさい。
『家計の消費支出の中で、食費が占める割合を何と呼ぶでしょう。』



姫路瑞希の答え
『エンゲル係数』

教師のコメント
正解です。さすがですね、姫路さん。一般に、エンゲル係数が高いほど、生活水準は低いとされています。



比那名居天子の答え
『我が家のエンゲル係数は、40%ぐらいです。』

教師のコメント
『一人暮らしでそれは多すぎませんか?』



吉井明久の答え
『我が家のオタク系数は約65%です。』

教師のコメント
『オタク系数とはなんでしょうか? それと、他の割合がどうなっているのか気になる所です……』



日常編
第16話


朝。

私は6時前に目を覚まし、身支度を整える。

そして、キッチンに向かいお弁当を作り始めた。

と言っても、既に殆どのおかずは昨日の内に作り置きしてある為、あとは卵焼きなどを作って詰めるだけ。

高校に入ってから毎日作っているから、もう手馴れたものだ。

 

一部のおかずを作り終えた私は、()()の弁当箱にご飯とおかずを詰めていく。

これももう一年生の頃から習慣となってしまっている。

まぁ、持ってかなくても購買や食堂で済ますと思うんだけど、下手したらあのバカは昼食を抜こうとするのよね。

だからいつの間にか、私がお弁当を渡して確実に食べさせる様になっている。

 

「よし、完成ね」

 

私はそう言って今日のお弁当を見る。

うんうん、いつも通り良い出来ね。

………そう言えば、今度姫路さんがお弁当作ってきてくれるのよね~

私は弁当箱の蓋を閉めながら、いつぞやの約束を思い出す。

いつ持ってくるのか聞いておかないとな~

その日に持っていくのが被ると余分になるだろうし。

なんてことを考えながら、私は登校の準備を始めたのだった。

 

 

 

 

 

現在時刻は午前7時。

制服に着替え、鞄を持って忘れ物がないかを確認する。

うん、大丈夫そうね。

ちゃんと弁当箱も持ったし。

 

 

 

「さてと。それじゃあ、アイツを起こしに行きますか」

 

そう呟いて、私は玄関を出て鍵を閉める。

そして、隣の部屋の玄関の前まで歩き、インターホンを押した。

 

 

 

 

 

私は一昨年、中学を卒業して直ぐに一人暮らしを始めた。

まぁ、中学の頃も寮で生活をしていたから正直今更感があったんだけどね。

とにかく、私が中学を卒業するにあたって部屋を探していた時に、明久の両親から丁度隣の部屋が空いていると言われた。

実際に部屋を見せてもらった時に、一人で生活するには広すぎるんじゃないかと思ったが、家賃が比較的安かったので色々と相談をした結果ここに決めたのだ。

 

私と明久は学校は違ったが中学からの付き合いで、その時から彼の両親にも色々とお世話になった。

正直、実の親よりも頼りになる。

 

生活費については普通に生活をしていればバイトをしなくても十分なほど仕送りが送られてくるため、今のところ困ってはいない。

食費が嵩んでるのはちょっと問題な気もするけれど……

 

 

 

さて、インターホンを押してみたが一向に明久が出てくる気配はない。

いつもの事だけどね~

私はそう思いながら、先程使った自分の家の鍵と一緒になっているもう一本の鍵を使って目の前の扉を開ける。

まぁ、簡単に言えば明久の家の合鍵だ。

 

なぜ私がそんなものを持っているのかというと、単純に明久の両親に渡されたから。

明久のことよろしくねと言われて。

当時はどれだけ信用されてないのよと思ったが、今の彼の生活を見ればあの二人の心配は予想通りだったと言えるだろう。

 

 

 

私は明久の家に足を踏み入れ、リビングに自分の鞄を置く。

そしてキッチンに向かい、トースターで食パンを二枚焼いておく。

この辺ももう完全に日課となってしまっている。

勝手知ったる他人の家とは正にこのことだ。

まっ、中学の頃からほぼ毎日入り浸ってるしね~

このマンションに引っ越してからは特に。

おかげで、みっちり勉強を教えたり出来きる。

 

パンが焼きあがる前に、私は明久を起こしに行くことにした。

彼の部屋の前に立ちノックをする。

 

コンコン。

 

 

 

………反応はない。

やっぱりまだ寝ているみたいね。

私は扉を開けて彼の部屋に入る。

 

まず目に入ってくるのは、窓とベッド。

次いで小さなガラステーブルがあり、ベットの上では明久が静かな寝息をたてている。

私はベッドに近づき、気持ちよさそうに寝ている彼の顔を見る。

 

………いつも思うけど寝顔可愛いのよね~

まぁ、女子の間で受けがどうとかネコがどうとか言われてるみたいだから、わからないでもないんだけどね?

 

因みに、私は同性愛に奇異とかはない。

同時に興味もないけどね~

そういうのが好きな友人はいるけど……

 

 

 

閑話休題。

さっさと起こさないとね。

 

「あきひさ~、朝よ~」

「うぅ~ん……」

「ほら、早く起きないと遅刻するわよ?」

 

私は明久の体を揺すりながら、彼を起こそうとする。

 

「うあ~、後30分~」

「そんなこと言って、前に一時間寝てたじゃないの。ほらほら、さっさと起きる!」

「う~……ZZZ」

 

うんも~、このままだと本当に遅刻しちゃうわよ?

………仕方ない。あの手で行きましょうか。

 

「あ、あ~。ああ~、うん」

 

私は声の調整をする。

秀吉みたいに完璧にはできないけど……

 

 

 

「アキくん。早く起きないと、姉さんがおはようのチューをしますよ?」

「おはようございますっ!!」

 

私が明久のお姉さんの声真似をして言うと、明久が勢いよく起き上がる。

効果覿面ね。

明久はキョロキョロと周りを見渡し、私だけなのを確認すると安堵の溜め息を付いた。

 

「もう、天子! いつも、それで起こすのは止めてって言ってるのに!!」

「貴方が素直に起きないのが悪いのよ。ほら、早く支度しなさい?」

「わかったよ……おはよう、天子」

「ええ。おはよう、明久」

 

挨拶を終えて、私は彼の部屋を出た。

そして、すぐさまキッチンの方に戻る。

よし、ちゃんと焼けてるわね~♪

焼きあがったパンを確認し、紅茶とバターの用意を始めた。

 

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

私と明久が声を合わせて合掌をする。

 

「食器は僕がやるよ」

「ん。よろしくね~」

 

じゃあ、私は歯でも磨こうかな~

そう思いながら自分の鞄を漁り、歯ブラシセットを取り出す。

 

実は一時期、面倒くさいからと私の歯ブラシやコップなんかを明久の家の洗面所に置いていたことがあった。

まあ、遊びに来た雄二達に色々勘違いされたり、からかわれたりしたから鞄に入れて持ち歩くようになったけどね~

 

洗面所に行き、歯磨きを終えてもう一度身嗜みを整える。

そして、入れ替わるように明久が歯を磨きだした。

その間私は鞄を持って靴を履き、外で明久が来るのを待つ。

 

数分後、明久が準備を終えて出てきた。

 

「お待たせ~」

「はいはい。ほら、ちゃんと鍵閉めなさいよ?」

「わかってるってば」

 

そんなやり取りをしながら、私たちは登校を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

私と明久は少し小走りで、学校に続く坂を登っている。

まぁ、そんなに急ぐ必要はないんだけどね~

 

「あっ」

「うん? どうしたのよ?」

 

明久が前方で何かに気づいたようだ。

その視線の先を見ると、私達の担任である福原先生がいた。

なるほどね。

 

「「おはようございます。福原先生」」

「ああ。おはようございます」

 

私達は挨拶をしながら先生の横を通り過ぎていった。

そして、坂を登りきった先の曲がり角で……

 

「「うわっ!?」」

「ちょっ!?」

 

明久が誰かとぶつかってしまった。

あらら。

 

「いたたたたた……あっ!」

「いってててて……うん? っ! 君はFクラスの吉井君!」

「君は確か、Aクラスの久保君?」

 

見ると、確かに明久とぶつかった相手は久保君だった。

私は二人に駆け寄る。

 

「ちょっと、二人とも大丈夫?」

「うん、僕は大丈夫だよ」

「ああ、比那名居さんも一緒か。僕の方も大丈夫だ」

「あ、でもパンが……」

 

明久の発言により、私と久保君の視線がそこに集中する。

確かに、久保君が食べていたと思われる食パンが地面に落ちてしまっていた。

 

「ごめんね、久保君」

「な、なに。吉井君が気にする必要はないさ」

 

明久が謝ると、久保君はそう言って立ち上がり腕時計を確認にした。

 

「いけない、急がないと一時限目の予習時間が無くなってしまう」

 

へぇ~、流石Aクラス。予習とかしてるのね。

ウチのクラスでそんな事をしているのは……姫路さんぐらいだろう。

 

「じゃあ、またの機会に」

「うん」

「ええ」

 

挨拶をして先に歩いていく久保君。

その頬には何故か、若干の赤みが差していた。

………ま、まさか久保君って

私はチラリと明久の方を見る。

 

「どうかした天子? 僕の顔に何かついてる?」

「いえ、何でもないわ」

 

まさか、ねぇ?

 

 

 

私は噂を集めて真相をよく探っているのだが、その中で興味の惹かれない噂もいくつかある。

そういう噂に対しては真相を調べたりせず、完全に放置していたりする。

 

しかし、その中に明久に関するある噂があった。

曰く、『吉井明久の事を好きな()()がいるらしい。』

 

別に私は腐女子ではないし、BLに興味もない。

しかも親友に関わる噂だ。

一度は明久の為に調べた方がいいかとも思ったけれど、こういうのはあまり深入りはしない方がいいし、何より面倒くさいと思ったので放置していた。

そもそも、その男子が誰なのか素性も分かってなかったしね~

 

だが、今のやりとりからその男子はきっと久保君だと私は思った。

………今日、康太に会ったら聞いてみよう。

彼なら、多分知っている可能性が高いだろうから。

 

「天子! 僕達も早く行こうよ!」

「あ、そうね」

 

考え事をしていた為、足が止まっていた私に明久が声をかけた。

見ると、明久は少し先にいる。

私は彼に追いつくと、並んで学校を目指した。

 

 

 

 

 

 

「あ、おはよう姫路さん!」

 

私達が学園の下駄箱に着くと、姫路さんが神妙な顔で立っていた。

手には手紙の様な物を持っている。

ふむ? 察するに明久宛のラブレターかなにかしら?

彼女が立っているのは明久の下駄入れの前だし。

 

「へっ!? あ、おはようございます、です。吉井君!」

 

彼女は声を掛けられて、驚いたようにそう返す。

驚きすぎて手紙を隠すの一瞬忘れていたけどね。

そして小走りで階段の方に行ってしまった。

………私には気付かなかったみたいね。

いや、別にいいんだけど。

 

ふと横の明久を見ると、なにか考え事をしていた。

どうせ、さっきの姫路さんの手紙のことを考えてるんでしょうね。

まぁ、本人達の事だから私は口出しませんけどね~

 

「よう、珍しく早いな明久、天子」

「あら、雄二。おはよう」

「あ、おはよう雄二」

「明久、昨日はどうだった?」

「今月の生活費のほとんどが一瞬にして映画と胃袋の闇の中に消えた」

 

……胃袋の闇って言うと腹黒いみたいじゃない。

というか、そんな事なら私にお土産とか買ってこなければいいのに。

桃のクレープおいしかったけどさ。

 

「雄二は?」

「ああ、面白かったぞあの映画。珍しく京子が涙浮かべてた」

「あ、ノーワールド?」

「おう」

「今度見に行く予定だからネタバレしないでよ? まあ、原作持ってるから内容は知ってるんだけどね」

 

面白いのよねあれ。

原作読み返すたびに目が潤んでくるし。

 

「二回見ても全然飽きなかったぞ、逃げるのも忘れるぐらいにな」

「本当に二回見たんだ……」

「原作見たくなったら貸してあげるわ、ラノベだけど」

「おう、頼むわ」

 

「はぁ、そんなことより次の仕送りまでどうやって生きていこう」

「ん? あのゲームの山を売ればいいじゃないか」

「「なんてこと言うんだ(のよ)!!」」

 

私と明久が同時に声を上げる。

 

「何物にも代えがたい優秀な作品の数々を生活費になんか変えられるわけないじゃないか!!」

「そうよ!! それに、まだクリアしてないのだっていくつかあるし、貴方達と遊ぶ用の奴だってあるのよ!?」

「お前ら自業自得って言葉知ってるか?」

「ふん、別にいいのよ。食費は私でゲーム関係は明久。ちゃんと分担はできてるんだから!!」

「いや、よくはねぇだろ。完全に明久が天子のヒモじゃねぇか」

「うん……だから僕も嘆いてはいるんだけどね?」

「去年からずっとだから今更よ! それに私はゲーム買わなくても遊べるし」

「僕から借りるからね……」

「まあ、お前らがそれでいいなら俺は口出さんが……」

 

私は別にそれでいいのよね~

まあ、明久が納得してないみたいだけど

 

 

 

 

 

 

いつまでも下駄箱に居るわけにもいかないので2-Fの教室に向かう。

あ、教室のプレートいつの間にか新しくなってるわね。

木製の看板にはしっかりと『2-F』と彫られている。

 

「それにしても、結局教室の設備が変わらないとは思わなかったよ」

「そうね、まさに骨折り損って所かしら?」

「これというのも、すべて貴様のせいだ!!」

 

明久がそう言いながら雄二を指さす。

行儀が悪いと言いたい所だけど、私は一切口には出さない。

雄二が名前を消さなければ勝ってたのは本当の事だからね~

 

「皆が力を合わせた結果に文句を言うなんて、無粋な奴だな」

「雄二が名前を書き忘れたせいで負けたんだろぉ!」

「落ち着きなさい明久、今更そんな事言っても無意味よ」

「でもさ天子!! こいつは作戦の要だったのに僕でもしないミスして負けたんだよ!? 書いてたら引き分けになって僕達の勝ちだったのに!!」

「別にもういいでしょ、結局引き分けになってこれ以上設備が悪くならなかったんだから」

「……悪くなる可能性あったの?」

「多分卓袱台がみかん箱か何かになってたんじゃない? あと座布団なしとか」

 

もしくは机と座布団が無くなって画板と御座だけとか?

……そんな教室で授業受けたくないわ。

そんなことを考えていると、姫路さんがこっちにやってきた。

 

「坂本君を責めちゃだめですよ。私も負けちゃいましたし」

「う、あ」

「それに、いいじゃないですか。私、この教室好きですよ?」

 

少し頬を赤らめながら言う姫路さん。

まあ、確かに姫路さん的にはそうかもね~

明久の隣に座れるし。

……さて、そろそろ福原先生が来る時間ね。

 

「とりあえず、そろそろホームルームだから座りましょう?」

 

私がそう言うと皆適当に座り始めた。

席が決まってないのはやっぱりどうかと思うのよね……

とりあえず私は昨日と同じ席に座る。

私の後ろには同じく明久と姫路さんが座った。

 

キーンコーンカーンコーン

「キーンコーンカーン。よーしホームルームを始めるぞぉ。皆席につけーってもう座ってるな」

 

チャイムと同時に鉄人先生が入ってきた。

あら? 福原先生はどうしたのかしら?

登校中にすれ違ったから休みなわけないし……

まさかあの後事故に?

 

「あれ、どうして西村先生が?」

 

当然の疑問を島田さんが聞いた。

……なんか背後で桃色の空間ができてる気がするんだけど、気のせいかしら?

 

「お前らがあまりにもバカなので、少しでも成績向上を目指そうと今日から福原先生に代わって、補習授業担当のこの俺がFクラスの担任を務めることになった!」

「「「「「「「「なにーっ!!」」」」」」」」

「鉄人が担任にっ!?」

 

私以外のFクラス全員が叫ぶ。

へ~っ! 

鉄人先生が担任だなんて、これはまた面白くなるわね!

 

「容赦なくビシバシしごくから覚悟しておけ!」

 

 

……あ、そっか鉄人先生って全教科教えれるから、このクラスは担当ごとの先生の入れ替わりもないのか。

ま、その方が効率は良さそうだからどうでもいいわね。

 

 

 

 

 

 

「はぁぁ、これじゃ毎日が鬼の補修になる様なものじゃないか」

「そうじゃのう、どうにかできないものじゃろうか?」

 

私と明久、雄二、秀吉の四人は屋上で休みながら話をしていた。

諦めが悪いというかなんというか。

 

「そうだっ、もう一度召喚戦争をやって勝てばいいんだ!」

「それは無理な話だな」

「どうして!?」

「忘れたの明久? Aクラスとの交渉の結果、お互いに3ヶ月間宣戦布告を禁止にしたじゃない」

「あ、そうだった……」

「因みにだが、負けてた場合も3ヶ月禁止になる」

「なるほどのう」

 

まあ、3ヶ月もできないとなると操作が鈍りそうで困るんだけどね~

また明久の手伝いでもして慣らしておこうかしら?

 

「なぁに、3ヶ月なんてあっという間だ。その間に新たな作戦でも立てるさ」

「ぬあ~、どうしてこんなことに~」

 

明久が頭を抱えて唸り始めた。

すると、いつの間にか康太が現れ明久の肩に手を置いた。

 

「…………いいこともある」

「うん?」

 

康太が明久に何かの写真を見せた。

こちらからは何が写っているのかは見えないが、隣で秀吉が額に手を当てていることから昨日の秀吉の写真だろうと予想をつける。

二枚あるけど二枚とも秀吉の写真なのかしら?

 

「一枚五百円……今ならプラス三百円でこれもつける」

「全部勝ったぁ!!」

「まいどあり~」

 

そう言って康太は校内に戻っていった。

合計千三百円の出費。

……バカじゃないの?

 

「うおぉぉ、生ぁ!!」

「お前、生活費は?」

 

雄二の言葉にA型バリケードを壊しながら尻餅をつく明久。

 

「おぉぉぉぉぉ」

「何を悩んでおるのじゃ?」

「男なら後悔しなぁい!!」

「勇者だな」

泣きながら、写真を一枚ずつ小さなアルバムに入れていく明久。

バカだ。こいつは本物のバカだわ。

 

「これでとうとう、次の仕送りまで一日カップラーメン一個決定だ」

「安心しなさい明久、次の仕送りまで食費は面倒見てあげるわよ」

「天子!!」

「その代わり、映画代よろしく♪」

「分かった!!」

「完全に尻に敷かれてるな」

「そうじゃのう……そう言えば明久よ、お主何か忘れておらぬか?」

「え?」

「あ、ここにいたんですね!」

 

そう言って、姫路さんと島田さんがこちらにやってきた。

何かあったのかしら?

 

「ねぇねぇアキ、週末の待ち合わせどうする?」

「まち、あわせ?」

 

…………

 

「忘れたとは言わせないわよ?クレープ奢ってくれる約束でしょ!」

「えっ……そ、それって、昨日ので終わりじゃないの!?」

「昨日は昨日、約束は約束」

 

ああうん、確かに昨日そんな事言ってたわね。

 

「私もご一緒していいですか?」

「えっ……姫路さんも!?」

「実は吉井君と一緒に見たい映画があるんです」

「え、ええっとぉ」

 

そう言いながら、助けを求める様にこちらを見る明久。

うんも~、仕方ないわね

 

「二人とも週末はダメよ」

「な、何でよ比那名居!!」

「そうですよ、何でですか!!」

「理由は三つ。一つ目は昨日奢ってもらったんでしょ? それなら週末も奢って貰おうなんてのはダメだと思うんだけど?」

「そ、そんな事言ったって、約束は約束でしょ!!」

「だから昨日()()()()奢って貰ったんでしょ? ならもう一回っていうのは流石に横暴じゃないかしら?」

「それは……」

「二つ目に、明久にはもう奢れるだけのお金がないのよ。だから物理的に無理」

「ちょっと天子!?」

 

私がそう言うと慌てて叫ぶ明久。

 

「何よ、事実でしょ?」

「確かに事実だけど、僕が情けなくなって来るから止めて!?」

「安心しなさい明久、もうお前は情けないわ」

「手遅れ!?」

 

いや、そもそも食費の時点で情けないのに何を今更。

 

「三つ目、明久と昨日週末に映画見に行こうって約束したのよ。昨日奢って週末空いたからって」

「なっ、どういうことよアキ!!」

「い、いやだってさ、昨日奢って終わりだと思ってたんだよ! まさか週末も連続で行くなんて思わないじゃないか」

 

うん、これが問題なのだ。

明久としては昨日奢って終わりだと思っていた。

私も明久がそう言っていたから、そのまま鵜呑みにして約束をしてしまったのだ。

なんなら、既に席も二人分ネットで予約してしまった。

後で明久から徴収するけどね。

 

「じゃ、じゃあ、四人で一緒に行きましょう? その方が楽しいですし!」

「別にいいけど、席ももう予約してるから離れるかもしれないわよ?」

「もういいわよ!! 瑞希行こ!!」

「あ、美波ちゃん!!」

「えっと、なんかごめんね?」

「い、いえ、それでは! 待ってください美波ちゃん!!」

 

校内に向かって歩き出した島田さんを追いかけていく姫路さん。

う~ん、なんか悪い事したわね。

空気も悪くなったし……

 

「お前のせいよ明久」

「え、あ、うん。ごめん天子……」

「……夕飯抜きでいい?」

「それは勘弁して!?」

 

とそんなやり取りをしていると、苦笑いをしながら雄二が声をかけてくる。

 

 

「まあなんだ、取り合えずデート楽しんで来いよ?」

「う~ん、明久とはしょっちゅう二人で出かけてるから、今更デートって感じもしないのよね」

「そりゃなんともお熱いこって」

 

そ~いうのじゃ全然ないんだけどね~

ま、映画は楽しみにしておきましょうか!!

 

 




お久しぶりです、若しくは初めまして?
いつの間にか二年も経ってしまいました。
リアルが落ち着いて、連載再開となりましたのでもしよければ見てやってください。

この二年はノゲゼロ見まくったり、憑依華に天子来てヒャッハーしたり、茨歌仙で天子がカッコ可愛くてヒャッハーしたりしてました。


今回は二人の関係性にスポットが当たりました。
明久の買った写真が増えていた理由は、15話の最後を見ていただければなんとなく分かるかと。

次回は二人のデート回です。
流石に持って行き方が無理やりすぎたでしょうか?
でもこれ以上にいい方法が思いつかなかったです。

それでは、また次回もよろしくお願いいたします。
バイバイ。

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