バカとテストと緋想天   作:coka/

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バカテスト【歴史】


問 次の(  )に正しい年号を記入しなさい。
『(     )年 キリスト教伝来』



霧島翔子の答え
『1549年』

教師のコメント
正解。特にコメントはありません。



坂本雄二の答え
『雪の降り積もる中、寒さに震えるキミの手を握りながら、以後よく広まった1549』

教師のコメント
正解ですが、なぜそんなロマンチックな表現をするのでしょうか?
 


第15話

「二対二で、今回の試召戦争は引き分けとなりました。両クラス、この後どうするのかを話し合ってください」

 

Aクラスの教室に戻ってきた高橋先生の宣言により、勝敗が言い渡される。

後は生徒同士で話し合えってことね。

 

「なんだよ雄二、あの結果は!?」

「見ての通りだ明久。俺は名前を書き忘れた」

「僕でもそんなミスしないのに!!」

「いやまさか、あんな伏兵が潜んでいるとは意外だったなぁ」

「自分が伏兵になってどうするんだよ!」

 

明久が雄二に対して叫ぶ。

その間に、私は高橋先生に近づきヒソヒソと話す。

 

「………高橋先生、雄二の答案用紙を見せてください」

「いいですよ。はい、どうぞ」

 

そう言って先生が渡してきた答案用紙を見た。

そこには確かに名前がなかった。

しかしよく見れば、そこには名前が書いてあっただろうことが分かる。

そう、そこには『坂本雄二』と読める跡が残っているのだ。

 

自分の名前を消したのね……

そして、彼が間違えた問題とその回答を見て、私は苦笑いを浮かべた。

 

「まったく、()()するなら最初からやらなかったらよかったのに」

 

私はいまだ責められている雄二の方をチラリと見ながら、そう呟いた。

彼が間違えた問題は『大化の改新』。

そしてその回答欄に書かれているのは、『625年』だった。

 

「ありがとうございました」

 

私は高橋先生にそう言って、用紙を返す。

さてと、こうなったら仕方ないわね。

戦後対談での交渉を頑張らないと。

 

「皆その辺にしなさい」

「でも天子!」

「明久もそこまでよ。今はこのあとの対談のことを考えないとでしょ? なら一々過ぎた事を言っても仕方ないわ」

「そうだけどさ……」

「それでも気に食わないってんなら、全部終わったあとにしなさい」

「おい天子! そいつはフォローになってねぇぞ!?」

 

私の発言に雄二がそう叫ぶ。

あら、何を勘違いしてるのやら。

 

「誰も貴方のフォローなんてしてないわよ? そもそも、ちゃんと名前を書いていれば勝ちだったにも関わらず、無記名で引き分けにしたクラス代表さんなんかのフォローなんかを、私がするとでも思ったの?」

「うぐっ……」

 

私の辛辣な言葉に、雄二は苦い顔をして黙る。

 

「そんな顔するぐらいなら、ちゃんとやりなさいよね。さてと、代表さん? 対談は私がやってもいいかしら? 明久でもしないようなミスをしたポンコツには任せてなんておけないので」

「あ、ああ頼んだ」

「頼んだ? それが人に物を頼む態度かしら?」

「お、お願いします!」

「よろしい」

「天子、地味に怒ってるね」ヒソヒソ

「あんなに辛辣な天子は久しぶりに見るのじゃ」ヒソヒソ

「…………恐ろしい(ブルブル)」ヒソヒソ

 

………全部聞こえてるんだけど。

因みに、康太が震えている理由は、私の写真を勝手に売りさばいていた時のお話で、今みたいに辛辣に話したからだったりする。

 

「それじゃあ、行ってくるわ」

 

私はいつものメンバーにそう告げ、対戦の時のように真ん中へと向かった。

Aクラス側からは、既に優子が来ている。

さてと、始めましょうか!

 

 

 

「お待たせしてごめんなさいね? 早速、戦後対談の交渉を始めましょうか」

「あら、交渉するのが前提なのね」

「当たり前でしょう? それとも何? 数分後に戦争でも始めるつもりかしら?」

「ウチはそれでもいいみたいだけどね」

 

私が聞くと、そう答える優子。

へぇ、本当にいいのかしら?

 

「とりあえず、案を出そうと思うわ」

「ふ~ん、とりあえず聞いてあげる」

 

見習いなさい、島田さん。

こういうのが本当のツンデレよ?

照れ隠しで暴力ばっかり振るう事だけがツンデレではないわ。

 

「ありがとう。それじゃあ一気に言うけど、

一つ目は、このまま普通の試験召喚戦争に移行する案。

勿論、開始前に回復試験は受けれない等の条件が付くけどね。

 

二つ目は延長戦を行う。

これは単純にクラスからまた一人づつ出して戦わせるわ。

そして、これに勝った方を勝利とする案。

 

三つ目は、このまま引き分けで終わる案。

これも単純ね。引き分けのまま戦争を終わらせる。

まぁ、それだけじゃ納得できないというなら、お互いに条件を出し合うのも有りよ。

 

と、まぁこんな所かしら?

一応、この対談でどちらかの勝利にするということもできるけど、流石にそれは論外よね~」

 

 

「そうね。後は引き分けの一戦をやり直すとか?」

「悪いけどそれは却下ね。確実にこちらの負けが決まってるもの」

 

康太は保険体育以外はからっきしだし、工藤さんは他の点数もそこそこ高いだろうしねぇ。

 

「なら、さっきも言ったけれど、ウチとしては一番の戦争の移行。つまり総力戦を推すわよ?」

「へぇ、この状態でそれを言うの?」

「あら、どう考えたってウチが有利でしょ?」

 

ふむふむ、確かに点数だけで見ればAクラスのほうが有利でしょうね。

でも……

 

「なら、貴女と工藤さん、あと、佐藤さんは補習室行きね」

「は? なんでよ?」

「まさか忘れたの? 今言った三人は、さっきの戦いで既に戦死してるじゃない。まぁ、ウチも康太と姫路さんが戦死してるけど」

「あっ……」

「それに、明久は日本史と世界史の点数が高得点のまま残っているし、私もこの二つは得意だからね。それを主力に戦えば、操作に慣れていないAクラス相手でも勝ち目は十分あるわよ? 私達の実力は、今回身に染みてわかっているでしょうし」

「で、でも、こちらにはまだ代表もいるのよ? いくら貴女達二人が強くても代表相手じゃ……」

 

ああ、やっぱり忘れてるのね。

 

「優子。霧島さんの日本史の点数が今いくつぐらいか分かる?」

「はい? 分からないけど、代表は暗記系が得意だし400点以上はあるんじゃない?」

「……優子、私の日本史の点数は今そんなにない」

「え?」

 

私達の交渉を聞いていた霧島さんがそう言う。

そう、今の彼女にそんな点数はないはずだ。

なぜなら……

 

「霧島さんが日本史のテストを受けたのついさっきよ? つまり、彼女の日本史は97点しかない。よって、私達が日本史をメインに挑めば、そちらの代表である霧島さんを簡単に倒すことができるわ」

「っ!! そんなの上手く行く訳……」

「上手く行くかじゃないわ。上手く行かせるのよ。たとえ、私と明久、雄二の三人以外が戦死しようとね」

 

私が黒い笑みを浮かべながらそう言うと、優子が少し後ずさった。

あらあら。こんなの殆どはったりに過ぎないのに、そんな及び腰でいいのかしら?

 

 

たしかに日本史でなら霧島さんを楽に倒せるだろう。

最悪、私の国語とかで『全人類の緋想天』を当てられれば勝てるだろうしね。

でも、Aクラスが戦死覚悟で、大人数で攻めてきたらさすがの私達でもさばききれないのよ?

それに~、流石に今から総力戦とか私も面倒なのよね。

フィードバックで疲れてるし。

何より、姫路さんと康太がいないのはやっぱり辛いからね。

 

だから、総力戦はどのみち却下なのよね~

 

「ということで、二番の延長戦で白黒つはっきりつけるか、三番の条件付きの引き分けで終戦をオススメするわ。因みに一押しは三番よ?」

 

二番は勝ちにこだわるなら選ぶでしょうけど、その分リスクも高いだろうし。

 

「……気になるんだけど、なぜ勝てる自信があるならそれをやらないの?」

「そうだよ天子! 勝てるのなら戦った方が得じゃないか!」

 

優子の言葉に明久が叫んだ。

ああ、そのことね。

 

「確かにAクラス戦に勝つことはできる。でも、そのあとが問題なのよね」

「そのあと?」

「ええ。たとえ今Aクラスに勝って設備を手に入れても、消耗しきっている状態で他のクラスに挑まれたら負けるもの。それを考えたら、無理に戦う必要がないじゃない」

「なるほどね」

 

一応これは、私達FクラスがAクラスに負けた場合にも言えるんだけどね。

まぁ、言わないけど。

 

「……因みになんだけど、延長戦の場合は誰を出すの?」

「うん? 気になるの?」

「ええ。誰が出るかで色々と変わるからね」

「まぁ、そうでしょうね」

 

誰が出るかねぇ。

そんなの……

 

「私が出るわよ?」

『はぁっ!?』

 

私の返答に、優子だけじゃなく交渉を聞いていた両クラスの生徒から疑問の声が上がる。

え? 皆なんでそんなに驚いてるのよ?

 

「何言ってるのよ! 貴女はもう出たじゃない!」

「別に二回出てはいけないというルールは無かったじゃないの。それに、私は負けていないし」

「いやいや、そうじゃなくて! 普通延長戦なら、クラスの別の誰かを出すんじゃないの!?」

 

はい? 優子は何を言っているのかしら?

 

「優子。貴女が最初に言ったじゃない。5対5の勝負だと。つまり延長戦となれば、5人の内の負けていない選手が出るもんじゃないの?」

 

格闘漫画のチーム戦とかなら普通そうだと思うんだけど?

 

「高橋先生、私が言ったことに問題はありますか? 今回の形式が代表選手選出式の5対5なので、延長とならば私の言った通りでは?」

 

私は疑問をそのまま審判役の高橋先生に聞いた。

いくらAクラスの担任でも、ダメとは言わないと思うけど……

 

「はい、この場合は比那名居さんが出ても問題はないでしょう。細かくルールも決まっていませんでしたし、先ほど負けてもいないので。もちろん、別の誰かを出しても大丈夫でもありますが……」

 

ふむふむ。じゃあ、とりあえず私が出るのは問題ないわね。

あ~、良かった。

Aクラス相手の一騎打ちなら、私が出た方が確実だろうしね~

 

「そういうことだから、私が出るわよ。因みに、延長戦なら教科の選択権もまだこっちにあるしね」

「うぐっ………わかったわ、引き分けでいいわよ!」

 

優子は困ったような顔で霧島さんを見て、彼女が頷いたのを確認してから少し投げやり気味にそう言った。

よし、とりあえず面倒なことにはなりそうにないわね~

良かった良かった。

 

「ありがとう。それじゃあ、条件の交渉を行いましょうか。何か希望はあるかしら?」

「そうね、とりあえずFクラスの3ヶ月間の宣戦布告の禁止はどうかしら?」

「ええ、構わないわ」

 

優子がそう言い、私は雄二に確認するまでもなく返答をする。

 

「その代わり、Aクラスも同じく3ヶ月間宣戦布告を禁止ね。元々、そちらが仕掛けてきたのだし」

「わかってるわ」

 

後は何かあるかしら?

とりあえず設備の交換やランクダウンとかは無理として……

……………あっ!

 

 

「もう一つ条件の提案いいかしら?」

「内容によるわ」

「まぁ、貴方達に損はないわよ。私の提案は霧島さんが言った『勝った方が言うことを聞く権利』の話よ」

「っ!? おい天子! お前何を考えて―――――!?」

「交渉は私に任せると言ったでしょ? 一々口出ししないでよ。明久、秀吉、康太。雄二を押さえなさい」

「う、うん、わかったよ」

「よく分からんが、こうすればよいのか?」

「…………任された!」

 

私の言葉によって、明久と秀吉、康太の三人が雄二をその場に押さえだした。

 

「おい、お前ら離せ!!」

「さて、話を戻しましょうか。『勝った方が言う事を聞く権利』の件だけど、あの権利を霧島さんのみに承諾しようと思うわ。その代わり、それを使用できるのは彼女に負けたうちの代表にのみよ」

「なっ!? 天子、何を勝手に―――――」

「どうかしら霧島さん?」

 

私は声を荒げる雄二を無視して、霧島さんに聞く。

多分、私の予想は当たってると思うんだけど……

 

「……いいの?」

「ええ。なにか叶えたい事があるんでしょ?」

「……(コクリ)」

 

霧島さんが頬を少し赤らめながら頷いた。

どうやらビンゴみたいね♪

 

「とういうことで、FクラスとAクラスの3ヶ月間の宣戦布告の禁止と、霧島翔子による坂本雄二への命令権を条件に、この戦争を引き分けで終戦としたいのだけど?」

 

私は薄く笑みを浮かべながら、優子に聞く。

 

「ええ、それで了承するわ」

「交渉成立ね♪」

 

 

 

こうして、条件付きの引き分けという形で、Aクラスとの戦争は終戦を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてと……

 

「それじゃあ、霧島さん。命令をどうぞ?」

「ありがとう、比那名居」

「どういたしまして」

 

私がそう言うと、霧島さんが今しがた解放された雄二に近づいていく。

そして、疲れたような表情の彼の前に立った。

 

さぁ、覚悟しなさい雄二。

一途に恋する乙女は意外と強かなのよ?

 

 

 

「……雄二、私と付き合って」

 

 

 

霧島さんが雄二に告白をする。

それによって、教室にいるほとんどの生徒がポカンとした顔をしていた。

 

まぁ、あの霧島さんがこの大勢の中、Fクラスの雄二に告白したんだからそうなるわよね~

そして、それに対する雄二の返答は……

 

「やっぱりな。お前まだ諦めてな方のか」

 

彼は予想通りだという風にそう言った。

 

「……私は諦めない。ずっと雄二のことが好き」

「その話は何度も断ってるだろ? 他の男と付き合う気は無いのか?」

「……私には雄二しかいない。他の人なんて興味ない」

 

わ~お、霧島さんって本当に一途なのね。

 

「拒否権は?」

 

そんな彼女に対して、酷いことを言う雄二。

 

「……ない。約束だから。今からデートに行く」

 

まぁ、あるわけ無いわよね~

そもそも、これはお願いじゃなくて命令なんだし。

 

「いや、ちょっと待て!? そもそもあれは天子が勝手に決めただけで!?」

「……でも、私は雄二に勝った。誰も、戦争に負けた方とは言っていない」

「ぐっ……。いや待て、やっぱり俺達の負けでいい! だからこの約束だけはなかった事に―――」

 

とそんなことを言い出す雄二。

いや、どんだけ嫌なのよ。それはそれで、霧島さんが可哀想じゃない。

まったく。素直じゃない上に往生際まで悪いんだから……

 

 

なんて呑気なことを考えていたら、霧島さんが雄二を気絶させようとでも思ったのか、拳を握っていた。

って! 流石にそれは待った!!

 

「ストップよ、霧島さん!!」

 

私はそう言いながら、二人の間に割って入る。

 

「た、助かったぜ天子」

「……比那名居、止めないで」

 

雄二が私に礼を言い、霧島さんが抗議をしてくる。

 

「いいえ、霧島さん。私は止めるわ。貴女の為にもね」

「……私の為?」

 

霧島さんはわけが分からないといった様に、小首を傾げた。

人形みたいな容姿も相まって、凄く綺麗で可愛いわね。

でも、今は真剣にお話しないと。

私は真剣な表情で話を続ける。

 

「そう、貴女の為よ? あのね、命令権で雄二と無理矢理付き合うのはまだ良いわ」

 

私がそう言うと、雄二が「良くねぇよ」とか言ってくるが無視する。

 

「でも、暴力だけは絶対ダメよ? そんなことをして雄二が喜ぶと思う?」

「……でも」

「確かに雄二は素直じゃないから嫌だとかダメだとか言うだろうけど、だからって暴力に訴えていたら良い結果にはならないわ。むしろ、雄二が貴女のことを嫌いになってしまう可能性だってあるわ」

「……っ! そ、そんなことっ!」

「無いと言い切れる? だって暴力を振るわれて痛い思いをするのは雄二なのよ?」

「……私だって心が痛い」

「それは、貴女の勝手な気持ちでしょう? いい、霧島さん? 心の痛みと物理的な痛み。より危険が有るのはどう考えても後者よ。何か起こってからじゃ遅すぎるの。最悪の場合雄二と一緒に居れなくなる可能性だってあるのよ?」

「……それは嫌!!」

 

雄二と一緒に居れなくなる。

そう言った瞬間、彼女が今までで一番大きな声を出した。

まったく。ここまで明確に愛されてるのに雄二の奴ったら……

 

「なら、暴力は振るっちゃダメ。ある程度なら雄二だって許容できるだろうけど、今みたいに気絶させようとしたり痛めつけようとするのはダメだからね? せめて無理矢理引っ張るとかにしなさい」

「オイマテ天子! 最後のはフォローになってねぇぞ!」

「……わかった。気をつける」

「ええ、そうしてね? 流石に私も友人がボロボロにされるのとか、貴女と彼の関係が崩れたりするのを見たくはないから」

「……比那名居は優しい」

「そうかしら? まぁでも、もし相談とかあったら乗ってあげるわよ。私あんまりそういう経験ないけど」

「……ありがとう」

 

私は話を終えたのでその場から少しズレて立つ。

そして一歩、霧島さんが雄二に向かって前に出た。

 

「……雄二、デート行く」

「いやだから、俺はお前とは付き合わないしデートも行かないって言ってるだろ?」

「……それでも行く」

 

そう言って彼女は雄二の後ろに回り、少し背伸びをして彼の首根っこを掴んだ。

 

「おいちょっと待て翔子! 今天子に暴力はやめろって言われたばかりだろ!?」

「……これは暴力じゃない。それに、無理矢理引っ張るとかなら良いと言われた」

「それにこれぐらいなら、貴方は何ともないでしょ? 甘んじて受け入れなさいね、雄二?」

「クソッタレッ!! 次の戦争の時は絶対こき使ってやるから覚悟しとけよ、天子!!」

 

雄二は捨て台詞を言いながら、ズルズルと霧島さんに引きづられていったのだった。

とりあえず、めでたしめでたしね。

 

 

 

今回私が彼女の行動に口を出した理由は二つ。

一つ目は、単純に霧島さんの暴力行為の抑制。

彼女のような一途なタイプは、嫉妬等で周りが見えなくなる可能性が高い。

そうなると最悪の場合、病院送りや警察沙汰になってしまうかもしれないだろう。

 

まさに、恋は盲目。

しかも本人が純粋で素直な分、嫉妬に駆られた場合突拍子もない行動に出る可能性がある。

そうなると、ヤンデレルートまっしぐらね。

監禁とかで済めばまだいいけど、友人が死ぬのだけは避けたし。

 

 

そして二つ目の理由。

それは島田さんにチャンスを与えること。

具体的に言えば、彼女の行為の抑制が主な理由だ。

 

霧島さんに言ったことと似通っているが、今のままでは島田さんと明久が付き合ったりする可能性は低いだろう。

むしろ、明久の彼女への苦手意識が今よりも強くなってしまうかもしれない。

そうなれば、自然と彼は島田さんと距離を置いてしまう可能性がある。

まぁ、可能性があると言うだけで、あのお人好しのバカが実際にそうするかは分からないけどね?

 

まぁ、こちらは「島田さんがそうなればいいな~」程度のものだから、あまり期待はしてない。

でももしこれで彼女が変われるのなら、私も素直に応援できるようになるだろう。

 

正直、何様だって言われても仕方ないんだけどね~

まぁ親友の幸せを願っているということで、ここはどうか一つお願いするわ!

 

………私は一体誰にお願いしてるのかしら?

 

 

 

「さぁ~てと。それじゃあ、アキ? 約束通り、クレープ食べに行こっか!」

「え、それは週末って約束じゃぁ!?」

「週末は週末。今日は今日!」

「そ、そんなぁ!? 二度も奢らされたら、次の仕送りまで僕の食費とかが!!」

 

霧島さんたちがいなくなり、私が色々と思考の整理をしていると、いつの間にか回復して話をしていた明久達が騒ぎだす。

周りを見ると、FクラスやAクラスの生徒は殆んど帰ってしまったようだ。

本当にいつの間に……

 

「ダメですよ。吉井君は私と映画を観に行くんです!」

「ええぇぇ!? 姫路さんそれは話題にすら上がってないよ!?」

「はい。今決めたんです」

 

姫路さんが明久の右手を取りながらそう言った。

二人とも積極的ね~

 

「ほら早く! クレープ食べに行くわよ!」

「どんな映画に連れてってくれますか!」

 

二人が明久の腕を引っ張りながら連れ去られていく。

なんていうか、あれね。

向きが違うけど、宇宙人が連れて行かれている写真を思い出すわ。

なんだったかしら。

ロズウェル事件?

 

「そんなぁ、いやぁぁっ! 生活費が! 栄養がぁ! そ、そうだ! 助けて天子!!」

「いってらっしゃい。楽しんできなさいよ~」

「唯一の希望に見放された!! あ、ちょ、待って二人共!! 背中が―――!!」

 

私は引きづられて背中を打っている明久を見送った。

すると、近くで同じく三人のやりとりを見ていた秀吉と康太がこちらに来る。

 

「あいつはもしかしたら、本物のバカかも知れぬのう」

「…………うん(コクリ)」

「と言うよりは、ものすごく鈍感なだけでしょうけどね~」

 

二人の言葉に私が自分の意見を言ってみた。

ああいうのを朴念仁というのかしら?

いやでも、恋愛自体には興味あるみたいだし。

………わからないわねぇ

 

「…………天子。今日の写真を売ってもいいか?」

 

不意に、康太がそう言って私に写真を見せてきた。

その写真は私と私の召喚獣が写っており、『全人類の緋想天』を撃っている姿だった。

あの場面でよく撮れたわね……

 

「良いけど、よくこんなに上手く撮れたわね。あと、これ売れるの?」

「…………ベストショットは逃さない。売れないこともない。あと、お得意様は多分買う」

 

お得意様ねぇ。

私の写真を売り出した頃から買ってるらしいけど、一体誰なのかしら?

流石の康太も守秘義務で教えてはくれないし。

 

「まぁ、いいんじゃない?」

「…………協力感謝する。できれば、もう一枚くらい新作が欲しい」

「………そっちが本題でしょ?」

「…………ち、違う(ブンブンブン)」

「ムッツリーニよ。そんなに勢い良く頭を振ったら首を痛めるぞい?」

「…………問題ない(ブンブンブン)」

 

まったく、そうならそうとはっきり言えばいいのに。

別に今日はもう暇だから邪険にもしないのにね~

 

「わかったわよ。とりあえず、今回はどうするの? 家で撮ってこれば良いのか、貴方が撮るのか」

「…………前回は撮ってきて貰ったから、今回は俺が撮る」

「衣装とかは?」

「…………秀吉に頼んだ」

「うむ、心配はいらぬぞ天子」

 

別に心配はしてないんだけどねぇ。

 

「わかったわ。それじゃあ、演劇部の部室の方に行けばいいかしら?」

「そうじゃな。そうしてくれると助かる」

「了解。それじゃあ二人とも行きましょうか」

 

私はそう言って教室を出た。

後ろから二人も付いてくる。

まぁ、何はともあれ今日も疲れたわね~

 

 

 

 

 

このあと、私は演劇部の部室で撮影をしてから、帰路に着いたのであった。




またもギリギリになってしまいました。
そして、時間もないというね……
中途半端に終わってしまい、申し訳ありません。

―追記―
加筆修正が終わりました。

はい。ということで、いかがだったでしょうか?
今回は戦後対談と交渉がメインでした。
後半の翔子の告白と、暴力行為の抑制もありましたがね。


今回の話は途中で一度投稿を行ってから加筆修正を行いました。
一日かかるとは思いませんでしたがね……
まぁ、こんなグダグダな作者でも、見放さずに見ていただければ幸いです。


暗い話はここまで!
交渉はあんな感じになりました。
ぶっちゃけ、特に思いつかなかったからなんですがね。


翔子の暴力行為の抑制。
あれについては彼女の嫉妬等によるものだと思うのですが、だからといって雄二を痛めつけていい理由にはならないのでこうしました。
まぁ、うちの翔子は原作よりはやりすぎないと思いますよ?
それでも色々空回りはしそうですがね。

最後の明久や康太&秀吉の絡みは、只の次回の伏線です。
まぁ、次回はアニメ第3話の内容なのでね。


と言ったところで、今回はここまで。
改めて、一度中途半端に投稿してしまいすみませんでした。
今後はないように気を付けます。

次回は幕間の予定です。
内容は明久と雄二はあの後どうなったのか。
まぁ、アニメ版の第三話冒頭とあまり変わりませんがね。
その上かなり短くなると思います。
まぁ、楽しんでいただければ幸いですが。

それでは、また次回お会いしましょうね~

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