Aクラスの教室に残り、ディスプレイで二人の様子を見ている天子達はというと……
「では、始めてください」
その言葉で第五回戦、つまり雄二と霧島翔子のクラス代表戦が始まった。
二人共スラスラと問題を解いていく。
まぁ、霧島翔子は勿論、勉強したと言っていた雄二ならこれくらいは余裕だろう。
ディスプレイの下側には、ご丁寧に問題が一問づつ表示されていった。
ふむ……
「明久、ちょっとアレ答えなさい」
「ちょ、天子! また僕のこと馬鹿にしてるね!?」
「いや、あれぐらい解けるだろうと思って言ってるのよ?」
「ふんっ、なら次の問題から解いてあげるよ!」
そう言ってディスプレイを見ていると、画面下の問題が切り替わる。
問 『織田信長が長篠の戦いで手を結んだのは誰?』
ああ、これなら簡単ね。
「答えは徳川家康だよね?」
「ええ、正解よ」
戦国時代系の問題は明久の得意分野でもあるしね。
流石ゲームをやり込んでいるだけはある。
「では、明久。その織田と戦ったのは誰じゃ?」
秀吉が明久にそう聞いた。
まぁ、これも大丈夫でしょう。
「もう、バカにしないでよ秀吉! 武田信玄じゃないか!」
………なんでそうなるのよ
「明久、答えはその息子の武田勝頼じゃ。信玄はその前に死んでおる」
「あ、あれ!? そうだっけ?」
「まぁ、真田幸村と答えなかっただけマシね」
因みに知ってると思うけど、真田幸村の本名は真田信繁よ。
そんなんことを考えていると、また問題が変わる。
問 『アメリカ総領事ハリスとの間に、日米修好通商条約を結んだ大老は?』
「井伊直弼!」
正解。
それなら……
「じゃあ、その時の将軍は?」
「え!? え~とぉ……」
まぁ、急に言われたら分からないわよね……
「…………徳川
「違うわ康太。答えは徳川家茂よ」
というか、家梨ってなによ。
そんなの名前の将軍いないわよ。
「…………家を持っている方だったか」
「家を持ってないから家梨ってこと? そもそも将軍はみんな家は持ってるでしょうが……」
と、そんなことを話していると、
「あ、解った! 徳川吉宗だ!」
「明久、それは暴れん坊将軍じゃ……」
………はぁ。
「明久、もう一回最初っから日本史勉強する?」
「また飛鳥時代からやるの!? 流石にそれは勘弁して!!」
「いいえ、今度は旧石器からやるわ」
「さらに酷くなった!!」
まぁ、流石に冗談だけどね?
「というか、比那名居がアキに日本史教えたの?」
「ええ、そうよ? 春休みとかにみっちりとね」
「おかげで点数は上がったけど、ちょっと頭パンクしそうだったよ」
「なによ大げさねぇ」
ちょっと一日六時間勉強しただけじゃない。
日本史と世界史をメインに三時間ずつ。
………いや、流石にやりすぎだったかしら?
「日本史や世界史だけならまだしも、合間合間に国語やら理科やら教えてくるんだもん。そりゃパンクしそうになるよ」
「だって、歴史ばっかやっててもつまらないじゃない。だから、その時代に関係してる言葉とか使われた薬品とかを教えてるのよ?」
「そんな風に勉強するのは比那名居さんだけな気がしますけど……」
「まぁ、説明自体はすっごく分かりやすかったんだけどさ……」
明久どころか姫路さんにまで呆れられてしまった。
解せないわ。
「…………問題が年号系に変わった」
康太のその発言で、私達はもう一度ディスプレイに意識を向ける。
問 『元明天皇が平城京に遷都を行ったのは何年か』
問 『平安京に桓武天皇が遷都したのは何年か』
………なんか問題自体は小学生レベルなのに、問題文の言い回しがおかしい気がするんだけど。
気のせいかしら?
「……? 桓武天皇は知ってるけど、元明天皇って誰だっけ?」
明久がそんな事を聞いてきた。
まぁ、流石にこれはあんまり教えてなかったし知らないわよね。
「元明天皇っていうのは、平城京に遷都した時の天皇よ。確か性別は女性だったはず」
「へぇ~、流石天子、詳しいね」
「私もあんまり知らないけどね」
因みにだが、平城京は710年。平安京は794年である。
そんなんことを考えていたら、また問題が変わった。
問 「鎌倉幕府が設立されたのは何年か答えなさい。」
「
「正解だけど、大声で言う必要はないわよ?」
鎌倉幕府は源頼朝を創設者として1192年に作られた。
実際は北条氏が設立したのよね~
「あっ! よ、吉井君!」
「どうしたの姫路さ―――あっ!」
ディスプレイに視線を戻していた姫路さんと明久が驚く。
私もそちらを見てみると……
問 『大化の改新は何年に起きた出来事?』
あっ、出た。
「こ、これで後は雄二が満点を取れば!」
「ワシらの机がシステムデスクになるというわけじゃのう」
「…………ノートパソコンもある」
三人が口々にそう言った。
私は画面を見つめている。
雄二はその問題に気づいたのか、一瞬手を止めた。
………さぁ、どうするの雄二。
私だけでなく、AクラスとFクラス両方の生徒が固唾を飲んで、この試合を見守っている。
ふと、私は気づいた。
「笑ってる?」
「え? どうしたの天子?」
「あっ。いや、何でもないわ」
私は明久にそう言って、もう一度画面の向こうに目を向ける。
確かにさっき雄二は笑っているように見えた。
それも、いつもみたいなニヒルな笑みではなく、心の底から面白いことを考えていたかのような、そんな笑み。
そして、次いでペンを走らせた雄二の顔は吹っ切れたような清々しいもののように感じ取る。
………一体何を考えているのかしら?
いくら私でも、表情から察することはできても、心を読むなんて芸当はできない。
だから、今の雄二が何を考え、どう思っているのかはわからない。
けれど、どうやら焦りはなくなったようだ。
それを感じて私は、口の端を少し吊り上げるのだった。
しかし、勝負の結果を見た時、流石の私でも唖然とした。
《日本史勝負 限定テスト 100点満点》
《Aクラス 霧島翔子 97点》
VS
《Fクラス 97点》
雄二の無記名により、結果は霧島翔子の勝ち。
よって、Aクラス対Fクラスの試験召喚戦争は、引き分けという結果で幕を閉じたのだった。
突発的にやりたくなって書きました。
ということで、今回は幕間を投稿しました。
ちょっとでも面白いと思っていただければ幸いです。
まぁ、今回の話は蛇足の様な物です。
雄二がなんか葛藤している間、天子達は何をしていたのか。
………普通に問題解いたりしながら喋ってただけなんですがね。
その為、中身なんて全く無い様な薄い話になりました。
まぁ幕間だからそんなもんだよ、って感じでこれからもご覧ください。
次回は予定通り、戦後対談をお送りします。
急に投稿されたと思ったら、こんな話で申し訳ないです。
それでは、また次回お会いしましょ~