バカとテストと緋想天   作:coka/

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バカテスト【保健体育】

問 以下の問いに答えなさい。
『女性は( )を迎えることで第二次性徴期になり、特有の体つきになり始める』



姫路瑞希の答え
『初潮』

教師のコメント
正解です。



比那名居天子の答え
『初経』

教師のコメント
これも正解です。
今回の問題はどちらで答えてもらっても構いません。



島田美波の答え
『処刑』

教師のコメント
字が違います。



吉井明久の答え
『明日』

教師のコメント
随分と急な話ですね。



土屋康太の答え
『初潮と呼ばれる、生まれて初めての生理。医学用語では、生理の事を月経、初潮の事を初経という。初潮年齢は体重と密接な関係があり、体重が43kgに達するころに初潮をみるものが多い為、その訪れる年齢には個人差がある。日本では平均十二歳。また、体重の他にも初潮年齢は人種、気候、社会的環境、栄養状態などに影響される』

教師のコメント
詳し過ぎです。




第12話

現在、私と明久がAクラスに勝利し、Fクラスが2勝している。

つまり、あと1勝すれば必然的に私達の勝利となる。

そして、そんな中迎える次の選手は……

 

「ムッツリーニ、あとはお前に任せた」

「…………(コクリ)。行ってくる」

 

そう、三人目は康太だ。

やっぱり、科目の選択権を貰えたのがかなり活きてくるわね。

 

康太は基本的に、殆どの科目の点数が低い。

下手したら、明久以上に。

しかし、保健体育に関しては常に学年一位を取っているくらい成績が高い。

まぁ、ムッツリーニなんて呼ばれるくらいには、性に関する知識が人並み外れているわけよね。

余談だが、彼の総合科目の点数の約80%が保健体育で獲得されているそうだ。(本人談)

 

 

 

「では、三人目の方どうぞ」

 

高橋先生の声で、康太が前に出る。

Aクラスの方からは、あまり見覚えのない、ショートカットの女子生徒が前に出てきていた。

康太から貰った情報によると、彼女は工藤愛子。

どうやら、一年の終わりに転入してきた生徒ようだ。

そりゃ、見覚えがないわけよね。

 

「教科は何にしますか?」

「…………保健体育」

 

康太がそう宣言すると、工藤愛子が片目を瞑りながら楽しそうに微笑んだ。

 

「キミ、保健体育が得意なんだってね。だけど、ボクだってかなり得意なんだよ?」

 

工藤愛子はそう言うと、スカートを少し摘んで上に上げる。

というか、ボクっ娘なのね。珍しい。

 

「それもキミと違って―――実技で、ね♪」

「…………じつ、ぎ? …………(ブバッ)」

 

実技って……

………多分、保健の実技じゃなくて体育の実技の方ね、あれ。

だが、康太は何を想像したのか、かなりの量の鼻血を噴射しながら後ろに倒れた。

あ、マズイ。

 

「ムッツリィーー二!」

 

明久が無駄にジャンプしながら、康太に駆け寄る。

貴方、いつの間にそんなアクロバティックに……

そんなことを考えていると、明久が工藤愛子の方を少し睨みながら言う。

 

「よくもムッツリーニに! なんて酷いことを! 卑怯だぞ!」

 

いや、よく考えてみなさい明久。

それどう考えても、康太の自爆だからね?

まぁ、康太限定の戦略としては正解だけど。

そんな明久に向かって、工藤愛子は腕を組んで不敵に笑う。

 

「キミ、吉井君だっけ? キミが選手交代する? でも召喚獣の操作は上手くても、勉強の方は苦手そうだね? 保健体育で良かったら、ボクが教えてあげるよ? 勿論―――実技でね」

 

「「ブバッ!!」」

 

工藤愛子の言葉によって、明久と康太がさらに鼻血を出して倒れた。

うんも~、あのエロバカ共どうしてくれようかしら……

私は、溜息をつきながら二人に近寄ろうとした。

すると……

 

「吉井君!!」「アキ!!」

 

姫路さんと島田さんが血だまりの中、明久に駆け寄っていく。

あら、出遅れちゃったわ。

まぁ、あの二人に任せても大丈夫でしょ。

 

なんて、そんな私の期待は、衝撃の言葉とともに裏切られた。

 

 

「余計なお世話よ! アキには永遠にそんな機会無いから!」

「そうです! 吉井君には金輪際、必要ありません!」

 

 

………前言撤回。

なんであの二人は、明久に更に追い討ちをかけるようなこと言うのかしら?

いや、嫉妬からっていうのは判るんだけどね?

というかそれ、貴女達にもブーメランなの分かってる?

 

「なぁ、天子。明久が死ぬ程哀しそうな顔をして泣いてるんだが。あれ、止めなくても良いのか?」

「既に放たれた物を、どう止めろって言うのよ?」

「いや、それはそうなんだが……」

 

雄二も流石に気の毒に思ったのか、私にそんな事を言ってきた。

私だって、出来ることならああなる前に止めたかったわよ。

でも、もうこうなったら仕方ないじゃない?

 

………そうね。あの二人にはいつか、言葉の重みというものをその身で理解してもらおうかしら。

どっちが明久と付き合えるのか知らないけど。

 

 

なんて、そんなんことを考えていると、康太がフラフラと立ち上がる。

その鼻からは、未だ大量の鼻血が出ている。

アレ、本当に大丈夫かしら?

普通に致死量超えてると思うんだけど……

 

「ムッツリーニ!」

「…………大丈夫、これしき」

 

康太はそう言って、自分の顔についた血を拭った。

 

 

「そろそろ、開始してもよろしいですか?」

 

そう高橋先生に促され、明久と姫路さん、島田さんがこちらに戻ってきた。

明久は未だに少し哀しそうな顔をしている。

それを見た私と雄二は苦笑いをしてしまった。

仕方ないわね~、フォロー入れて上げましょうか。

 

「明久、大丈夫かしら?」

「ああ、天子。……うん、大丈夫だよ」

 

うわ、これは重症だ。

女子二人から言われたのが、かなりショックだったみたいね。

 

「もしかして、二人に言われたこと気にしてるの?」

 

私は小声で明久にそう話しかけた。

 

「い、いや、別にそういうわけじゃ……」

「まったく、そんなの一々気にしなくっても大丈夫よ。貴方にだっていつかはそういう機会が来るはずだから。ね?」

「ほ、本当に!?」

「多分ね」

 

私がそう言うと、明久は目に見えて嬉しそうになった。

どんだけショックだったのよ……

 

「流石天子だな。明久の扱いが上手い」

「別にこれぐらい、貴方だって出来るじゃない」

「何だ、知らなかったのか? 俺はアイツの不幸を見るのが好きなんだ」

「ああ、そう」

 

私は呆れたように溜息をつきながら、そう言ったのだった。

 

「比那名居と話して、なんでアキはあんなに嬉しそうなのよ……」ブツブツ

「比那名居さんは吉井君に一体何を言ったんでしょう……」ブツブツ

 

………ここ二、三日、よく寒気を感じるんだけど、なぜかしら?

風邪でもひいたかな……?

 

 

 

 

 

「では、三回戦。試合開始!」

「「『試獣召喚(サモン)』っ!」」

 

やっと三回戦が開始され、康太と工藤愛子の召喚獣が召喚された。

康太の召喚獣は、忍者装束に二刀流の小太刀といった装備。

対する工藤愛子の召喚獣は……

 

「何だあの巨大な斧は!!」

 

明久が叫ぶ。

彼女の召喚獣は、セーラー服といった軽装ではあるが、その手に一本の巨大な斧が握られていた。

しかも、その左手には腕輪もある。

ということは、彼女も400点オーバーということね。

 

「実践派と理論派、どっちが強いか見せてあげる!」

 

工藤愛子がそう言った瞬間、ディスプレイに二人の点数が表示される。

 

 

フィールド[保健体育]

工藤愛子 446点 VS 土屋康太 576点

 

 

「な!?」

「500点オーバー! 強い、保健体育だけで僕の総合科目並みの点数だ!」

 

工藤愛子と明久が驚いたように言う。

というか、明久。

日本史と世界史の点数上がってるはずなのに、総合科目の点数が600点以下ってどういうことよ?

………歴史科目以外も教えないといけないわね。

 

「そ、そんな! この、ボクが……でも! 負けないよムッツリーニくん!」

「…………『加速』」

 

康太がそう言うと、彼の召喚獣の姿がブレる。

どうやら、腕輪を使ったみたいね。

彼の腕輪の効果は、今見た感じだと速度の上昇だろうか?

忍者みたいな装備だと思ったら、能力まで忍者っぽいみたいね。

 

そして、康太の召喚獣が一瞬で工藤愛子の召喚獣に近づき、小太刀で切りかかった。

 

 

 

 

 

「……ふふっ。かかったね、ムッツリーニくん!!」

 

 

 

しかし、康太が彼女の召喚獣を切り裂く瞬間、()()は起こる。

工藤愛子の召喚獣から電撃のようなものが発生した。

その電撃はバチバチと音を立てながら、青白い光が康太の召喚獣を襲う。

康太の斬撃は当たったものの、致命傷とはならず、彼の召喚獣は電撃のダメージで片膝を付いた。

 

 

「…………なに!?」

「どう? これがボクの能力、『電気操作』さ!」

 

工藤愛子はそう言うと、斧に青白い電気を帯電させる。

 

「ボクの召喚獣は電気を発生させてそれを操ることが出来る。だからさっきみたいに君に強力な電気を流したり、今みたいに武器に電気を流して纏わせる事だって出来るんだ♪」

 

彼女は得意げに自分の能力を語った。

ふむ、かなり使い勝手のいい能力ね。

正直、ちょっと羨ましいわ。

しかも、その威力も強力なようだ。

その証拠に……

 

フィールド[保健体育]

工藤愛子 274点 VS 土屋康太 260点

 

康太の召喚獣の点数が300点以上削られていた。

腕輪の消費点数が50~100点だと考えると確実に200点以上は持ってかれてるわね。

まぁ向こうも、かなり浅かったとはいえ直撃した康太の斬撃に腕輪の使用で点数が減ってるけど。

 

「そ・れ・に~。どうかな、ムッツリーニくん? 今、召喚獣動かせないでしょ?」

「…………っ!?」

 

康太は工藤愛子に言われ、召喚獣を動かそうとする。

しかし、康太の召喚獣は体の自由が利かないのか、思うように立てないようだ。

………これって、まさかっ!

 

「ふふ、気付いたみたいだね? キミの召喚獣は体が痺れて動けないみたいだよ?」

「…………くっ!?」

 

康太はもう一度召喚獣を動かそうとするが、やはり上手い具合に立ち上がることができない。

どうやら、彼女の言った通り先程の電気で痺れて動けないようだ。

 

「さて、そろそろ終わりにしようかな?」

 

工藤愛子がそう言い、彼女の召喚獣が康太の召喚獣に近づいていく。

これはかなり拙いわね……

今、彼女の電撃を帯びた斧が直撃すれば、康太の点数は0にされてしまうだろう。

しかし、康太の召喚獣は痺れてしまって動けない。

万事休すとはこのことね。

 

「それじゃ、バイバイ。ムッツリーニくん!」

「………くっ」

 

康太はなんとか自分の召喚獣を動かし、小太刀を構えさせる。

だが、やはりまだ思うようには立ち上がれないみたいだ。

そんな彼の召喚獣に向かって、工藤愛子の召喚獣が斧を振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………『加速』っ!」

 

 

 

それは本当に一瞬の出来事だった。

 

 

 

康太の召喚獣が、自分の両足の太腿に小太刀を突き刺す。

そして能力の発動により、一瞬のうちに工藤愛子の攻撃を躱した。

 

 

 

つまり、ダメージ覚悟で自分の両足を突き刺し、イチかバチか痛みで痺れが取れるのに賭けたのだ。

結果、康太は賭けに成功した。

足の痺れは取れ、能力によって彼女の攻撃を無理矢理回避したのだ。

 

それにしたって、無茶苦茶すぎるわよ!?

 

「そ、そんな!? 自分の足を傷つけて、無理矢理痺れを取るなんて!!」

「…………ダメ元だったが、上手くいった」

 

康太はサムズアップしながらそう言う。

そんなのできるのは普通漫画とかゲームの話の中だけだからね?

現実でやろうとしたら、先ず痛みで余計に動けなくなるから!

 

「でも、今のでキミの点数はかなり減っちゃったみたいだよ?」

 

工藤愛子は、ディスプレイを見ながらそう言った。

私もそちらに目を向ける。

 

フィールド[保健体育]

工藤愛子 274点 VS 土屋康太 140点

 

確かに康太の点数は腕輪の使用と自傷のダメージで、100点近く減っていた。

また、足を傷つけた為、痺れはなくなったがまた操作がしにくそうだ。

依然、ピンチには変わりないわね。

でも……

 

「…………関係ない。俺はお前を倒す。」

 

康太は珍しく真剣な表情で、工藤愛子を見た。

それに対して彼女の方は、彼の思い切りの良さと今の表情を見て、少し怯んでしまっている様に見えた。

 

康太の召喚獣が動き、攻撃をする。

能力も使ってない上に、足をケガしている為、その動きはあまり良くない。

しかし、及び腰になった工藤愛子は、それを躱しきることができず、少しずつだがダメージを食らっていく。

 

 

フィールド[保健体育]

工藤愛子 168点 VS 土屋康太 140点

 

 

「…………どうした工藤愛子。動きが鈍くなっている」

「そ、それは」

「…………まぁいい。俺は仲間の為にも、ここで負けられない!」

「っ!」

 

康太がそう言うと、工藤愛子はハッとした顔になった。

 

康太って普段無口なくせに、こういう時だけやけに熱くなるのよね。

まぁ、それだけ仲間思いってことなんでしょうね~

多分、本人は照れて否定するでしょうけど。

 

私がそんな風に考えていると、工藤愛子の表情から恐怖や迷いといったものが消えていることに気がつく。

ああ、今の康太の言葉で吹っ切れちゃったみたいね。

 

「そうだよね。ボクだってここで負けるわけにはいかないんだ! 行くよ、ムッツリーニくん!」

「…………来い、工藤愛子!」

 

二人は腕輪の能力を、同時に使い接近する。

そして、二人の召喚獣が互いの体を深く切り裂いた。

 

 

 

 

 

フィールド[保健体育]

工藤愛子  0点 VS 土屋康太  0点

 

 

 

ほぼ同時に攻撃が決まり、お互の残りの点数を全て削りきったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………すまない、勝てなかった」

 

試合の結果が引き分けとなり、康太がショボンとしながら戻ってきた。

 

「なぁに、気にすんなよ。 いい試合だったぜ?」

「そうそう! それに、あの状態から引き分けに持ち込んだんだから凄いよ!」

「そうね、あの時は流石にもうダメかと思ったもの。まさかあんな方法で切り抜けるなんてね」

 

雄二、明久、私の順に康太に賛辞を送る。

 

「…………昔読んだ漫画に載っていた方法を試しただけ」

「あの土壇場で、それを実践できる貴方が凄いって言ってるのよ」

「僕や天子だったらフィードバックがあるから、あんなこと簡単にはできないしね」

 

そうよね。痛みで集中力とかが切れちゃうかも知れないからね。

まぁでも、ああいう時の対処法が判っただけでも良しかしら?

 

「とりあえず、これで2勝1分けだな」

 

そうね、これでウチのクラスの敗北は無くなった。

後は姫路さんと代表戦。

どちらかで勝てばFクラスの勝利が決まるわ。

 

「頼んだぜ、姫路」

「は、はい!」

 

姫路さんは緊張したように声を上げた。

だが私は、その彼女の緊張に一抹の不安を覚えたのだった。




な、なんとか今日中に間に合った!

ということで、大幅に遅れて申し訳ありません。
言い訳をするなら、暑さで脳が回りませんでした。
皆さん熱中症とかにはお気をつけくださいね?


さて、今回はムッツリーニVS工藤愛子でした。
いかがだったでしょうか?
この展開は、実は一回戦に明久を出すと決めた後で考えました。
その前は普通にムッツリーニが勝って、明久が引き分けという流れでした。
まぁこの辺は流れが変わった弊害ですね。


さて、今回出た愛子の腕輪の能力。
原作だと、攻撃に電気属性の付与といった簡単なものでしたが、この物語では某レールガンを彷彿させる仕様になりました。
といっても、あそこまで強くないですがね。

簡単に説明すると、電気の放電と帯電ができます。
放電は言わなくてもわかると思いますが、相手に電撃を流したりできます。
そうすることで、相手にダメージを与えつつ、麻痺をさせることもできます。
帯電は元の能力である電撃付与と同じだと思ってもらえば大丈夫かと。
消費は帯電が50点で放電が80点です。

因みに、ムッツリーニの能力『加速』の消費点数は50点です。
まぁ、この辺は目安ですがね。


と言ったところで、今回はここまでとしましょう。
もう、暑くて頭が働きませんので。
次回は、久保君対姫路産(姫路さんで一発変換するといつもコレになる)です。
もう後がないAクラスの久保君と緊張気味の姫路さん。
二人の勝負の行方は!?

もうバレてるかもしれないその答えは、次回をお楽しみに!
明日こそは21時に………
ではでは~

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