Dクラスにも休日をください。   作:くるしみまし

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投稿遅れてすみません。

スト5とFGOにどっぷりハマってしまい書くことを後回しにしていました。
これからは早期投稿を前向きに善処します。


SCPー2599

20xx年 x月x日

 

ガツッ!

 

「………ぐえっ!」

 

額に鋭い痛みが走る。

ベットで横になっていた俺の額に鋭角なものが突き刺さる。

 

あんまりにも急な一撃をくらい額をさすりながらベットから体を起こすとブサイ…博士が立ってた。

 

「……またあんたかよ。」

 

この博士はここ最近俺につきっぱなしの博士だ。暇なのか?

いい加減違う顔を見たいものだ。

 

博士も同じことを考えていたようで溜息を吐きながら俺の方を見る。

人の顔を見て笑うとはとことん失礼な博士だ。

 

「私だって貴様の顔なぞもう見たくもない。しかも、今回は私にはなにも面白みのない話だからな。」

 

「面白くないってお前……。」

 

博士はそう言って頭をかく。

面白くないってことは……危険度の低いSCPなのか?

それでもSCPを相手に取る俺には十分心身への負担があるんだが。

第一面白みを求められること自体おかしいと思うんだ。俺は。

 

「今度は何をさせるつもりだよ?個人的には清掃とかの楽な作業が良いんだけど?」

 

まあ清掃作業もSCPー173の例があるから安全とは言い切れないけど…。

できるなら【safe】クラスがいいなぁ。そうしたら多少は心に余裕が…

 

「安心しろ……今回は【Euclid】だ。」

 

博士はまたも心を読んできた

ノゾミハタタレター。

 

「しかし。」

 

博士が顔に苛立ちを浮かべながら俺の方を睨む。

 

「今回のSCPは貴様に対して敵意はない。私からもアレに命令することは許可されていない。正直に言ってしまえば貴様の行動次第では危険度もほぼゼロになると考えて良いだろう。」

 

博士はブスッとした顔でそう付け足す。

 

……一見ほっとする場面かもしれないが、博士は危険度が無いとは一言も言ってない。

完全に安全性が確証できないので油断は禁物だ。あくまでも相手は【Euclid】クラスの化け物なのだから。

 

「で、結局俺は何をするんだ?」

 

俺は覚悟を決め博士に問う。

 

博士は資料を机に置き

 

「【SCPー2599 不十分】を相手に会話を行ってもらう。」

 

そう告げた。

 

 

 

「ここが【2599】のいる部屋か………。」

 

俺は博士に連れられとある扉の前に立つ。

 

扉の前にはお約束の警備員が立っていた。

それはいつものことなのでそこまで気になるような事では無いのだが……おかしな点が一つある。

 

警備がザルすぎる。

 

パッと見てわかる設備は暗証番号を打ち込むであろうパネルのみである。

扉は鉄製の物ではあるが、【173】の時と比べても大きさも厚さも段違いなことがわかる。

俺も様々なSCPを見てきた。【Euclid】だって相当数見てきた。正直そこら辺の職員よりも多く見てきたという自負はある。

だからこそ言えるのだが『この設備はありえない』。

 

【Euclid】は『収容方法未確定』

つまり完全に収容することはできないが簡易的な収容は可能なのである。【Euclid】は【keter】に比べて危険度は低く設定されているが、どの収容所も【keter】と大差ない設備だった。

しかし目の前のこの扉は【safe】より多少マシなレベルだ。

 

「………本当にここなのか?」

 

思わず博士に聞いてしまう。

 

「言いたいことは分かるがここで間違いない。こいつ相手にはこれで問題ない。」

 

博士がどこか含んだ言い方をする。

 

博士の態度的にこれ以上聞いても無駄だろうと察し、俺は入る覚悟を決める。

 

監視はタッチパネルを操作し扉を開ける。

俺は覚悟を決め部屋の中に入った。

 

 

 

中に入ると少女が一人立っていた。

見た目は14程に見え顔立ちは整っており黒髪だ。見た感じ日本人のように見えるが……壁に付けられていたパネルに朝鮮系だと書いてあった。

 

「だれですか?貴方は職員の方ですか?」

 

少女は訝しそうな顔で話しかけてくる。

彼女からしたら見ず知らずの男が急に入ってきたんだ、そら警戒するわな。

 

「あー…まあ職員ではあるかな。驚かせてごめんね。」

 

俺はツバサの時のような変な緊張はせず言葉を返す。

確かな自分の成長を密かに喜ぶ。ありがとうツバサ。

 

「職員の方でしたか……それで今日は一体何しに来られたのですか?」

 

………会話が成り立つ。

正気は失ってはいないようだ。

だが【Euclid】の奴には173みたいな意味の分からない化者が多い。目の前の少女も今は大人しいが本性は分からない、俺を欺くための姿かも知れないからな。

 

いくら少女といえど俺の心がそんな簡単に揺らぐことはない。

 

「………俺はちょっとした仕事できたんだ。まあ、君とお話しするだけなんだけどな。」

 

俺は目の前の少女を最大限警戒しながら、かつ警戒させないように返答する。

 

目の前の奴は化け物【Euclid】なのだk……

 

「お話!私今まで質問攻めで飽き飽きしていたんです。ここの職員の方々は皆さん疲れているようで話しかけるのも悪かったし……いえ。今は関係ありませんね。お話ししましょう!好きな食べ物の話とか、学校の話とか、外の話とかいっぱい!」

 

少女は俺の手を急に取りピョンピョン飛び跳ねながら眩しい笑顔で笑う。

 

その笑顔に邪気などなくどう見ても年相応の……相応の…可愛らしい、お、女の子で……だ、だけど【Eucl……

 

プツン

 

 

「ごめ゛ん゛なざい゛ぃぃぃ!」

 

俺大号泣。

 

「ええ!?ちょっ、どうしたんですか!?泣かないでさい!」

 

「私の心が汚れてましたぁああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

前言撤回

俺氏。少女に完全に気を許す。

 

 

30手前のおっさんに少女の笑顔はダメだって。

 

 

 

「落ち着きましたか?」

 

「すごく落ち着いた(^^)」

 

俺は5分ほど少女になだめられ正気を取り戻す。

まさかこんなに自分が異性に弱いとは思わなかった。確かに8年くらいむさい男達しか見なかったからなぁ……。あんな笑顔向けられたらそらおっさんの涙腺程度が我慢できるわけがない。

 

自分の少女に対しての弱さを再認識したところで彼女に向き直る。

 

見れば見るほどただの少女である……本当にSCPなのか?

 

俺は少々危険だが少女に検査のようなものを仕掛けてみようと思う。

 

「えっと………自己紹介してくれないかな?」

 

まずは相手のことを知らないとな。

正直これをして何か変わるとは思えないが彼女の名前を知らないと会話に困るしな。

 

しかし少女はなぜか申し訳なさそうな顔をしている。どうしたんだ?

 

「わ、私の名前は……ジーナ・チ□△○。」

 

「え?」

 

最後の方が不思議な発音で聞き取れなかった。

 

「ご、ごめん。もう一回言ってくれる?」

 

 

俺がそう頼むと少女はますます顔を曇らせ頭をさげる。

 

「……ごめんなさい。」

 

「え…ど、どうしたの?」

 

俺は急に頭を下げられた意味がわからずワタワタする。

え?てか俺のせい?だとしたら死にたいんだけど。

 

「私は……何もできないんです。いえ、何かしようとしてもズレてしまうんです。それを直すためにここにいるのに……結局私は変われてない。」

 

「…………よければその話詳しく教えてくれないかな?」

 

今の少女の言い方から察するに、恐らくそれがこの少女の異常性だろう。

俺は少女の悲しそうな顔を見て傷に塩を塗っているのではないかと不安になりながらも聞いてみることにした。

 

少女はおれのかおをみつめたあと、覚悟を決めたように口を開いた。

 

「私にも詳しいことは分かりませんが…私は人に言われたことを断れないし、完璧にこなせないんです……自分で同じ行動をしようとした時は問題なくこなせるような簡単なことでも人に言われると途中までしかできなくなるんです。……でも逆に人に言われたことなら『ありえないようなこと』でも途中まではできるんです。」

 

「………『ありえないようなこと』て言うのは例えば何があるのかな?」

 

「前に職員の方から『空をとんでみせろ』といわれました……私も驚いたのですが私は結構高くまでジャンプしたんです……多分5メートルくらいの高さまで。」

 

「それは………。」

 

思わず唾を飲む。

目の前の少女はとてもそんな大ジャンプができるような体つきではない。というかかなり華奢な方だろう。

つまりこの子の異常性は『人に言われたことなら不完全だが遂行できる』ということだろう。しかも人の命令には逆らえないと……。

 

だが…それだけでは【Euclid】クラスに認定されるとは思えない。

 

「他にどんな検査をしたのかな?」

 

もう少し探りを入れてみる。

この子に敵意がないことは分かっているけど、危険性がハッキリしないと正直目の前の少女を信用しきれない。

検査の内容からどうして危険度が高いのか判明するかもしれない。

 

「他に……えっと…わ、私は前に……。」

 

少女は口をモゴモゴさせる。

何か思い当たったようだが話そうかどうか悩んでいるように見える。しかし、少女は俺の顔をチラッと見た後観念したように目を瞑る。

 

「…………以前大きなトカゲさんの前に連れて行かれたことがあります。私に職員の方がした指示は『SCPー682を200%死ぬまで攻撃しろ』というものでした。」

 

「……………!」

 

少女の口から衝撃の話が伝えられる。

だって普通信じられないだろう。目の前の少女があのオブジェクトクラス【keter】クソトカゲを相手に生還しているというのだから。しかも、俺ですら手も足も出ないような化け物を相手に財団は少女に攻撃しろと言ったのか……!

 

「………け、結果は?」

 

俺は今にも少女に色々問い詰めたいが、なんとか平静を保ち少女にゆっくり質問する。こんなに動揺したのは久しぶりだ。

 

「………私は部屋に入ってプールの中からトカゲさんを引きづり出して思いっきり殴りつけました。トカゲさんの肉片が飛び散って…それでも私は休むことなくトカゲさんを攻撃し続けました。殴って、蹴って、千切って、捻って、抉って……ありとあらゆる手でトカゲさんを殺そうとしました。………わ、私は…そんな事したくなかったのに……その時は無感情に、体が自分のものじゃないみたいに勝手に動き続けて………しばらくしたらトカゲさんが何か叫んだんです。そうしたら私なぜか気を失ってしまって……すみません。ここからは私にもよく分からないんです。」

 

 

 

「……………………。」

 

 

俺は今どれだけ間抜けな顔をしているだろう。

あのクソトカゲは一匹で軍や国どころではなく、人類を脅かす程の脅威だ。しかしその化け物を目の前の少女は『人に言われたから』という単純な理由で瀕死にまで追い込んだのである。

……あのトカゲのことだ。この少女の異常性を予測して、何か対抗策でもうったのだろう。

 

でもまあ……今の話で分かったことはある。

 

 

この少女は……間違いなく【Euclid】だ。

 

 

 

 

「気持ち悪いですよね……私。」

 

少女が俯きながらそう言ってくる。

その声は震えて泣き出しそうだ。

 

「人に言われたからってトカゲさんを殺そうとしたり…なのに当たり前のことはできなかったり……私は所詮『不完全』だから。」

 

目の前の少女に対して普通の人だったらどう声をかけるだろうか。

同情して慰めるか。それとも励ましてあげるか。

 

俺は……彼女に対して親近感を覚えた。

 

もちろん彼女の苦しみを共感したのではない。

彼女の疲れ切った心に対して言い知れぬ親近感を覚える。

 

自分でなんとかしよう、しなきゃ。とは分かってるけどどうにも出来なくて…争うことすらやめようとしている……。

 

そんな彼女の姿を見て俺は……彼女に対して

 

 

 

 

「気持ち悪いよ。」

 

 

 

 

最低な一言を放った。

 

 




マーリンをお出迎えして、やっと人権ゲットです。


SCP-2599。

本家(英語)
http://scp-wiki.net/scp-2599
著者:weizhong

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