「愛情」が貰えなかった男の物語。   作:幻想入り専門家

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第7話

 

…赤い屋敷の中の一つ大きな部屋。

 

血は飛び散り、上半身が無くなっているもの…下半身が無くなっているもの…生気が無くなっているもの…そんなものが散乱している状態の部屋の中。

 

…目は赤く染まり。

…爪が異様に伸び。

…まるで壊れた人形のように動かなく、表情も読み取れない。

 

…そんな姿の少女が、その部屋の中に佇んでいる。

 

…その手に血で染まった赤い槍を持ちながら...。

 

少女はずっと上を見続ける。

 

 

 

 

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…て!

…お…て!

 

「ー起きて!」

「うわっ!!、、って霊夢か。」

「いや、あのね。飲ませた私達が悪かったから、、もう夕飯の時間よ?」

「へ?、、あ、本当だ」

 

只今の時刻…8時06分。…あれから5時間は経っていて外はもう暗く染り、星空と月がよく光っていた。

 

「……悪い!じゃあ今からでも…「作ったわよ」」

「ありがとう。…後それとアリスは?」

「帰ったわ、丁度数十分前に…でもまさか劦があんなに酒弱かったとは思わなくて、、ごめんなさい。」

「謝る必要は無いってば、それよりもご飯食べよ?…お腹空いたしさ」

「…ええ、、」

 

霊夢といい…紫さんといい…人に謝る癖みたいなのがあって言って治せないとは分かっているので、その事に対して余り触れないようにする様にしている。

 

「…ねぇ、劦」

「なあに」

「…貴方の能力って一体どんなものか気になったんだけど、、使った事ある?」

「無いね。侵食って言われてもなぁ……使い方とかも分からないし」

 

…劦の持っている能力は「侵食」。この意味がわかっていたとしても、使えるかどうかも分からなく何が起きるか分からないものは下手に使いたくは無いと思っていた…ましてや、この意味をそのままけ取るとかなり危険な能力…多分リスクもあるだろう。

 

…でも。

 

「…試してみる?俺も、気になってはいたしね、霊夢がいれば安心して能力も使えるから。今なら試しても良いかもしれないね」

 

…他に人がいれば問題はなくなる。……しかし

 

「じゃあ試してみましょ」

「でも、、どうやって使うんだろう、、検討が付かない」

「……あっ、」

 

そう。…能力が分かっていた所で使い方が分からなければどうしようもないのだ。かといって同じ能力を持っている人や、似たような能力を持っている人が近くにいないわけなので、、、どうしようもなかったりする。

 

「色々と試すしかないわよね……」

「そうだね……」

 

…という訳で、俺たちは色々と試しまくった。分かった事は少なかったが、…とても強い能力というのは分かった。

 

…まず一つ。…手の力を抜き、物に手を伸ばす事によってそのものに対して意識が移り、自由に動かせるという〔憑依能力〕。

 

…二つ目は、触る事を条件にゆ元に力を手に込める事によって削れる.〔削除能力〕。

 

そして最後に……自分自身が水に成れる〔水鞠能力〕の三つ。

 

…これをみた感じではとても強く見える。が、ペナルティも多く体力の消耗がとても激しく、使いこなすには時間と体力作りでもしなければならないと言う事が分かった。

 

「…はぁっ、、はぁっ、、疲れた」

「まぁ、あれだけ試せばそうなるのは分かってはいたけど...大丈夫、?」

「…いや、、ね。分かった事の方が多かったから良かったけど、一番疲れたのは水になるやつかな…体の体型無視してなってた訳だし…」

 

…あれは、念じれば何とかなると思った時に全身に念じた能力。その能力は体が凄く軽くなり、動けばチャプンと音が鳴る事の他に、霊夢が触ろうとすると摺り抜けたり、体の形を変えることも出来たりする。

 

…だがやはり体力がなくなるのは早く、元に戻ると立眩みに近い症状になったり、水分が抜け落ちた様で、水を必要とする事を考えると余り使い勝手は良くなかった。…だから、今はなるべく使わない方が良いと言うのは分かる。

 

 

 

「…まぁ、この能力は余り使わない事にするとして……霊夢、一つ聞いていい?」

「ん、何?」

「…突然何だけど、、この家の収入源ってあったりする、?」

「な、何で、?」

「…いやぁね、料理を作る材料とかを買いたいんだけど…お金自体見た事なくてさ、、気にしてたんだ」

「取るつもりなの…?」

「取らないよ!?」

「…無いわ。…いつも紫から一カ月分の食料を置いてもらってるだけだから」

「…そうか」

「聞いてどうするの、?」

「聞いて?、、今の霊夢の行った事でどうするか決まったよ」

「??」

「働くんだよ。俺が、…そうすれば紫さんの負担もなくなる訳だしね。後は体力作りにもなるから丁度良いと思うし」

「……え?」

 

《働く》…というのは選ばれたもの達の仕事。

物を作るものも建築するものも全て…「??」というコミュニティの中に入れる者達の。

 

…じゃあ「??」というコミュニティに入っていない者達…つまり彼女達はどうなるのか?

 

「………無理。」

「え、、?」

「……劦って、幻想郷の事。どれ位知ってる、?」

「あっ、、えーと…妖怪と人間が共存している世界、事位かな...後はお面の事とか、、」

「そう…じゃあ、それ以上の事は聞いたりしてないのよね、?」

「まぁ、そうだね」

「ーー…なら、それ以上の事を教える。前から気になってたんでしょ?この仮面の本質を,」

「…うん」

「なら、話を聞いてたら解るはずだから。…一から説明するわ」

 

 

「……この仮面は「人里」に入る為に人里からのだされた条件。人里というのは妖怪が殆どいない人間の町…じゃあ何故に仮面が必要とするのか、それは「顔を隠す」ため…。一定を超えた顔になると仮面を付けなきゃ外には出てはいけないというが「義務」を人里の住民がつけたから。

 

…そして、仮面をつけるという事はこれは即ち「死」…を意味する。…何故なら、外見が気に入らないとなれば利用価値の無い私達などには意味のないもの、、しかも…外見が醜いとなれば《忌み子》の可能性が高いの。

…だから

 

追放する。」

 

「…!?…」

 

…紫さんの話を聞いていたからある程度は分かっていたつもりだが、隠されていた事の方が多かったのは驚きだった。ーーでもそれ以上に驚いたのは話の中の…人里から追放するという所。…聞いていてそれらを普通に行う人里の人間というのは、何処まで外見での決めつけで酷い扱いを受けさせるのか。

 

「…忌み子、、それは「能力」を持った「女性」。男は持っていても特に敵視したりはしない…だから女になってしまった事を恨むばかりの子が多い。

 

そして…劦が言っていた《働く》というのはあくまで一部を除き女の仕事。しかも働けるのは「人里にいる女性のみ」。」

 

二度目のカルチャーショックを受けた。…何で女性?何で人里だけ?、、と。言われた事に対し、疑問符が頭の中を飛び回る。

 

…そして女性のみという言葉を聞きたせいか、我慢が出来なくなり…

 

「…男は何をしているんだ?、、」

 

…言葉が溢れてしまった。

 

「……分からない」

「…後、もう一つ、…こんな事を聞くのは悪いんだけどさ…"仕返しをしようとかは思ったりしなかったの、?」

「・・……・・」

 

…霊夢は目を下に向け黙ってしまう。明らかにこんな事を聞くのは失礼だと思うのもある。だけれどそれ以上に俺は顔に出てしまう程の怒りが強く、自分を抑え切れない気持ちがあったせいでもだった。

 

「ご、ごめん…霊夢、余りに、、失礼過ぎた…」

「……ったの」

「へ?、、」

「……怖かった、の…」

 

…そう言った霊夢の目は俺に虚ろな目を向け、手は小刻みに震えていた。目は一点に集中し、顔は少し青白く、口が少し開き揺れている悲哀の表情を浮かべたそんな状態。

 

…でも、そこよりも俺は驚いたところがあった。

それは、霊夢が男や俺に対し恐怖心を持っていたという所。…かれこれ3日間を一緒にいたが、そんな態度を俺にはしなかったし見せていなかったと思う。

 

 

 

 

 

…だけれど……普通に考えてみれば、直ぐに解る事だったのだろう。

 

…いつもは強気な態度を見せて、強かった博麗霊夢。

…でも、それでもこの子は一人の...

 

「女の子」なのだと。

 

 

ーー…そう分かった途端、机越しにいる霊夢の姿がとても幼く可愛い女の子に見えた。この子が男を怖いというのも無理はない事は、異性関係の話の時に分かる筈だった。でも、その時は気づかなく普通に接してくれてると思いこみ、霊夢の気持ちの本質を見抜けなかった所がある。

 

 

…そうなれば、、俺にも罪があるのではないだろうか?

 

「…ごめん。俺の事が嫌だって事が気づいてあげられなくて、、…だから、、その、明日はここを出るよ…」

 

嫌な奴と苦手な奴にはいて欲しく無いのは当たり前だろう、怖がってる奴といるなら尚更だ。だとしたら、俺が今出来る最善の策は「出て行く事」。その後の事は後に考えればいい。

 

「……」

 

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「……」

 

私は黙る…どうしていいか分からないから。

 

…私は魔理沙と同じで男が苦手。出会えば物を投げ付け、お金を盗られる、、そんな事をされているうちに男が嫌いになった。

 

自分の母親は村から虐められた所為で数年後に「自殺」した。私は紫に引き取られ、今は巫女としての才能があると言われたからことで虐められる事が無くなった。

 

…男は許せない。顔だけで判断し、綺麗だったら欲しがる。…私達の様なものは只働きやストレスの解消にしかなれない。

 

…だからこの男が倒れてるのを見てほっておくか、私のものにしようとした。人間がここまで来て、一人で帰るのは無理。…だからこそ弱みを握り自分のものにしてしまえばアレやコレさえも出来るだろうし、チャンスだと考えた。

 

そして家に持ち帰り、目を覚ますまで只々じっと待ち1時間が経った頃。

 

「(早く目覚め無いかな〜〜)」

 

内心はドキドキする。…これからアレが出来るし、何よりその相手がこんなイケメンだとしたら誰だってそう思っても仕方がないだろう。

 

そして一度外に出て、やる事をやっていると、彼の声らしきものが聞こえたので部屋の目の前まで立ち少し息を吹く。私の顔を見たらいつも通りに叫ばれるか、もしかすれば家の中から飛び出して行くかも知れないと言う所を考え、動きを封じる札を持って行動を開始する。

 

案の定、彼は起きていた。

そして、軽い挨拶をこちらからかけると、

「え…はぁ、おはようございます、?、」

 

…困惑した表情で挨拶を交わしてくれた。…何故だ?、、普通は見た瞬間に表情が青白くなり逃げまわろうとするか、意識が飛ぶのかの二つの筈だ。

 

だけど思っていた反応とは違く、挨拶を返しただけ。いつもは逃げられる筈なのに、逃げない彼を見て不審に思い。

 

「あら?私を見て逃げないなんて対した度胸ね?」

 

と、返した。…この時に既に少し赤くなって息が荒くなっていた事は自分でも分かっていた。理由は、「逃げない」という所の驚きと、起きた時の顔が凄く綺麗だったからである。

 

そして、赤くなっていくのを隠し切れずに話していたのか、

 

「大丈夫ですか、?」と声を掛けられ、顔が近くにあったせいか照れてしまい、焦りながら話していると、

 

…記憶が飛んだ。

 

 

…自分でも何が起きたのか分からなかった。でも凄く心地いい気分になっていたのはわかる。

 

…男の人に対して嫌な感情が薄れた気がした。だからこそ、この人は出て行かしちゃいけない。…自分が変われる気がするし、何より彼を気に入っている自分がいるから、この人なら私達を良い方向にしてくれる筈だと思うから。

 

………私が、決意を決める。

 

to.be.continued...


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