「愛情」が貰えなかった男の物語。   作:幻想入り専門家

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第4話

ーー第2章亡くしたモノーー

 

 

 

 

 

……人々が私を恐れ逃げて行く。

……私がそれを殺す。

……それに悲鳴と悲痛が聞こえる。

……そして私が笑う。

 

…これで私を虐める奴はいない、…苦しめる奴もいない、何故なら皆んな私が殺したから。皆んな皆んな殺したから。

 

…でも、足りない、こんなもんじゃ、、、

 

ーー…殺す…ーー

ーー…男を…ーー

 

……暗い暗い闇の中、狂った表情を浮かべながら満月を見る少女を月は白く照らしていた。……

 

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…博麗神社の縁側、日がギリギリ登らない時間に一人の男が座っていた。

 

「、、、うん、やっぱり思い出せない。」

 

薄暗い闇の中、そう呟き上を見上げる。

 

「どうしてかな、、これからもっと無くなって行く気がするのは……」

 

俺は起きてからと言うものの長い時間、記憶を思い出そうと頭を回した。だが…覚えている事はどうでもいいことばかり……一体何が不安定なのかはわからない、わかるのは断片的に記憶が消えていってる事、それだけだ。

 

…記憶喪失にでもなってしまったのか?…

 

…いや、それはおかしい。なら何で魔理沙が喜ぶ顔を見た時にこちらも嬉しくなり自然な笑顔が出たのだろうか?…慣れというものからでも来ているとでも言うのだろうか。

 

ーー…少しづつ考えていこう。…ーー

 

まず一つ。「昔の事を思い出すと頭が痛くなる」何故頭が痛くなる?普通の記憶喪失ならそんな事にはならない。だけど俺はそうなった。…だとしたら自然的なものとは言い難い。この事から推測されるのは、、

 

……①任意的に記憶を消したものがいる。

……②どこかに頭をぶつけた。

……③元から無い。

 

ーこの三つ…その中で一番怪しいと思われるのは①。何故ならこの世界には妖怪やら神やらが居るから誰かがやってもおかしくは無い。まぁ、でも証拠が見つからないので断定は出来ないな。、、…これらは先に行けばわかるのだろうか。

 

…そんな事を思いながら緩い足取りで部屋に向かっていった……

 

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…朝日が昇り、体に光が差し込む。

 

……そのあとすぐに部屋に戻り竹刀が無かったので箒を持って外に出ていた。…強くなる為にも、守る為にも。…武器の事を知っておいた方が良いと思ったからだ。

 

「ふっ、はっ、おりゃ、」

 

そして、今日から始める事にした運動…それは「素振り」。剣を振るう時の動きを頭に入れる為に目標の千回を目指す。少しでも「妖怪」と言われるものに対抗できるように、体を鍛えていく。

 

「、あっ、そう言えば能力的なものがあるって言ってたよな…、もしかして、俺にもあるのか??」

 

その事を聞いた時には魔理沙しかいなかった。そういう能力的な事を知る為には霊夢か紫さんにしか出来ないと言う。…今は丁度二人居るので聞いてみるのも良いかもしれない。

 

「…あ、ここ時計はどっかあるかな?、」

 

今はそれよりも朝食を作るための準備をしよう。後から色々と分かるだろうし、、

 

〈庭→調理場〉

 

「うしっ!できた」

 

…とは言っても野菜カレーだがな。

 

「……暇になったなぁ、、どうするか…素振りをす「ガラッ」」

「…おはよう〜、、…眠いわぁ、、」

 

入って来たのは紫さんだ。どうやらカレーを作った事が分かるらしい。鼻がいい人だな。……と言うより少し驚いたんだが、

 

「…朝からカレー?」

「大丈夫ですよ、胃が重たくならないように作ってますんで。」

「そうなの。…ん、それってどうやってやってるのかしら?」

「…と言うと?」

「ほら、肉とか入れたりとかしたらどうしてもお腹に来るじゃない?ああ言うのって、」

「うーん、、肉とか刻んだ時に………()」

 

………………………………………………話をして霊夢達が起きるまで待っていた時に一つの事を思い出す。

 

「…あ、そうだ紫さん、」

「何かしら?」

「….魔理沙と能力的なものがあると聞いたのですが、自分にもあるんですかね?」

「…知りたい?」

「はい」

「、じゃあこっち向いて頂戴」

言われたとうりに紫の方向に顔を向ける。

「・・・・・」

額に手を当てられるその手は白く冷たいものだった。

「、、無い」

「…え?」

「だから、無い」

「・・・絶句」

「口で言うのそれ」

 

……おいおいまじかよ、能力的なもの無いのかよ。俺はタダの一般人だぞ?、、、鍛えて行くしか無いか。

 

…そんな考えをしながら、紫の方を見た時だった。

 

 

「…ねぇ、、劦さん。…貴方は私たちをどう思うかしら?」

…突然にそんな事を言った時の顔はその表情は先程とは違く、それでいて真剣な言葉で言われた。…このことの質問の意味はよく分からない。だけど、その目が訴えて居る事を絶対にボケで返してはいけないと思った。ーーーでも何を聞かれて居るかは分かっていない為、

「…どう、とは?」

と、答える。

「……醜いとかは思わない?」

「全く。…その逆なら思いますけど」

そう答えた時、紫さんの目の奥に一つの光が見えた気がした。、、俺に何かの期待をしていると言うのか、。

「そう……その言葉を聞けてとても安心したわ、ありがとう」

それだけ言うと、魔理沙達のいる部屋に向かって行った。

…ーー正直何だったのかは分からない。でも、、自らの口で「醜い」と言った時、紫は泣いていた。…多分、何かしらの理由があるのだろう、、それならば霊夢の言っていたことも当てはまる。

 

「(まぁ、今は自分の事より他の人の事を聞いてみようか)」

とは言っても、自分の事を知る人などはいないので、そうする他ないのだが。

 

「心理状態が分かるのは良いな。良くやった。記憶のない俺よ」

真顔でそんな事を呟きながら皿に盛り付けをし、三人の方へと向かって行った……

 

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……あ、そうそう。因みに霊夢は調子が戻った。というより前よりも調子がよくなったらしいが、、俺にした事は覚えていないみたいだ…。魔理沙が言うには表情も豊かになったとも言っていた。…良い事だと思うな。

 

「んで、、どうするよ、劦は帰れないみたいだし」

「まぁ…でも仕方が無いし、、」

「…その事なんだけど」

「(言うのか。早いな、)」

「…劦さんに私たちの心を変えて貰おうとは思わない?」

「俺、がですか?」

「…そう。貴方は現に霊夢を変えている、何故なら顔を見たら分かるでしょう?」

「…いや、あの。顔が見えないんですけど、、」

 

だーれも突っ込まなかったから言わなかったけど、普通に考えて仮面をつけて歩くのはおかしくないのか?三人つけてるんですけど。

 

「ゴホッ、、」

「なら、まずこのお面の事を話しましょう、魔理沙か霊夢からは聞いてるかしら?」

「(無かったことにした、、)無いですね。」

「そう、これは………」

 

、、、、、…これはある人の話。…私たち「女」は大昔から「家畜」の様な存在だった。男の事を聞くのが私たち女の仕事、だから…殴られても…蹴られても…はたまた売られても誰も否定をしなかった。…と言うよりできなかったの…何故なら使命を果たす事をしなければ私たちは殺されてしまうのだから。

 

…だから力を付けた。男にも負けない力、それらを身につけたのは私や霊夢、魔理沙の様な存在。

 

霊夢は元から強く。魔理沙は努力で這い上がり。私はあらゆる事をやって「ー汚名ー」を手に入れ、しのいで行った

 

…でも、人里に入る事は許されなかった。

 

…女は美人出なくては存在理由が無い。それでいて私たちはとても醜く腐臭のするもの。”そんなものを入れさすわけにはいかない”と言われた。

 

…だからとはいえ、私たちの食料を手に入れる場所。私はどうにかなるにしても他のもの達はどうする様にも出来ない事。…それで提案したのが、、

 

「…顔を隠すお面、って事ですか…」

「そうね……お面を被る事が私たちの決まりの様なものですわ」

「・・・」

「・・・」

 

…今、その事を聞いた時に黙り込んでいた二人の目が揺らいだ。多分、嫌な思入れがあるのだろう

 

「だからこそ、お願いがあるのです……」

「……」

「お願いします。…私たちの事を助けて下さい…」

「ー!」

 

 

…そう言うと、頭を下げてお願いをされた。妖怪の賢者であろうものがここまで自分のPRIDEを捨てているのにもかかわらず、俺が断るのは無下に思えてしまう。魔理沙も霊夢も驚いていると言う事は相当なものを持っていたはずだ。

 

ーー…だから、言ってやった。

 

 

「大丈夫ですよ、、はっきり言って同じ男として許せないんで。」

三人に聞こえる様にはっきりと。

「ありがとうな、劦。やっぱり良いやつだぜ!」

「ありがとう、本当にね」

やめてくれよ。そんな顔をされたら泣いちゃうじゃ無いか。二人可愛いし。

「、、、」

…頭を落としたままの紫に近寄り頭をなでる。

「…もう約束をしました。だから安心して頭を上げて下さい、」

「、、ええ」

そう言って頭を上げた時、紫さんは泣いていた。ポロポロではなくボロボロと、、

「さて!野菜カレーを作ったぞ!運んでくれーー」

「あいよーー!」

「私もやるわよーー!」

ドタバタと、調理場の方へと向かって走って行った。

「…………優しいわね。本当に、、感謝しか出来ないわ……。」

 

…一人残された部屋の中、嬉しそうな言葉がひびいていた。

 

To.be.continued,

 


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