どうも、最近関節の痛みに悩まされている御堂です!
感覚的に今回までがプロローグって感じです。ところで、プロローグとエピローグとモノローグって結構混同しません?たまに間違えて友人に「は?」って返されると滅茶苦茶恥ずかしいです。
んなことはどうでもいいですよね。申し訳ない。
では、どうぞ!
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〜
ずっと前から。
幼稚園の頃から、ずっと有里のことが好きでした。
だけど恥ずかしくて、怖くて、言えなくて。
もう有里と私も高校生。有里にはもう好きな人がいるのかもしれません。
この手紙だっていつ渡せるのやら。
だけど、いつか。
いつかこの手紙を貴方に渡せたのなら。
返事を聞かせて貰えたら、嬉しいです。
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「ごふっ!けへっ、けふっ!」
「············⁉︎ 有里、何でいきなり咳き込んで······」
僕こと
············え、この手紙書いた人誰······⁉︎
普段の澪とのギャップにやられました。
やだもう何この文面。普段は無口な澪がこんなド直球の告白文を僕のために書いてくれたと思うとドキドキが止まらないんですけど。ちょっと動悸が激しすぎて不整脈を疑っちゃうレベル。
あーもーやっぱり好きだよー。この場で僕も君のことが好きですアイラービューアイニーヂューとか言いたいよー。
などと内心では馬鹿なことを考えていてもそれを表に出さずにいられる僕は優秀な子だと思います。自画自賛!
そう、ここであっさり僕が落とされてHappy Endという訳にはいかないのだ。すなわち、
「で、澪は僕の部屋で何してたのかな?」
「····························(ピシッ)」
あ、固まった。
未だに僕のベッドの上で布団にくるまったままの状態で表情を伺えない澪だけれど、直感で中でダラダラと冷や汗を流していることを察知する。
「ラブレターで僕の気を引いておいて有耶無耶にしようとしたんだろうけど······僕は騙されないよ?」
「············あれはあれで本心。流石有里、惚れ直した」
「あはは。まったく、澪は相変わらず話を逸らすのが下手だなぁ(ダラダラ)」
「············有里、鼻血出てる」
正直な自分の身体が恨めしい。
やっと布団から這い出てきて、鼻血をティッシュで拭き取ってくれる幼馴染みに再びときめいてしまっている自分のチョロさに内心呆れつつ、再度澪に僕は問うた。
「ほら、いい加減話して楽になっちゃいなよ。僕の部屋で何してたのさ」
「············自分の部屋に戻って忘れ物を取りに行った」
「うんうん」
「············というのは実は嘘で」
衝撃のカミングアウト。
「············そのまま自分を部屋を素通りして、有里の部屋の前に立った」
「ふむ」
「············ドアを、ガチャリ」
「ダウト!ダウトだよ澪!僕の部屋のドアの鍵は完全に閉まっていたんだし、開くはずがないじゃないか!」
「············ヘアピン持ってたから」
だからどうした。まさかそのヘアピンでピッキングしたとでも言うのか。僕がこの部屋の鍵が開いていたことを知った時、反射的に空き巣犯かと思った訳だけど、あながち間違いでもなかったように思えてきた。
まさか、今までやたら忘れ物が多かったのは全部僕の部屋に侵入するためだったのか······?と思って問うてみれば、今回ついに我慢が出来なくなっただけであり、今までは普通に忘れ物をしていたんだとか。それはそれでどうなの?
「ていうか澪、一体どこでそんなスキルを······」
「············おっと(バサッ)」
「? 澪、何か落としたよ?これは、本······?」
僕が質問しようとすると、澪が何冊かの本をバサバサッと音を立てて落とした。それらを澪に返してあげようと拾い上げ······タイトルを見て、絶句してしまった。
・愛しのあの人を落とす15の方法
・男の子が喜ぶ!あんなコトやこんなコト(R18)
・実践 スパイ技術ハンドブック
・これで貴方も上忍に 忍者スキル習得法
・邪魔なアイツもこれで一夜 呪法百選
「ラインナップー!」
「············恥ずかしいモノを見られた。······うぅ、愛しのあの人を落とす方法、とか······」
「それなの⁉︎ この中で君が唯一反応する本はそれなの⁉︎ もっと色々あるよね⁉︎ 特に呪法百選!」
「············?」
「何故そこで君は不思議そうな顔が出来るのさ」
ふと、こんな美少女が呪法やスパイ技術が掲載された本を購入した時、書店の店員さんは一体どんな表情をしていたのだろうと気になった。というか何気に忍者スキル習得法とかいう本の意図が分からない。彼女は忍者になって何をする気なんだ。
次々と明らかになる幼馴染みの知らない一面に圧倒され、軽く目眩すら覚える。僕はふらつく頭を押さえながら澪の隣に腰掛けた。
「もー······澪ー······」
「············ん、大丈夫?有里」
「誰のせいでこんなになってると思ってるの?」
「············手の届く範囲に有里の布団や下着があると思ったら、溢れ出るパトスを抑え切れなかった」
「はーんーせーい!しなさい!」
「············あぅっ」
澪の額に一発デコピンを打ち込むと、彼女は顔を(>_<)みたいな感じにして額を押さえて
そして、涙目で視線を向けてきた澪に微笑みかけると共に話しかける。
「あのね、澪。僕も澪のことが好きだよ」
「·············!(ボンッ)」
今まで言うことが出来なかった言葉は、自分でも意外な程すんなりと口から出た。それを聞いた澪はまるで茹でダコのように顔を急激に赤くする。わぁ、いつも無表情な澪がここまで感情を表に出すのは珍しいなぁ可愛いなぁ。
「だけど!それとこれとは話は別!家主の僕がいない間に部屋に侵入してああいうことするのは今後控えるように!」
「·······································わかった」
「落胆の感情を隠そうともしないね」
いたく不満そうな表情をする澪に苦笑する。
まぁあれだよね、惚れた弱みで許しちゃってるけど、普通に不法侵入だからね。反省してよね。
と、そこで澪が何かに気付いたように息を漏らした。え、なにごと?
「!············有里」
「どしたの澪?別に僕は怒ってるわけじゃないから謝罪の言葉とかはいらない······」
「············学校、登校時間······」
「!?」
結局、この日は遅刻しました。
◆ ◆ ◆
長い回想で申し訳ない。
とりあえず、そんな感じで僕は無口な普通の幼馴染み
「言ったよね⁉︎ 僕言ったよね勝手に部屋に入ってくるの禁止って! あの時言ったよね⁉︎」
「············正確には、家主の有里がいない時と言っていた。······つまり、こうして有里が部屋にいる時はセーフ」
「屁理屈だよそんなの!というかそんな条件だと君はほぼ毎朝僕の部屋に来ることに「············お味噌汁、冷める」あ、ごめん。······おいし」
流石澪。味噌汁一つ取ってもこんなに美味しく作れるなんて将来はきっといいお嫁さんに違うそうじゃない!
······あの時僕と彼女が気持ちを伝え合ってからというもの(物凄い流れ作業みたいな感じになってたけど、彼女はハッキリと覚えていた)、彼女は自らを「有里の将来のお嫁さん」と称し、何か色々吹っ切れたような行動を取るようになっていた。そう、この住居不法侵入のように。
いや、吹っ切れたからって勝手に人ン家に侵入するのはどうなの?って感じなのだけれど、当初は起床した瞬間に、僕の布団の中に潜り込んですぅすぅと隣で寝息を立てているパジャマ姿の澪を発見、あまりの可愛さ······もとい、驚愕に心臓が止まりかけるということもあったため、幾分かは改善されたと言えよう。
「···········有里。朝から叫ぶと、ご近所さんに迷惑がかかる。······めっ」
「澪。君はそろそろ自分の行動を見つめ直すということを覚えた方が良いと思うんだ」
「············ん、いつも良い子」
「ねぇ、それってまさか自己評価?自己評価なの?君の顔に付いてるその二つの球体はビー玉か何かなの?」
「············あのね、有里。これは目って言って」
「哀れむような目線を向けるのやめて⁉︎」
例えだから!目のことくらい知ってるから!
僕が叫ぶと(ご近所さんへの迷惑になるのは確かなので声量は絞った)、澪はクスクスと小さく笑い出した。くっ、完全に弄ばれてる······。
仕方ないので今回は澪を部屋から出すのを諦め、彼女が作ってくれた朝食を頂くことにした。澪は既に済ませた後らしく、僕が食べるところをじっと見てきている。あの、食べにくいんですけど。
「ご飯に味噌汁、焼き鮭という朝ご飯の定番とも言えるメニュー······そして何故かその横に添えられているクレープ。うん、流石澪だね、料理の腕も一流だ」
「············ん。クレープは有里が前に好きだって言ってたから、作ってみた」
ドヤ顔の澪。いや、嬉しいけどね?
「朝からクレープはキツいなぁ······せっかくだし食べるけど、今後は朝にはいらないよ······」
「············それは今後もここに来て良いということ?」
「ぅぐ。······まぁ、実はもう慣れ始めてるから良いんだけど······せめていつ来るのかは前以て言って欲しいかな」
「毎日」
「しってた」
いつも話す時はスローペース気味なのに、こんな時だけハッキリとした口調で話す彼女。何なのさ。
「まったく······ご馳走様でした。さて、僕は歯磨きしたら制服に着替えるから、寝室には入って来ないでね?」
「······························」
「返事」
「············断る」
「部屋から叩き出すよ?」
「············むきゅぅ」
流石に好きな女の子の前で堂々と着替えられる程、僕は図太い神経の持ち主じゃない。歯磨きと洗顔を済ませ、澪がソファーに座ってボーッとしているのを確認した後に寝室へと向かう。
「(ガチャ)さて、ちゃちゃっと着替えを」
「············うぇるかむ、有里」
「············」
「············これが忍法、変わり身の術。······リビングにいた私は、ニセモノ」
「············」
「············どうぞ、お気になさらず」
澪を部屋から叩き出した。後悔はしていない。
◆ ◆ ◆
十数分後。諸々の支度を終えた僕は高校通学鞄を肩に掛けて玄関から外に出た。少々不満そうな表情で出迎えてくれたのは勿論、先程外にポイした幼馴染み。
「············有里、ひどい」
「ごめんね。澪のことが好きすぎて、つい」
「······························無理がある」
流石にそこまでちょろくないか。
というか、君も似たような理由で色々やらかしてるじゃないかよぅ。何で僕の時だけ駄目なんだよぅ。
脳内で愚痴りながら澪と並んで歩き出す僕。毎朝思うけど、つくづく高校に近い所に部屋を借りれられて良かった。大学に入る時に後悔するのかもだけど、まだ特に志望校決まってないからなぁ······もう二年生なのに。
同意を得るように澪にも話を振ってみた。すると、
「············ん、私は有里がここに引っ越すってお義母さんから聞いて、着いて来ただけだけど。······便利」
「あぁ······そうだったの······」
凄い偶然だとは思ってたけど。
あと澪。君が僕の母親のことをお義母さんって呼ぶのは少しおかしいと思うんだ。そんな意思を込めた視線をスルーしてテクテク歩き続ける澪。おのれ。
「あ、澪。いつもはこの辺りから忘れ物に気付いてるけど、今日は忘れ物は無い?」
「············ん、大丈夫」
「そっか。気を抜くと君はたまに通学鞄ごと忘れるからね。こうしてこまめにチェックするのが吉」
「············子供扱いされてる気がする」
してないしてない。むしろそこら辺の子供よりも手が掛かるまであるよ。······と言ったらどうなるのだろう。結局言わなかったけれど。
と、そんなこんなで高校に到着した。
割と設立から年月が経っているため所々塗装が剥げている、見慣れた
そんな高校の昇降口から校舎の中に入り、ロッカーから上履きを取り出す。そしてそれをつっかけるように履いて二年生の教室へと歩を進め、教室の扉を開くと。
「おや、有里さんと澪さんじゃねーですか。おはようごぜーまーす」
「おはよ、
「············おはよう、
長い黒髪をサイドテールにした女子生徒······クラスメイトの水無月楓さんが朝の挨拶をしてくれたので、それに同じく挨拶を返す。口調や態度がいつも気怠げだけど、これでも一応クラス委員だったりする。
「んもー、有里さんはいつまで経ってもウチのことを名前で呼んでくれませんねぇ。いい加減焦れますよぉ」
「そ、それはもう少し慣れてから······」
「まー無理強いはしませんけど?サブリミナル効果を期待して、二分間に一度くらいウチを名前で呼べと有里さんの耳元で囁くようにしましょーかね」
「やめて!何か怖いからやめて!」
ふへっ、と悪そうな笑みを浮かべて言う水無月さんに懇願する。幼馴染みで付き合いの長い澪だからこそ名前で呼べるのであって、そうじゃなければ女子を名前で呼ぶなんて純情な僕にはちょっと厳しい試練だ。
すると、僕の隣に立っていた澪が。
「············ふっ」
「うわ、すっげードヤ顔向けられました。有里さぁん、悔しいのでウチのことハニーって呼んで下せー」
「ハードル上がってるよねソレ」
そもそも何故そこまでして僕に名前を呼ばせようとするのかが分からない。自分も名前で呼んでるんだからテメェも呼べよゴラァ‼︎とかそういう感じなんだろうか。いや、別にそんな脅迫じみた頼まれ方はしてないけど。
僕が机上に通学鞄を置いて首を捻っていると(ちなみに席は水無月さんの隣。授業中澪がどこか昏い視線を向けてくるのが怖かったりする)、前の席に座っていた男女のペアがこちらに振り向いて来た。
「おはよう、相原くん」
「おはようさん。ハハァ、今日も澪ちゃんと一緒に登校か?羨ましいねぇ」
普通に挨拶をしてきたのは
そして軽薄そうな笑みを浮かべて軽口を叩いてきたのは
「おはよ、江藤さん、入賀くん」
「······こうして笑顔を見てみると、やっぱり相原くんって女の子みたいね。身体の線も細いし」
「ハハァ。知ってるか相原?お前、『女装が似合う男子生徒ランキング』のTOP3にランクインしてんだぜぇ」
「二人して急に何なの⁉︎ 酷いよ、筋肉が無いのとか女顔なの、結構気にしてるのに!」
「ごめんね。相原ちゃんってば何か『いじって下さいオーラ』みたいなのを纏ってるから······」
「一日一度はこうして相原ちゃんをからかわないと調子出ねぇんだよなぁ」
「悪意が呼び名から滲み出てるじゃないか!」
朝っぱらから相原ちゃん扱いされ、そろそろ本気でジムに通おうかと検討し出す。入賀くんは結構筋肉質だからなぁ·····良いなぁ······。
「············ん。私は男の子としての有里が好き。······だから、落ち込まないで?」
「そーですよー。確かに男子としてはちょい頼りねーですが、ウチはありだと思います、女装男子」
僕と同じく通学鞄を机上に置き、再度こちらにやって来た澪と隣で僕と江藤さんたちのやり取りをニヤニヤしながら見ていた水無月さんが僕を慰め出した。だけど水無月さん、君は微妙に僕を貶してやしないかい?
「ハハァ。ちょっと前から澪ちゃんの相原へのアプローチが更に多くなったねぇ。ちゃんと相原は応えてやってんのかぁ?」
「相変わらず下世話だね入賀くんは。そんなの言う訳ないじゃんか······」
「············ん。遂に有里から好きだって言ってもらえた。後はこのまま幸せな家庭を築くだけ」
「「わーぉ」」
「澪さぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「え、何ですかそれ。ウチなんてまだ名前呼びすらされてないのに。ちょっと有里さん、そこのところ詳しく話し合いましょうよ」
澪の言葉に感心したような声を上げる江藤さんと入賀くん、そして何故かちょっと不機嫌そうな表情で袖をクイクイ引いてくる水無月さんにどう説明したものかとあたふたしていると、教室の扉がガラガラと音を立てて開き、担任の教師が入ってきた。
「ほ、ほらっ。もうHRだよ!皆席について!」
「············また有里の近くにいられなくなる。······早急に席替えをすることを要求する······」
「ウチとしては席替えなんて制度は今から廃止しても良いと思いますがねー。ところでゆうりさん、先程の話の続きを」
「相原くん、まさに両手に花って感じね······」
「片方の好意には気付かないのが相原クオリティだぜぇ」
いつも騒がしく、それでいて心地良いこの空間。
––––––始業のベルが、今日も鳴る。
いかがでしたか?
とにかくこれから出していきたいキャラを終盤にぶち込んで紹介したのでかなり雑になった気がしないでもないです。
これから一人一人掘り下げられると思うので······野郎の掘り下げはいらないかな。
では、今回はこの辺で。
ありがとうございました!感想待ってます!