本業は研究者なんだけど   作:NANSAN

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EP20 再会

 

 神機が動かない。

 これはゴッドイーターにとって致命的な出来事だ。神機が停止すると、流れ込んでくる偏食因子も抑制されて、身体能力が低下する。また、各特殊技能も機能しなくなるので、実質的に戦闘不可能となるのだ。

 だが、対アラガミ最前線と呼ばれる極東でエース級の強さを持つユウにはその常識も通用しない。確かに神機が停止したことで攻撃力はゼロになっているが、アラガミと戦えないわけではないのだ。鈍器と化した神機を操り、青いシユウを翻弄していた。

 

 

「ソーマ!」

「任せろ」

 

 

 ユウが隙を作り、入れ替わったソーマが青いシユウを吹き飛ばす。アリサは援護しつつ、変異シユウが創造した青いオウガテイルと戦っていた。

 これでもアラガミ動物園と名高い極東のゴッドイーターである。

 多少の不利どころか、かなりの不利であっても問題なく戦える。これこそが極東のゴッドイーター伝説を生み出す土壌となっているのだが、生憎、極東内部ではこれが普通だ。極東人は自分たちがヤバい民族だと恐れられていることなど知らない。

 

 

「吹き飛べ!」

 

 

 ソーマの重い一撃が青いシユウに直撃した。元から半分近くがアラガミのソーマは、神機からの偏食因子注入がなくとも高い身体能力を発揮できる。青いシユウにダメージはないものの、吹き飛ばして人里から離れさせるぐらいならば余裕だ。

 次いでユウは再び青いシユウに迫り、ロングブレードの神機を振り下ろした。ガキリと嫌な音を立てつつも打ち合い続けることが出来るのは流石だ。青いシユウが空中へと跳び上がらないように的確な攻撃をし続けるので、一見すると追い詰めているようにすら思える。

 尤も、全く攻撃が通じていないので追い詰められているのはユウたちのほうだ。

 

 

(神機が使えないだけでこんなに厳しいなんてね……)

 

 

 ゴッドイーターにとって神機は生命線そのものだ。神機を上手く扱えなければ、戦場で死が訪れる。だからこそゴッドイーターは訓練を怠らない。例え義務ではなくとも、その訓練によって明日の生死が決まるからだ。

 だからこそ、こうして神機が停止するという事態は想像の埒外であり、そんな事態を想定した訓練などもしたことがない。取りあえずネモス・ディアナからは遠ざけたが、ここからどうするのかは全くの未定だった。

 

 

「アリサ! 近くに崖か何かはあるか!?」

「少し待って下さいソーマ……数キロ先東にダムがあるようです。旧世代のものですが、現存しているみたいですよ」

「聞こえたかユウ! そこまで誘導して突き落とすぞ!」

「分かったソーマ!」

 

 

 倒すことは出来ないが戦闘不能状態にすることは出来なくもない。青いシユウもダムに突き落とせば簡単には復帰できないだろう。その間に姿をくらませれば、取りあえずは撃退である。

 そうと決まれば三人の行動は早い。

 数キロ先というかなり厳しい条件があり、更にその道中は山あり川ありと楽でもない。しかし、三人は無事にミッションをやりとげ、ネモス・ディアナの危機を救ったのだった。

 そうして三人は息を顰めつつネモス・ディアナへと戻る。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ネモス・ディアナが未知のアラガミに襲撃された。

 その事実を無線で聞いたシスイは全速力で帰投した。元々、対アラガミ装甲壁のためにオラクルリソースを手に入れようとして遠征していたのだ。こういう事態も予測して、いつでも連絡できる無線を所持している。

 まぁ、大丈夫だろうと高をくくっていたが、今回は最悪の事態が訪れたようだった。

 そしてネモス・ディアナに帰ってきたシスイは、被害の少なさに驚く。

 全力で帰投したとはいえ、ここまで来るのに五時間もかかっているのだ。かなり壊滅的な被害も覚悟していたのだが、事情を聞けば怪我人が少数出た程度であり、死者はいないという。アラガミ被害としては不幸中の幸いとも言える結果だった。

 

 

「戻りました葦原総統」

「神崎シスイか。良く戻ってきた」

「いえ、未知のアラガミに襲撃されたって聞きましたけど……」

「ああ、その通りだ。撃退に成功したがね」

「は? 撃退?」

 

 

 葦原那智の言葉にシスイは呆けた顔をする。ここにはアラガミに対抗できる兵器もないし、神機使いもいないのだ。それにもかからわず撃退したという。

 意味が分からないとはこのことだろう。

 そんなシスイのために葦原総統は説明を続けた。

 

 

「どうやら極東のゴッドイーターが無断でネモス・ディアナへと入ってきていたようでね。偶然、その時にアラガミが襲ってきた。撃退は彼らがしてくれたというわけだよ」

「ああ、なるほど。それにしても極東支部が……」

「彼らはフェンリルから独立した部隊クレイドルを名乗っているが、こちらとしては信用できない。現在は拘束して牢に閉じ込めている」

「……はい? いや、閉じ込めた?」

「うむ」

「いや、でも一応は恩人でしょう?」

「無断でここへ侵入したのだ。甘い顔は出来ん」

「んー。まぁ、ここの人たちの心象のためにも仕方ないか」

 

 

 ネモス・ディアナはフェンリルに捨てられた人たちが寄り添って出来た場所だ。そこにフェンリルの者が無断で入ってきたとなれば、悪いイメージしか持てない。

 未知のアラガミを撃退してくれたという点に関しても、ゴッドイーターはそもそもアラガミを狩るのが仕事なのだ。フェンリルの犬が仕事した結果、偶然自分たちが助かったと解釈したのだろう。

 自分たちはフェンリルが捨てた存在だ。今更助けられたところで……という皮肉を含んだ措置である。

 

 

「まぁ、総統がそう言うなら僕は文句言いませんけど、早めに解放してくださいよ? ゴッドイーターは活動するために偏食因子を打たないといけませんから。それが切れるとアラガミ化してしまうので」

「……そうなのか? 期限はどれぐらいになる?」

「基本は一週間から二週間ですかね。尤も、個人差がありますから二週間も経てば高確率でアラガミ化してしまいます」

「それは困るな。その辺りの事情は聞いておくか」

「ネモス・ディアナの安全にもかかわるので」

「分かっている」

 

 

 正直、葦原総統も捕らえたゴッドイーターをどうするべきか悩んでいる部分があった。これまでのフェンリルに対する恨みをぶつけるのも少し違うだろう。彼らは実働部隊であり、自分たちを捨ててしまったフェンリル上層部とは関係のない人間だ。寧ろ、上層部からの命令によって毎日のように命を削っている立場である。

 だが、このまま放免するというのも違う気がするのだ。

 

 

(サツキを通してフェンリルと交渉するか……)

 

 

 人質、と言えば聞こえが悪い。

 だが、その言い方が的確だろう。

 この時代を生きる上で、フェンリルと関わらないようにするのは難しい。どうしてもフェンリルから仕入れなければならない資材も存在するのだ。そんな資材を手に入れるために、捕らえたゴッドイーターは良い手札となる。

 

 

「神崎。君はしばらくネモス・ディアナに留まって貰う。ここでアラガミと戦えるのは君一人だ。落ち着くまでは外に出したくない」

「分かりました。オラクルリソースもある程度は確保したので、しばらくは大丈夫でしょう。他には何かありますか?」

「赤い雨による死者が出た。そちらを早急に調べて欲しい」

「……それに関しては正直限界ですかね。ネモス・ディアナの装置ではこれ以上の解析は無理です。フェンリルの支部にある機材ならもう少しいけると思いますけどね」

「そうか……」

「僕の専門分野なら今の機材でもどうにかなったかもしれません。でも僕って神機学者ですからね」

「ふん。役に立たんな」

「わお。辛辣です」

 

 

 そう言ってシスイは肩をすくめるが、ここで神機学者など役に立たないのは百も承知の事実だ。葦原総統も半分冗談で言っているだけなので、シスイも軽く流す。

 

 

「それでゴッドイーターはどうします?」

「極東に連絡する。それで何かしらの資材と取引するつもりだ」

「分かりました。僕も彼らに会いに行っていいですか? 知り合いかもしれないので」

「構わんが……余計な情は抱くなよ?」

「情ぐらいは抱きますよ……でもネモス・ディアナには恩がありますから、余計なことはしません」

「ならいい。さっさと出ていけ」

「りょーかいです」

 

 

 報告と情報交換を終えたシスイは一礼して部屋から出ていく。そして早速とばかりに三人のゴッドイーターが閉じ込められている牢へと向かった。

 ゴッドイーターならばネモス・ディアナの牢屋程度、ぶち破ることも容易いだろう。劣化した鉄の牢だからである。扉の蝶番も錆びているので、本気で体当たりでもすれば簡単に脱出可能だ。

 それをしないということは、穏便に済ませたいという事情があるからだ。

 となれば、ロマンチスト博士ことペイラー榊の手先だと分かる。本部の手先ならともかく、ペイラーの手先ならシスイを見ても余計な騒ぎは起こさないだろうと考えた。

 なお、シスイはサツキ経由でエイジス計画――本当はアーク計画だ――が失敗し、ペイラー榊が極東支部長になったことを知っている。

 

 

(極東ってことは、高確率で知り合いだろうね。もしかしたら第一部隊のメンバーかも)

 

 

 シスイにもちょっとした期待はある。

 第一部隊のメンバーは、自分がアラガミの特徴を得た化け物であることを知りながら、人間として接してくれた貴重な人たちだからだ。

 自分が化け物なのか人間なのか。

 それは一生使って示していく命題である。

 ベースが人間だとか、化け物が混じっているとかの物理的な問題では無い。自身の行動によって、どれだけ人間になれるかという話だ。だからこそ、シスイは人の役に立つ研究という分野に重きを置いているし、その忙しさの中でもゴッドイーターという職業をこなしていた。

 このように過ごしてきた四年間の中で、極東にいた間だけは人間になれた。

 少しは気の許せる相手である。

 そんなことを考えながら牢へと歩いていくと、ゴッドイーターを押し込めている牢の前に先客がいることに気付いた。葦原総統の一人娘こと葦原ユノである。

 

 

「――すみません。ネモス・ディアナを助けてもらったのに」

「いや、仕方ないよ。これは俺たちも覚悟していたことだから」

「ですが……」

 

 

 そしてユノと鉄の扉越しに話しているのは聞き覚えのある声である。牢の中は扉についている小さな鉄格子からしか見えないので確信は持てないが、誰が牢に捕えらえているのかすぐに分かった。

 

 

(ユウ君かな?)

 

 

 思い出すのはハイスペック第一部隊隊長の神薙ユウだ。意味不明な軌道を描いて空中を飛び回り、理解不能な反射神経でアラガミの攻撃を回避し、目を離した瞬間にはアラガミの首が飛んでいる。極東の最強隊長は伊達ではない。

 前隊長のリンドウや強襲兵のソーマも実力としてはユウに匹敵するので、この三人が極東の誇る最強と言えるのだが、第一部隊着任から一か月で隊長になったユウの方が目立つことが多い。

 

 

「しかし救ってくれたユウさんたちへの仕打ちがこれだなんて……あんまりです!」

「ははは。まぁ、そんなこともあるさ。こういうことだって覚悟した活動だから」

「……私、お父さんに言ってきます。幾ら何でもこれは――」

「大丈夫だよ」

 

 

 会話の中でユウという言葉が聞こえた。

 牢の中にあの最強隊長がいることは確定である。

 シスイは足音を強めて牢に近づいた。ユノはそれに気付いたのか、シスイの方を振り返って驚いたような表情を見せる。

 

 

「シスイさん!? 帰りは明日だったのでは?」

「襲撃を受けたって連絡貰ったからね。飛んで帰ってきたんだよ。ユノも無事でよかった」

「そうですか。ありがとうございます」

 

 

 だが、この会話は牢の中にも聞こえていた。ユノが叫んだ『シスイ』という名前にソーマが強く反応したのだ。

 

 

「シスイだと!? 神崎シスイか?」

「え?」

「シスイですか? まさか生きて……」

 

 

 ソーマに続き、ユウとアリサもすぐに反応する。

 一応、神崎シスイは戦死という扱いになっているのだ。まさか生きていて、こんな場所で再会するなど想像も出来ないだろう。

 隠すことでもないので、シスイは扉の向こう側に話しかけた。

 

 

「久しぶり。ユウ君にアリサにソーマ」

「何が久しぶり、だ! 俺たちはお前が死んだかと思ったんだぞ!」

「いやー。ヨハネス支部長に本気で命狙われてたから、もう逃げようかと思って」

『あっ……』

 

 

 ユウ、アリサ、ソーマは理解する。

 最後の戦いのとき、エイジス島でヨハネス支部長と相対してシスイのことも聞いたからだ。計画の邪魔になる要素であり、本部が絶対に消せと命じた対象だからという理由で死に追いやった。そう聞いていたのである。

 

 

「うん、ごめんシスイ。元支部長の話を聞いて、ようやく君がどれだけ狙われているのか理解したよ。力になれなくてごめん」

「まぁ、過ぎたことだし、一人のゴッドイーターが出来ることなんてたかが知れているからね。ユウ君たちを責める気なんてないよ。責めるとすれば、僕をこんな体にした黒服無表情女だけさ」

 

 

 シスイは周囲がどれだけ自分を蔑んでも、殺意を向けて来ても恨まないようにしている。勿論、そんな感情を向けてくる相手に好意を抱くようなマゾではないが、基本的には放置するようにしている。

 何故なら、自分が化け物と思われるのは、その行動にあると考えているからだ。

 まだ人間にはなれない。

 まだ怪物のままだ。

 そう考えることにしていた。

 シスイが恨むのは、ただ一人ラケル・クラウディウスのみである。

 

 

「それよりも、何で君たちがネモス・ディアナまで来たのか。そっちの方が気になるかな。ここってフェンリル嫌いの人が多いのに、よくぞまぁ来る気になったよね」

「それを言うならシスイも元フェンリルじゃないのか……?」

「僕もフェンリルに捨てられたって共通点があるからねー」

「っ! そうか。うんそうだね」

 

 

 一瞬、ユウは動揺したかのように声が揺らいだ。

 しかし、すぐに持ち直してネモス・ディアナまで来た理由を告げる。

 

 

「俺たちは極東支部で新しい部隊を設立したんだ。独立支援部隊クレイドル。フェンリルの助けを出来るだけ借りず、フェンリルから捨てられてしまった人たちにも手を差し伸べる。いや、手を差し伸べるなんて言い方は傲慢かな。まぁ、そんな人たちが暮らせるように支援する部隊だよ」

「へぇ。面白そうなチャレンジだね」

「ま、出鼻からこれだけどね」

「見事にくじかれたわけだ」

 

 

 ユウたちもアラガミさえ現れなければ穏便に済ませる予定だった。ネモス・ディアナについてある程度調査した後、そのまま帰る予定だったのだ。

 しかし、アラガミが現れてしまったために、戦いに出て目立ってしまった。

 その結果が今である。

 

 

「でもクレイドルか……面白そうな試みだね」

「ああ。まだ、第一部隊のメンバーにツバキさん、あとは少数の技術スタッフしかいないけどね。人手不足はどこも同じさ。それに、俺たちがクレイドルとして抜けた分、第一部隊としての活動に支障が出ている。今はリンドウさんとサクヤさんがコウタと一緒に捌いているけど―――」

「ちょっと待って。リンドウさん? 生きてるの? アラガミ化したんじゃないの?」

「え? ああ、そうだった」

 

 

 シスイはリンドウが復帰したことを知らない。最後に見たのは、完全にアラガミ化した後だった。そこから生きて帰れるなど前代未聞である。

 ユウは何があったのかを軽く説明し、シスイは神妙な顔つきでそれを聞いていた。

 特に神機にレンという意思が芽生えていたという話は興味深かったのだが、リンドウが生きているという事実はかなり嬉しかった。流石は慕われる元隊長である。

 ちなみに、シスイがアラガミ化直前のリンドウを世話していた話をすると……

 

 

「え? そんなの聞いたことない」

「私も初耳ですね」

「リンドウの奴……記憶が飛んでやがるな」

 

 

 と言っていたので、リンドウは覚えていなかった。

 もしもリンドウがそのことを覚えてれば、シスイが生きていることも早めに分かったことだろう。しかし、偶然にもネモス・ディアナで再会し、お互いに生存確認が出来たのだ。

 結果的には良かったということだろう。

 その後はエイジス計画もといアーク計画の顛末を聞き、シオの最後、月の緑化に関する真相、ノヴァの残滓から生まれたアリウスノーヴァの話など、シスイが極東支部を離れて以降の話を聞いた。

 

 

「僕がいない間にそんな壮大な事件があったなんてね……極東、呪われているじゃない?」

「あー……うん」

「否定できないところが怖いですね」

「元から強力なアラガミが闊歩する碌な所じゃねぇからな」

 

 

 極東呪われている説。

 かなりの部分で否定できない。

 

 

「極東って恐ろしい場所だったんですね……」

 

 

 そして聞きに徹していたユノも震える声でそんな言葉を吐く。掻い摘んでの話だったので機密事項までは触れていないが、極東で起こった大まかな事件は理解できたことだろう。まだ十三歳のユノには刺激が強すぎる話である。

 まさかそんな身近で世界の危機が訪れていたなど信じられないことだろう。

 

 

「そうだシスイ。お前に聞きたいことがあった」

「なにかなソーマ?」

「赤い雨についてだ。ここにいるってことは多少は知っていることもあるだろ?」

「あー。あれね。正直、僕もよく分からないんだよね。分かったことの幾つかはレポートに纏めてサツキさん……って人に渡したんだけど」

「あのレポートはシスイの書いたものだったのか」

「もしかして読んだ?」

「ああ、詳しい話を聞きたくて、レポートの著者を探していた。まさかお前だとは思わなかったがな」

 

 

 サツキの家に滞在していた時、三人は赤い雨に関するレポートを読ませて貰った。そのレポートの著者と会ってから極東に帰投する予定だったのだが、アラガミの襲撃によって予定が変化してしまった。結果としてその著者であるシスイに会うことが出来たので、問題では無いのだが。

 そしてソーマは現在、牢に閉じ込められて暇である。

 出来るだけ情報を得ようと、問いかけたのだった。

 

 

「アレを読んだのなら話は早いね。まぁ、取りあえず触れたら死ぬ雨って認識で良いと思う。ただ、アラガミには効かないけど」

「極東支部ではまだ観測されたことがないみてぇだが、この辺りにはよく降るのか?」

「一月の間に数回……ってところかな。ただ、アラガミとの戦闘中でこの雨が降ったら絶望的だね。雨にぬれずに戦闘とか出来る訳ないし」

「厄介だな。いや、ユウなら出来そうか。たしか無機物で普通に防げるんだったな? ユウが雨具を着て戦えば何とかなりそうだ」

「いや無理だよ!?」

「あ、僕は普通に濡れても大丈夫だった。どうやら赤い雨は僕をアラガミに括っているみたいだね」

「サラッと衝撃発言を落とすねシスイ!?」

「ソーマも僕みたいに赤い雨を無効化できる可能性はあるけど、体内のオラクル細胞を操れるわけじゃないんだよね。それなら難しいかもしれない」

「そうか……」

「え? スルー?」

「諦めましょうユウ。お二人は学者の世界に入っています」

 

 

 ユウとアリサは諦めた表情で鉄扉越しに語り合うシスイとソーマを放置する。ユノも話に付いていけなくなって困惑しているのだが、隣にいるシスイは気付かない。

 基本的にシスイは学者で、ソーマもその道に進もうとしている。そんな二人が議論し始めたら止まるはずがないのだ。

 しかし、偶然にもそれを止めることの出来る人物が近づいていた。

 

 

「寛げているようだなゴッドイーター諸君」

 

 

 そんな皮肉を言いながらやってきたのは、ネモス・ディアナを率いる葦原那智総統だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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