ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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今回も5000文字越えなかった……

第五話です、どうぞ。


第五話「暴走列車と決断」

目の前を猛スピードで走り抜けた蒸気機関車を見たシュミットは、急いで駅の構内に走った。駅の中では、駅員が走り抜けた機関車の方角をただ茫然と見ていた。

シュミットは駅員に駆け寄り問い詰めた。

 

「おい、あの列車は一体なんだ?何があったんだ!?」

 

シュミットはできるだけ心を平常心にして駅員に聞いた。

 

「そ、それが分からないんです。あの列車は本来ここに停まるはずなのですが……」

 

駅員もどうやら状況を理解できておらず、通過した列車の説明をしただけだった。

 

「駅員さん。この次の駅は?」

「つ、次は終着駅の――」

「終着駅だって!?」

 

駅員の言葉にシュミットは思わず叫んだ。なぜなら、終着駅の構造は行き止まり型の駅であるからだ。

 

「あの機関車はおそらくブレーキが故障したんだ!このままでは次の駅に突っ込むぞ!」

「何ですって?!」

 

シュミットの言葉に駅員も叫ぶ。もしそれが事実なら、あの機関車は駅に突っ込みその周辺を大きく破壊する事故が発生するということだ。

 

「次の駅にこのことを知らせるんだ!早く!」

「わ、解りました!」

 

駅員は大急ぎで走っていく。そしてシュミットも走って駅の外に出る。

そしてシュミットはシャーリー達のいるトラックへ戻ると、そのまま荷台のシートを外し始めた。

 

「ど、どうしたんだ!?」

「何かありましたの!?」

 

二人はシュミットに質問するが、シュミットは聞こえていないのかそのままシートを外し、荷台に乗せたストライカーユニットに足を入れた。

 

「シュミット!」

「シュミットさん!」

 

二人が名前を呼びようやくシュミットは声が聞こえたらしく振り向く。

 

「……どうした?」

「どうしたじゃないぞ!一体どうしたんだ!?」

 

シュミットの言葉にシャーリーが聞き返した。

 

「さっきの機関車は暴走している」

「――なんだって!?」

「そんな!?」

 

シュミットの簡潔な内容に二人は驚愕の表情をした。その間にもシュミットはユニットの魔道エンジンを始動させ、足元に魔方陣を展開していた。

 

「俺は列車を止めに行きます!」

 

そう言ってシュミットは発進し、大空へ飛び出した。そして、列車が走り抜けた方向へエンジンを回しそのまま一直線に進んだ。

シュミットは列車に向かう途中、線路の様子を確認しながら進んでいた。

 

(線路は下り坂、もしブレーキが壊れているならここでさらにスピードが上がっているかもしれない……)

 

線路の状況を確認したシュミットは、さらにエンジンの回転数を上げた。

そしてしばらくして、シュミットの前方に機関車の煙を確認したシュミットは高度を下げ列車に接近した。

客車の横を通り抜ける時、シュミットは客車の中の様子を確認する。中の乗客はシュミットの姿を確認し、驚愕と歓喜の表情をした。

 

(乗客が沢山いる……くそっ!)

 

シュミットは心の中で悪態をつきながら、前方の機関車へ接近する。

 

「おーい!!」

 

シュミットは機関車に向かって声を張り上げる。するとその声を聞いた機関士が運転室から顔を出しシュミットの姿を確認する。

 

「ウィッチ……じゃない、ウィザード!?」

 

機関士はシュミットの姿を見て驚きの声を上げるが、シュミットはそれを気にも留めず機関車の運転室に近づいた。

 

「こちらは501統合戦闘航空団のシュミット・リーフェンシュタールです!一体何があったのです!?」

 

シュミットが機関士に聞く。すると機関士は下がり、シュミットを運転室内に来るように誘導した。シュミットはそれを確認して運転室内に入る。

 

「ありがとうございます。一体何があったのです?」

「じ、実は機関車のブレーキが故障してしまったのです」

 

シュミットは機関士の話した内容を聞いて「やっぱりか…」と呟いた。彼はある程度そのことを推測していたが、いざ言われるとやはり心に響くものがある。

 

「このままでは駅に突っ込んで……」

 

横にいた機関助手が絶望の表情をしながら声を出す。それを見てシュミットは何かできることはないかと思考を巡らせる。

 

「シュミットさん!」

 

シュミットがそんなことを考えている時、機関車の外から声が聞こえる。振り向いてみるとそこにはユニットを履いたペリーヌが並走していた。

 

「ペリーヌ、緊急事態だ!」

 

そう言ってシュミットはペリーヌに説明をする。

 

「なんとかしなくては……」

 

ペリーヌも機関車を止める方法を考え始める。

するとシュミットの視界にあるものが映った。それは機関車の中に置かれていた長い鎖だった。

 

「これだ!」

 

シュミットは思いついたように声を出した。隣で考えていたペリーヌはシュミットを見る。

 

「それをどうするのですか?」

 

ペリーヌはシュミットが何かいい方法を思いついたと考え質問した。

しかしシュミットの口から出た方法はとんでもないものだった。

 

「こいつを最後尾の客車の連結器に付けて、俺とペリーヌで後ろに引っ張るんだ」

「何ですって!?」

「なんと!?」

 

ペリーヌだけでなく機関士達も驚きの声を上げる。

 

「俺の固有魔法を使って鎖とユニットを強化すればいけるかもしれない」

「しかし危険すぎます!下手をしたらシュミットさんの魔力が無くなってしまいます!」

 

シュミットの作戦内容にペリーヌが反対する。ペリーヌはシュミットのことを思って反対したのだ。

しかしシュミットはそんなこと関係ないと言わんばかりに言った。

 

「今何もしないでじっとしてるよりはマシだ!」

 

その言葉を聞いてペリーヌは一瞬たじろいだ。シュミットの目は本気だった。それは意地でもやってやると言わんばかりの。

その目を見て、ペリーヌも決心する。

 

「……わかりました、やりますわ!」

「そう来なくちゃ!」

 

ペリーヌの返事に満足したようにシュミットはニヤリとした。それを見ていた機関士達も顔を合わせ頷き合った。

 

「私達も最善のことはします!」

「ご武運を!」

 

そう言って機関士達はスコップを取り、石炭を機関車の外へ出し始めた。彼らは少しでも機関車を軽くしようと考えたのだ。

それを見てシュミット達も顔を合わせた。

 

「いくぞ!」

「はい!」

 

そう言ってシュミットは運転室の外に出て、そのまま列車の最後尾に向かった。ペリーヌもそれに追随した。

シュミットは最後尾に付くと、まず連結器に鎖を通した。そして、客車の両端にある緩衝器にも鎖を絡めてしっかり固定した。

そしてゆっくりと鎖を後ろに引っ張りはじめる。

 

「ペリーヌ、俺に抱き着け!」

「えっ、わ、わかりました!」

 

シュミットの言葉にペリーヌは一瞬戸惑いの声を出したが、急いでシュミットの腰に手を回し抱き着いた。

そしてシュミットは鎖を持つ手に魔力を流し始める。そしてそれを脇の下に挟む形――綱引きのように引っ張り始める。同時に、鎖と自身の足のユニット、そしてくっついているペリーヌの足のユニットに固有魔法をかける。

 

「いくぞ!!」

 

その掛け声とともに、シュミットとペリーヌはペリーヌは鎖を引っ張り始めた。ユニットのエンジンが轟音を上げ、プロペラは物凄い速さで回転を始めた。

 

「ふぐっ、ぐぐぐぐぐぐ……!」

「うっ、うぐぐぐぐぐぐっ……!」

 

二人は懸命に鎖を引っ張る。それを見ていた乗客達は、その二人に声援を送った。

 

「頑張れ!!」

「頑張るんだ!!」

「頑張って!!」

 

しかし機関車の速度はまだ目に見えて減速しておらず、物凄いスピードで走っている。

機関士達も一生懸命に石炭を外に捨てる。

 

「まだ速度が落ちない……」

 

シュミットは鎖を引っ張りながら考えた。

 

(くそっ……まだパワーが……足りないのか……)

 

やがて、前方に町が見えてきた。機関士達はそれを見て叫ぶ。

 

「いかん!もうすぐで駅に着くぞ……!」

 

後方で客車を見ていたシュミット達も、前方に見える町を見る。

 

「町が……」

 

ペリーヌがかろうじて声を出す。彼女も魔力全力で鎖を引っ張っており、声は小さかった。

シュミットは町を見て、そして脳裏にある光景がよぎった。それは駅に突っ込んだ機関車が駅を突き破り、周囲を破壊しながら進む姿だった。

 

(そんなこと…は……ぜったい……させ…ない……!)

 

シュミットは心で念じるように言い聞かせた。そしてさらに固有魔法をユニットにかけ始めた。先ほどよりもさらに轟音を上げるユニット。プロペラの回転数もさらに加速する。と、同時にユニットからは黒煙が出始める。

そしてついに、一人の乗客が気が付き言い出した。

 

「列車のスピードが落ちているぞ……!」

 

それを聞いて乗客達も気が付く。

 

「本当だ!」

「スピードが落ちているわっ!」

 

しかし、ついに列車は町の中に入ってしまった。そして、列車の先には駅が見えてきてしまった。それを見てみんなが焦る。

 

「拙い!もうすぐ駅だ!!」

 

機関士や乗客達が叫ぶ。そして、駅が近づいていることにパニックになり始める。

そんな中シュミットは、前方に見える駅を見てさらに力を入れ始めた。

 

(まだ……だ……!)

 

そしてさらにユニットに魔力を流した。二機のユニットは魔道エンジンから火花が出始める。もうそれは執念と言っていいレベルのものだった。そして、

 

「まだだああああああああ!!!」

 

シュミットは思い切り叫んだ。

 

 

 

そして、列車は停止した。

 

 

 

機関車の先頭の緩衝器が、駅の車止めの緩衝器と接触し、ゆっくりと押した。そして、先ほどまで物凄い速さで走っていた鉄の塊は、その巨体をようやく停止させたのだった。

機関士や乗客、駅員たちはその光景をじっと見て止まっていた。そして、一人の乗客が声を絞り出した。

 

「と、とまった…………」

 

その声を発端とし、

 

『やったああああああああああああああああああああ!!』

 

乗客や機関士、駅員全員が大声で叫んだ。

 

「止まった!止まったぞ!!」

「助かったんだわ!!」

 

乗客達は互いに抱き合ったり、深い握手をしたりして喜び合った。中には涙を流しながら喜んでいる乗客もいた。

 

「は……ははっ、止まった!止まったぞ!!」

 

運転室内では機関士達が糸が切れたように地面にへたりこんだ。そして、互いの顔を見ながら大声で喜び合った。

みんながみんな、列車の停止を喜んだ。そんな中、一人の乗客の言葉に反応してみんな喜ぶのを突如やめた。

 

「っ!ウィッチ達は!?」

 

その一言を聞いた乗客達は一斉に客車からホームへ出て、列車の最後尾に向かってホームを走り始めた。彼らは全力で走り、列車を止めてくれたウィッチ達に会おうとした。

そして、最後尾の客車のさらに向こう側に二人はいた。

そこには、二人の男女が倒れていた。少女は両腕を広げ仰向けに倒れており、少年の方は線路にうつ伏せで倒れていた。その近くには火がついて黒煙を上げている二機のストライカーユニットが転がっていた。

乗客達は大急ぎで駆け寄った。そして、その男女を抱きかかえた。

 

「こっちは息があるわ!」

 

少女のほうに駆け寄った乗客が声を出す。しかし、青年の方に向かった乗客からは慌てたような声が聞こえてきた。

 

「大変だ、呼吸が浅いぞ!」

 

その言葉に全員が大慌てになる。そんな中、一人の乗客が言う。

 

「急いで二人を病院に連れて行くんだ!!」

 

そうして乗客達は一斉に動き出した。

 

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<side.ミーナ>

 

「……つまり二人は今、機関車を止めに!?」

「そうなんだ中佐!」

 

私は執務室で先ほど一人で帰ってきたシャーリーさんの言葉を聞いて混乱していた。横では美緒も驚いたように目と口を開いていた。

シャーリーさんの言ったことによればシュミットさんとペリーヌさんは今、たった二人で暴走している列車を止めていることになる。

そんなことを考えているとき、美緒が走ってドアへ向かった。

 

「っ!美緒!」

「二人のところに急いで行くぞ!」

「でも、今から行っても――」

 

「間に合わない」、という言葉は続かなかった。なぜなら、執務室に備えられた電話が鳴り始めたからだ。

私は慌てて受話器を手に取った。そして、伝えられた内容にさらに驚いた。

 

――二人は列車を止めた。

 

この内容は近くにいた美緒、そしてシャーリーさんにも伝わった。そして今、二人は近くの病院に搬送されたと言われた。そして、今後のことについても説明を受けた。

 

「……わかりました」

 

私は一言返事をし、電話を切った。そして、目の前に立っている二人に向き直った。

 

「列車は無事停止したわ。それと、二人共無事で、今病院に入院しているそうです」

 

私は混乱し、うまく言葉が出なかった。しかし心の中で私は、今ここにいない二人に対して称讃していた。

 

(二人共……よく頑張ったわ……!)




書いてて思ったことを一言

「物語だからできる話だなこりゃww」

とまぁ、機関車を止める話は実は前々からずっと考えていました。
次の投稿はまだ未定ですが、できるだけ早く投稿したいと思います。
それでは。

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