ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

36 / 110
次話投稿します。最初に言います。シュミット君が出ませんでした。理由ですか?出しにくかったためです。


第三十四話「ウォーロック」

シュミット達が基地を離れたちょうどの時、501基地ではマロニーの指揮の元、部下達が態勢を整えていた。既に基地の格納庫は封鎖され、ストライカーが持ち出せないようになっていた。

兵士の一人が報告をする。

 

「閣下、ウィッチーズ全員が当地より離れました」

「うむ…」

 

報告を聞きマロニーは頷くが、彼は内心で僅かに焦りを感じていた。

 

「すべて順調です」

「どこが順調なものか。まったく想定外のタイミングだ…こちらの戦力はまだウォーロック1機しかいない。表に出る時期では無かったのだ」

 

副官がマロニーに言うが、マロニーは不満だらけだった。彼は顔を歪めて副官の言葉を反論する。

 

「しかし、もう隠れているわけには…」

「そうとも。元はと言えば忌々しいあの扶桑の小娘。あいつがネウロイと接触するようなことさえなければ、こんな時期に我々が動く必要などなかったのだ」

 

そう、彼の最大の誤算は宮藤だったのだ。彼女のネウロイとの再接触は完全に予想外の事態であった。しかし同時に、ブリタニア防衛を行う501の解散の口実に持っていけた所は別の意味でも誤算だったが。

 

「扶桑に返してもよろしかったのですか?」

「軍を離れ、ストライカーを失ったウィッチーズなどただの小娘にすぎん。恐れる必要などない」

 

副官が不安をマロニーにぶつけるが、マロニーはニヤリとしながら計画に狂いなど起きないと信じていたのだった。しかし、未だに彼には懸念となる存在があった。

 

(シュミット・リーフェンシュタール…何故だ。何故私はあの若造にこう不安を持つのだ…?)

 

それはネウロイを見て嘲笑をしていたシュミットの目を見たマロニーの不安だった。彼の目は、まるで目の前の存在に対して一切期待をしていない、それどころかこの存在に対して完全に敵として見ている蔑んだものだった。その目をしていたシュミットを見て、大将と言う立ち位置にいるはずの彼は、謎の不安に駆られていたのだった。

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

一方その頃、ただ黙って基地を離れたミーナ達では無かった。彼女たちはバスから降りた後、周りを見回す。

 

「ふぅ、やっと監視もなくなったわ」

 

そう言いながら魔法を解くミーナ。それを聞いてバルクホルンがホッと息を吐く。

 

「このままカールスラントに戻って、祖国奪還のために戦った方がよかったかもな…」

 

バルクホルンの言葉にハルトマンはポカンとする。

 

「へ?」

「ん、なんだ?」

「トゥルーデが戻ろうって言いだしたんじゃん」

 

ハルトマンの鋭い指摘に流石のエースも動揺する。そう、宮藤が心配で戻ろうって言いだしたのは実を言うとバルクホルンだったのだ。

 

「そ、それは宮藤に…借りがあるから」

「そうだね~、たっぷりとね」

「つ、つまりだ!あいつを失意のままに返してしまっていい物か!カールスラント軍人がそのようなことで…」

 

その先の言葉を続ける前に、ミーナがバルクホルンの前に人差し指を出しバルクホルンを止める。

 

「はいはい、気持ちは十分よ」

 

ミーナがそう言って指を振る。しかしそんな軽い空気を放ったと思ったら、今度は真剣な顔に戻る。

 

「…それに、宮藤さんの言ってたことも気になってるの」

「ネウロイと友達になるってやつ?」

 

ハルトマンが聞くがミーナは首を横に振る。

 

「いいえ、ウォーロックがネウロイと接触してたって話よ」

「!」

「宮藤さんがあの話をした時のマロニー大将の焦りは、何か秘密があるんじゃないかしら」

「報告義務違反があれば、こっちが攻めに回れる」

「そういうこと」

 

ミーナ達はマロニーの反応を見て何か裏があると推測していたのだ。

そして彼女たちは移動を開始し、501の基地を遠方から見ることができる廃屋の中から監視していた。

ちょうどその時だった。501の基地から飛行物体が1つ上昇をしていく。それは現在ブリタニア防衛を担うことになったウォーロックだった。

 

「早速ガリア制圧作戦か」

 

測量儀を覗きながらバルクホルンが呟く。

 

「大忙しだね」

「軍の上層部にウォーロックの強さを認めさせたいのよ。そして量産の指示を取り付けたい…それにしても、ウォーロック1機しかないのに実戦なんて…」

「戦果を挙げて隠したいことがあるんじゃないのか~?」

 

ミーナは分析をすると同時に、1機しかないウォーロックでいきなり実戦をすることに疑を唱えていた。そんなミーナにハルトマンが言う。言い方こそ軽いが、内容は意外と核心を突いている。

 

「奴らの化けの皮を剥がすチャンスだな!」

「にっしっしっし…やる気だね。やっぱり宮藤のため?」

「なっ!?」

 

バルクホルンはまるで隅から隅まで見破ってやるという気迫で言う。そんな姿にハルトマンが茶化すと、これまた口をパクパクさせうまく言葉を繋げれなくなる。やっぱり宮藤のためなのだろう。

そんな姿を見ながらミーナは「監視を続けましょう」と、笑いながら言うのだった。

そして501から離れたところにある飛行場では、シャーリーとルッキーニが複葉機に乗って離陸しようとしていた。二人はこの飛行機に乗り、まずはルッキーニの故郷へ行き、その後にシャーリーが本国へ移動する。

離陸しようとしているとき、二人は遠方から聞こえる音に気づく。その方向を見ると、ウォーロックが飛行していた。

 

「おっ、ウォーロックだ」

「あの音好きじゃないな」

 

シャーリーはウォーロックの動きに感心するが、ルッキーニは露骨に嫌そうな顔をする。

 

「もう実戦か」

「いー!やられちゃえ!」

「おいおい」

 

ルッキーニは更にウォーロックを拒絶する。そんなルッキーニを見てシャーリーは笑う。そして二人の乗った複葉機は離陸をしたのだった。

ほぼ同時刻、宮藤と坂本、そして坂本の付き添いでついてきたペリーヌの三人が空母赤城からウォーロックを確認した。

 

「左デッキへ!」

「は、はい!」

 

坂本に命令をされペリーヌは急いで左デッキに行く。宮藤もついていく。ウォーロックはそのまま直進していく。その先にあるのはガリアにあるネウロイの巣だった。

 

「ガリアへか」

「早速ですわね」

 

三人はウォーロックを見届ける。

ウォーロックが近づくと同時に、ネウロイの巣からビームが飛んでくる。その数は計り知れないが、ウォーロックはそんな攻撃を軽々と避けていく。

そしてしばらくウォーロックが避けると、今度はネウロイ自身が雲から降りて出現した。ネウロイは正面からウォーロックに攻撃をする。ウィッチであればシールドを張ることもある攻撃の雨だったが、ウォーロックはその速さに物を言わせて回避をし、そしてネウロイに接近をする。

すると、反撃と言わんばかりに前方部分を開く。そしてその開いた先から今度はネウロイと同じビームを放った。そのビームは高速でネウロイに直進すると、ネウロイのコアを的確に貫きネウロイを消滅させた。

その光景を赤城から見ていた三人は驚く。

 

「一撃でネウロイを!」

「なんという威力ですの…!」

 

坂本はネウロイをさらに分析する。そしてある不思議な点に気付く。

 

「おかしい…何故ウォーロックはビーム兵器を使えるんだ?」

 

そう、ウォーロックが放った攻撃は紛れもなくネウロイのビームである。それをどうしてウォーロックが放つことができる?

すると宮藤が思い出したように言う。

 

「あっ!」

「どうした宮藤!」

「…見たんです。ネウロイが見せてくれたんです…ウォーロックはネウロイと会っていたんです!」

 

宮藤の言葉は余りにも突拍子な内容であり、坂本も目を見開く。

 

「ウォーロックがネウロイと接触していただと!?」

「あり得ませんわ、ネウロイは敵ですのよ。それに、ネウロイの技術を手に入れたのなら私たちにも報告があるはずですわ」

「でも…」

 

ペリーヌの反論は尤もだ。敵であるネウロイに接触など今まで到底できたことでは無い。そんな中でネウロイの技術を手に入れたなど、信じられないのも当然だ。

しかし、この反論にまったを掛けた人物がいた。

 

「…本来ならあり得ない。だが、辻褄は合う」

「えっ?」

 

坂本の言葉に流石のペリーヌもびっくりする。

 

「もし、敵がネウロイだけでないとしたら…宮藤、お前の行動はあながち無駄ではなかったかもしれない」

「えっ…」

 

坂本の目は真剣そのものであり、冗談を言っているものでは無かった。

その時だった。ネウロイの巣から、新たにネウロイが現れたのだ。その数は2機。今までにない行動パターンである。

ウォーロックは再びネウロイに攻撃を敢行する。ビームを放ちネウロイに命中させ倒すが、この間にも巣から新たにネウロイが出現する。その出現速度はネウロイの攻撃速度を上回っており、瞬く間にネウロイはウォーロックを囲むまで増えていた。

501基地でもその異常事態は観測されていた。研究員の一人がマロニーに報告をする。

 

「ネウロイの数8!…いや9!」

「ウォーロックの処理能力は限界です!」

 

研究員の言葉にマロニーは苦虫を噛んだ表情をし、命令を下す。

 

()()()()()()()()()()()()を稼働させろ!」

「しかし、コントロールするには共鳴させるウォーロックが5機以上必要です!」

 

それを聞いてマロニーは歯ぎしりをする。その時だった。突然ウォーロックを制御している装置から警告音がする。

研究員がそれに気づく。

 

「こ、コアコントロールシステムが勝手に動いています!」

「なに!?」

「ウォーロック自らが、コアコントロールシステムを稼働させたようです!」

 

その間にも、ウォーロックはコアコントロールシステムを作動する。その光景は赤城から見ていた坂本達からはありえない物を見ているようだった。

 

「な、なにが起こっているのです!?」

「ウォーロックの数が半端じゃない!」

 

巣の下で佇むウォーロック。その周辺を囲む形で無数のネウロイが飛行する。しかしどのネウロイも敵であるウォーロックを攻撃しない。彼らはまるでウォーロックからの命令を待とうとしているかのように周辺をぐるぐると飛行をするだけだった。そう、彼らはウォーロックに自分の動きを支配されてしまったのだ。

そして、ついに事態は終盤へと向かった。ウォーロックに支配されたネウロイ達は、突如ネウロイ同士で攻撃をし始めたのだ。その光景を見て坂本達は更にありえない物を見る目で眺める。

 

「バカな!ネウロイがネウロイを攻撃している!」

「そんな…同士討ち!?」

「まさか…ウォーロックがネウロイを操っているのか…?」

「そ、そんな事って…」

 

坂本を慕うペリーヌも、この時ばかりは坂本の言葉を信じられなかった。そんな中、宮藤はただその光景にショックを受けるだけだった。

そしてついに、ウォーロックを囲っていたネウロイが全滅した。その報告を聞き基地は湧き上がっていた。

 

「ネウロイを殲滅しました!!」

『おお!!』

 

彼らは勝利に沸き立つ。その時だった。

 

「なっ!?」

「どうした?」

「それが…こちらからの制御が遮断されました!」

 

この時、異変に気付いたのは基地司令部だけだった。制御を遮断したウォーロックは役目を終え基地に帰還するはずだった。しかし、巣の真下で静止したまま、突如ウォーロックはその白い機体色を変化させていく。徐々に黒く染まっていくウォーロック。そして黒く染まったウォーロックは急降下をし、そのまま赤城の方向へ向かった。

 

「帰ってきましたわ…」

 

ペリーヌが茫然とその姿を見ながら呟く。

その時だった。ウォーロックは赤城に接近したと同時に突如、先ほどネウロイに向けていたビーム()を放ったのだった。




シュミット君出ませんでしたが、マロニ―の懸念として出しました。因みに次回にはちゃんと出ます。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは次回!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。