ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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少し間が空いてしまったのと、文章が少ないです。


第二十八話「家族と成長」

ミーナは現在執務室で書類整理を行っていた。彼女は昨日、そして朝のシュミットのことを考えていた。

その時、執務室の扉を叩く音がする。

 

「ちょっといいか」

 

そう言いながら部屋に入ってきたのは坂本だった。そしてその後ろから宮藤も入ってくる。二人の手元には様々な資料があった。

 

「悪いな、便利に使って」

「いえ、このくらいへっちゃらです」

 

坂本が宮藤にそう声を掛ける。宮藤はどうということ無いと返事をした。

坂本が持ってきたのはデータだった。それはつい最近来襲したネウロイの物であった。

 

「8月16日と18日に来襲したネウロイだが、奴の出現した時に各地で謎の電波が傍受されている。周波数こそ違うがサーニャの歌っていた声の波形と極めてよく似ている」

「えぇ」

「唄…!?」

 

坂本の説明を聞いていたミーナは小さく返事し、さらに横で聞いていた宮藤は歌という言葉に反応した。初めて夜間哨戒に出た時に聞こえた、サーニャの歌に似たネウロイの声。あれを思い出したからだ。

 

「あのネウロイはサーニャの行動を再現していたと見て間違いなさそうだな」

「ええ」

 

坂本がそう結論付けた。

 

「分析の規模をもっと広げよう。しばらくは忙しくなるぞ」

「そうね」

 

坂本がこれからについて話し終わったが、ミーナは終始小さな返事を繰り返すだけだった。

 

「バルクホルンやハルトマン、それにシュミットにも今のうちに知らせておきたいな。三人をここに…」

「あの!」

 

坂本が3人を呼ぼうとした時、宮藤が声を発した。

 

「バルクホルンさんなら今日は非番です。夜明け前に出ていきましたよ?」

「何処へ?」

「ロンドンです」

「ロンドン?」

 

宮藤の言葉に坂本が聞き返す。

 

「意識不明だった妹さんが目を覚ましたって、バルクホルンさんが慌ててストライカーを履いて出ていくのをみんなで止めたんですよ?いつもはあんなに冷静な人なのに!」

 

その様子を思い出したのか宮藤は思わず笑いが零れる。しかしそんな宮藤にミーナが静かに返した。

 

「無理もないわ。バルクホルンにとって、妹は戦う理由そのものだもの。誰だって、自分にとって大切な守りたいものがあるから、勇気をもって戦えるのよ」

 

ミーナのその言葉は、聞いていた宮藤の心に響いたのか、思わず固くなる。そして宮藤はそんなミーナに返事をうまく返せなかったのだった。

 

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「クリス!」

 

ロンドンの病室、その一室に声が響く。声の主は焦った様子のバルクホルンだった。

 

「病室ですよ!お静かに!」

「あ、ああ、すみません!急いでいたもので」

 

中にいた看護師がバルクホルンに注意する。注意されたバルクホルンは謝るが、その横からくすくすと笑い声がしてくる。

 

「フフッ…フフッ…」

「クリス…」

 

笑い声の主はベッドの上に座りながら先ほどのバルクホルンの姿に笑いを押されられない様子である。彼女はバルクホルンの妹のクリスだった。

そしてバルクホルンはそんなクリスの下に少しずつ近づいていき、そして彼女に抱き着いた。

その光景を、後ろで見ていたハルトマンと看護師は微笑ましく見守った。

そして数十秒抱き合ったのち、二人は向き直った。

 

「お姉ちゃん、私が居なくて大丈夫だった?」

「な、なにを言う。大丈夫に決まっているだろう。私を誰だと…」

 

クリスに言われ一瞬焦ったバルクホルンは冷静に返したつもりだった。しかし思わぬ口撃が横から飛んできた。

 

「あーもう全然ダメダメ。この間まではひどいものだったよ?やけっぱちになって無茶な戦い方ばっかりしてさ~」

「お姉ちゃん…」

「お前!今日は見舞いに来たんだぞ、そういうことは…!」

「だって本当じゃん」

 

バルクホルンが反論するが、それでもハルトマンが更に加えていくため徐々に負け始めてしまう。

 

「ないない!そんな事は無いぞ!私はいつだって冷静だ!」

 

そう言いながら妹に懸命に話すバルクホルン。そんな姉の姿を見てか、クリスは安心したように微笑んだ。

 

「お姉ちゃん、なんだか楽しそう」

「そ、そうか?」

「それは宮藤のおかげだな」

 

クリスに言われるが自覚の無いバルクホルン。しかしそんな会話にハルトマンが宮藤の名前を出したことで、クリスはその人物が誰かを聞いた。

 

「宮藤さん…?」

「うん。こないだ入った新人でね」

「お前に少し似ていてな」

「私に!?会ってみたいな!」

 

ハルトマンとバルクホルンの説明を聞いてクリスは興奮したように反応した。

 

「そうか、じゃあ今度来てもらおう」

「本当!?お友達になってくれるかな?」

 

バルクホルンがクリスに宮藤を会わせようかなと提案をすると、クリスはさらに楽しそうに反応した。

 

「ハハハ、かなりの変わり者だけど、いい奴だ。きっといい友達になれるさ」

 

そう言ってバルクホルンは自慢の妹に優しく言ってあげる。それを聞いてクリスも嬉しそうに笑顔になった。

 

「あっ、似てると言っても当然お前の方がずっと美人だからな!」

「…姉馬鹿」

 

まぁ、この一言が無ければある意味いいお姉ちゃんだったなと、聞いていたハルトマンが小さく呟いたのだった。

その後バルクホルンとハルトマンはしばらくクリスと話した後、病院を後にした。そして二人が乗ってきた車に戻る時だった。

車のフロントガラスについているワイパーに、一通の手紙が挟まっていたのだ。

 

「何だこれ?」

 

ハルトマンがそれを手に取って見る。そして一瞬見た後、バルクホルンに手渡した。

 

「なんでこんなものが…」

 

バルクホルンはそう言いながら封蝋の面を裏返す。するとそこには宛先の名が書かれていた。その宛先を見てバルクホルンは表情を変えた。

 

「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ殿…」

「ミーナ宛…?」

 

バルクホルンはミーナに宛てられた手紙に得体の知れない何かを感じた。

 

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現在、501では模擬戦闘による訓練が行われていた。訓練参加者は宮藤、リーネ、ペリーヌ、シャーリー、ルッキーニ、そしてシュミットの六人だった。

現在は宮藤&ペリーヌ対シャーリー&ルッキーニで模擬戦を行っていた。勿論、全員武器は訓練用のペイント弾。訓練している高度は2000mほどの低空である。

 

「よろしくね、ペリーヌさん!」

「まったく、訓練とはいえどうして私が宮藤さんと…!」

 

芳佳が緊張感の無い声でペリーヌに言うので、ペリーヌは不満を持っていた。

 

「よーし、手加減しないよー」

「後ろがガラ空きだぞ宮藤!」

 

ルッキーニとシャーリーが後ろから追随する。宮藤が懸命に動くが、シャーリーとルッキーニのコンビは互いの性格の為か連携が高い。そのためなかなか引き剥がすことができないでいた。

 

「宮藤さん、後ろを取られてましてよ!」

「う、うん!」

 

ペリーヌが注意をする。そんなペリーヌに返事をする宮藤だが、引き剥がすのに必死でその返事も余裕が無かった。

シュミットはその光景を見ながらリーネの横に立っていた。

 

「こりゃ、宮藤が先に撃墜されて、1対2の構図が完成するかな?そうなるとペリーヌに勝ち目は薄くなるな」

「頑張れ芳佳ちゃん!」

 

シュミットが冷静に状況判断をしてそう結論付けたため、リーネは審判と言う中立の立場なのになぜか応援していた。

そして宮藤は懸命にルッキーニから逃れようとしているとき、頭にふとあるイメージが流れた。

 

「いっただきー!」

 

ルッキーニが自信満々に宣言をし機関銃を宮藤に向けた時、それは起きた。

突如、ルッキーニの照準器から宮藤が高速で消えたのだ。この時宮藤はループをしたのだ。そしてそのループの頂上直前で横滑りをし斜め旋回、大幅に旋回半径を縮めてルッキーニの後ろに付いた。

突然の空戦機動にルッキーニは反応できず、あっさりと宮藤に後ろを取られた。

 

「えっ…!?」

「あの技は…!」

 

ルッキーニは純粋にその動きに驚いているとき、ペリーヌはその機動を宮藤が行ったことに驚いていた。それは彼女が憧れる坂本の得意の空戦機動「左ひねりこみ」だったのだ。

そして宮藤は驚いているルッキーニに対して容赦なくペイント弾を放つ。そしてそれはルッキーニの履いていたG55をオレンジ色に染めた。

そしてそのまま宮藤は前方にいたシャーリーに対してもペイント弾を浴びせる。それもシャーリーのユニットP-51に命中し、彼女のユニットはオレンジに染まった。

リーネが戦闘終了のホイッスルを鳴らす。

 

「ペリーヌ、宮藤ペアの勝ち!すごいよ芳佳ちゃん!」

 

リーネがそう宣言をした後、芳佳を称賛する。シュミットも先ほどの宮藤の機動を見て驚いていた。

 

「やられたー!」

 

ルッキーニががっかりしたように言う。

 

「おっかしいなー、絶対後ろについていたはずだったのに!」

「大分成長したな、宮藤!」

「確かに、あの技術を何処で身に着けたんだ?」

 

ルッキーニは先ほど後ろを取っていたはずの宮藤に何故後ろに回れたのか考え腕を前で組んだ。シャーリーとシュミットは宮藤があんな高等テクニックをいつの間に身に着けたの驚きながら聞いたのだった。

 

「そうですか?…ってひゃあ!?」

 

宮藤は周りに褒められ照れるが、突如変な声を出した。原因は彼女の後ろについて胸をもんでいる人物が原因だった。

 

「どれどれ~♪どれどれ~♪」

「な、なにするの!?」

 

ルッキーニは宮藤の胸を揉みまくる。宮藤はその手触りにあたふたしながら悲痛な叫びを出す。

しばらく揉んだのち、ルッキーニは宮藤から離れた。

 

「残念、こっちはちっとも変わりない」

「うん、見りゃ分かる」

「おいおい…」

「こらー!」

 

ルッキーニの感想にシャーリーが便乗して言ったため、シュミットがすかさずツッコミを入れた。宮藤はそんな会話を聞いて思わず叫ぶ。

 

「もー、二人とも酷いですよ!」

「でも腕を上げたのは確かだ」

「本当ですか?」

 

すかさずシャーリーがフォローする。下げるだけでなく再び上げる彼女の行動はやはりムードメーカなところだろう。シュミットはよく周りを見ているなとシャーリーを評価したのだった。




芳佳ちゃんの才能は以外にも戦場などで発揮されるものなのかなぁ。本人は争いを嫌っているあたり皮肉ですけど。
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは!

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