ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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新たに投稿します。切るところが無かったものですから文章が少ないです。ご了承ください。


第二十五話「お手柄と規則」

あれから数日後、医務室から復活したシュミットは今、格納庫で自身のユニットと格闘していた。その周りには整備兵も立っており、ユニットに色々と線をつなげていた。因みに現在、他の整備兵もウィッチーズのユニットの整備を行っており、格納庫内は整備兵だらけであるが、シュミットのユニットは既に整備を終えていた。

Fw190はプロペラを高速で回転しているが、今シュミットは今魔力を絞っている。そしてそのまま魔力を強くし、回転数を少しずつ上げていく。そしてその魔力が段々高回転になっていき、そして最大までくる一歩手前の時だった。

ボンッ!と音がし、固定されたユニットから黒煙が出始める。同時に、プロペラ部分の回転数が落ちる。

 

「っ!」

 

それを見て今度は魔力を少し下げ始める。すると、今度は徐々に黒煙が薄くなっていき、ついに出なくなる。それと同時に、ユニットの回転数が復活した。

それを連続して行うシュミット。そしてある程度同じことを繰り返す。

 

「中尉、やはり安全装置が作動しているようです」

「そうか…なるほどねぇ」

 

整備兵からの言葉を聞いて、シュミットは納得の声を漏らしながらユニットから足を外す。その時、格納庫内に別の声が聞こえてきた。

 

「いつもありがとうございます!」

 

その声にシュミットを含む整備兵たちが振り向く。そこには手にお盆を持った宮藤が立っていた。

 

「お菓子作ってみたんですけど、皆さんで食べてください」

 

宮藤がそう言って差し出すが、整備兵たちはそんな宮藤を余所にユニットの方を再び向いてしまった。

 

「あの、これ、扶桑のお菓子で…」

「宮藤」

「あっ、シュミットさん」

 

シュミットは困った反応をする宮藤に声を掛ける。宮藤はそこにシュミットが居たことに驚いたような反応をしていた。

 

「この基地のウィッチの規則を知ってるか?」

「え、規則ですか?」

 

宮藤はシュミットの言った規則について懸命に考え始めた。

 

「ミーナ中佐から、必要最低限以外のウィッチ達との会話、および接触は禁止されているんだ」

「え、でもシュミットさんは」

「私はウィッチじゃなくてウィザード…同じ男同士だからミーナ中佐から特に禁止とかないんだ」

 

そんなルールを聞いて宮藤は驚きと同時に残念な思いになる。せっかく作ったおはぎを振るまえないことにだ。

そんな宮藤を見て、シュミットは名案を思いつく。

 

「宮藤」

「はいっ」

「それ、私から整備兵に渡せば問題ないぞ?」

「え?」

 

そんな提案を言うシュミットに宮藤は何のことかわからず疑問の声を漏らす。

 

「つまり、宮藤が作ったそのお菓子を私から整備兵に渡すことはできるってわけだ…まぁ、裏技みたいなものだけど。どうする?」

「えっと…」

 

宮藤は数秒悩んだのち、シュミットにそのお盆を差し出した。

 

「その、お願いします…」

「了解」

 

そう言ってシュミットはお盆を受け取ったのだった。

 

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「へぇ、そんな事があったの」

 

リーネは宮藤の話を聞いてそんな感想を零す。内容は先ほど格納庫であった一件だ。

 

「あの時はシュミットさんがいたからよかったけど…なんでミーナ中佐はそんな規則を作ったんだろう…リーネちゃん知ってる?」

「私も命令があるのは知っていたけど、あまり気にしていなかったから」

 

リーネも一応命令の存在を知っていたが、彼女はあまり気にしていなかったようだ。

宮藤がそんな命令に不満を零す。

 

「こんな命令絶対変だよ、変すぎる。リーネちゃんもそう思わない?」

「えっと、私、兄弟以外の男の人とほとんど話した事なくて…」

「そっか、学校とかは?」

「ずっと女子高だったから」

 

リーネは元々女子高出身で、部隊に入っても話す男の人はシュミットだけ、それもいつも一緒にいることの多い宮藤に比べたら圧倒的に少ない。そのため男性と接する機会があまり無いため芳佳の言うことをあまり自分で表現できなかった。

 

「そうなんだ…あっ、ほらあれ、赤城だよ!」

 

リーネの話を聞いて宮藤は少し下を向くが、前方に見えたあるものにその顔を上げた。

 

「アカギ?」

「うん、私の乗ってきた船。修理しているって聞いたけど、直ったのかな?」

 

そう言って説明する時、基地の建物の影からシャーリーとルッキーニが出てくる。

 

「あっ、いたいた。芳佳!」

「ミーナ中佐が呼んでたぞ」

「はーい。何だろう?」

 

シャーリーから言われた言葉に宮藤はリーネに首をかしげる。リーネも呼ばれた理由が思いつかず首を傾げ返したのだった。

そして呼ばれた宮藤は部隊長室の扉を開ける。

 

「失礼します」

 

そう言って室内を見渡すと、中には坂本と初老の扶桑軍人がいた。

 

「おお、宮藤さん!お会いしたかった!」

 

そう言って近づく扶桑軍人の前に、ミーナ中佐が重なった。

 

「こちらは赤城の艦長さんよ。ぜひあなたに会いたいとおっしゃって」

「杉田です。乗員を代表して貴方にお礼を言いに来ました」

「お礼?」

 

宮藤はお礼と言われてオウム返しをするが、杉田は続けて説明した。

 

「貴方のおかげで遣欧艦隊の大事な艦を失わずに済みましたし、何より多くの人命が助かりました。本当に感謝しております」

 

そんなことを言われ宮藤はすこし縮こまる。

 

「いえ、私は何も。あの時は坂本さんと他の人たちが…」

「いや、確かにあの時お前が居なければ全滅していたかもしれん。誇りに思ってもいいぞ、宮藤」

 

謙遜する宮藤に対して坂本が言う。坂本に言われては宮藤も誇りに出来るだろう。

 

「そうかな、えへへ」

 

そう言って照れ笑いをする宮藤。そんな宮藤に杉田が包みを差し出す。

 

「全乗員で決めました。これを貴方にと」

「あらあら、よかったわね」

「ありがたく受け取っておけ、宮藤」

 

杉田から包みを渡されミーナと坂本はよかったねと宮藤に言う。

 

「はい、ありがとうございます」

 

そう言って宮藤は包みを受け取った。杉田はそんな宮藤を見て少し微笑んだ後、表情を引き締めミーナの方向を向いた。

 

「反攻作戦の前哨として、我々も出撃が決まりました」

「ついにですか…」

「反攻作戦?」

 

ミーナは杉田の言葉を聞いて覚悟をしたように表情を引き締めるが、宮藤は何のことだかわからず聞き返した。

 

「ええ。今日はその途中で寄らせて頂いたのです。明日には出港なので是非艦にも来てください。皆が喜びます」

「はい」

 

そう元気に返事をする宮藤だったが、次の言葉でその思いは消えた。

 

「残念ですが、明日は出撃予定がありますので――」

「そうですか、残念です」

 

ミーナにそう言われ、杉田は残念そうにする。宮藤も同じようにがっかりしたのだった。

その後、部隊長室を出た宮藤はリーネと話していた。

 

「艦長さんって大佐だから、ミーナ中佐より偉いんだよ」

「ふぇ~、そんなに偉い人だったんだ」

「艦長さんが代表してお礼に来てくれたなんて、凄いね!」

 

そうリーネに言われて宮藤は照れ笑いをするが、突然正面から現れた人に立ち止まる。

 

「宮藤さん!」

「ふぇっ!?」

「さ、先の戦いでの宮藤さんの勇敢な戦闘には大変敬服しました!艦を守って頂き大変感謝しております!」

 

宮藤の目の前に、一人の青年が現れた。彼は赤城の乗組員だった。

 

「あ、はい。どういたしまして…」

「あの、そのですね。これ、受け取ってください!」

「えっ?」

 

芳佳は青年から渡された一つの封を見て驚くが、リーネはそれが何か察したようで、芳佳に小声で伝えた。

 

「ラブレターじゃない?」

「え?ラブレター?」

「うん。受け取ったら?」

 

そう言ってリーネは芳佳の持っていた包みを持ち、芳佳の手を空けた。芳佳は突然ラブレターをもらったことに驚き、顔を少し赤くした。そして少しずつ手を伸ばし、それを受け取ろうとした時だった。

 

「あっ!」

 

そのラブレターは突風で宙を舞った。

宮藤と青年は追っかけるが、追っかけた先にはミーナがそのラブレターを持って立っていた。

 

「ミーナ中佐!」

「…このようなことは厳禁と伝えたはずですが」

 

宮藤がミーナを呼ぶが、ミーナは青年の方にきつい言葉を向けていた。

 

「すみません、是非とも一言お礼が言いたくて」

「ウィッチーズとの必要以上の接触は厳禁です。従ってこれはお返しします」

「申し訳ありませんでした…」

 

そう言って青年は走って行ってしまった。宮藤はその光景を見てショックを受けたのだった。

 

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ミーナは執務室の窓から遠くを眺めていた。そこからはいまだに奪還できていないガリアが見えるが、彼女の目はガリアではなく別のものが映っていた。

彼女の目には、ネウロイの攻撃によって焼ける基地施設が映っていたのだ。

 

「聞いたぞ」

 

と、ミーナの後ろから声がする。振り返ると、そこには坂本が立っていた。

 

「美緒…」

「手紙を突き返したそうだな」

 

坂本はそう言って少しずつミーナの下に近づいていく。

 

「そういう決まりだもの」

「…まだ忘れられないのか」

 

そうして坂本も、もう一つの窓から外の景色を見たのだった。

 

一方宮藤とリーネは、部屋の中で杉田館長からもらった包みを開いていた。

宮藤とリーネがそれを見て思わず声を漏らす。

 

「わぁ、扶桑人形だ!」

「かわいい~!」

 

贈られてきたものは宮藤の故郷の伝統的な扶桑人形だった。それを見て宮藤とリーネは笑顔になる。しかし宮藤はそれを見た後、ある思いが彼女の中を巡った。

 

「お礼…言いたいな」

 

宮藤はその思いが叶えられず少し寂しそうに呟いたのだった。




シュミット君、そんな裏技バレたら中佐に何て言われるか…
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは

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