「なんで…なんでお前達がいる…ミハエル…マルクス…」
シュミットの言葉にミーナと坂本が確信する。この二人はシュミットと一回会ったことがあるようだ。しかし、いったい彼はいつこの二人に知り合ったのかが疑問に思った。
そしてミーナと坂本は気づく。彼らの目を見るとそこから涙が流れていることに。そしてミーナはさらに気付く。シュミットの目からも涙が流れていた。
シュミットはまだ信じられないでいた。目の前にいる人物に対してだ。それが真実かどうかまだ受け入れられなかったのだ。
しかし彼の疑念を断ち切る言葉が双子から告げられた。
「…ハンブルクの空襲」
「っ!?」
「ソ連との闘い」
「なっ…!?」
その言葉にはシュミットだけでなくミーナと坂本も驚く。ハンブルクの空襲という言葉は基地の外の人間が知るはずがない。しかし目の前の双子は確かに言った。それどころか、ソ連との闘いまで言っているではないか。ミーナと坂本はこの二人に対して危険を抱く。
しかしシュミットはその言葉が完全に確信に変わったのか、双子に向かって走り出す。
「シュミット!?」
「シュミットさん!?」
ミーナと坂本は双子に対して何をしようとしているのか分からず驚く。しかしシュミットは彼らのもとに行き、そして抱き着く。
「なっ?」
「えっ?」
そしてさらに驚く。何故抱き着く?二人の位置からシュミットの表情は見えなかった。しかし、そこにはすすり泣く声が聞こえる。声の主はシュミットだった。
「ううっ…本当に…本当に二人だよな…なぁ!?」
「ああ、俺たち双子」
「本物だ」
その声に抱き合いながら声を大きくして泣き始めるシュミット。そんなシュミットを双子も涙を流しながら抱き合う。
ミーナと坂本は状況が読み込めず双子に言った。
「ごめんなさい、状況を説明してもらえる…状況でもなさそうね」
が、三人が泣きながら抱き合っている姿を見て聞きづらそうにしていたのだった。
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「…信じられないな。まさかシュミットと同じ世界、しかもシュミットからしたら死んだはずの親友に出会ったなんて」
あれから三人は落ち着き、ミーナと坂本に状況説明をされる。そして伝えられた事実に二人は驚かされた。
双子の名前は兄がミハエル・フレイジャー。弟がマルクス・フレイジャーと言う。そして更に驚く事実に、この二人は前の世界でのシュミットの親友だった者だった。
最初こそ信じられなかった二人だったが、シュミットがいつも身に着けていたあるものでこの二人が親友であったという確信を持てた。
彼の持っていたドッグタグ。坂本は始めてシュミットがこの基地に来た時のことを思い出し、その時に双子の親友が居たことを聞いていた。そしてそこに記されていた名前が、この二人の名前と一致していたのだ。
二人は前の世界で戦死したはずだった。しかし、二人は気づけばこの世界、1943にいたという。二人の服には銃弾の痕こそあったが、体には外傷がなかったそうだ。
「私と同じ状況だ…」
シュミットは初めてこの世界に来たことを思い出した。その時も機体に弾痕こそあったが大破していなかった。
「そんで俺達はこの世界に来て、この世界のことを教えてもらった」
「あの時は驚いたよ。聞いたことのない国家に見たことの無い敵。それにあの服装も…」
「違いない…」
双子が頷きながら言う姿を見て、シュミットも同意する。全く同じ経験をしてきて共感できる人がいるんだから尚更だ。
「そんで俺たちはこの世界のストライカーユニットに興味を持った。そして俺たちは今技術者としてユニットを開発しているってわけだ」
「なるほどな…」
これによってなぜ二人が技術者になったのか理解した。前世でもそうだったが、この二人は興味を持ったことはとことんやる性格だったなと思った。
「さて、そんなことより仕事だ!」
「おうミハイル!」
そう言って立ち上がる二人。
「そういえば、二人は技術者としてこっちに来たんだったな」
「勿論!」
「何のための俺達技術少尉だ!お前の階級にだって届い……」
と、マルクスの言葉は続かなかった。なぜなら彼の目はシュミットの階級章を見ていたからだ。
それを見てシュミットは気づき、そして誇らしげに言った。
「ふっ、残念だが俺はもう中尉だ」
「「な、なんだってー!?」」
シュミットの堂々の宣言に双子は心底驚いたように叫んだ。しかし横で見ていたミーナと坂本は意外なものを見た気分だった。
「珍しいな、シュミットがあんな表情をしているのも…」
「そうね。いつもならあんな表情することなんてないものね…」
ミーナと坂本はシュミットが悪い笑顔をしながら双子に向かって誇らしげにしている姿を見て新鮮に思う。
「嘘だろ…俺達お前に再会したら驚かそうと思っていたのに…」
「逆に俺達が驚かされちまったぜ!」
二人は地面に膝をつき頭を抱えながら嘆く。そんな様子を見てシュミットが笑うのだった。
しかし、そんな空気をぶち壊すことが起きたのだった。突如、基地全体に警報が鳴り響く。ネウロイが現れた証拠だ。
「なっ!?」
「おっ?」
「なんだ?」
「まさか…!?」
「敵襲だ!」
五人がそれぞれの反応をするが、真っ先に坂本が格納庫に向かう。それに続いてミーナ、シュミットが向かう。後に続くようにフレイジャー兄弟がついていく。
そして格納庫に着き、坂本とミーナ、シュミットがユニットを履く。そして体から使い魔を出す姿を見て、双子が吃驚したように言った。
「うわぉ!?本当に魔法使えたのか?」
「さっき聞いてただろ、ミハエル…」
ミハエルのボケにシュミットがツッコむ。そうするうちに、坂本が先に出撃する。ちょうどその時、夜間哨戒だったサーニャを除くウィッチ達全員が格納庫に到着する。
「ミハエルマルクス!そこにいるとウィッチ達の発進の邪魔になる!」
「わかった、シュミット!」
シュミットは二人に警告をする。その警告を聞いて双子も頷き、格納庫の端に行く。そして端っこに着いた後、双子がシュミットに声を掛けた。
「シュミット!ネウロイをぶっ飛ばしてやれ!」
「俺達の分も頼んだぞ!」
「任せろ!」
二人からエールをもらいシュミットはMG151を手に取り離陸を開始した。そして基地の上空に行きネウロイの来た方角を確認する。その後、他の隊員達も基地の上空に集まり、編隊を組んでネウロイに向かった。
「ネウロイは一機、大型だ。このまま進めばロンドンに到着する。ネウロイが上陸する前に何としても墜とすぞ!」
『了解!』
坂本からの号令に全員が大きく返事をする。その時、シュミットに横から声を掛けられる。
「シュミット~」
「ん?なんだ、ハルトマン」
「さっきの人たちは誰?」
「おいハルトマン!作戦中だぞ!」
ハルトマンがシュミットに質問し、バルクホルンがそれに注意をする。しかしバルクホルンも内心あの二人が誰なのか気になっていた。
「私の親友だ」
「えっ?親友?」
「シュミットさん、友達いたんですか?」
ハルトマンと、話を聞いていた宮藤からそんなことを言われシュミットはぐさりと胸に何かが突き刺さる。
「あのなぁ…私だって人間だから友達だっているんだぞ…」
そんな呆れた声に宮藤は「ごめんなさい…」と謝る。
そんな無駄話が目立った状態だったが、ネウロイに接近してくると全員の気持ちは引き締められた。
「敵発見!」
坂本の声と同時に、シュミットもネウロイを確認した。ネウロイは巨大な爆弾に先が尖ったような形状をしていた。
「バルクホルン隊、イェーガー隊、突撃!」
「了解!」
そしてバルクホルンとハルトマンが先行して降下する。その後に、シャーリーとルッキーニが追走する。そして四人はネウロイの攻撃を防いだり避けたりしながら接近し、手に持つ機関砲の銃弾を叩き込む。
シュミットはいつも通りの遊撃では無く、今回はペリーヌと組んでいる。二人は三番目に降下する。
そしてシュミットはネウロイの光線を縫うように避けながら接近し、そこにMG151の弾丸を叩き込む。その攻撃にひるんだネウロイは悲鳴を上げた後、四方八方に攻撃をする。坂本とミーナの近くにいた宮藤がその攻撃を防御する。
そしてしばらくシュミット達がネウロイと空戦を繰り広げる中、ついに坂本がコアの位置を魔眼で特定した。
「コア発見!ネウロイの中央だ!」
その連絡を聞いて、全員が一斉にネウロイの中央に攻撃を開始する。そしてシュミットがネウロイに接近した時だった。
突如、シュミットがバランスを崩したのだった。
「うわっ!?」
急接近した状態だったが突然の態勢の崩れでネウロイから照準がずれる。
シュミットはユニットを見た。そこからは驚くことに黒煙が出ていた。
「なっ!?こんな時に…!?」
シュミットは驚いた。まさかこのタイミングでユニットの不調が発生するとは思わなかったからだ。
そして最悪の出来事は連鎖した。ネウロイがそれぞれのウィッチ達に光線を放つ。それはもちろんシュミットにも飛んできた。
シュミットは態勢の崩れた状態で立て直そうとしていたため、完全に反応が遅れてしまった。急いでシールドを光線の方向に張るが、即席で作られたシールドはネウロイの攻撃を受け色を赤くした。
「なっ…!?」
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501の格納庫で、ミハエルとマルクスはボーっと外を見ていた。その方向は先ほどウィッチ達が出撃した方向だ。
「しかし凄いな、ウィッチーズ。そうだろうマルクス」
「同感だ、ミハエル」
二人はそんなことを言いながら青空を見る。しかし、二人は心の中で何か不吉な予感がしていた。
「なぁマルクス」
「なんだミハエル」
「大丈夫だろうな…その、不安と言うか」
「珍しいな、俺も同じことを考えていた」
二人は言葉にできない謎の不安を感じていた。その時、後ろから足音がする。
「…貴方達は?」
突然声を掛けられ、二人は振り返る。そこにいたのは銀髪の少女、サーニャが立っていた。
「おろ?」
「俺達のことか?」
双子の言葉にサーニャは頷く。
「俺はミハエル・フレイジャー。こっちは弟のマルクス。互いに階級は少尉」
「よろしく」
そう言って肩を組み挨拶をする二人。そんな二人のおかしな姿を見て悪い人ではなさそうだとサーニャは心の中で思った。
「もしかして、君もウィッチ?」
「サーニャ・V・リトヴャク。オラーシャ陸軍中尉で501のナイトウィッチ…」
「ナイトウィッチかぁ…って、中尉!?」
「失礼しました!」
中尉という階級を聞いて二人は固組みを解き急いで敬礼をする。その様子を見て、根は真面目な人なんだとまたいい方向に評価する。
「ん?ナイトウィッチってこの時間寝ているものじゃないんですか?」
と、ミハエルがそんなことに気づき聞くが、サーニャは不安そうに答えた。
「その、目が覚めてしまって…少し胸騒ぎがするような…しないような…」
そんな曖昧な言葉を言うサーニャだったが、ミハエル達は互いに顔を合わせる。まさか自分たちと同じように胸騒ぎがしているとは思っていなかったからだ。
そして、遠方にウィッチ達が帰還して来るのが見えた。その様子を見て、ミハエルとマルクスは安心したようにホッと息を吐いた。
「俺達の思い過ごしだったようだな」
「そのようだな」
そう安心した二人だったが、この後その気持ちは真逆の方向に向かった。
まず最初に気づいたのはサーニャだった。ウィッチ達が基地に向かう速度が速かったのだ。そして、彼女の目には
「あっ…!?」
サーニャが声を漏らす。その反応にミハエルが気付く。
「どうしました中尉?」
ミハエルがサーニャに聞くが、その横にいたマルクスも気づいた。
「あっ!?」
「何だマルクス…あっ…」
マルクスの声を聞いて、そしてミハエルもその方向をしっかり見る。そしてその先にあった光景に言葉を失った。
彼らは見てしまった。その衝撃の光景を。
そしてウィッチ達が滑走路に降り立ってきた。そしてその光景は更に彼らの心に衝撃を与えた。
バルクホルンとシャーリーに担がれ、
最近書いていてサーニャの口調これで大丈夫かなと思ってきました。
そう、登場したのはシュミット君の前の世界での親友二人でした!
そしてシュミット君、血まみれの帰還。一体どうなる!?
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは!