ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

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と言うわけで続きだしまーす。


第二十二話「気が付かない気持ちと衝撃的な再会」

シュミットは現在、模擬戦を行っていた。相手は宮藤とリーネ、そしてペリーヌであり、2対2のロッテ戦を組んで戦っていた。因みに、シュミット&宮藤対ペリーヌ&リーネである。そしてこの模擬戦をシャーリーが判定していた。

シュミットはこの間使い方を理解したMG42(訓練用のペイント弾)を構えながら高度を上げ、そして急降下をする。彼の視線の先には宮藤を狙っているリーネがいた。

 

「え?うわぁ!?」

 

急降下の速度が合わさり、MG42の弾丸は高速でリーネに向かう。そのことに気づいたリーネは弾丸が飛んできたのに気づくが時すでに遅く、体にオレンジ色の塗料が付着する。これによりリーネは撃墜判定をもらったのだった。

そしてシュミットはその速度を維持し、今度は上昇をする。そして周辺を確認しペリーヌを探し当てる。ペリーヌは宮藤を追いかけていた。いくらか実戦を経験した宮藤の動きは初期の頃に比べて格段に良くなっている。しかし、実戦経験量で言えばペリーヌは宮藤より上であるため、動きのキレが違った。そして、ペリーヌの弾丸は宮藤に着弾し、宮藤に撃墜判定が下る。

 

(互いに僚機を失った状態…状況は互角。だが…!)

 

シュミットはそんなことを考えながらユニットに強化を掛け、再び急降下をする。狙いはもちろん生存しているペリーヌだ。

だがペリーヌもシュミットの方向を見て迎撃の態勢を取る。そして両者は互いに銃口を相手に向けた状態になる。そして後数秒でシュミットはペリーヌを射程圏内に捉えようとした時だった。

突如、シュミットのユニットから黒煙が噴き出した。

 

「なっ…!?」

 

突然の出来事にバランスを崩し、シュミットはペリーヌから射線を外す。同時にペリーヌもシュミットの不規則な動きに態勢を立て直そうとしたため、銃口からシュミットが外れた。

しかし、その後の動きは明らかに差が生まれた。シュミットのユニットは両方から黒煙が出ており、プロペラの回転も乱れていたため態勢を立て直すのに時間がかかった。その間にペリーヌがシュミットの背後を取る。

 

「しまった…!」

「もらいましたわ!」

 

そして手に持つ訓練用のブレン軽機関銃が火を噴き、シュミットのユニットに着弾した。これにより、シュミットは撃墜判定をもらったのだった。

そしてシャーリーが笛を鳴らす。

 

「そこまで!勝者、リーネ&ペリーヌチーム!」

 

そして両者は互いに集合する。

シュミットは集合と同時に自身のユニットを見た。しかしそこには煙は出ておらず、先ほど煙が出た証拠をエンブレムの白い狼の煤汚れが示していた。

眉を寄せてユニットを見るシュミットに、宮藤が声を掛ける。

 

「シュミットさん、どうしたのですか…?」

 

その声を聞いて表情をいつものに変え、シュミットは答えた。

 

「いや、なんでもない…次はチームを変えるぞ!」

 

シュミットはこのことを頭の隅に寄せ、模擬戦を再開したのだった。

 

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その後、シュミット達は数回の模擬戦を行ったが、再びユニットから黒煙が上がった。それも今度は、ユニットに強化を掛けていない状態でだ。

その出来事に周りのみんなも気づき声を掛ける。

 

「シュミット、一回ユニットを見てもらったらどうだ?なんかおかしいぞ?」

 

シャーリーが提案する。

 

「そうですわね…こう何回もトラブルが起きては実戦にも支障がでますわ」

 

ペリーヌも言う。

 

「そうだな、一回整備班にちゃんと見てもらわないといけないな」

 

そう言ってシュミットも同意する。そして5人は基地に帰投し、シュミットは基地の整備班にユニットの整備を頼む。

そして数十分の後、整備班から告げられた内容にシュミットは驚く。

 

「中尉、すみませんがユニットからは何処も異常は見当たりません」

「なんだって?」

「はい。全てのパーツをオーバーホールしてないので完全とは言えませんが、少なくとも魔道エンジン自体には破損はありませんでした」

 

魔道エンジンに破損は無いと言われ、シュミットは納得ができないでいた。なら上空で起きたあの黒煙は一体なんなんだ、と。

 

「すまないが、上空でトラブルが起きてからでは遅いんだ…この機体をオーバーホールして点検をしてもらいたい」

「わかりました。ユニットを一回オーバーホールし再点検を行います」

「ありがとう」

 

そう言ってシュミットは格納庫を出る。するとその先にミーナがいた。

 

「あっ、中佐」

「シュミットさん、少しついて来てください」

 

突然シュミットはミーナにそんなことを言われ驚く。すぐさま自分が何か悪いことをしたのかと考える。しかしミーナはそんなシュミットを見て一言言った。

 

「別にシュミットさんが悪いことをしたわけじゃないわよ」

 

それを聞いてシュミットは少しホッとする。しかし再び、何故呼ばれたのかを考え始めるシュミット。

そして部隊長室に来たミーナとシュミット。そこには坂本もいた。

 

「シュミットさん」

「はい」

 

ミーナは真剣な声でシュミットの名前を呼ぶ。その声にシュミットも真面目に返事をする。

 

「明日の1300にシュミットさん宛にカールスラントの技術者が来ます」

「私に?でも、私はテストパイロットでもないはず…何故?」

 

シュミットの言う通り、テストパイロットでもない彼のところに何故技術者が来るのか。

 

「シュミットさんが数少ないウィザードだから、ってところかしら」

「なんだ?ミーナも詳しく知らないのか?」

「えぇ…」

 

坂本が聞くが、ミーナ自身も詳細は分からないと言うのだ。それを聞いてシュミットは少し不安になった。

 

「…それ、大丈夫ですかね?」

「まぁ、正式な書類が届いているから間違いないと思うけど、一応私も明日同席するから」

 

ミーナがそう言うのでシュミットも一応明日になればわかるだろうと思い、執務室を出た。そしてそのまま自分のユニットの状況を見るために格納庫に向かう。明日来る技術者がウィザードの自分目的で来ると考え、どの道ユニットが無ければ意味がないだろうと考え、ユニットの現状を確認しに行ったのだ。

そして格納庫に入り、自身のユニットのところに向かう。すると、数名の整備兵がオーバーホールを終えたのかユニットを再び組み立てていた。

すると一人の整備兵――アロイスが声を掛ける。

 

「中尉!」

 

そう言って挨拶をするが、シュミットはどうもその様子に居心地悪くしている。

 

「う~ん、その、私だけの時は中尉じゃなくて名前で呼んでほしいな。少ない男友達だからなんか階級で呼ばれると堅苦しいというか、友達失いそうというか…」

 

と、シュミットが言った。実際、ウィッチーズは女性が殆どでシュミットのみが魔力を持っている男である。そのため肩身の狭さもあるため同性の友達が少ないのだ。

それを聞いて整備兵も雰囲気を崩す。しかし敬語はそのままである。

 

「わかりました、シュミットさん」

「うん。組み立て途中だったか…明日までには間に合うな」

「明日ですか?」

 

アロイスが聞くのでシュミットが明日カールスラントから技術者が来て、その時にユニットを使うかもしれないと伝えた。それを聞いて他の整備兵も理解した。

 

「大丈夫です、明日までには組み立て終わりますから」

「そうか」

「しかし…」

「ん?」

 

整備兵の一人が声を漏らし、シュミットが聞く。

 

「シュミットさんのユニットなんですが、オーバーホールしても異常は無かったんです」

「えっ?」

 

それを聞いてシュミットは驚く。なら昼間に起きたあのトラブルは一体何だったのか。

 

「間違いないのか?」

「はい。パーツ一つ一つを確認しましたが、破損している様子は見つかりませんでした」

「なら…一体何故トラブルが起きたんだ…」

 

ユニットに原因が無い。なら一体どういうことなんだ?全く頭の中で整理がつかないシュミット。アロイスが声を出した。

 

「とりあえず、ユニットに原因が無いのが幸いでしたね」

「だが、これからもこの問題が起きたら厄介だな」

 

そう話しているとき、シュミットの後ろから別のユニットのエンジン音がする。その音に気になりシュミットが振り向くと、夜間哨戒に向かおうとしているサーニャがいた。

 

「サーニャ」

 

シュミットがサーニャに近づき声を掛けると、サーニャがシュミットの方向を向く。しかし、シュミットの後ろにある光景、整備兵が敬礼をしているすぐそばにある分解されたユニットを見てシュミットに聞いた。

 

「シュミットさん、それは…」

「ん?ああ、あれか。昼間の訓練で黒煙を噴いたから点検してもらってたんだ。部品に異常はないから問題なかったから今組み立ててもらってるところなんだけど」

 

なんでもないようにユニットを見ながら言うシュミットだったが、サーニャはシュミットのユニットをじっと見る。その後シュミットの方向を見る。

 

「シュミットさん」

「ん?」

「その、本当に大丈夫ですよね…?」

 

サーニャが弱々しくシュミットに聞く。シュミットもそんなサーニャの声を聴いてサーニャの方向を見る。するとそこにはシュミットを不安そうに見ているサーニャが映っていた。

 

「あぁ、大丈夫だ。501の整備兵の腕は確かだから、少なくとも落ちる心配は無い」

 

こういう時も他の隊員を立てるのを忘れないシュミット。そんなシュミットを見て、サーニャはこれ以上なにも言わなかった。しかし、サーニャはこの時心の中で不安が渦巻いていたのだった。

そしてサーニャが出撃する後ろ姿をしっかりと見送るシュミットだが、その後ろから声を掛けられる。

 

「羨ましいな~」

「え?」

 

シュミットは後ろから掛けられた声を聞いて振り返る。するとそこにはアロイス達整備兵がいた。

 

「シュミットさんですよ。あんな可愛いウィッチにシュミットさん心配されてるんですよ?」

「まぁ、戦闘で死んだら他の皆も悲しむからな」

「そうじゃないっすよ」

 

シュミットの言葉にアロイスの後ろに立っていた整備兵が否定する。

 

「ん?違うのか?」

「知らなかったんですか?」

「なにがだ?」

「たぶんリトヴャク中尉…いえ、なんでもないです」

 

シュミットはそのあとの言葉を教えてもらえず首をかしげるが、アロイス他もう一名の整備兵も納得するのだった。

 

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翌日1300、滑走路でシュミットとミーナ、そして坂本が立っていた。

 

「遅いな…」

 

坂本が言う。予定ではもう到着するが彼女の目にはまだ輸送機の姿は見えないらしい。

 

「そういえば中佐、今日来る技術者っていったいどんな人なんですか?」

 

シュミットはふと気になりミーナに聞く。その質問を聞いてミーナが答える。

 

「技術者は双子の兄弟で、互いに少尉。そして…」

「来たぞ、ミーナ」

 

ミーナがその先を言おうとした時、坂本がミーナに言う。その声を聞いてシュミットとミーナも坂本の向いている方向を見る。同時に、シュミットは目に強化を掛けて見る。すると遠方にJu52が飛んでくるのが見えた。そしてそのまま滑走路に着陸をする輸送機。

シュミット達は輸送機の扉の近くに行く。そして扉が開き中から人が出てくる――はずだった。

 

「ミハエル、何故お前が先に出る!」

「何を言うマルクス、兄である俺が先に出るのが普通だろう!」

「扉を開けたのは俺だ!」

 

何故か輸送機の扉の所で先に出るかで睨み合う男二人。そして二人はドアに詰まった後、同じタイミングで足を踏み外し地面に落ちる。

 

『うわぁ!?』

 

そして地面で倒れる二人の男。見た目は若く20も行ってない。階級章を見ると少尉の階級章がついていた。

 

「大丈夫なのか、この二人は…」

 

坂本が横で呟く。ミーナは事前に来たこの二人の詳細を受け取っており、その通りだったことに頭を痛めたのか手を添える。

その時、ミーナは横にいるシュミットに目をやる。そして、シュミットが固まってその二人を見ており何か言おうとした時だった。

彼の目がありえないものを見ている目をしているのに気づき、今度はどうしてそのような目をしているのか疑問に思った。

 

「…どうしたの、シュミットさん」

「…なんで」

 

ミーナが聞くが、シュミットは声を絞り出すだけで精一杯なようで、目の前の光景に口をパクパクさせる。

その時、輸送機から転げ落ちていた双子が顔を上げシュミットを見つける。そして二人はシュミットを見て顔を笑顔にした。

 

「「あっ!やっぱりシュミットだ!!」」

「えっ?」

「なに?」

 

その言葉を聞いて、ミーナと坂本は驚く。この二人はまるでシュミットを知り合いのように呼ぶではないか。

しかしこの言葉でシュミットはさらに信じられないように言った。

 

「なんで…なんでお前達(・・・)がいる…ミハエル…マルクス…」

 




シュミット君のユニットの不調、実は前にも少し触れて居たり。
シュミット君、意外に鈍感です。そして最後に出てきた二人は一体!?
誤字、脱字報告お待ちしております。それでは!

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