始まりの話
東部戦線。高度約7000m上空では二機の戦闘機による空戦が行われていた。
一つは、ドイツ空軍の主力戦闘機、Fw190A。もう一つは、ソビエト空軍の主力戦闘機Yak-9である。
Fw190は、ドイツの開発した戦闘機であり、初登場でイギリスのスピットファイアを圧倒。連合軍に強烈な衝撃を与えた傑作戦闘機だ。
対するYak-9もソビエト空軍の中核であり、大戦中のソビエト空軍を支え、ソビエト空軍機で最も優れた機体の一つともいわれる優秀な戦闘機である。
この対峙する二機の戦闘機のうち一機、Fw190に乗るパイロットのシュミット・リーフェンシュタール少尉は、Yak-9の動きに内心焦りを感じていた。
(くそっ……恐ろしく上手い!)
Fw190は傑作戦闘機には変わりない。しかし、空冷エンジンを使うA型は6000~7000mで急激に出力が落ちるため、高高度性能が不足しているのだ。対してYak-9は、コンセプトは中・高高度用戦闘機として開発しており、現在の高度でも遺憾なく実力を発揮できるのだ。
それに加え、搭乗員の腕前の差があったのだ。シュミットも決して腕が低いわけではない。彼も10機以上敵戦闘機を撃墜してきたエースパイロットである。しかし彼の相手するYakの搭乗員は、そのシュミットの腕を持ってしても及ばない腕前を持っていたのだ。
そして、勝敗は呆気なく決した。シュミットが後ろを取っていた時、Yak-9はフラップを開き高速で急旋回を行った。それに負けじと、シュミットフラップを展開しも急旋回をする。しかし――、
(しまった……!)
彼は、急旋回によるGでブラックアウト現象を起こしてしまい、視野を失ってしまったのだ。そして、視界を奪われたシュミットは、操縦桿を戻してしまう。その隙を逃さないYak-9のパイロットは、シュミットの乗るFw190の後方に素早く移動し、容赦なく機関砲弾を浴びせた。 シュミットはまともに回避を取ることができず、彼のFw190は翼がもげ落ち、火を噴きだした。
「……畜生」
シュミットは燃える機体から脱出しようとキャノピーに手を掛ける。しかし、被弾が原因でキャノピーが壊れてしまい、開かなくなってしまった。
「なっ!そんな…!」
そして、シュミットの意識は突如闇に飲み込まれだし、彼の視界は暗転した。その直後、Fw190は機体全体に火が回り、空中で爆発した。
そして、シュミット・リーフェンシュタールはこの世界から姿を消した。
というわけで、今回より始めました作者の趣味全開小説です。このお話は、一応最後まで書き通すつもりですが、更新はリアルの都合上不定期になりがちになるのでご了承ください。
※撃墜数が多かったため、シュミットの記録を下方修正しました。