ストライクウィッチーズ 鉄の狼の漂流記   作:深山@菊花

15 / 110
気が付いたらお気に入りが100件超えている……それにUAも7000行っている……。

シュミット「どうしたんだ作者」
深山「夢を見ているみたいだ」



第十三話「バルクホルンと宮藤」

バルクホルンは夢を見ていた。それはネウロイに故郷を焼かれ、炎に包まれる夢だった。

 

「くっ!」

 

バルクホルンはネウロイに向かって機銃を乱射する。ネウロイはバルクホルンに対して反撃するが、バルクホルンはシールドを使いネウロイの攻撃を防ぎ、そして回避をしながらさらに弾丸を撃ち込む。そして、ネウロイはついに装甲を剥がしコアを露出させる。

 

「っ、うあああああああああああ!!」

 

バルクホルンは怒りの銃弾をそのコアに浴びせる。コアはその弾丸をもろに受けその体を白い破片に変える。そして破片は燃え上がるカールスラントに落ちていく。

バルクホルンはその光景を眺めていたが、彼女の視界にあるものが映った。それは、泣いている一人の少女だった。

 

「クリスッ!!」

 

バルクホルンは叫び、そして気が付く。ここは彼女の寝室であり、先ほど見ていたものは夢だと。

バルクホルンは部屋の中で一人呟いた。

 

「…なんで今頃、あんな夢を」

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

「おはよう…ふぁ~」

 

翌朝、シュミットは欠伸をしながら食堂に入ってきた。彼は夜間哨戒シフトに入っているため、基本的に朝は欠伸をしている。

 

「シュミットさん、おはようございます」

「おはよう宮藤、リーネ」

 

シュミットはカウンターの向こうで朝食を作っている宮藤とリーネに挨拶を返す。

 

「うん、いい薫りだな」

「今、お味噌汁を作っているんです」

「味噌汁…ああ、日本料理か」

 

シュミットは味噌汁が最初何か解らなかったが、それが和食だと知って何気なく言う。

 

「日本料理?」

「ん?ああごめん…扶桑料理だな」

 

芳佳とリーネはシュミットの言った日本が何か解らず聞き返す。シュミットは二人が自分が異世界から来たことを知らないのをすっかり忘れていたため、しまったと思いながら言い直した。

 

「そういえばシュミットさん」

「ん?なんだい?」

 

リーネに声を掛けられシュミットは返事をする。最近はリーネも普通に笑顔を取り戻すようになって、シュミットとも特に緊張無く会話できるようになっていた。

 

「知っていますか?カウハバ基地が迷子になった子供の為に出動したんですって」

「へぇ、そりゃまた凄いな」

「ですよね!」

 

リーネの話の内容にシュミットはそんなことを思った。

 

「でも、そうやって一人ひとりを助けられないと皆を助けるなんて無理だもんね」

「そうだね」

 

芳佳とリーネが笑い合って話すが、シュミットはその会話を共に笑い合うことはできなかった。

 

「…」

 

そんな二人を黙ってい見ているシュミットに、宮藤が疑問に思い聞いた。

 

「どうしたんですかシュミットさん?」

「いや、なんでもない」

 

シュミットはなんでもないと返す。しかしそんなシュミットの横で新たな声がした。

 

「みんなを助ける…」

「えっ?」

「ん?」

 

シュミット達が見ると、そこには朝食を取りに来たバルクホルンが立っていた。

 

「そんなものは夢物語だ…」

 

その言葉にシュミットも表情を暗くする。

 

「えっ、なんですか?」

 

宮藤は何を言ったのか聞き取れずバルクホルンに聞き返した。

 

「すまん、独り言だ…」

 

そう言って、バルクホルンはさっさと席に歩いて行ってしまった。

その後、他のウィッチ達も食堂にやってきて、それぞれ朝食を開始した。

しかしそんな中、バルクホルンは朝食に手を付けずじっとしていた。

 

「どうしたのトゥルーデ?浮かない顔で」

 

ミーナが聞く。

 

「食欲もなさそう」

「…そんなことはない」

 

ハルトマンの言葉をバルクホルンは否定しスプーンを動かし始める。しかし一口食べた後、バルクホルンは宮藤の方を向いた。

 

「…ん?」

「どうしたの?」

 

宮藤が突如振り返り、リーネは疑問に思う。

 

「誰か見ているような気がしたんだけど…」

「誰か?」

「…気のせいかな」

 

そう言って、さっきのことを忘れる宮藤。

 

「おかわりー!」

「あ、はーい!」

 

と、ルッキーニがご飯のお代わりを要求し、宮藤はテーブルに行く。しかし宮藤の目にあるものが飛び込んだ。それはバルクホルンの前に置かれていた殆ど手つかずの食事だった。

 

「あの…お口に合いませんでしたか?」

 

宮藤がバルクホルンに聞くが、バルクホルンは無言のまま席を立ち片付けに行った。

そんな様子をシュミットは納豆を食べながら見ていた。

 

(なんか変…というかここ最近変だな大尉は…)

 

宮藤もバルクホルンを見つめたまま固まるが、ルッキーニが宮藤にお代わりを要求したためすぐにそっちに意識が向く。

 

「バルクホルン大尉じゃなくてもこんな腐った豆なんて――とても食べられたんじゃありませんわ」

 

と、ペリーヌが納豆について文句を言う。シュミットはそんなことを言うペリーヌを見る。

 

「納豆は体にいいし、坂本さんも好きだって――」

 

宮藤の言葉にペリーヌが過剰に反応した。

 

「さ、坂本さんですって!?『少佐』とお呼びなさい!私だってさん…付けで…」

 

と、ペリーヌが盛大に自爆している姿をシュミットは笑いながら席を立つ。

 

「ご馳走様。おいしかったよ」

「あ、はい!」

 

そう言って自分のトレーを片付けに行くシュミット。しかし彼の心の中では、バルクホルンの普通じゃない行動について考えていた。

その後、考え事をしていたシュミットはミーナと坂本がいるのを見つけた。そして彼女たちの視線の先に、バルクホルンとハルトマンが飛んでいるのを確認した。

 

「中佐、何を見ているんですか?」

 

シュミットはミーナに近づきながら聞く。シュミットに気が付いたミーナと坂本は彼に振り向くが、またバルクホルンとハルトマンに視線を戻した。

 

「えぇ、バルクホルンがのれていないのよ」

「のれてない?」

「ああ、完璧主義者のあいつが遅れがちなんだ。だから次のシフトでは外そうと考えているんだ」

 

坂本の言葉を聞いてシュミットも空を見上げる。そこにはバルクホルンとハルトマンが並んで飛んでいるが、バルクホルンの動きが僅かに遅れていたのだ。

 

「もし不調なら、外した方が確かにいいかもしれないですね…」

「どうも、宮藤さんが来てからなのよ」

「宮藤が?」

 

ミーナの言葉にシュミットが不思議に思う。なぜ、宮藤なのか。

坂本は宮藤が原因と言って、ある提案をした。

 

「ならば、宮藤と組ませてみるか」

 

坂本の視線の先には宮藤が洗濯物を干しているところだった。

その後、坂本と別れたシュミットは、基地の中を歩いていた。彼の中では、バルクホルンの不調がなぜ宮藤なのかということが不思議だったため、基地の中を歩きながらずっと考えていた。

と、彼の視界の先にペリーヌが見えた。彼女ならバルクホルンのことについて何か知っているかもしれないと思い近づいた。尤も、シュミットからすると最も話しやすい相手が階級が同じであり、列車を共に止めたペリーヌだったからというのもある。

 

「ペリーヌ、少しいいか?」

 

シュミットがペリーヌに声をかける。その声に気が付いたペリーヌは、シュミットの方向を振り向いた。

 

「なんですか、シュミットさん」

「大尉のことについてなんだが…」

「…バルクホルン大尉の?」

 

そう言って、シュミットはバルクホルンの不調について説明し、彼について何か知っていることは無いかと聞いた。

 

「すみませんが、大尉のことについては私も…」

「そうか…」

 

そう言って顎に手を当てるシュミット。と、その時、彼の頭上でべしゃっ、と言う音が聞こえた。そしてシュミットは頭に感じる突然の冷たさに驚いた。

 

「うわっ!?」

 

驚いて頭に手をやると、それは水で濡れたモップだった。そしてそのモップを辿ってみると、そこには肩にモップを掛けた宮藤がいた。宮藤は声に気づきシュミットを見ていた。

 

「わわっ、ごめんなさい!!」

 

そう言ってシュミットにお辞儀する宮藤だったが、モップが再びシュミットに倒れてきたため彼は手でそれを受け止めた。

 

「宮藤…一応謝る時も周りに注意してくれ。危うくもう一回モップを被るところだったぞ…」

 

シュミットは溜息を吐きながら宮藤に言う。注意された宮藤はまた謝った。

 

「全く貴方は、注意力が散漫すぎですわ!」

 

と、ペリーヌが宮藤に指摘するが、宮藤は何かに気が付き横を見る。その行動に気づきシュミットも見た。そこにはバルクホルンとハルトマンが立っていた。

バルクホルンが宮藤に気づき見た。そして、少し目元をきつくした後、すたすたと歩きだしてしまった。

 

「あ、あの…」

 

声を掛ける宮藤だったが、バルクホルンはそれを無視して歩く。

 

「ちょっと宮藤さん!人の話を聞きなさいったら!」

 

ちなみに、宮藤に無視されたペリーヌは更に怒り、宮藤に大声で注意したのだった。

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

リーネはアフターヌーン・ティーの為に食堂で準備をしていた。

 

「芳佳ちゃん遅いな~」

 

と、食堂に駆け込んでくる足音がする。

 

「ごめん!遅れた!」

 

リーネが振り向くとそこには肩で息をしている芳佳がいた。

 

「どうしたの、心配したよ?」

 

リーネが心配そうに芳佳に言う。

 

「ごめんね~、広すぎて掃除が大変なの。さっ、手伝うね!」

 

そう言って芳佳もアフターヌーン・ティーの準備を始める。

そして準備をしていく二人だが、突然宮藤がリーネに話しかけた。

 

「ねぇ…」

「なあに?」

 

リーネは宮藤の言葉に耳を傾けた。

 

「私って、バルクホルンさんに嫌われているのかな?」

「へ?どうして?」

 

リーネは宮藤の言葉の意味が分からず聞き返す。宮藤は表情を曇らせながら話し始めた。

 

「うん、なんか避けられているような気がして…」

「気のせいだよ。だって、バルクホルン大尉は誰にでもそんな感じだよ?」

 

宮藤をフォローするようにリーネが言う。

 

「あ、中佐とハルトマン中尉は別だけどね」

「へ?」

 

今度は宮藤がリーネの言葉に驚いた。

 

「同じカールスラント出身で、戦いが始まった時からずっと一緒だったんだって。あの三人」

「へー」

 

と、リーネの説明を聞いて宮藤は驚きの声をあげる。しかし、あることが気になりリーネに聞き返した。

 

「あれ、シュミットさんは?」

「へ?」

「シュミットさんも同じカールスラント出身だから、ミーナ中佐達と一緒だったと思って」

 

宮藤の疑問は、同じ国出身でミーナやバルクホルン達と年が近いシュミットもずっと一緒だったと思っていたのだ。

それについてリーネが教えた。

 

「シュミットさんは1年ほど前にこの基地に来たから、ミーナ中佐達と最初から一緒じゃなかったよ」

「へー、そうなんだ」

「でも、少し不思議なの…」

「へ?なんで?」

 

リーネの言葉に宮藤が聞き返す。

 

「シュミットさんって、実は501より前の記録が無いの」

「へ?どういうこと?」

 

リーネの衝撃の発言に宮藤はどういうことか分からずまた聞き返した。

 

「今は中尉だけど、501に来た時はシュミットさんは少尉だったの。だけど、シュミットさんの過去の経歴が501からしか無いの」

「それって何かおかしいの?シュミットさんは私みたいに501が初めてじゃないの?」

 

ウィッチの制度について疎い芳佳はそのことについて特に変とは感じなかったらしい。しかし、リーネは芳佳にさらに説明する。

 

「本来ウィッチは、入隊時に階級が必ず軍曹にされるの。だけどシュミットさんが501に来たときは少尉ってことは、階級が2つ上なの」

 

それを聞いて宮藤もリーネが言いたいことを理解した。シュミットが宮藤と同じように501が初めてだとしたら、彼は入隊時に軍曹のはずだ。しかし、501に来た時が少尉だということは、過去に功績を上げて501に来たことになる。しかし、シュミットの過去にそのような経歴は無いのだ。

宮藤とリーネはそのことに疑問に思いながら、アフターヌーン・ティーの準備を進めていくのだった。

因みに、

 

「はっくしょん!」

 

そんな噂をされていることを知らないシュミットは、一人くしゃみをしながら「風邪かな…」と呟いていたのだった。

 




シュミット君ってあまり自分のことをベラベラ喋らないタイプの人だから、宮藤とリーネは彼が並行世界の住民だということを知らないんです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。