異世界転生したけど一周回って冷静になるよね。   作:暁月煌

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ちょうどよく切れたので短めです。感想ありがとうございます。


登校、会長との邂逅

都市国家グラン近郊、シンシスの大森林。

 

 

「アルノー、右三人。」

「了解っす隊長!アルノー=グラン=リヴレン目標を撃ち抜くっす!」

「いちいち名乗るなよ、東洋の武士じゃあるまいに...」

「ま、まぁ文献読んでから武士道にはまりっぱなしだからねぇ」

「シイナ後ろ、見て。」

「はいよー」

 

 

 指示は出す、最善策を採ってはいるが完全にその場しのぎだった。

こうしている間にも包囲網は狭くなり、彼らに迫っている。数えきれない数の敵を殺し、自分たちの進む道を確保して逃げ続けていたが、限界が近かった。

 

 

 周りにいた仲間、共に逃げようと言ってくれた親友達も一人、また一人と減りついには居なくなった。先程まで話していたのに。走った。走った。前だけを見て、力の限り。

 

 

ーーだが、無慈悲にも呪文は響き渡る。

 

 

「汝、異端にあり。平穏を乱す者に裁きを。我求むは閃光。散らせーー『星降(ほしふらし)』」

 

 

 空に魔方陣が広がり、視界が白でいっぱいに...

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「~~~~!!」

「お、起きたかー。早く準備しろよー。」

 

 

 どうやら夢だったようだ。と言うか悪夢だった。あんな簡単に人が死ぬのは見ていられない。しかし、妙に現実味のある夢だった。しかも...

 

 

「おーい!生きてるかー!」

「~~~~~!?」

「なっ、なんだよ?どうしたんだ?」

 

 

 朝から心臓に悪い奴だ!本っ当に無神経と言うか、鈍感と言うかわかんないけど!ボク一応女の子だよ!?その顔に急接近するとかだめでしょ!?…と言うか死んだような目をしてぼーっとしていたのか!?ボクは!?うぅぅ…

 

 

 

「と、取り敢えず準備早くしねーと遅れるぞ。急げよ!」

「あ、うん。」

 

 

 そういえばまともに喋ってなかったな、と声が裏返ってから気づいた寝起きだった。

 

 

 玄関に届いていた制服を身に纏い学園へと向かっているのだが...隣にリーフェイル氏がいるのです。凄く近いのです。リア充かよ!と突っ込みたいのです。主に自分に。転生前は男子と関わる事すらしたことが無かったので、改めて考えると隣で歩いているってだけで暑くなってくるのです。特に顔が。

 

 

 歩いていると様々な人がリーフェイル氏に話しかけてきた。彼は人気者なのだろうか。

 

 

「おっゼン!おはよ!」

「あぁロージか、おはよう。いつも元気だなお前は。」

「当たり前だろ!それしか取り柄無いしな!ガハハ!てか、隣の子誰さ?彼女か?ん?ん?」

「「違いうわ(います)!!」」

 

 

 見事にハモってしまった。

 

 

 そしてニヤニヤとしながらリーフェイル氏に詰め寄っている。この世界の男子はすぐニヤニヤしてる気がする。

 

 

「はは~ん、そこまで息ぴったりだと説得力皆無ってもんだよなぁ?この際言い逃れは無駄だぜ?ゲロっちまえよ!付き合ってんだろ~?ん?ん?」

 

 

ーーードガッ。

 

 

 鈍い音と共に彼が保健室行きとなったのは至極当然の事だろう。そして倒れる寸前の彼の顔が恍惚としていてこれから関わらないようにしようと月夜は心に決めたのだった。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 所変わって此処は『鷹ノ目学園』第2学棟3階1-cの教室。なんだか普通だなぁーと思いつつボクはクラスメイトの前で自己紹介をしている。

 

 

「星河月夜と言います。これからよろしくお願いします。」

 

 

 特にトークスキルとかを持っている訳ではないので、何の変哲もない只の挨拶をする。誰でも出来る挨拶だ。

 

 

「ではホシカワは後ろから二番目の席だ。」

 

 

 金髪でオールバックの如何にもチャラそうな奴が隣だ。面倒事の匂いがプンプンする。しかし担任は強面のお兄さんで怖いので、月夜は逆らわない様にしようと心に決めたのだった。

 

 

 …しかし普通だ。普通過ぎる。これでも月夜は前世?では多くの創作品を見ている。読書、特にライトノベルに関しては学校で一番多く読んでいたと自負している。その知識から転生ならばもう少しイベントが有っていいと思った。まだ一時間すら授業を受けてはいないけれど、もっとこう…"俺と決闘しろ!" とか有るかと思っていた。

 

 

 午前の授業が終わっても密かに期待していたイベントがは起こることはかった。しかし、昼食の時間にボクは生徒会室に呼ばれた。

 

 

「いきなり呼び出して申し訳ない。生徒会会長のルルク=ニル=ホーエンだ。早速だが呼び出した用件はこれだ。」

 

 

そう言って金髪碧眼のイケメンエルフ様は一粒の種を渡してきた。向日葵の種位の大きさで少し黒の混じった赤い色が特徴的だ。 

 

 

「その種は『知識の種(ちしきのたね)』と呼ばれるものだ。その種を育てて出来る植物は、視覚、聴覚、触覚が備わった気持ち悪い見た目の実をつける。そしてその実が体験した内容を種に保存する。その種を飲み込んだら、その内容が知識として摂取した者の脳に記憶される訳だ。」

 

 

 そう言うと会長さんは持っていた種をこちらに投げて寄越してきた。

 

 

ーーードクンッ。

 

 

「え?」

「気づいた様だね。その種は触れた者の鼓動と同調して脈動するのさ。驚いたろ?」

「はい。凄く。」

「ふふっ。それだけ目を真ん丸にして驚いてくれて、用意したかいがあって嬉しいよ。それと、早速だけどそれ飲んでね。」

 

 

 会長さんは優しく微笑みながらそう言った。飲むのか、"コレ"を。改めてその種を眺めてみるが、見れば見るほど気持ちが悪い物だ。ついでに軽く助けてって意を込めて会長さんを見上げてみるが…

 

 

「大丈夫。飲んでも害はないよ。この僕が保証しよう。」

 

 

 くそう、微笑みを返された!普通にカッコイイ!ええい!悩んでも変わらない!神よ、ボクにどうか御加護を!覚悟を決め一息に飲み込む。

 

 

「ん?んんっ!?」

 

 

 頭の中が掻き回されるような感覚にえずきそうになり必死に耐えていると、急に目の前の景色がグニャリと歪む。そこでボクの意識は途絶えた。

 


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