SAO -Epic Of Mercenaries-   作:OMV

17 / 17
十六話 救済の方策

 

東京都 台東区 御徒町 [24:05]

 

園原 歩美・株式会社レクト/プログラマー

 

 

不思議な青年だ、と園原は直感で感じた。容姿は至って普通。一見すれば普通の高校生すら見える。が、良く観察すれば明らかに違うことがわかる。モッズコートの下に隠れる肉体鍛え上げられている事、手の甲や首元に残る傷跡など、本当に良く観察しなければ気付かないような些細な点で、彼は普通の人間とは違った。

 

しかし、最も園原が違和感を感じたのは、纏った雰囲気である。力を持った人間は、大半が薄汚い雰囲気を纏い、それを撒き散らすような佇まいをしている。少なくとも園原の見てきた者はそうだった。しかし、彼は力を持っているにも関わらず、それを隠している。表面では普通の人間を装っているが、裏のそれと混ざり合っている独特な雰囲気を醸し出し、園原はそれを感じ取っていた。

 

横目で観察しながら、グラスを傾ける。戻ってきてからというものの、微動だにせず、机に腕を置いて座っているだけ。何を考えているのか、好奇心が疼いた。

 

「ねぇ、どうしたの? そんな思い詰めちゃった顔してさぁ」

 

ここまで語調が砕けると、もう単なる酔っ払いのカラミだ。無視されても文句は言えない。だが彼は、律儀にも返事を返してくれた。

 

「……園原さんは、茅場を見た事はありますか?」

 

「あるよ。といっても、もう五年くらい前になるけど、一度だけ」

 

他大学との合同研究で、当時その他大学の大学院に在席していた茅場が研究に参加したことがあった。当時から天才だ何だと叫ばれていたが、外面は冴えない青年、内面は無口と取っつきにくい人間であった。だからあまり会話することは無く、一度ニ、三言雑談をした程度だった。

だが、それだけの交流でも彼が特別な人間だということは理解出来た。彼の口から出る言葉には謎の魅力があった。でなければ、研究に対しての質問というだけの会話をわざわざ覚えていたりはしないだろう。当時より父親関係でIT関連の有名な人物とは何度か顔を合わせ、会話したことがあったが、茅場だけはそれらと比較にならないほどだった。

 

だから、茅場がナーヴギアを開発した時も、[SAO]の発売が社会的な関心を集めた時も、[AWI]を起こして数千人を殺害したときも、園原には「ああ、そうだったのか」程度の感慨しか湧いてこなかった。それほどまでに住んでる世界が違い、考えていることも常人のそれとは違うと考えた末の、半ば一種の諦めのようなものだったのだろう。

 

「大学の時から大分変った人間だったけど、どうかしたの?」

 

「いや……ちょっと聞きたい事がありまして」 

 

「んー? 私に?」

 

「[妖刀システム]、ってご存知ですか?」

 

園原にとって、聞き覚えの無い単語だった。[妖刀システム]なんてプログラムは、恐らく聞いたことも見たことも一度もない。素直に首を横に振った。

 

「うーん……聞いたことないなぁ。何かのプログラム?」

 

「SAOで使用されていた対殺人者用の防衛システムのようなものです」

 

対殺人者用。普段聞き慣れないその言葉は、彼が[生還者]だということを再認識させるのに充分な威力を持っていた。牧田は、表情に苦悩を滲ませながら、その常軌を逸したプログラムの内容を吐露した。

 

「アイテムを通してPCに導入、対殺人者に対して恐るべき効力を発揮したシステムです」

 

「ちょっと待って。PCに導入って、まさか対殺人者の役割を人にやらせたって事? それってまさか……」

 

「人殺しの為に作られたプログラムですよ。殺人をしている者をシステムが探知すれば、自我を失いかねない勢いでそれを殺しに行く。それによって、自分の身近な人が酷い目に会いました」

 

園原は絶句していた。茅場の人柄は知っていたが、まさかそこまでや事をやる輩だとは思ってもみなかった。

 

フルダイブ技術において、最もタブーとされるのはフルダイブ被験者の身体に危害が及ぶことだ。それに繋がるプログラムを作成するのはご法度であり、例外は無い。感覚に何らかの刺激を与えるプログラムは、全て危険な影響が出ないようリミッターが掛けられている。例として、擬似的な痛みを発生させるプログラムも、ペイン・アブソーバーというシステムによって制御されており、人々が安全にゲームをプレイすることができるようになっていた。

 

だが、その[妖刀システム]とやらは、それらとは別次元でタブーとなるプログラムではないか。殺人を強制するプログラムがあるという衝撃、そしてそれが実際に使用されたという事実、何よりそれを作成したのが、茅場であるという事に、園原は驚愕した。

 

確かに彼はフルダイブ技術を悪用して大量の犠牲者を出した。しかしそれは、茅場本人が自分の手を汚して行った事だ。しかしそのシステムを使って茅場は、第三者に殺人を強要していた。どちらがどれだけ非道か、少なくとも殺人と無関係の人間を汚すのは下衆の所業だ。

 

「誰がそのプログラムに操られたの?」

 

「自分の友人……幼馴染です。彼女が、そのシステムの被験体となりました」

 

幼馴染といえば一番身近な友人ではないか。

 

沈痛そうな無表情と共に、彼はそのプログラムと、幼馴染が行った所業を話し始めた。彼が渡した刀によって[妖刀システム]が取り憑いたこと。[妖刀]が発露した彼女を止められなかったこと。システムを抑えるため、自我を保つために性格ががらりと変わったこと、今でも後遺症に悩まされ、死に場所を求めているということ……それまで身を置いていたフルダイブ技術の世界からは想像も付かない程の話は、事の悲惨さを理解するのに充分な威力を持っていた。

 

「その彼女は今何を?」

 

その問いを口にしてしまった事を園原は瞬時に後悔した。もし、その幼馴染とやらが既にこの世を去っていたら、その言葉は彼にとって鋭い刃のようなものだろう。過去の辛い記憶を掘り起こしてしまうのではないかという園原の危惧に対し、牧田は栗原の現状をあっさりと話した。

 

「今、彼女もこの[AWI]に対する行動を起こしているはずです。でも、心は不安定で、いつそれが崩れるかも分からない。無責任と思われるかもしれませんが、俺はただの人間です。カウンセラーでもメンタリストでもない。火花が飛び散っている火薬庫みたいな精神状態の奴に触れて大事になるのなら、むやみに触れずそっとしておくしかありません。でも、もし、何かしらのヒントがサーバーにあるのなら、それを捜し出すしかない。……このヤマを解決しないと、自分の[SAO]は終わらないんです」

 

距離を置くのは妥当だと言えた。もっともな理由だ。精神を壊した人間に触れてロクなことにならないのは、高校時代の経験から既に学んでいる。精神医に引き渡すのが最も適切な対処法である。

 

「システムが与えた精神障害か……」

 

園原は椅子の下に置いてあったバッグから、ノートパソコンを取り出した。

 

立ち上げ、少しばかり操作すると、画面を牧田へと提示した。そこには、牧田にとって全く意味のわからない文字の羅列が表示されていた。

 

「何ですこれ?」

 

「ALO内部に何故かあったSAOのデータ。もし仮に、ALOにそれが引き継がれているとしたら、この中にあると思うんだけど……」

 

そう言って園原はパソコンを引き寄せ、タイピングをし始めた。暫くの間、キーボードの打音が静寂を紛らわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都・台東区御徒町[24:10]

 

牧田玲・DAIS[Disavowed]所属エージェント

 

 

 

ALOの中に妖刀システムが混じっている可能性、ALOがSAOをベースにして作られたのであれば、入っていてもおかしくはない。ならば、もしあったとして、栗原がログインした場合はどうなるのか。妖刀は起動するのだろうか。それだけが気掛かりだ。

 

今更、栗原とアミュスフィアとALOを買ってしまったことを後悔した。まだDAISの支援が取り付けられると思っていた時は現実世界の荒事はDAISに任せ、自分は栗原に付いてALOをプレイしつつ面倒を見る、というプランを思い描いていた。

 

今の栗原はいつ爆発するかも分からない時限爆弾のような状態だ。幼馴染として、相棒として、何よりも一人の男として隣で支えたかった。

 

それが出来なくなった今、栗原は誰からも支えられていない状態だ。せめて、SAO時代の彼女を知る誰かが居てくれればと思わずにはいられない。

 

暫くすると、園原がキーボードを打つのを止め、画面に見入った。

 

「あった。[妖刀-system]、システムデータに組み込まれてたよ。隠しアイコンとして設定かつ検索からも除外されるくらいの徹底した隠匿……完全なマスクデータになってなくて良かったね」

 

「それがALOのデータに組み込まれてたってことは……」

 

当然、出る答えは一つだ。

 

「ALOにこのシステムが組み込まれているってことになるね」

 

園原は再びパソコンを操作し始めた。ウィンドウを閉じ、また新たなアイコンをクリックした。

 

「その幼馴染のPN,判る?」

 

「あの時から変わっていないのなら、[マロン]です」

 

マロンね、と園原が呟き、キーボードに指が走った。出ないでくれ、という思いも刹那。パソコンの画面には、見覚えのある顔つきと装備、しかし髪色や背面の翅といった部分が微妙に違うマロンの姿が映し出されていた

 

異世界の街の中で、ショーウィンドゥを覗く彼女の姿がスクリーンショットのような形で表示されている。写真の上部に表示されているプロパティには、[時刻・10:24][Marron:シルフ領内]と時刻、場所の情報が簡潔に記録されている。10時といえば、今から二時間と少し前の話だ。

 

「ALOにログインを始めたのが10時ちょっと過ぎ。それから少し経過したくらいの写真だね。記録者は...システムのオートログか」

 

ページをスクロールし、今度はログが一覧となって表示される場所へと移った。

 

大体が黒文字で表示されるログの中に、一つ、赤文字の表記があった。園原が目敏くそれを見つけ、その赤文字を指でなぞった。

 

[エラー:コード0000 想定していないプログラムが稼働しています ログ:29231]

 

「想定していないプログラム、[妖刀]の事か...」

 

その赤文字から続くログを読んでみると、

 

[Marron:エンハンス付与]

 

[Marron:Hugeをキル]

 

[リカバリ:エラーは是正されました]

 

と表示されている。つまりはシステムの稼働によってエンハンスが付与。この[Huge]というプレイヤーを殺害したという事だ。

 

「おかしいな...エラープログラムが稼働しているのなら、システムと連動して秒で是正、少なくとも私とかの関係者にエラーの詳細が知らされる筈なのにな...」

 

園原は苛立ちを隠さずに呟いた。彼女の話が本当ならば、関係者に[妖刀]の発露が露呈しないための細工がされていたという事になる。そしてその細工ができる人物というのはレクト社内でも限られてくるのではないか。

 

しかし、園原はそれをバッサリと否定した。

 

「こういった部分の設定変更は難しいね。どうしても複数人の管理者権限による承認が必要だし、それを気軽に承認するような奴は一部を除いて居ないよ。一部っていうのは須郷達一派の事なんだけど...いくら何でもやらないと思う。だってエラーを承認するってことは、システムの脆弱性を晒しているのと同じだしね。恐らく、これは人為的なエラーでは無いと思うよ...多分ね」

 

何か引っかかるような言葉を残して、園原は画面をスクロールさせた。

 

「今、ログイン中だね。ちょっとばかりのログアウトを挟んで復帰したみたいだよ。場所は同じ、ステータスにも異常は無い」

 

園原が動かした画面には、一人裏路地のような場所で佇むマロンの姿がライブカメラで表示されていた。

 

その画面を見つめていると、不意に彼女の目線が動いた。あの時とは違う、ラピスラズリ色の瞳と画面を通り越して目が合う。

 

「...っ」

 

彼女の目線は、見えない虚空を射ているはずだ。少なくとも、彼女からは何も見えていないはずだ。なのに、感じた殺気は一体なのか。隣を見ると、園原も同様に何かを感じ、驚いたような表情をしていた。

 

「...ねぇ。一体、彼女はどんな存在なの」

 

園原が画面から目を離さないまま問いかけてくる。どんな存在、かと言われれば、丁度言い表せる言葉が存在することに気付いた。彼女を言い表すのに最も適した言葉、彼女の渾名となった、あの称号。

 

「彼女は[鬼神]...神をも喰らった、正真正銘の鬼です」

 

 

■■■■■■

 

マロン/栗原 絵里香・帰還者

 

 

シルフ領首都・スイルベーン 裏路地16番通り

 

 

不意に、何者かの目線を感じた。自身の背後、視線を感じた先にある空中を睨みつけるが、そこには何もない。きれいな色の青空があるだけだった。

 

疲れだろうか。それとも、[妖刀]の後遺症だろうか。考えても仕方がないと思考をばっさりと切り捨て、それまで考えていた事象へと思考をシフトした。

 

何故、妖刀システムが起動したのだろうか。彼らの中に、SAOで人を殺めた者が居たのだろうか。その可能性は切れる。もしあの場に殺人者が居たのなら、出会い頭で[妖刀]が発露していた筈だ。だが、実際は揉めた後、追い詰められた結果の発露であった。いつものパターンとは違う。

 

それに、SAOの時よりも効果が明らかに強い。SAOの時は、軽いエンハンスと数秒先の行動予測、そして行動選択の提示によるアシストを受けていた。行動予測と言えば聞こえはいいが、脳波のラグなどで上手くいかない事もあり、実力がある敵にはそもそも予測が殆ど当てはまらない事もあって、強敵との戦闘時は全く信用していなかった。さらに、システムの暴走を自我で抑え込んでいたからか、システムの本領を発揮できず、発露時でも[Poh]といった強敵には遅れを取ることが多々あった。

 

ALOのものはそれよりも遥かに進化していた。行動予測のタイムラグは無く、予測の信頼性はかなり高い。一挙手一投足まで正確に予測されている。エンハンスも倍率がブーストされているのか強力で、行動選択提示もより合理的になったものになっていた。

 

 

だが、強力になった分、明らかに身体の負担も増えている。妖刀を発露した時特有の強烈な頭痛が、数十分経った今でも残っている。前までは頭痛はそれほど長引くものでは無かった。身体も重く、こうして立ち上がることすらままならない状況だ。

 

 

(このゲームの中にSAOのデータが混じっているのは確実ですか……)

 

 

アイテムのデータなどであるのならともかく、[妖刀システム]まで入っていたとなれば、それは確実だ。ALOに対殺人者用のシステムを組み込む必要は無い。エンハンス用のシステムとして使うにも、使用者の身体的、心理的な負担が重すぎる。そのことから、SAOのデータベースを丸々持ってきたのだろう。

 

 

しかし、それ以上考えても何も出ては来なかった。[妖刀]が普通のプレイヤー相手に何故発露したのか。[妖刀]が何故SAOの時より強力になっているのか。何故ALOにSAOのデータが混じっているのか。分からないことが多すぎる。考えれば考えるほどに解らなくなる。そんな中、頭に浮かんできたのは考察でも解決策でもなく、頼りとしていたはずの彼の顔だった。

 

(……こんな時に、牧田くんが居れば)

 

 

だが、今更どう顔を合わせるのか。彼にほぼ決別とも取れる言葉を投げかけてしまった身であるくせに。都合が良すぎる、と自分で自分を責めたい気持ちになった。

 

[私は……躊躇いなく人を殺せますから]

 

その言葉を聞いた時、彼の顔には悲壮と諦観、二つの感情が張り付いていた。悲壮はまだしも、諦観は何なのか。何を諦め、そして何を考えていたのだろうか。頭の中に長い間残り続けている疑問であった。

 

過去にそういった経験があったのか定かではない。だが、あの悟ったような表情は何かしらの経験が無いと現れないものであった。

 

「私は……貴方ほど強くは無いんですよ……」

 

一体、彼は過去に何を経験したのだろうか。長い時間を共に過ごした筈だが、未だに彼の事を完全に理解した訳では無い。同い年の幼馴染とは思えないほど、彼は強い。自分もそれなりの地獄を経験した筈だが、それでも遠く及ばない。一体、どれほどの経験をすれば、ああなることができるのか。見当も付かない。

 

私の知らない彼が、どこかに居る。人生の半分近くを彼の近くで過ごしていても気付くことは出来なかった。彼が意図的に隠しているのか、或いは私が気付いていないだけのどちらかだ。

 

しかし、思い返せばその片鱗のようなもの色々な所で目にしている。行動、思考、予測、どれも常人のそれとは違う。常に他人よりも一歩先を行っていた。

 

その正体、強さの根源は何なのか、と思考を巡らせた瞬間、背後に何者かの気配を感じ取った。[妖刀]の反応ではない。スキルの反応でもない。第六感とでも言うべきか。人の気配を探知して即座に探索網を周囲に張り巡らせた。右手を[後生]の柄に添え、周囲を警戒する。

 

建物と建物の間から、人影が現れる。緑色の和服に、薄い若草色の髪。その下に マロンを見据える碧眼が覗かせていた。恐らくマロンと同じ、シルフの者だろう。

 

「先程の立合い、観戦させてもらったよ」

 

彼女は微笑を浮かべながら言った。警戒をしつつも、マロンは疑問を述べた。

 

「……どこから見ていたんです?」

 

マロンが習得している[索敵]スキルではあの検問集団以外の人は居なかったはずだ。[索敵]スキルと相反する[隠蔽]スキルがマロンと同じくらいの値か、それ以上の値があるのであれば、マロンの索敵から隠れる事が可能だ。が、マロンの[索敵]スキルはSAO時代より完全習得を示すマスター表示が付いている。ということは、目の前にいる和服の女性は、相当の腕前を持つプレイヤーであるのだろうか。

 

「まぁそれは置いといて。素晴らしい対人戦の腕だな。あんな動きが出来るシルフは他に居ない。あのゲームシステムの限界を攻める機動……私は惚れたよ」

 

「何を言っているんです……?言いたい事があるなら、単刀直入に言ったらどうなんです?」

 

何故かこの女性の発言には裏があるように思える。何か意図があるのではないかと勘ぐってみると、彼女はあっさりとボロを出した。

 

「ふふ……やっぱり回りくどかったか。じゃあ単刀直入に言わせてもらう。私の護衛として君を雇いたい」

 

「は……?」

 

護衛、という言葉が理解できなかったわけではない。何故、この場面で言うのかが理解出来なかった。

 

「おっと失礼。私はシルフ領の領主をしている。名をサクヤという。よろしくな」

 

種族のトップに君臨する人物がこんなところに現れるものだろうか。初心者のプレイヤーを騙すにしても釣り針が大きすぎる。これ以上考えても仕方がないので、いったんは領主と考えて接することにした。

 

「いわゆる傭兵さ。やってもらうのはさっき言った通り護衛。と言っても一人で私を守る訳じゃない。他にも十数人、私直属の護衛として付随することになっている」

 

十数人、という人数は多いのではないか、と旧SAOプレイヤーの脳が反応した。領主クラスが一体どの位の戦略的価値があるのかは判らないが、十数人の護衛というのは、SAOでは見なかった人数の護衛の数だ。攻略に行くのならまだしも、平常時の護衛とは考え辛い。となると、何かの戦闘なのだろうか。

 

「薄々感づいていると思うけど、今回の件は戦闘が起こる前提だ。君の他にも優秀なプレイヤーを揃えてはいるが、多少なりとも損害が発生するかもしれないことには留意してくれ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。何もやるとは...」

 

強引に話を進めてくる彼女を何とか止め、その意図を聞き出そうと試みた。

 

「一体、何で私を雇うのですか?」

 

彼女はフフーフと意味深に笑うと、あっさりと私に目を付けた理由を、余計な一言と共に吐いた。

 

「それは、君の雰囲気が面白かったからだよ。鬼神ちゃん」

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。