哿と婚約者   作:ホーラ

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二部構成でいけるかと思ったけど、区切りがいいんで三部構成にしました。

注意、三部構成の中編、伏線回、砂糖成分ほぼなし


第7話:作戦会議

女子校に潜入して2週間経ったが…学校では何も変わらない。登校して、女子に話しかけられてもバレないように怯え、授業を普通に受ける日々だ。

任務が終われば3学期終了を待たず武偵中に戻れるのだが、俺の専門は強襲科(アサルト)。麻薬を探すような諜報は向いていない。

ここは探偵科(インケスタ)の銀華に任せるしかない。

 

今日の授業も終了し、放課後になった直後。この時も俺にとってキツイひとときだ。

銀華のところに会いにいこうにも、銀華は放課後にこの学校について調べているらしく会うことはできない。かといって1人で教室にいると、ひっきり無しに女子に声をかけられる。どうすればいいのかクロちゃんわからないんだけど……

 

(仕方ない、先に下校するか)

 

そう思い、校門の方へ歩いていくと…珍しいな。駐車場にトラックが止まっているぞ。送り迎えのためのベンツなどの高級車はこの2週間で嫌というほどみたが、トラックを見るのは…2回目か。先週もそういや停まっていたな。

まあ、年始だし何か新しい物品を運び込んでるんだろうな。

そんなことを考えながら校門を出て、駅に向かう道を歩いていると

 

(………?)

 

何か言い争うような声が聞こえたな。

大通りから一本入った裏路地の方だ。

喧嘩腰の男の声が2つと…女子の声もする。

 

「……」

 

習慣でそっちに意識を向けてしまうが、俺は下校を急ぐことにする。ここで大事なのは目立たないこと。問題を起こさないことだ。

ケンカに巻き込まれてもし男とバレたら人生が終了するし、大立ち回りをして武偵ということがバレたりしたら警戒が厳しくなり、同じく潜入して調査をしている銀華にも迷惑がかかる。

 

「私たち…お金持ってないんです…」

「そんなわけねえだろ。そこのお嬢様学校に通ってるんだしよ!」

「それにぶつかっといて礼もなしとか舐めてるのか?ああん!?」

 

チッ、今の女の声は同じクラスの女子だ。

俺は武偵中に入ってある程度までわかるようになったのだが、同じクラスで戦闘能力ある女子は0だ。

男たちは興奮している声を出しているし、もし暴力振るわれたらなされるがままだろう。

 

(クソッ、何やってるんだよ…)

 

様子を見るだけにしようと心に決めつつも自転車置き場の方へ行ってしまう。

そこには蹴られた青いプラスチックのゴミ箱があり、

 

「本当に持ってないんです…」

 

涙目の同じクラス女子2人がいた。

 

「よーし、嘘をいったのと俺にぶつかった罰金10万な。出せなきゃ、やっちゃうか」

 

ビビらせるようにナイフをだした痩せ型の男は---金髪でいくつものピアスをしている……典型的ヤンキーだな。もう1人は変な模様のソリを入れた丸刈り頭で……さっきの男とは対照的に太っている。

 

(見るからに不良だが、100%の一般人(アマチュア)だな……でも、あれだけはマズイ)

 

痩せ男の持ってる光り物(ナイフ)、俺はただ一点に注目する。俺たち武偵にとってはなんともないが、もし痩せ男がミスるとクラスメイトの女子や痩せ男自分自身を刺してしまう可能性がある。

『やっちゃう』の意味がよくわからないが出したからには使うつもりだろう。

オモチャぽいものだし、握り方も素人だが…

逆に素人は結構やらかすんだ。出したのは威嚇のために出したのに、手元が狂って刺したといった傷害事件を学校で習った。銀華もこの前のナンパの時も、ナイフをだした瞬間に動いたしな。

2人が怯え流ように震え、痩せた男が舌でナイフを舐めたあたりで---仕方ないな。チクショウ。

 

「……あの……」

 

俺は奴らに見えるような位置に姿を現す。

さてと…どうやって穏便に収めよう。

 

「く、クロメーテルさん……?」

 

あーあ。いきなり涙目でこっち見てクロちゃんの名前バラすし。まあいいけど

 

「あ?なんだお前?」

 

太ってる方がおらに向かってガンを垂れてくる。どうして不良はとりあえず睨むんだろな?

「ヒャッハー!!女が増えたぜ!」

 

デブと対照的に叫び出す痩せ男。というかどこの世紀末だよ。

絶対それ言いたいだけだろお前。あと俺は男だ。そんなことは言えないけど

 

「その……光ってるものしまった方がいいと思いますよ?……」

 

クロメーテルさんの史上最高の穏やかな声で話しかけたつもりなんだが

 

「女が俺に意見してんじゃねーよ!俺に意見にするなんて1億光年早いんだよ!」

 

し、瞬時にキレた。なんでかしら?

てか、男尊女卑なんていつの時代の話してるんだ。そして光年は距離の単位だぞ。

頭悪いなあ。俺も人のこと言えないが。

 

「だから、それを仕舞った方が…」

 

痩せ男が俺をさせるようないい感じの間合いに入った。

 

「あ?」

 

刺してきたら腕をとって投げるつもりだったが、人をさす度胸はないのか、スッと刃物を上に向けてしまった。素人は本当に予想外な動きをするな。

俺は石につまずいたふりをしつつ…

 

「あ…ごめんなさい…」

 

頰にパンチをいれた。気絶する程度に。

 

「青木に何してんだ、テメエ」

 

っと言いながら突っ込んできたデブ男には"たまたま"突き出したように見える肘が鳩尾に入る。まあギリ気絶するかしないかといったところか。と思ったら痛みで気絶している。制圧完了だな。

 

「…早く逃げた方が良いと思います…」

「あ、ありがとう。クロメーテルさん」

「お礼はまた今度!」

 

俺の言葉を聞いて2人はこの場から離脱していく。よ、よかったあ…バレなかった。この気絶している不良たちもこの件で懲りたかもしれない。

情けは人のためならず。いつか俺にもいいことあるだろう。

 

 

 

 

って次の日、目覚ましが急に壊れたせいで少し遅刻するってどんだけ運がないんだ!神様、クロちゃんいいことやったんだからもっと俺にも運をくださいよ…もしかして神様も俺とクロメーテルを見分けられていないのかなあ…

そんなことを考えながら、少し遅刻してしまった俺はHRが始まっている教室に目立たないように恐る恐る、

 

「遅れました…すみません…」

 

と教室の後ろのドアを控え目な手つきで開けてこっそり中に…

一歩踏み込んだところで、みんなが振り返ってきた。そして一斉にわぁーーーっと!

喝采を送ってきたな、な、なんだ?

 

「??????」

 

何が何だかわからない顔をしていると

 

「クロメーテルさん、昨日はありがとうございました。これはお礼です」

 

昨日助けた女子が丁寧に腰を折り、何か渡してくる。菓子折りかなこれ?

 

「クロメーテルさん、聞いたよ!高校生の不良2人撃退したんでしょ!」

「それも相手はナイフ持っていたらしいし」

「何かお稽古で武術でもやってたの?」

 

その後次々と周りの女子が俺の席に集まってくる。ホームルームはどうしたんだよ…

 

「クロメーテルさんは美しいながらも戦える女戦士ね。欧米出身だしジャンヌ・ダルクの末裔とか?」

 

って先生まで周りにいるじゃねえか!冗談で言ってると思うんだけど先生、ジャンヌダルクは火炙りで殺されたんですよ…俺が子孫な訳ないじゃないですか…

というかこんなに囲まれるなんて銀華になった気分だな…あいつも大変だったんだなあ。

 

 

その後、休み時間ごとに話しかけられまくられ、それに面白みのない答えを返したはずなのに、クロちゃんの人気は上昇の一途を辿る。

昼休みに入っても人気は衰えず、隣のクラスからも女子が遠征してくる始末。そろそろ銀華とご飯食べたいんだが、クラスから抜け出すこともできん。

そんな中携帯が震える…相手は銀華だ。

 

『助けてあげようか?』

 

ドアの方を見ると銀華がこちらを見ていた。俺と目が合った銀華は俺に向かってウインク1つする。

ここは銀華の力を借りるか…「頼む」と短い返信を送る。

その返信を受け取った銀華は…

 

「クロちゃん、お待たせ!」

 

と言いながら俺のクラスに入ってきて、女子の壁をスルスルっと掻き分けながら入ってくる。

 

「さあ、いくよクロちゃん。今日はいつもより愛情をお弁当に詰めたんだからね!」

 

俺を無理やり立たせ、腕を組んでくる。どこか周りの女子に見せつけるように。そのまま強引に俺を外に連れ出す。強行突破すぎるだろおい。

てか腕を組んだせいで、当たってる。当たってるって銀華さん!俺の肘がお前の胸に!

そのまま銀華は俺を中庭まで連れて行き…そこで俺の腕を解放した。

 

「さすがに強引すぎないか…?」

「一番早かったのはクロちゃんがお花を摘みにっと言って逃げることだったんだけどね。クロちゃんにはちょっとレベル高かったから二番目の案を採用したんだよ」

 

…お花を摘みにってなんだ?女子は俺にとってよくわからない言葉を使いすぎだろ…だが、聞いても笑われるのが関の山だから聞くこともできん。

 

「あと私との関係を見せつけることによってクロちゃんに寄ってくる女子を牽制した意味もあるね」

 

牽制って…まあいいか。

 

「まあ、ありがとう」

「どういたしまして」

 

はい、といっていつも通り弁当を渡してくるのだがそれと同時に

 

『潜入作戦立てる、今日私の家に来て』

 

と瞬き信号で送って来た。

 

 

 

 

放課後になり、久しぶりに銀華と一緒に下校する。帰るのは巣鴨の家ではなく、銀華の家なんだが…

銀華に連れられて、銀華が住んでいるマンションのオートロックの扉の前に着く。銀華が暗証番号を入れて扉を開け、エレベーターに乗って14階を押した。

そして14階…綺麗にタイル舗装された廊下を歩く。

 

「知っていると思うけどここね」

 

銀華が鞄から鍵を取り出し、部屋を開けようとするので、

 

「いいのか、ホントに」

「散らかってないし大丈夫だよ?」

「いや、そうじゃなくて…ここまで来ていうのもなんだが、女の一人暮らしの部屋に男が入るのはな…その、えっとだな…」

「ここまで来て何いってるの…ケ・セラ・セラ(なるようになれ)だよ、キンジ」

 

がちゃ。銀華は扉を開けてしまった。

最後が日本語じゃないからよくわからなかったが、こういうのは少し気がひける。

いつもの家は爺ちゃん婆ちゃんなどの目があるが、今は2人っきりで1つ屋根の下というシチュエーションだ。

だが銀華も病気(ヒス)持ちだし、婚約者だ。映画でよく見る展開にはならないだろう。

 

「お邪魔するよ」

 

というわけで銀華に続いて入った銀華の部屋は…

き、来た。女子特有のいい匂いが。なんなのこの、爽やかな菊のような…女っぽい匂いは。

ぱちん、と銀華が電気を付けて入っていくのは赤の壁紙にナチュラル系茶色の壁面家具を合わせたリビング。床にはカーペットが敷いてある。

そこに俺も入っていくが少しスッキリした印象を得るな。家具とソファー、クッション、壁の色の間に絶妙なバランスが取れているんだろう。センスいいな銀華。

 

「いい部屋だな」

「ありがとう、適当に座って」

 

荷物を置くために入っていくベッドルームは、女子力が高いというか、少女ぽい。思ったより意外だったな。

 

「着替えるからちょっと待ってて」

「わかった」

 

銀華がベッドルームで着替えてる間、座り心地のいいソファーに座って待つ。銀華は読者家なのか本棚には日本語、英語、その他の何語かわからない本が、かなりの数置いてある。

他にもガラス扉の棚があり、そこには水晶やロザリオ…それと変わったデザインの指輪があるな。

 

「またせたね」

「そんなに待ってないから問題ない」

 

大人っぽいシックな服装をしてベッドルームから銀華が出てきた。手にはノートパソコンを持っている。

銀華は俺が座っているソファーの横に座り、俺に見せるようにディスプレイを開ける。

 

「これが、あの学校の見取り図。私がここ2週間で調べたんだけどね」

 

見せられたのは横女の見取り図だが、おいおい…色々細かく書いてあるぞ。監視カメラの位置、それの死角、通気口の出入り口や中の通路、おまけにある部屋からある部屋への移動時間すら書いてあるぞ。

 

「それであるとしたら麻薬があるとしたら何処なんだ」

 

早くクロメーテルから解放されたい俺がクロメーテルの格好で尋ねると、銀華はパソコンを操作して1つの場所をピックアップした。

 

「あるとしたらこの部屋だね。これらの部屋は一見、何もない壁にある隠し扉から入るんだけど警備システムが他の部屋とかと比較にならないぐらい厳しくてね〜。侵入して調べようとしたけど、入るのに指紋認証、声帯検査、中は赤外線センサーだけじゃなくて感圧板まであって無理だった」

 

赤外線センサーはまだしも感圧板まであるなんてさすがに用心深すぎるぞ…あるとしたら流石にその部屋にあると思っていいな。

 

「じゃあどうやってその部屋から麻薬があるかどうかを探し出すんだ?」

 

銀華が侵入できなかったものに俺が侵入できるわけない。

 

「武偵なら少しは自分で考えたほうがいいよキンジ。これは初歩的な推理だし」

 

確かに銀華の言う通りだな。答えを聞いてるだけじゃ何も成長しないとカナも言っていた。

そして約1分間考えると、ハッとアイデアが浮かぶ。

 

「警備システムの電源を落としたらどうだ?そうしたら働かないだろ?」

「正解だよキンジ。それが私のアイデアなんだよね」

 

銀華の作戦は予備電源も含め、ハッキングによって数分間止めるからその間に探し出して欲しいといった作戦だ。

 

「侵入経路はどうするんだ?電源を落としたらドアが開かないんじゃないか?」

「それは大丈夫。部屋には通気口から侵入するから」

 

銀華がそういうと作戦経路と思われる侵入手段、逃走手段の経路が見取り図に浮かび上がった。準備いいなおい。

 

「いつからこれ準備してたんだ?」

「先週くらいかな。これを作り終わったのは昨日」

 

なんともない風に言っているけど、かなり凄いぞこれ。

 

「凄いなこれ」

「ありがとう、まあ友達にやり方教わったんだけどね」

 

お前もハイスペックだが、その友達も相当ハイスペックだな。どんな超人小学校に通ってたんだよお前は。

 

「作戦決行はいつにする?」

Strike while iron is hot(善は急げ).明日でいいかな?このインカムで私が指示するし、キンジは私の指示通りに動いてくれればいいから」

「わかった」

 

クロメーテルで外に出る時間が1秒でも短くなるのは俺にとって大変喜ばしいことなので文句はない。

 

「作戦会議はこれでお開きにしてっと……夜ご飯どうする?私キンジの分も作るよ?」

 

ソファーから立ち上がり、可愛らしいフリフリエプロンを着けながら銀華はそんなことを聞いてくる。

 

「じゃあお願いするかな。外で食べて帰る予定だったし」

 

作戦会議がこんなに早く終わると思っていなかったから、婆ちゃんに外で食ってくると連絡してある。渡りに船の話だな。

 

「オッケー。じゃあキンジ何食べたい?」

「うーん…そうだな。この前言っていたお前の洋食も食べてみたいな」

「うん….…洋食ね……頑張ってみる」

 

そう気合いをいれて作った銀華のオムライスの味は、作戦決行が1日伸びたと言えばわかるだろう。

 

 

 

 




原作で書きたいシーン沢山あるので早く原作に入りたいですね…あと何話ぐらい書けば原作入れるんだろう?

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