あ、今回のお話ですが、とてもうっっすいお話になりました。
天気は晴れ。空が青ければ気分も晴れわたる。ってことで、今日は博麗神社へ遊びに来てみました。
……気分は関係なかったかもね。
神社へ続く石段を、もちろん飛んで登ると、何時もの巫女服の少女と、白黒の少女。それと、あまり見かけない人がいた。
うぅん? あの子は一体誰だろうか?
なんか、その子に霊夢が怒られているように見えるんだけど……
まあ取り敢えず、近くまでいってみることにしよう。
「やっほー。遊びに来たよ~……って、そんな雰囲気じゃないね」
「よう、何時ぞやの妖精じゃないか。久しぶりだな」
魔理沙からそんな挨拶をされた。
『何時ぞやの妖精』なんて呼ばれたけど、私の名前知ってるよね?
まあ、それはさておき。
「――まったく、貴方には博麗の巫女としての自覚が足りていないと、何度言ったら……」
「ああ、はいはい。分かった分かった…………面倒くさいわね」
「今、何か?」
「いや別に?」
どうしよう。説教の真っ最中だこれ。
まったく話を聞く気がない霊夢だけど、それに挫けず説教を続けるこの人もすごいな。映姫に負けず劣らずだ。まあ、それでも多分意味はないんだろうけど。
しかし待てよ。この声、何処かで聞いたことがあるような……
あ、もしかして。
「ねえねえ」
「何ですか? 今は説教の最中で……す……よ……」
私の呼び掛けで、顔をくるりと此方へ向ける。すると、その人は驚いたように口をパクパクとさせた。
「やっぱり! 華扇じゃん! 久しぶりだね!」
「ああ……その……えっと……」
良く見てみれば、昔の知り合いとまったく同じ顔をした人物がいた。
「あ、あの……人違いでは……?」
「ええ? いや、そんなことはないと思うけど」
何故か焦ったように指摘された。
幾ら私だって、流石に人を間違えるようなことはしないと思うけど。
「なんだよ。お前、華仙と知り合いか?」
「あ、やっぱり華扇だよね」
「ああちょっと魔理沙! 余計なことを言わないで頂戴……」
華扇が私を見てから随分と慌てているけど、何かあったのだろうか?
変なことでもしちゃったかなぁ。
「あのさ、勇儀は元気? 萃香は偶に会うようになったんだけどさ、勇儀はまだ地底に――むぐっ!?」
突然、華扇に口を塞がれた。ちょっ、いきなり何をするか。
息が……息が……!
「ちょ、ちょっと此方に来なさい。――霊夢、向こうで千九咲とお話してくるわ」
「? 別に此処で話してても構わないけど」
「い、いや、久しぶりに会ったからね……あはは」
口を両手で押さえられたまま、私は霊夢たちから離れたところに移動させられた。残念なことに、華扇の力が強すぎて全然逃げられない。
一体どうしたって言うのだろうか?
――――――
「なに? 何で私は連れてこられたの?」
「はぁ……あ、焦った。寿命が十年は縮まったような……」
華扇にとっては、別に十年くらい大したことはないような気もするけれど。
「あ、あのね。私は今は修行中の仙人だから、昔の話をされるとちょっと困るって言うか、なんと言うか……」
――まあ、つまり、すっごく困るのよ。
話を聞くに、昔の話をされるとどうやら華扇は困ってしまうらしい。
華扇って今、仙人なの?
なんでまた、そんな面倒くさいようなことをしているのか。理由も分からないし。
「う~んと、私は昔のことを話さないようにして、華扇を仙人だと思って接すれば良いってこと?」
「そ、そう! そう言うことよ」
ぱあっと顔が明るくなる華扇。
何の為にやっているのかは分からないけれど、此処は乗ってあげることにしましょうか。
な~んて。
「そう言うことなら……はい」
「……何かしら? その手」
華扇の前に手を出した。
「いや、私が昔のことを黙っているメリットがないし……まあ、口止め料だよね」
私には、ただで動いてやる道理がないのだ。依頼にはそれ相応の対価ってものがあってだね? グヘヘ。
「ええっ!? そ、そんなこと言われても……」
うぅん。案の定戸惑ってるな。
「ええと、う~んと、何かあったかしら…………あ、そうだ! 今度お酒をご馳走するわ。最高級品の」
ふむ。お酒か……悪くない。丁度在庫を切らしていたところだし。
よ~し、それで手を打とうじゃないか。
ふっふふ、お酒お酒~。楽しみだなぁ。
「取引成立だね!」
「一体何時から取引になったのかしら……」
まあまあ、そう頭を抱えないでよ。
取れるところからとことん取るのが私のやり方なんだ。因みに今決めた。
その取れるところって言うのが、今のところ華扇しか見当たらないけどね。他の奴等は頭が働きすぎだよ。なんだアレ。
華扇くらいに真面目すぎても駄目だと言うことが良くわかるね。これでもし紫とかが相手だったら、あっさり流されていたんだろうなぁ。
「じゃあ、霊夢たちのところに戻ろっか」
「……ええ」
意気揚々と戻る私と、肩を落として着いてくる華扇。実はこれ、昔っからの図だったりもする。華扇は良いカモだよね。
「あ、戻ってきた」
「一体何を話していたんだ? わざわざ私たちから離れて」
戻ってみれば、当然、二人から疑いの視線を向けられる訳で。
「いや、何でもないのよ? ちょっと約束をしていただけで。ねぇ?」
かなり鋭い視線を向けられる。『余計なこと言ったら殺す』みたいな。
そ、そんなに睨まなくても良いじゃないですか。
「うん、そうそう」
取り敢えず、華扇がホッと一息下ろすのが視界の端で見えた。
ど、どれだけ信用されてないんだ私。
約束くらいしっかり守るし。
「ふぅん?」
「……約束?」
……まだ少し疑いを向けられたままだけど、其処は華扇が強引に話を逸らすことで誤魔化した。
何だってこんなことしてるんだろうね。華扇は。
わざわざ仙人だなんて言ってさ。絶対、何時かはボロが出るものだと思うけれど。
いやでも案外、ホントに仙人だったりしてね。修行中って言ってたし、今度、どんなことをしているのかは聞いてみようか。
「そう言えば、最近新しい団子屋さんが出来たらしいわ。折角だからみんなで行ってみましょうよ!」
「おいおいまた団子かよ? 昨日も聞いた気がするぜ」
「あんた、ホントに甘いもの好きね。絶対太るわよ」
「だ、大丈夫よ。それくらい」
賑やかに話続ける三人。
結構、仲良くやれているものなんだね。
なんて考えていたとき、ふと、何かの気配を感じた。
同時に、鼻をくすぐるのはお酒の香り。
こんな昼間からお酒かい。相変わらずみたいだ。
「――どう? なんか、面白いことしてるでしょ?」
声が聞こえた。
三人は未だにおしゃべりをしているし、聞こえているのは私だけみたい。
声の主は分かるし、多分、薄くなってるんだろうなぁ。便利そうな能力だ。
「急に話しかけないでよ。ビックリした」
「おっと、そいつは悪かったねぇ」
絶対そんなこと思っちゃいない。鬼は嘘が嫌いなんじゃなかったっけ? こいつを見ていると段々心配になってくる。
「いやいや、これは嘘じゃないよ。少なからずは思ってるさ」
あっそ。まあ、良いや。この話は。……嘘の定義って曖昧だよね。
さてさて。そんなことは置いといて。
「華扇、仙人らしいけど、別に君たちとも仲良くしてるんでしょ?」
「まあ……そう、かなぁ?」
いや、疑問符に疑問符で返さないでよ。
え、もう仲良くしてないの? 喧嘩でもしたのかな。
「私とも会ってはくれるんだけどねぇ。何故か
多分、彼奴等とは今、華扇と話している人間たちのことを言うんだろう。嫌そうな顔をするのは、こいつが余計なことを言わないか心配してるんだろうなぁ。
「私たちって、信用されてないね」
「ホントにねぇ」
ケラケラと、笑いながらこいつは言う。
もしかしたら、日頃の行いの悪さとかかな。確かにこいつは悪いだろうけど、私はそんなに悪いことしてないし、違うか。違うな。
「もしかしたら頭の出来が原因かもしれないよ。ああでも、馬鹿なのはあんただけだしなぁ」
「ハッ倒すぞ」
誰が馬鹿だ。誰が!
言っとくけど、君も私と大差ないと思うぞ。
「まあ、とにかく。邪魔はしないであげなよ。何か悪巧みでもしているのかもしれないしねぇ」
「はいはい」
華扇がそんな姑息な手を使うのかは、疑問が残るところだけど。
「じゃあ、私は
「ん、じゃあね。今度はそのお酒呑ませてよ」
――随分と前に、これ呑んでぶっ倒れたでしょ。
そんな言葉を残しながら、萃香の気配は消えていった。
結局、何しに来たんだろうね。
「おい。これから人里に行くんだけど、お前も一緒に来るか? 団子を食べに行くぜ」
「華仙が奢ってくれるらしいわよ」
「……今日だけですよ」
私が萃香と話しているうちにそんなことになっていたらしい。
むっ、華扇の奢り。となれば、
「もちろん行くよ」
当然だよね。
――――――
「あ、貴方達! 幾らなんでもこれは食べ過ぎでしょう!」
「ふぅ、食べた食べた」
「いやー、人の奢りで食うもんは美味いぜ」
「ごちになりまーす」
お団子、美味しかったです。
本当に中身がないし、千九咲がゲスかったお話ですが、華扇ちゃんを書きたかっただけだからね。仕方がないね。