この世すべてに愛を   作:紫藤 霞

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「あ~驚いた。まさかゼクラス砂漠でベヒーモス級とやりあう事になろうとは」

「ルッソとか言ったな。本当に1人で大丈夫なのだろうか?」

「ドーターまでくれば後は如何にでもなるって言ってたし大丈夫じゃないか?」

 

 ルッソ。

 モブハンターという特殊なジョブに就いていた人物である。

 最初こそラムザたちと一緒に旅をすることにしていたのだがなんとドーターの酒場で仲間の情報を得るや否やパーティーを抜けると言い出したのだ。

 無論、其の事に異を唱える事などないラムザ。

 とは言えだ、折角ドーターに来たのだからと裏路地の看板をくぐる

 

「親父ぃ、いるかい?」

「あいよ、どうかしたかね?」

 

 いかにも厳つい、かたぎの人間ではないような店長が現れる。

 彼は此処ドーターに拠点を置く毛皮骨肉店の店主である

 

「なんか良いの入った?」

「今お前さん達の持っているの以上によいのなんざそうそうねぇな。そうだな、これなんかどうだ?」

 

 ひょいっと此方に投げられたのはリボン。

 女性用装備である

 

「何故にリボン?」

「そいつは素材が特殊でな、大概の状態異常から身を守ってくれるんだぞ?3万な」

「うぉ、たっけぇ。エバンズ?」

 

 口を閉じていたエバンズ。

 彼がラムザ部隊の財務係でありラムザより武具購入は彼が一手に担っている

 

「親父さん、1個4万Gでも良いから5つ揃えられない?」

「値段については3万Gのままで構わんよ、が、数が足りんな。3つまでなら今すぐ出せる」

「買う。9万だな」

 

 即金で購入を決定したエバンズ。

 それに驚いたのはシーラだった

 何時ものエバンズならそんな高価なものを買うなんてことは滅多にないからである。

 

「良いのか?ラムザに相談しなくても」

「知らんのか?リボンという装備は本当に貴重な品だ。あるときに買っておくに限る。女性専用なのがちと勿体無いがな」

 

 そういって銭の枚数を数え終えた店主が問題ない、といい交渉が成立した。

 これで帰ろう、と思ったところで待ったを掛けられる

 

「お前さん、盾を装備するか?」

「ん、まぁ一応戦士だしな」

「こいつはどうだ?掘り出しもんだぞ」

 

 ひょいっと投げられた盾

 レバリーシールド。

 これの何処掘り出し物なのか良く分らないエバンズ

 シーラのほうを向いても首を振る

 

「親父さん、こいつ何?盾なのはわかんだけど」

「レバリーシールドッつってなその辺の盾以上に軽くて丈夫な盾だ。持って見ても分るだろう?」

「確かに。ダイヤシールドよりもずっと軽いし不思議な魔力を帯びてるな」

「伝説の最強盾、エスカッションには及ばないもののそいつは全属性魔法攻撃半減ってのが付いてるんだよ」

 

 もう一度レバリーシールドを見る。

 これがそんなに凄いのか?

 基本的に物理系攻撃系の知識しかないシーラとエバンズにはそれが本当かどうか眉唾物であった。

 

「ちなみにそいつも3万Gな。一品物だから今逃すと買えないぞ?」

「んじゃ、一応買う。後で売りに来るかもしれないけど」

「まいど。後は何かあるかね?」

「あ~それじゃぁ」

 

 後はいくつかの消耗品を購入して置く。

 此処は自分達で密漁しないと手に入らないアイテムを購入する事が出来るお店なのである。

 他にもいくつか店内を見て回ると

 

「?!ちょ、おやっさんこれ売り物!?」

「ぁ?あぁ、売り物っちゃ売り物だな。さっき要らんといって売ってきた奴がいた。そんなに珍しい品か?」

「すっごく!買ういくら?!」

「5G」

「買った!」

 

 シーラの手にしているのはデュランダル。

 騎士剣の一つで戦闘時永久プロテス・シェルが掛かるものなのであった

 ホクホク笑顔で買い物を済ませラムザたちに合流

 

「へぇ、珍しいものを買ってきたんだね」

「まぁな。リボンが全員分無いからラムザの判断に委ねる。で、問題はこれなんだが」

 

 レバリーシールドを見せるエバンズ

 これは?とラムザも首をかしげる

 実はな、と先程の話をしてからラムザに手渡す

 

「うん、盾としては問題無い所かかなり良い感じだね。ただ属性防御のほうはちょっと分らないな。シンシアさん?」

 

 魔法についての知識ならシンシア、クラウディアに勝るものはこの場に居ない

 と言う訳で盾を渡して調べてもらう事に

 其の間にラムザはリボンをアグリアス、シンシアの二人に手渡す

 そしてアリスに手渡そうとしたところで待ったが掛かった

 

「なぁ、ラムザや」

「? どうしたの、シーラさん」

「これ、お前さんがつければ良いのでは?」

 

 ふと、何気なくそんな一言を漏らす。

 ぴたり、と動きを止めるラムザ。

 ぎぎぎ、とさび付いた機械人形のようにシーラのほうを向いて

 

「僕は其の、男性、だよ?」

「だが、似合わない事はない」

「で、でもほらアリスさんにも着けてもらわないといけないし」

「指揮官が状態異常になる方がよっぽど問題だと思うんだが」

 

 でもね、だからな?

 とラムザとシーラの攻防が続く。

 其の間にアグリアスとシンシアは素直にリボンを装着。

 兜や帽子を装備していた事もあり多少の違和感もあるがこれで状態異常になら無いなら問題は無いだろう

 ラムザに綺麗だといって欲しいな、と思っている二人はラムザのほうを見れば

 

「ど、如何したラムザ?!」

「ラムザ君、大丈夫?」

 

 四つん這いになり、リボンを綺麗に髪につけられているラムザが其処にいた。

 口での争いにラムザがシーラに敵う筈もなかった

 

「はい、大丈夫です」

 

 少々目が虚ろなラムザだが頭を振って思考切り返す。

 改めてアグリアスとシンシアを見て

 

「やっぱり、お2人には良く似合いますね」

「そう、か?こういう物は着けたことが無いのでな」

「そう言って貰えると嬉しいですラムザさん。ほら、アグリアスさんも」

「う、む。ラムザ、有難う」

 

 顔を赤くしてお礼を言うアグリアスとニコニコと笑みを浮かべるシンシア

 2人の視線はそのままラムザの頭に向かい

 

「ん、ラムザもリボンをつけるのか」

「可愛いですね」

「お願いだから見ないで、シンシアさんも其の感想は」

 

 涙目になって二人の言葉を遮る様に言うラムザ

 実際ラムザにリボンは似合っていた。

 これほどに会う男性も少ないだろうってくらい似合っていた。

 うむうむと頷くシーラに対してエバンズはため息を一つ零してから

 

「それじゃぁ出発するとしようか。ラムザ目的地は変わらずリオファネス城で良いんだな?」

「うん、グローグの丘、城塞都市ヤードー、ユーグォの森を抜けた先にあるんだ」

「結構な距離だな。なぁラムザ、地図見るとこれってフォボム平原からもいけるんじゃないか?」

 

 地図を見ながらラムザに質問するシーラ。

 アリス、クラウディア、シンシアも地図を見て確かにいけそうな雰囲気はすると思う

 だがそれをラムザは今は無理だと返答する

 

「僕達は異端者で、北天騎士団にも追われてるからね。ガリランドを経由して行くのはかなり危険を伴う事になると思うんだ」

「だから王都ルザリアからなのか。敵に見つからないと良いのだが」

「そうだね、無事にリオファネス城に辿り着けると良いんだけどね」

 

 この時ラムザは、そうそう邯鄲には辿り着けないかもしれない、という不安があった。

 あの時、ゲルモニーク辞典とアルマを引き換えに交換だといってきた青年。

 彼とも戦う事になるのではないかと思っていたからだ。

 出来る事なら、戦いたくは無いのだが

 

 

「まさか、脱走兵と戦う事になるとわ思いもよらなかったな」

 

 南天騎士団

 ラムザの兄たちの所属している北天騎士団と戦争をしている者達。

 そのものたちはラムザが第一級の異端者であると言うことを知り襲い掛かってきたのであった。

 もっとも、脱走兵と言う事もあり雑兵にラムザたち少数精鋭部隊が負けるはずも無かった。

 だが、ラムザにとって見ればそれは戦わなくても良かった戦い。

 其の心情は、如何程の物だったのか

 

「っと、あれは……オーラン?」

「あいつ南天騎士団だったのか」

 

 戦う意思を見せずただ1人でラムザの前に進んできたオーラン。

 彼らの話を聞いて此方からも手を出さない事にした

 細かい話の内容は此処からでは聞こえない。

 それでもオーランは最後にラムザに放った言葉だけは聞こえた

 

「ラムザ、君は独りじゃない!

君には仲間が居る!命を賭して戦ってくれる仲間がいる!

僕もその仲間の一人だっ!」

 

 其の言葉を聴いて一瞬呆けてしまう。

 だが、其の言葉を聴いて笑みをうかべ笑ってしまう

 

「あのオーランという男、中々見所があるじゃないか」

「あぁ、私は改めて、ラムザの事を信じる事にしようじゃないか」

 

 シーラとアグリアスが

 

「そうね、ラムザだから此処まで来たものね」

「短い時間だけど本当に信用できる人だもの」

 

 シンシアとクラウディアが

 

「この命に代えても」

「それはラムザ悲しむぞ」

「え、え?で、でもでも」

 

 エバンズとアリスが心を新たにするのであった。


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