iron whale   作:セメント工房

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8話 新たな乗組員

ー午後 医務室ー

こうきはベレッタと話をしていた。

「・・・なんかごめんね。嫌なこと聞いちゃって・・・」

「別に良いよ。別に気にしてないよ」

「ならいいんだけど」

こうきは、ベレッタからこの世界の情報を集めていた。

彼女の出身国、この世界の言語について少量ではあったが、彼らにとっては一歩前進である。

 

 

 

~~以下こうきのメモ~~

彼女の出身国はビロテノス王国、デアルビーノ、サベルタという地域らしい。

ビロテノス王国は建国18年という発展途上国である。デアビールはいわば県名のようなもので、その地方のサベルタという地域出身らしい。その土地は貧しく、とても治安が悪いらしい。

言語はデレツリアート語と言う言語で、言葉自体は日本語と同じだけど、文字は違うらしい。

彼女は、生まれてすぐ両親に捨てられ、おじいさんに育てられた。しかし、一か月前に生活が苦しくなり、ベレッタを奴隷市場に売った。

そもそも生活が厳しかったのもあり、読み書きができない。

~~~

 

 

 

 

 

「と言う訳」

所変わって作戦会議室。

こうきは、さっきベレッタから聞いた内容を説明した。

「・・・情報は集まったし目的地はきまったけど・・・」

「う~む、彼女を国に帰らせてあげた所で身内なしか」

「そうなっちゃうね・・・」

すると春樹は立ち上がり、

「あんな可愛い子を野放しにして置いたら悪い男に何されるかわからん!いっその事私のそばにおいtry「どーせ変なことでも考えてるんだろうな!この変態科学者め!」ゴハ!何をする!私はまだ最後まで言っていないではないか!」

何かを言おうとした春樹に卓也が腹に拳を叩きこんだ。

「しかし、春樹の言ったみたいに僕たちで保護するのはいい考えだと思うよ」

「確かにそう言うことだったらいいけど・・・」

そう言いながら卓也は春樹を睨んだ。

「不安はあるね・・・」

「まあベレッタ次第だな」

「それに彼女の担当はどうするの?操艦は卓也担当だし、武器関係も僕がいるし・・・」

「なら航海士としてならどうじゃ?」

「それいいな」

「でも海図読めるのかな?」

「なあに問題ないだろう。文字が読めなくて現在地さえわかれば大丈夫だろう」

「取り敢えず仲間として迎えるかどうかだな。早速聞いてきてくれ」

卓也はそういいながらこうきに指示を出した。

「僕は彼女との連絡係かなんかなのかい?」

こうきはため息をついた。

「懐かれてるからちょうどいいじゃん」

「全くこうきは羨ましいッ!」

卓也はニヒヒと笑い、春樹は目から涙を流しながら悔しそうに言った。

「はあ、まあ聞いてくるよ」

こうきは溜息をつきながらも作戦会議室を出た。

「さて、操縦室に戻るか」

「そうじゃな」

そう言って二人は作戦会議室を出て行った。

 

 

 

 

一方こうきは狭い通路を歩き、自室前の医務室の前に立っていた。

服装を整えて、ノックをした。

因みに、彼らの服装は白のカッターシャツに黒のズボンでブーツを履いている。

「こうきです。はいるよ」

そう言ってドアを開けた。

 

 

 

 

中に入るとベットが並んでいて、一番手前のベットの上に少女は上半身を起こした状態でいた。

「度々おしかけてごめんね。体調はどう?」

「大丈夫だよ。それより今度はどうしたの?」

「あの、変なことを聞いていい?」

「え?うん」

するとこうきは一回咳ばらいをして言った。

「単刀直入に聞くけど、僕たちと旅をしないかい?」

「え?」

ベレッタは、驚いた表情でこうきをみつめた。

「いや、別に変な意味はないけど、僕たちはベレッタちゃんを元居た国へ帰すつもりだったんだけど、ベレッタちゃんの話をきいて帰っても身内がいない事を知っちゃったから。それにベレッタちゃんはまだ幼い。だったら僕たちが保護してあげようってことになったんだ。どうかな?」

ベレッタはしばらく考え

「・・・私、仲間になったらここにいていいの?」

「もちろん!」

「見捨てたりしない?」

「当たり前だよ」

すると、ベレッタは目に涙を浮かべ、こうきに抱き着いた。

「私、仲間になる!」

こうきは一瞬戸惑ったが、優しく彼女を抱きしめ、頭を撫でた。

「分かった。今日から君はここの乗組員だよ」

 

 

 

 

 

こうきは、操縦室に向かった。

操縦室の入り口は、厚い水密扉になっており、横に指紋認証装置と3桁の暗証番号のダイヤルがついている。上には赤いランプが光っていた。

こうきは、指紋認証装置に触れた。

すると、ピッと音がして赤いランプが青に変わり、扉のロックが解除された。

中に入ると、真正面の壁の真ん中の上の方に大型のスクリーンがあり、その真下にモニターに囲まれた席があり、卓也がいた。その席の後らへんにも席があり、タブレットが二つ配置されていて、春樹が座っている。

そして卓也の隣の席、モニターが二つあり、キーボードがある席、こうきの席だ。

すると、春樹がこうきが入ってきたことに気づき

「どうだった?」

と聞いてきた。

「仲間入りだよ」

と笑顔で答えた。

「そうか!でかしたぞこうき!」

そう言いながらこうきに近づき、背中をバシバシたたいた。

その一連の流れをヘッドセットマイク越しに聞いていた卓也はモニターを見ながら答えた。

「そうか。でもそれどころじゃないぞ。前から何隻か船が来てるぞ。距離100kmきってるぞ」

「大丈夫だろ。潜ってるから見つかりはしないじゃろ」

すると卓也は少し不安そうに答えた。

「どうだか。相手は蒸気で動く戦艦だぞ?」

「戦艦?」

こうきも少し不安そうに聞き返した。

「ああ、スクリーンにだすぞ」

すると、スクリーンに前方のものと思わしき映像が映し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、戦艦というよりかは駆逐艦ではあるが、甲板には二つの砲身が見える。

そして、後ろから石炭を燃やした時の独特の黒煙が上がっていた。

それも4隻、陣形を組んでいる。

前と後ろで2隻、間に挟まれ右と左で2隻だ。

こうきは、急いで自分の席に座った。

「あれは規模からして戦艦じゃないね。駆逐艦かな?で脅威には間違いないね」

「そうじゃな。総員戦闘配置。こうき、一応各種兵装に諸元入力しておいてくれ。あとデコイと」

「了解!」

「卓也は敵の動きを警戒しておいてくれ」

「了解」

操縦室の空気に緊張感が高まった。

照明は落とされ、ただモニターの明かりだけがついている。

「ソナー、相手のスクリュー音聴知。探針音なし」

「どうやら潜水艦を探す能力はなさそうだが・・・。二人とも、気を抜くでないぞ」

「「了解」」

「卓也、深度60mに下げてくれ」

「了解」

全員が手に汗を握ってただモニターに目をこらした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、何もなかった。

艦隊はゆっくりと潜水艦の上を通過していった。

どうやら対潜水艦能力はなかったようだ。

「よかった~。音も記録できたし」

こうきは、船のスクリュー音を記録していた。

「そんなの、何に使うんだ?」

「これでどこのどんな船か分かるんだよ。スクリュー音は船一つひとつ違うからね」

「そうだったのか・・・。にしても心臓に悪いな・・・」

「まあ何はともあれ、仲間が増えたことを祝おうじゃないか。こうき、連れてきてあげてくれ」

「了解」

こうきは、操縦室から出て行った。

 

 

暫くして、ガチャンと音がしてこうきが入ってきて、その後ろに隠れるように少女が入ってきた。

服装は奴隷の服とは違い、自分たちと同じ、黒いズボン、白いカッターシャツ、黒のブーツだった。

ベレッタは、こうきに促されて、こうきの前に立ち、敬礼した。

「ほ、本日付けでは、配属になりました。べ、ベレッタで、です!」

すると春樹がおお~といった。

「やらせたかったのか・・・。まあ改めて、これから宜しく。操艦担当の卓也だ」

卓也は少し呆れつつ、挨拶をした。

「私はこの艦の艦長の春樹だ」

「そして僕がこの艦の武器担当のこうきだよ」

そう言うと全員が敬礼した。

そして

「ようこそ。伊404へ」

春樹が少女に右手を差し出した。

ベレッタも慌てて左手を差し出し、握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、新たに仲間が加わった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回もまたしても平和(なはず)な回でした・・・
次回、いよいよ地に足をつけるはずです

意見・感想があればどしどし書いてください!

では!

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