静かな午前の艦内の一室。
その部屋の出入り口の上には医務室と書かれている。
この部屋の中には二人の人間が眠っている。
一人は奴隷として売られるはずだった赤髪の少女。
もう一人はその少女を助けた少年だ。
そして、その二人が寝てからかれこれ3日たった。
(だんだん深い眠りから覚めてきた気がする。
僕が助けた少女はどうなっただろうか・・・
体が重い。
僕死んじゃったのかな?
あ、だんだん視界が明るくなってきたな・・・)
目を開けるとそこには蛍光灯と点滴のパックが見える。
そして一定のリズムでパックから滴り落ちる液体、それがチューブを伝ってこうきの体の中に入っていく。
(さすがにちょっと疲れたぐらいでは死にはしないか・・・)
そんなことを考えつつ、ふとそんなに離れていない隣のベットを見てみた。
そこには彼と似たような状態の少女が眠っていた。
こうきはベットから起き上がりそっとその少女の手首辺りの脈を触ってみた。
うん、ちゃんと生きてる。
僕は少女の寝ているベットとは逆側の真横にある小さめの棚の一番上に置いてある自分用のタブレットを手に取り、起動した。
そして、艦のネットワークとリンクさせ、日付を確認してびっくりした。
「み、三日も寝てたのか・・・どうりで頭がすっとする訳だ・・・」
そんな事を思いつつ、その三日分の艦の記録を確認していた。
すると医務室のドアが開いて卓也と春樹が入ってきた。
「おお、ようやく目覚めたかわが助手よ!」
「よかった、お前三日間も寝てたんだぞ。このまま目が覚めないんじゃないかと心配したんだよ」
春樹は相変わらず訳の分からないことを言っているが、卓也は安心している表情をしている。
「そっか、なんかごめんね。心配かけたみたいだね」
「こうきが無事ならいいさ。それよりこうきが助けた少女、まだ目覚めないんだね」
そう言いながら卓也は心配そうに少女の寝ているベットを見つめた。
「まあ目を覚ましたらびっくりするじゃろうな。なんせ見たこともない艦の中じゃからなあ」
そう言いながら春樹ははっはっはと笑った。
「所でこうきは復帰可能かね?」
「うん、三日も寝てたからね。お陰でちょっと腰が痛いかな?」
「何だよそれ・・・まあでも大丈夫そうで何よりだ」
するとこうきはえへへと笑った。
そのままこうきは点滴を外し、針の刺さっていた所に絆創膏をはり、自分の持ち場に戻った。
操縦室に入り、自分の担当のパソコンのモニターが三台とジョイスティックがある席に座り、モニターを起動した。
『お疲れ様ですこうきさん!体調の方は大丈夫ですか?』
モニターを起動するなりセレナが話しかけてきた。
「ああ、大丈夫だ。見ての通り心も体も元気さ」
『そうですか!所で、こうきさんが助けた女の子の方はどうなりましたか?』
「その子なんだが、まだ寝たままで・・・」
『そうですか・・・』
「そこでなんだがセレナ、その子が目覚めたら教えてくれないか?」
『もちろんです~!』
「ありがとう」
「さてわが助手たちよ。こうきも復帰したことだし、卓也が回収した海図についてミーティングしようじゃないか」
こうきとセレナが会話していると春樹がそう言い出した。
「あと助けた少女をどうするかについてもだな」
横の大量のモニターが付いた操縦席に座っていた卓也が付け加えた。
「そうじゃな。よし総員作戦会議室に集合」
その掛け声で全員が動き出した。
作戦会議室には、ど真ん中に横長のテーブルが置いてあり、入り口から見て右側の壁にスクリーンがあり、そこに卓也が持ち帰った海図が映し出されていた。
その海図にはある国からある国までの間に航路と思われる赤い線が引いてあった。
その国と国の間は太平洋以上に広かった。
「さて、この海図を発見した時の状況を教えてくれないかね?」
「ああ、まずあの木造船の一室に入ったときに、この海図が机一面に広げられていたんだ。そして赤い線のちょうどど真ん中辺りに船の模型が置かれていたんだ」
「なるほど。それ以外には?」
「とくにはなかったな」
「なるほど・・・」
春樹がその状況から何かを推測しようとしていた時だった。
『女の子が目を覚ましました!』
突然スクリーンの端にセレナが現れた。
「そうか!よし、医務室にいくぞ!」
「おう!」
「了解」
三人は医務室に向かった。
医務室に入り、ベットの方を見ると、少女はベットから上半身を起こし、辺りをキョロキョロと見渡していた。
「こんにちは。気分はどう?」
まず、こうきが話しかけた。
「・・・あ、あの、ここは?あなたたちは?」
「ここは僕たちの船の中だよ。僕の名前は下川こうき。そしてこっちが・・・」
「私はこの艦の艦長、辻春樹」
「宮井卓也だ」
春樹は堂々と自己紹介し、卓也は少し面倒くさそうに壁にもたれながらじこしょうかいした。
「しもかわ、こうき?あなたが私を助けてくれたの?」
「こうきでいいよ。そうだよ」
「そう、ありがとう。ところでこの船はどこへ向かっているの?」
すると優しく接していたこうきを押しのけ春樹は少女にぐいぐいと押しよった。
「そうだ。君には聞きたいことが山ほどあるんだ!少し私たちにつきあってくry「グイグイ近寄りすぎだ気持ち悪い!怖がってんだろうが!」」
見ると少女は怯えていた。
「ごめんね。こんな感じだけどこの人は悪い人じゃないからね」
こうきは卓也に締め上げられている春樹をジト目で見ながら少女に声をかけた。
「今は色々混乱しているかもしれないけど大丈夫だからね。ちゃんと君のお父さんやお母さんのもとに返してあげるからね」
こうきは少女にやさしく接した。
「最後に、君の名前は?」
「ベレッタ・・・」
少女は少し寂しそうに答えた。
「ベレッタちゃんだね。とりあえず今はゆっくりとしていてね。何かあったらこれで僕たちを呼んでね」
そう言ってタブレットの使い方を教えてベレッタに渡した。
ベレッタはどうしていいか分からず戸惑っていた。
そんな事とはいざ知らず、こうき達三人は医務室を出て行った。
のんびりとした午前中は過ぎて行った・・・
今回は短めで書くつもりだったんですが・・・
結局ダラダラと長くなってしまいました・・・
また近いうちに更新します
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