格納庫内からホースを引っ張ってきて、それをポンプに繋ぎ、卓也とこうきは消火活動を開始した。
ホースからは高水圧の水が勢いよく吹き出し、二人は足を踏ん張りつつ、正確に燃えている隣の巨大木造船に向けて水をかけた。
10分後、無事鎮火したがかなり長い時間燃えていたようで船体は殆ど黒く焦げ、ただ水面に浮かぶ巨大な炭と化していた・・・
「これ生きている人いるのかな?」
ふいにこうきがぼやいた。
「さあ、取り敢えず乗ってみないと分からないな」
こうきの問いに卓也はそう答えた。
「まあこうしてても仕方がない、乗り込むか」
「そうだね」
卓也とこうきはホースを格納庫に片付け、代わりにボートを出してきた。
ついでにヘルメットとロープを持ち、その他様々な救出に使えそうな工具をボートに詰め込んだ。
すると、春樹がやってきて二人に腕時計型の端末を渡してきた。
「この端末を持っておいてくれ。この世界では携帯は使えるところが限られているからな。それにこれだとこのこの艦の半径300km以内だったらどこでも繋がるし、この艦ともやり取りできるぞ」
「そいつは助かるよ、ありがとな」
「いやあ、私が艦の見張りだけしているのも気が引けるものでな。そいつにはいろんな機能をつけておいたぞ。十分に使い込んでくれ」
そう言うと春樹は二人に敬礼した。
二人も春樹に敬礼した。
そしてカタパルトの横にある折り畳み式のクレーンでボートを水面に下した。
そこに二人は乗り込み、隣の船に渡った。
隣の巨大木造船の船尾の方には、乗組員が逃げるのに使ったのであろう縄梯子がぶら下がっていた。
二人はこれを使い、船内に乗り込んだ。
甲板に昇るとそこにある光景に唖然とした・・・
下からは見えなかったが、中央付近のえぐられた所から真下の船内状況が伺えるが、そこには牢獄のように鉄格子のついた部屋がいくつもあり、そこには手錠を掛けられ、ボロ雑巾のような薄いボロボロの服を着せられた人達がこれでもかと言わんばかりに押し込められていた。
しかしその中には生きているものはおろか、全員蒸し焼き状態にされ、炭と化していた。
「ねえ、この船ってもしかして・・・」
「ああ、俺も実物を見るのは初めてだけどさ・・・」
「奴隷船・・・」
そう、この船はどこかに奴隷を売るために航行していた、奴隷輸送船だった。
「恐らく、見張り人は奴隷を放って逃げただろうな・・・」
「やっぱりいつの時代、どんな次元であっても身分の格差ってのはつけられるんだね・・・」
「まったく、ひどい話だ・・・。取り敢えず生きている人を探して助けよう。まあ絶望的ではあるが・・・」
「それでも助けてあげられるだけ助けたいよ!」
「そうだな!よし、二手に分かれよう!俺は船首方向を探す、こうきはこのまま船尾方向を探してくれ!」
「了解!」
二人は別れてこうきは船尾、卓也は船首を探しに行った。
こうきは一番上のフロアから順に調べ始めた。
船内は暗く、端末についているライトを頼りに捜索していく。
上の方のフロアの人は、真ん中寄りの人は炭状になっていたが、後ろのほうに行くと蒸し焼き状になっているだけで黒くはなっていなかった。
因みにこの巨大木造船の構造は甲板に三本のマストと船首の方に操舵ハンドルとそこに通じる階段とその横に船内に繋がる扉がついているだけで他には何もなかった。
船内は真ん中に大きな通路があり、左右に似たような間取りの部屋が続いていて船首と船尾に各フロアを行き来するための梯子が設けられている。
一階フロアは奴隷監視用の乗組員の居住区で、部屋がそんなに無い感じからして監視員は少人数しか乗っていなかったと思われる。
2階からは下はすべて牢獄で、真ん中に通路があるのは同じだが、左右には牢屋がずらりと並んでいる。
残りの下のフロアはほぼ全てにたような構造をしていて全部で20階建てになっていた。
「こちらこうき。二階フロアまで確認完了。生存者なし」
こうきは腕時計型端末で艦にいる春樹と卓也に報告した。
『こちら卓也。同じく二階フロア捜索完了。生存者なし。あと一階フロアの一室にてこの世界の地図を確認。スキャンして春樹に送る』
『こちら春樹。了解した。引き続き捜索をしてくれ』
「『了解』」
「そんな機能があったのか・・・」
二人はそのまま捜索をしては報告を繰り返し、焼け焦げた死体を見てもあまり何も思わなくなってきた。それと同時にあまり体が強くないこうきは疲れが襲ってきた。
そしてようやく19階のフロアまでやってきたとき、ライトである檻の中を照らした。
「焼け焦げた死体の山か・・・」
そこには無造作に積まれた焼け焦げた死体の山があった。
「わざわざこんなとこまで来て積み上げたのか?・・・あれ?」
一人でぶつぶつ言っていたこうきだがふと不思議に思った。
「奴隷を売るようなひどい人達がわざわざ死体をまとめたりするかな?」
こうきは不思議に思い、死体の山を掘ってみた。すると、
「!!」
なんとそこには赤髪の少女が身をうずくめて埋まっていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
少女はゆっくりとこうきの方を見た。
整った顔立ち、赤い髪により引き立たされるような白い肌。
大きな赤い瞳に少々吊り上がった目つき。
とても奴隷とは思えないような美人だった。
「・・・あなたは?」
弱弱しくその少女は聞いてきた。
(日本語が通じた!)
「僕たちは君たちを助けに来たんだ!良かった~生きてる人がいて」
「私・・・助かるの?・・・良かった・・・」
そう言うと少女はそのまま倒れこんでしまった。
「あ!ちょっと!寝ちゃだめ!」
こうきはこのまま少女が死んでしまうのではと恐れ、必死に少女を起こそうとした。
『こちら卓也。現在19階フロアまで確認。生存者なし』
ふと卓也からの連絡でハッとした。
「こちらこうき!19階フロアにて生存者確認!」
『何!でかしたぞこうき!下の階を確認次第すぐそっちにいく!』
卓也はその無線を聞き、嬉しそうに、しかし慌てたように答えた。
『こちら春樹!良くやったぞこうきよ!その人の状況を報告してくれ!』
「了解!名前は分からない。年齢は何歳くらいだろう?13~16歳位の女の子だよ。今は寝てしまってるけど心臓も動いてるし息はしているけど・・・」
『ああ、取り敢えず一刻も早くそこから出してあげたいな・・・』
『こちら卓也。20階フロア確認。生存者なし。全フロアチェック完了』
『こちら春樹。卓也よ。今すぐこうきのへ行ってやってくれ。』
『了解!』
程なくして、こうきと卓也が合流した。
「こうき!」
「ああ、卓也。一人生きていたよ。でもこのフロアの他の人たちは・・・」
「そうか・・・」
「そういえばまだ下のフロア見てないんだけど・・・」
「そうか。じゃあ俺が見てくるよ」
「ありがとう」
卓也は下のフロアへ向かって走り出した。
『こちら卓也。生存者なし。』
『了解。その子だけだったか。よし、二人とも急いで戻って来てくれ。』
「『了解』」
二人は梯子を昇り、甲板を走り、縄梯子を降りてボートに乗った。
そして艦の甲板に待機してい春樹の手によってボートを回収され、二人は無事救助した少女を艦に連れ帰った。
「二人ともよく頑張ってくれた。・・・ふむ、どうやら安心して寝ているだけのようだが・・・年齢の割には腕や体が細すぎるが・・・」
そう言いながら、ふとある一点をを見つめた。
「・・・まあ胸部装甲hry「この変態科学者が!」」
春樹が何かを言いかけた時、卓也は春樹を殴った。
「何をするんだ!私はまだ何も言っていないでは無いか!」
「うるせえ!どうせ細い割にはどこどこが発達しているなとでもほざくつもりだったんだろう!」
「そんなことは・・・ない」
卓也に言われ春樹は最初こそは声を上げたが最後は静かに言った。
「そのつもりだったんだ・・・」
こうきは少女を背負ったまま春樹をジト目で見た。
「うぐっ・・・まあ取り敢えず担架にのせて医務室に連れて行ってくれ」
『因みに診察及びできる範囲の看病は私がしますので!』
唐突に腕時計型の端末からセレナが出てきた。
「お前できるのか?コンピュータなのに?」
『失礼な!出力装置さえあればできますヨーダ!』
そういうとベーっと言ってきた。
「まあ、セレナがそう言うのだから任せようよ。一応女の子だし」
「そうだな」
「よし、各員配置に戻れ!機関始動、速力20ノット」
「「了解」」
そういって全員が配置につこうとして春樹と卓也で少女の乗った担架を持って艦内に戻ろうとした時だった。
バタッ
後ろから倒れるような音がして二人が振り向くと、
「「こうき!!」」
疲労が蓄積し、ただでさえ残酷なものなどを見ると恐怖で気が動転するような彼があんな衝撃過ぎる所に長時間いたのだ。
彼の体が限界を迎えたのであった・・・
本当だったら前回で終わらすつもりだったんですが・・・。
結局、無理でした!
超グダグダですみません・・・
さて次回、こうきの運命はいかに!そして彼らの行く末は!
感想、意見などがあればどしどし書いてください!