どこまでも青々と広がる空と海。
その広大な海面に、奇妙な小さな物体が二つ突き出ていた。
一つは縦長い小さな箱のようなもの、もう一つは細長い棒のようなもので、くるくる回っていた。
「速力20ノット、深度40m、針路180」
「レーダー、潜望鏡共に探知できる脅威なし」
ヘッドセットマイク越しにそう春樹に報告するのは、宮井卓也、下川こうきである。
「うーむ、やはり陸どころか一隻も船が見当たらないか・・・」
彼らはこの世界に飛んできてから、一隻の船とも遭遇していないのである。
「まさかまだ船自体が開発されていない程文明が発達してないんじゃないか?」
「だったら言語とかも通じないんじゃないかな?」
「だとしたら資料とかもないかもしれんな~」
そんな話をしながら、異世界の午前は過ぎていった・・・
ー午後ー
あれから彼らは船をひたすら南にむけて航行していた。
しかし一向に他の船は見当たらない・・・
そして午後三時を回った辺りのことである。
「レーダーに反応あり!距離700km!」
武器関係担当のこうきが叫んだ
「どうやら、船は存在しているらしいな・・・」
「よかった~・・・」
「しかし、攻撃してくる可能性もあるよな?」
「まあその時はあいつの腹に魚雷を叩き込めばいいよ」
こうきと話が盛り上がっていると春樹がゴホンッと咳ばらいをし、話し出した。
「取り敢えず、その船を目標aとし、いつでも攻撃できるように各種兵装にデータを入力しておいてくれ」
「了解!」
「さて、相手は何者かね?」
「さあ?もしかしたら最新鋭のミサイル駆逐艦とか?」
「だとしたら恐ろしいものじゃな」
春樹と不明船について考えてみた。しかし、その正体に見当もつかず結局、
「取り敢えず針路、深度そのまま、出力を30ノットまであげてくれ」
「了解」
「奴の正体を直接確認しようじゃないか」
結局目視で確認することとなった・・・
ー同日午後5時ごろ
日がだんだん傾いてきて、夕暮れ時となった。
そして二隻の船もお互い目視距離に入った(当然、不明船は目視では潜水艦を捉えられないが・・・)
「両舷停止!潜望鏡カメラあげ!」
「了解」
春樹の指示に従い、潜望鏡カメラを上げる。
「カメラの映像を、スクリーンに出します」
そういうと操縦室の天井のど真ん中に設置されたスクリーンに潜望鏡カメラの映像が映し出された。
その映像を見て、全員は言葉を失った・・・
そこには、牛乳パックを横にしてそこにマストを三本立てたような形をした全長100m、船体の高さ40m弱の巨大なボロボロの帆船が浮かんでいた。
しかし、甲板中央付近はえぐられ、まるで巨大生物がかぶりついたような跡があり、そこからもくもくと黒煙を上げていた。
「なんだこれ・・・」
「まるで竜にでも襲われたみたいな・・・」
こうきと卓也はスクリーンを見て唖然としていた。
すると、後ろでマスターチェアに座ってみていた春樹が
「よし、救助しよう」
と言い出した。
「はあ!?まじで言っているのか!?」
「ここで貸しを作っておけば後々良いことあるかもしれんぞ?」
「まあ、それはそうだが・・・」
「なあに、消火さえすれば後は向こうの船に乗り込んで救助した人は格納庫にでも集めて収容しとけ。勿論重症者は医務室に」
「了解・・・」
「さあて救出作戦と行きますか!メインタンクブロー!急速浮上!」
春樹の掛け声と共に二人も元の配置に戻り、それぞれの行動を取った。