iron whale   作:セメント工房

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何とか書きあげました


32話(裏) 動き出す・・・  

ーー数時間前 伊404 艦内ーーー

数時間前、伊404のクルーたちがそれぞれの任務に向かった直後、艦内にはまだ人気があった。

そう、リゼサルヴァ王女だった。

彼女は艦内に残り、セレナに監視されていたのである。

「ねぇそこのあなた」

『何でしょうか?』

「あなたはその窮屈な額縁の中にいて退屈じゃないの?」

リゼサルヴァはモニターの中にいるセレナに話しかけていた。

彼女がそんな質問をしたのには訳があった。

彼女は、国王の娘としてこの世に生を受けたため、昔から色んな人に大切に育てられてきた。

過剰なまでに。

その為、彼女は周りの環境のせいで中々に窮屈な生活を強いられていたのである。

礼儀、作法、英才教育によって圧迫される毎日・・・。

彼女が城から抜け出すのには十分な材料だった。

そんな彼女は城から抜け出したいと日々願っていた。

その時、彼女の前に彼ら一行が現れた。

彼女はこの機会を逃さなかった。

そして今回、実行に移し見事成功したのである。

そんな彼女から見れば、モニター内にいるセレナは窮屈そのものに見えた。

『そうですねぇ・・・確かにこの中はあなた方からすれば窮屈に見えますねぇ』

「でしょ!あなたは外に出たくないの?」

『う~ん・・・出たい気もしますけど・・・今は問題ないです!』

「どうして?」

リゼサルヴァは驚いたように聞いた。

『だって・・・・いつも繋がっていますから!』

「・・・繋がっている?」

『そうです!いつも心と心がつながっていますから、外の景色やみんながどんな風に過ごしているか・・・見えるんです!』

「見える?」

『そう!だから寂しくないんです!』

「・・・そうなんだ!」

『でも、私は実体が存在しないんで、皆さんと行動するのは無理ですけどね』

「え?じゃぁ・・・」

『でも皆さんがちゃんと帰って来てちゃんと出迎えてあげるのが私の役目です!』

セレナは何かを言おうとしたリゼサルヴァを遮った。

「出迎えて・・・あげる?」

『そうです!だから、寂しくなんてないんですよ!』

その後、暫く二人は会話し続けた。

 

それからしばらくして、リゼサルヴァがふとセレナに聞いた。

「ねぇ、外に出ちゃダメなの?」

『ダメです!王女様一人で外を出歩くのは危険です!』

「でもあなたがいれば・・・いいでしょ?」

『え?』

セレナは少し考える素振りを見せた。

(少しこの王女を自由にさせるのも面白い・・・)

『うぅ・・分かりました!』

「やったぁ!」

『しかし条件があります!』

「条件?」

王女がそう聞くと、操縦室の天井が開き、そこからロボットアームが出てきた。

「うわぁ・・・」

ロボットアームは先端にカチューシャ型の端末を持っており、その端末を王女に持たせた。

『いいですか?この端末は絶対に無くさないし他人に見せないでください!あと何かあればこれで私に連絡をください!』

「うん!」

カチューシャ型の端末は、セレナが密かに作った物であり、端末として機能させるだけで無くこれを付ける事によってセレナは外部の様子を人の視点で見たり聞いたりできる。

勿論、会話も可能である。

『これを頭に付ければ・・・ほら!』

「すっすごい!」

『私の声はあなたの頭蓋骨を伝って鼓膜に響くから良く聞こえる筈です!』

さらにセレナは細かい使い方を教えた。

 

『さて、そろそろ行きましょうか!』

「うん!」

そう言って王女は伊404の狭い艦内から重いハッチを開けて外へ出た。

『さて、何処に行きましょうか?』

「そうねぇ・・・じゃぁあっちに行こうよ!」

『あ!いいですねぇ!』

こうして王女はセレナの監視付きで外に出ることができたのであった。

 

ーー伊404停泊桟橋前ーー

2人が出発して15分後、物資調達を終えた卓也たちが先に戻って来ていた。

卓也とタカは馬車から荷物を降ろし、格納庫に荷物を積んでいった。

タカは荷物を降ろし、卓也はその後ろで荷物の数を数えて紙に記録していた。

「・・・さてと。この荷物で最後だな」

「そうだな!よし!完了だ!」

2人は格納庫を閉め、再び桟橋前に戻った。

「それにしても俺たち方が早かったな」

「だな。しかし、どっかの軍の艦長が居なければもう少し楽だったかもな」

タカは少し捻くった口調で猫と戯れているリカに目をやった。

そして、悪口を言われているとも知らず、睨みつけるタカを不思議そうに猫を抱えながら首をかしげるリカであった。

そしてそんな平和な時間は一瞬にして変わった。

「おい、そこのお前達!」

突然、軍服を着た男たちが迫ってきた。

数10人ほどの集団で、先頭の男は紙を持っていた。

(おい卓也!まさか春樹達・・・)

(あぁ・・・そのまさかかも知れないな・・・)

(どうする?攻撃するか?)

卓也にヒソヒソと聞きながらタカはズボンの後ろのベルトに引っ掛けたハンドガンを掴もうとした。

(いや、下手に刺激するのは賢いやり方じゃない・・・それにそいつもこっちの手札として置いておきたい。抑えてくれ)

(お前がそう言うなら・・・分かった)

卓也とタカは身構えながら相手を睨んでいた。

そしてリカは卓也の腕にしがみ付いていた。

「ユーキール・イート1世の命令により、あなた方を捕虜として拘束する!抵抗したら反逆者として今ここで、首を跳ねる」

そう言ってその兵士は剣を抜いた。

(やはりか)

(危ねぇ・・・)

「怖いよぉ・・・」

こうして卓也たちは大人しく投降した。

「他に仲間はいるか?」

「俺たちとあの駆逐艦一隻にいる人間だけだ」

「そうか・・・確かだな?」

「あぁ・・・」

卓也は軍人にそう言った。

(おい卓也!王女様はどうするんだよ!)

(あの中なら安全だ。艦体はチタン合金でできていて頑丈だし、第一セキュリティーでハッチの解放すらセレナは許さない)

(つよいな・・・)

卓也達は手に縄を掛けられ拘束された。

卓也たちは冷静だった。

大人しく軍に従って、様子を密かに覗っていた。

 

艦2隻の停泊している桟橋に砲が向けられ、反逆の意思があればすぐに攻撃されるようになっていた。

さらに、小隊2つが置かれ警戒されていた。

 

その後、卓也たちは王城に連れていかれ、王城敷地内の独房にて春樹達と再会した。

独房の中は薄暗くジメジメしており、血が混じったようなひどい悪臭が立ち込めていた。

「や、やぁわが助手たちよ・・・」

「一体今回は何したんだ?」

「わ、わしは手紙を見せただけじゃよ」

するとタカがこうきに聞いた。

「本当なのか?」

「うん・・・そしたらこの様さ」

「うぅむ・・・」

すると今度はベレッタが話し出した。

「春樹、これからどうするの?」

「取り敢えず打てる手は取り敢えず打ったぞ。暫く様子見じゃがな・・・」

そう言うと春樹は手をズボンの後ろ辺りにあて、そこからカーターナイフを取り出し、手にかけられた縄を切った。

そして全員分の縄を切っていった。

「全く・・・わしらをこんなもんで拘束しようとは・・・10年早いわい!」

「てかなんでカッター持ってんだよ」

「何となくじゃよ」

「はぁ・・・」

卓也と春樹はいつものように会話を繰り広げていた。

「ところで、一体どんな手を打ったんだ?」

こうきは春樹が打ったという手を聞いた。

「よくぞ聞いてくれたぞ!それはじゃな・・・ECシステムの本領発揮じゃよ!」

するとタカが反応した。

「本領・・・」

それに続くようにアンジェリカも反応した。

「発揮・・・」

そして卓也とこうきが頭を抱え始めた。

「何か嫌な予感がする・・・」

「僕もだよ・・・」

そしてこうしているうちに事態は進行していくのであった・・・

 

ーーカスタエル王国 港ーーー

伊404から発射された偵察機EER41(リーチェ)はカタパルトから打ち出された直後、有り得ない機動性をみせ、一気に急上昇を始めた。

その様子を見ていた王国の兵士は騒ぎ始めた。

「おい!なんだあれ!」

「鳥か?」

「絶対違うだろう!?」

「やはり艦内に何人か残っていたのか!」

そう言うと、一人の兵士は伊404に近づこうと桟橋に降り、伊404に飛び乗ろうとした。

しかし、その瞬間をECシステムは一瞬たりとも逃さなかった。

格納庫上部に取り付けられた機銃が即座に動き、カバーが掛かった状態にも関わらず、乗り込もうとした兵士を乗る前に空中で打ち抜いた。

辺りに機銃による発砲音と薬莢が落ちる音が響く。

そして王国兵が桟橋と伊404の間に肉片となって落ちて行った。

「ひ、ひぃぃぃぃ!」

「何だ今のは・・・」

「貫通型の魔術でしょうか・・・」

「いや!あんな詠唱も無しにしかも連続でなんて聞いたこと無いぞ!?」

「取り敢えず上に報告しろ!そしてあの艦に近づくな!」

「「「「はっ!」」」」

兵士たちは伊404に圧倒的な恐怖を感じた。

 

上空にも脅威がいることも知らずに・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃その上空・・・

 

 

 

 

 

 

 

発射された機体EER41リーチェは、春樹が卓也たちがいない間に造った機体の一つである。

見た目は戦闘妖精○○に登場した無人機を小さくしたような姿をしている。

コックピットがあるであろう所には、小さな突起物がついており、その先端には黄色いレンズカバーのようなものがついている。

その中にはカメラが入っており、それが下の様子を鮮明にとらえていた。

さらに機体下部の各センサーも様々な情報を捉える。

『View around(周辺を確認) Running・・・

リーチェは、常に母艦である伊404と繋がっており、偵察情報を母艦に常に送信している。

そしてそれは、伊404のECシステムに集められ、そこから判断された情報が再びリーチェに帰って来る。

そしてそれを元に行動する。

場合によってはリーチェの独自判断で行動することも可能である。

『Check your device‘s response(端末の反応を確認)

 The place is enemy territory(場所 敵領土内)

 ・・・

 』

 

『E.C. Rojer(EC 了解した)

 Escort to code006(コード006を護衛しろ)

 Continue until you have instructions(指示があるまで続けろ)

 ・・・

 』

『Riche Rojers(リーチェ 了解)

 to continue(続行する)

 ・・・

 』

リーチェは機体を右に九十度ひねって旋回し、ある物を追いかけながら偵察活動を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、ある物を追いかけながら・・・

 

 

 

 

 




いやぁ・・・メイヴってカッコいいですよね!
(分かる人にしか分からんだろう!Byタカ)

はい、段々とこの話の尺が伸びて行ってる気がして怖いです・・・

さて次回はどうなるのやら・・・(彼らの未来といつ投稿できるか・・・)


意見感想があればどしどし書いてください!
最後まで読んで頂きありがとうございました!

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