iron whale   作:セメント工房

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むむむ・・・眠い!










それではどうぞ


30話 誇り高き親バカ・・・

ーーー伊404 食堂ーーー

午前1時過ぎ。

とても夜食を食べる時間とも言えず、健康的な人ならこの時間であればベッドで寝ているであろうこの時刻。

食堂には明かりがついており、並べられたテーブルの上にはこれから晩餐でも始まるのかと思いそうな量の料理が並んでいた。

そしてそのテーブルにはビロテノス王国王女、リゼサルヴァが座っていた。

彼女は静かに合掌した。

「いただきます」

そう呟いた直後、リゼサルヴァはその美しい容姿からは想像もつかない食いっぷりを見せながら、目の前の料理を平らげていく。

 

その様子を青ざめながら見ている少年二人がいた。

この艦の操舵手の卓也と、武器担当のこうきだった。

「お、おいこうき・・・」

「な、何?卓也・・・」

「王女様ってあんな食い方するものなのか?」

「わ、分からない・・・何だかすごい光景・・・」

卓也たちはそのまま彼女が食べ終わるのを見守り続けた。

 

 

 

 

ーーー伊404 操縦室ーーー

同時刻、春樹は操縦室におり、無線機を握っていた。

「駆逐艦レントン、こちら伊404、リカ艦長は居りますかね?」

春樹は緊張しながら聞いた。

しかし、無線に応答したのはリカでは無かった。

『伊404、こちら駆逐艦レントン。艦長は仮眠中なので私、アンジェリカが伺います』

「了解じゃ。少々理解しがたい事態が発生しておる」

『一体そちらで何が起きましたか?負傷者はありますか?』

「それは大丈夫じゃ。しかし、わしもまだ理解しきれていない点が多すぎるんじゃが・・・取り敢えず起こった事をありのまま説明させてもらおう・・・」

 

 

春樹は艦内で起こった事をすべて説明した。

 

 

『え!?王女様が箱詰めにされていたってことですか!?』

「そうじゃ・・・わしらも全く気付かなかったんじゃ・・・」

『なぜその様な事に・・・』

「わし等にも分らん・・・取り敢えず彼女の食事が済み次第、事情を聞いてみようと思う」

『了解です』

春樹は無線機の手を緩めた。

「はぁ・・・引き返せとか言われるんじゃろうか・・・」

するとメインモニターにセレナが現れた。

『因みに本国までのバッテリーなら十分にありますよ!何しろ、日中は常に充電満タン状態ですから!太陽光パネルの損傷率0%なので問題ありませんよ!』

「ありがとうセレナよ・・・しかし、潜航した状態でフルスロットルにしなければの話じゃからのぅ・・・」

 

そう、伊404は春樹が伊400型潜水艦をベースに開発した、超オーバーテクノロジーの塊だ。

見た目こそは伊400の形をしているが、甲板は一部を除いて全て太陽光パネルに張り替えられ、船体がチタン合金を大量に使って強化されている。

そして何より、スクリューを廃止して、代わりにウォータージェットを搭載し、主機関をディーゼルから電子式タービンモーター(春樹命名)を搭載している。

これは、電子を利用してタービンを回すという世界の物理法則を無視した上に完成している。

ディーゼルの様に二酸化炭素を出さず、消音性に優れ、かつ高回転高馬力で、それでいて小型であると言う良い事ずくめに見える。

しかし、もちろん欠点も存在する。

問題は高電圧である為、漏電などを起こした時は感電死は免れない。

さらに、通常航行では問題ないが、50ノット以上の航行時、電気の消費量が多いと言う事も分かっている。

 

「何もなければいいんじゃが・・・」

『通常航行であれば問題ないですよ。ただ、昨日や一昨日みたいに潜航状態で50ノットなんか出されたら、バッテリーの減りが洒落にならなくなりますよ』

「あぁ・・・わかっておる・・・所で王女がこんなところにいて、王都は大丈夫なんじゃろうか・・・」

 

 

春樹はそんな心配をしていた頃・・・

 

 

 

ーーー伊404 食堂ーーー

「え?逃げ出して来たのですか?」

「そう」

食堂では卓也とこうきによる事情聴取が行われていた。

そして、何故リゼサルヴァが木箱に閉じこもっていたのかについて聞いていた。

「だって一度でいいからあのお城の壁の外側に、外の世界に出てみたかったから・・・」

リゼサルヴァは顔を赤くしながら、照れたように言った。

「ふぅむ・・・取り敢えずこうき、春樹に報告」

「了解」

卓也はこうきにメモ帳を渡した。

「あ、あの・・・できれば本国には私がここにいる事を内緒にしていただけないでしょうか」

「ふぁ!?」

それを聞いたこうきはメモ帳を落とした。

卓也は咳ばらいをして感情をねじ伏せ、何とか冷静を保った。

「王女様、いくらそれが王女たるあなたからの命令でも、それを受け入れる事はできません。依頼であればまだしも、我々はタダ働きをするつもりはありません」

「では、お金なら後でいくらでも出すから!お願い!今だけはどうか・・・」

リゼサルヴァは、向かい合って座っている卓也に上目遣いで頼んでいた。

しかし、卓也はこの程度では動かなかった。

「そう言われましても、我々は仕事ですから・・・」

卓也も困ってこうきの方をみた。

しかし、こうきは既に行動に出ていた。

「・・・以上が取り調べの内容。あと、王女様は本国には伊404の任務が完了するまで帰る気はない、て言ってたよ」

『了解じゃ。本国にはそう伝えておく』

「なお、任務終了まで、彼女の身柄はしっかりと守ります。任務終了後、王女様は僕と卓也が責任もって無事に送り届けると伝えておいて。以上」

『了解』

「な!?」

卓也は勝手に自分も巻き込まれたことに驚いた。

「グ!」

こうきは卓也に向かって満面の笑みでグーサインを見せた。

卓也は溜息しか出なかったのは言うまでも無かった・・・

 

 

 

ーーー伊404 操縦室ーーー

春樹は食堂にいるこうきからの内線電話を切ると、レントンに報告した。

 

「・・・という訳なんじゃが、本国に大至急報告してくれ」

『了解です。我々も全力で協力させていただきます』

「感謝する、ありがとう」

『なっ!//っそ、そんな、と、当然のことです!』

アンジェリカは戸惑いながら無線を切った。

「あ、切れてしまった・・・まぁ伝える事は伝えられたから良しとするのぅ・・・」

春樹は無線機を元の位置に戻し、椅子に寄りかかり、コーヒーを啜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ビロテノス王国王都の王城では・・・

 

 

ーーー王都 王城(以降カリーヌ城)---

「お嬢ー!お嬢ー!」

「お嬢ー!出てきてくださーい!」

「お嬢ー!」

使用人が城敷地内をくまなく探していた。

その中に一人、涙目になりながら探している使用人がいた。

(言える筈がない!お嬢に頼まれたとは言え、そんなお嬢を箱詰めにして荷物として春樹殿に運ばせたなんて・・・春樹殿・・・どうかお嬢をたのみます!)

使用人は事情を知っていながら、一生懸命探す(探すふり)をしていた。

そしてもう一人、涙目になりながら探している人がいた。

「リゼサルヴァー!出てきてくれー!パパは幾らでも構ってあげるからさー!好きなぬいぐるみでもなんでも買ってあげるからさー!でてきておくれよぉぉぉ!」

カリーヌ城は三日前からこの調子であった。

すると、一人の海軍の伝令係が走ってきた。

「殿下ー!大変です!お嬢はどうやら伊404に乗り込んでいたみたいです!」

「何!?」

「何でも、伊404の任務が終わるまで、絶対に帰らないだそうです!」

そのままテノールは、倒れこんだ。

「あ、あの少年たちに任せても私は構わない・・・構わないのだが!・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「あと5か月は娘に会えないなんて耐えられないぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!このままじゃパパは死んじゃうぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ビロテノス王国国王は、誇り高き親バカであった・・・

 




こうして国王のあだ名は親バカになったんだとか・・・(一部の人間)




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