また・・・夏が・・・く・・・る・・・バタップシュゥ・・・
それでは・・・ど・う・ぞ・・・カクッ
レントンと合流した日の午前0時過ぎ、伊404はオートパイロットモードに入り、洋上を25ノットで航行し、その後ろを駆逐艦レントンが同じ速度で付いて来ていた。
そしてその周辺には何もなく、ただ黒い海が広がっていた。
そんな状況で、伊404で事件は起こった。
『緊急事態発生!格納庫に不法侵入者あり!至急対応されたし!』
艦内に緊急を知らせるブザーと、セレナの艦内放送が流れ、全員が跳ね起きた。
「何事じゃ!?」
春樹は突然の事に驚き、通路に飛び出した。
「格納庫に不法侵入者だってよ!」
卓也はすでに銃を握って通路に飛び出して、春樹に言いながら格納庫の方へと走って行った。
ーーー伊404 操縦室ーーー
春樹は取り敢えず操縦室に急ぎ、格納庫内の状況を監視カメラで確認した。
カメラの映像が液晶ディスプレイに映し出された。
そこには格納庫内のジープ等の艦載機器と国王から預かった荷物が映し出された。
しかし、格納庫扉が破壊されたり開けられた痕跡も無ければ警備システムも正常に作動しており、異常などどこにも無かった。
「一体何処から?・・・ん?」
春樹はどこから侵入したかを考えていると、王様から預かった荷物に目が行った。
荷物は二つあったが、一つの人が一人やっと入れる位の大きさの木箱が開いており、倒れていた。
「な・・・まさか!」
春樹は急いで艦内放送マイクを掴み、マイクのスイッチを入れた。
「不法侵入者はスパイの可能性がある!絶対に艦内に入れるな!なんとしてでも捕り抑えるんじゃ!」
『『『了解!』』』
無線機から卓也とこうきとタカの声が聞こえた。
ーーー伊404 艦内側格納庫入り口ーーー
卓也は格納庫に通じる梯子を昇り、格納庫入り口のハッチの取っ手を掴んでいた。
背中には小銃を背負っており、何時でも撃てるように弾は薬室に装填されていた。
「・・・よし!」
そう言ってハッチの取っ手を回して押し開け、勢いよく格納庫に飛び出し、銃を構えた。
「動くな!」
「ひぃ!」
「へ?」
勢いよく飛び出し、銃口を向けた先には卓也の予想していたような人はおらず、ただ女性特有の高い声が格納庫に響いた。
そして卓也にはその声に聞き覚えがあった。
卓也は格納庫側面に設置された照明のスイッチをいれ、その人物を確認した。
「「え?」」
そこにいた人物を見て卓也は驚いた。
きれいな紫がかったロングの髪に、整った美しい顔たちに、髪の毛と同じ色のドレスを身にまとった少女がいた。
そして卓也には見覚えがあった。
「あ、あなたは・・・確か・・・」
少女は卓也の声に聞き覚えがあり、何処かで会ったか聞こうとした。
「動くな!」
しかしこうきもハッチから飛び出してきて銃を構え、聞くことは出来なかった。
「・・・てあれ?」
こうきもその少女を見て照準器から目を離したが、銃口は少女に向けたままだった。
「待てこうき。銃を降ろせ」
しかしこうきは銃を向けたままだった。
「卓也。それは出来ないよ。木の箱の中に入って侵入するなんて可笑しくないか?」
「しかしだな、彼女はえーっと・・・誰だっけ?」
「え?」
卓也は少女の名前を思い出そうとしたが、人の名前を覚えるのが苦手な卓也は思い出せなかった。
そのため、卓也は彼女を庇うことは出来なかった。
「・・・まぁ取り敢えず取り調べでもしよう。えーっと・・・名前は?」
こうきは銃口を向けたまま少女に聞いた。
「リゼサルヴァ・テザヴェルです・・・」
「ん?」
「あれ?」
卓也とこうきは少女の名前に聞き覚えがあった。
否、正確には卓也はフルネームで聞き覚えがあり、こうきは「テザヴェル」と言う名前に聞き覚えがあった。
「なぁこうき」
「何?卓也?」
流石にこうきは銃を降ろし、卓也とこうきは顔を引きつって見つめあった。
そして卓也は慌てて格納庫内にある内線電話を掴み、操縦室へつないだ。
「侵入者を確保!正体は王女様だ!すぐに部屋を用意しろ!話はそれからだ!」
卓也は早口で話した。
『何じゃと!?了解した!手厚く誘導するんじゃ!』
「了解!」
卓也は電話を切り、こうきとリゼサルヴァに向き直った。
「こうき、手厚く誘導しろだって」
「りょ、了解・・・」
そして卓也とこうきはひそひそと話をした。
(ヤバいよ・・・王女様に銃口向けちゃった・・・)
こうきは真っ青で顔を引きつらせながら言った。
(下手な事したら死刑だぞこれ!)
((やっべぇ・・・))
卓也もこうきも顔を引きつらせて少女を艦内に通じるハッチに誘導した。
テザヴェルは何か良く分からないような表情を浮かべていた。
「お、王女様・・・こちらが、艦内入り口となってお、おりまする・・・」
卓也は緊張しながらハッチをゆっくりと開けた。
「あ、ありがとう・・・」
テザヴェルは二人の様子を見て、緊張しながらハッチの中にある艦内へ降りるための梯子に足を掛けた。
「梯子が急になっておりますのでお気をつけて」
こうきもテザヴェルに声をかけた。
そしてテザヴェルは何事も無く梯子を下った。
卓也とこうきはその後に梯子を素早く下り、テザヴェルを顔を引きつらせながら誘導した。
(やっべぇ・・・)
(下手したら・・・)
((処刑される・・・))
2人は内心びくびく怯えながら、テザヴェルを手厚く部屋へ誘導した。
「こ、こちらのお部屋でございましゅ・・・」
(ぎゃぁぁぁぁ噛んじゃった・・・)
卓也は冷や汗を掻きながら居住スペースで一番広い兵員室のドアを開けて誘導した。
「あ、ありがとう・・・あの・・・」
短時間とは言え、二人の堅苦しくかつ顔色の悪い接客を受けたテザヴェルは2人に声をかけた。
「ど、どうなさいましたか?」
こうきはさっきと変わらず、顔を引きつらせ、かつ顔を真っ青にしながらテザヴェルに応えた。
「お二人とも顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
「「滅相もございませんっ!!」」
「そ、そう?・・・」
テザヴェルの質問に即答し、卓也とこうきはなおも冷や汗と顔を引きつらせていた。
「そ、それではご、ごゆっくり!」
「な、何かあればお声を掛けてください!」
そう言ってドアを震えながらも丁寧に閉めた。
そして溜息をついた後、二人は絶叫した。
「「やっちまったぁぁぁぁぁぁ!!」」
「うるせぇぞお主ら!」
二人は絶叫し、春樹に怒られた・・・
さぁて何故か木の箱の中からあら不思議!
王女様がぁぁぁ!
何故でしょう!
(知るかいな!By卓也)
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