iron whale   作:セメント工房

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27話 まともな出港

夏とは思えない程の涼しい風が吹き、心地よい朝を告げる午前6時。

喫茶ドルフィンの前にはジープが一台止まっていて、整列する5人の少年少女は、マスターのレクとその孫のチルと泊まり込みのコアの3人の前に整列していた。

「この度はお世話になりました」

卓也がレクに深々と頭を下げた。

「いいんじゃ。わしはお主らと過ごして楽しかったわい。何、またいつでも遊びに来てくれ。孫娘たちが喜ぶわい」

そう言ってフォッフォッフォと笑った。

「卓也!今度は私たちがそっちに遊びに行くよ!」

「こうきさん。寂しかったらいつでも電話してください」

コアとチルは元気よく、しかし少し寂しそうに言った。

「あぁ。少し遠いかもだけど待ってるよ」

「うん。分かったよ」

卓也とこうきも二人に答えた。

「さてそれでは我々は行きます。お世話になりました」

卓也は気を入れ替えてシャキッと立ち、レクたちに向けて敬礼した。

それに合わせて4人も敬礼した。

レクはゆっくりと敬礼して応えた。

 

タカとベレッタが車に乗り込み、春樹が乗ろうと乗降用グリップに手を掛けた時、レクに呼び止められた。

レクは紙を春樹に渡した。

「依頼状じゃ。それでは頼んだぞ。必ず戻って来てくれ」

レクはそう言って微笑んだ。

しかし春樹はその時、必ず戻って来てくれの意味が分からなかった。

「大丈夫です。必ず戻ってきますから」

春樹はフフフと笑って言った。

そして車に乗り込み、ドアを閉めた。

 

そして卓也とこうきも車に乗り込むべく、それぞれ運転席側のドアと助手席側のドアを開けた。

しかし二人ともお互い別々の人物に呼び止められるのであった。

「卓也!」

「こうきさん!」

チルとコアであった。

そしてチルはこうきに、コアは卓也に抱き着いた。

 

「「な!?」」

車内で思わず春樹とベレッタは声を上げた。

そしてタカは微笑んでいた。

「青春だね~」

 

チルとコアは抱き着いたまま、胸元に顔を当てながら言った。

「「また、来てね(ください)!待ってます」」

そう言って顔を見せることなく、逃げるように離れていった。

しかし二人の耳は、林檎のように赤かった。

卓也とこうきはその二人をみて微笑み、乗り込んだ。

 

エンジンがかかり、車はゆっくりと走り出した。

5人はレクたちに手を振った。

「なんかコセラーム村を離れる時を思い出すな~」

「そうだな」

卓也とこうきは懐かしそうに言った。

後ろの状況を知らずに・・・

 

 

後部座席ではどす黒いオーラで満たされていた。

「何故だ・・・何故私だけ少女に恵まれないんじゃ・・・」

春樹は頭を抱えてブツブツ同じ言葉を連呼していた。

一方ベレッタは助手席に座るこうきに冷たい視線を送っていた。

どす黒いオーラを発しながら・・・

 

 

しかしその空気はタカの一言で消えた。

「そう言えば春樹。レクさんから何を受け取ったんだ?」

すると春樹はさっきとは一転し、ふっふっふと笑った。

「聞いて驚け助手たちよ!初依頼をもらってきたぞ!」

春樹は嬉しそうに言った。

「「「「お~!」」」」

卓也が聞いた。

「依頼内容は?」

「隣の国・・・とは言ってもわしらのいた地球規模で考えたら軽く地球3周半位離れているらしいんじゃが隣の国のカスタエル王国からコーヒー豆を買ってきて欲しいらしい」

「無駄に遠いな・・・」

「この世界の船で半年はかかると言われたんじゃ。しかし我々にとっては・・・」

そこまで言うと全員がニヤリとした。

「3か月あれば十分往復できる・・・」

卓也がそう答えた。

春樹もニヤリとした。

「・・・その通りだ」

「アジトに着いたら出港準備じゃ!あと食料も積んでおいてくれ!」

「「「「了解!」」」」

ジープは大通りを港に向けて走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アジトに着いた5人は早速中へ入った。

因みにアジトの一階には事務所のようになっていて応接用のソファに机、木製の衝立などが置いてある。

2階は生活できるような設備が整っており、シャワーまでついていた。

「なんかアジトと言うより事務所じゃな・・・」

これを機にここは事務所と呼ばれるようになった。

「それに艦からの距離も近いし良い所じゃな」

「探すのに苦労したぜ」

「嘘つけ・・・」

「う・・・」

卓也は自信満々に言ったが、こうきに言われ表情を曇らせた。

「さて、一階はこのまま事務所として使おうかのぅ・・・」

「だな」

そんな会話をしつつ、出港の為に荷物を纏めていた。

 

 

 

 

そして事は突然に起こった。

「来たぞ!若き旅人たちよ!」

「「「「「え!?」」」」」

突然に王であるテノールが入ってきた。

「君たちに依頼を持ってきてやったぞ!初依頼だ!喜ぶが良い!」

「は、はぁ・・・」

卓也はテノール王から一枚の紙を受け取った。

「今から荷物と手紙を隣の・・・と言っても遠いがカスタエル王国の王、ユーキール・イート1世に届けて欲しい」

「りょ、了解です・・・」

少し戸惑いながら紙を再び見た。

(報酬が500万ピックって高いな・・・それにしても仕組まれてるのか?偶然か?」

「ん?何か言ったか?」

「あ、いえ・・・」

卓也は思っていた言葉が口に出てしまい、聞かれたと思い慌てた。

しかし運良くも聞かれいなかった。

「あ、あと前金としてここに50万ピック置いていく」

「「「「「ご、50万!?」」」」」

5人は驚いた。

「なぁに君たちに託すんだ。この位安い方だと思うが?それでは頼んだぞ!あと荷物は港に置いておいたぞ!」

そう言って立ち去って行った。

「何なんじゃあの人は・・・」

「・・・分からない」

「緊張した・・・」

「心臓止まるかと思った・・・」

「ノックぐらいしてほしいな・・・」

5人はそれぞれ感想を言いつつも、荷物を纏めた。

 

 

午前10:30頃、荷物を纏め終え、車に積み込む。

「・・・と言っても目の前なんだけどね・・・」

こうきは笑いながら溜息をついた。

「まぁ良いではないか!結局車ごと積むんじゃ!一つ一つ運ぶより楽じゃろ!」

そう言って春樹はフフっと笑った。

 

 

卓也はジープに乗り、桟橋に向かった。

桟橋に行くと、伊404がいつものように浮かんでいた。

しかし、その横には大きな木箱が1つ・・・いやもう一つあった。

大きな箱は車一台分の面積に高さはこうきの身長位の物だった。

そして小さい方は人一人入れる位のものだった。

「この小さい方も届けるのか・・・」

卓也は木の箱を睨んだ。

(一体何が入っているんだ?・・・まさか人質!?・・・まぁある訳ないか)

卓也は何も考えないようにして艦に乗り移り、格納庫のロックを解除し開けた。

中には車が2台分余裕で積めそうなスペースと奥の方にビニールシートで覆われた大きな物体が二つ並んでいた。

(何だか一個増えてないか!?)

卓也は気にしないようにした。

そして、次にやって来たタカに積み込み方を教えつつジープをクレーンで吊り上げて積み込み、木箱二つも積んだ。

そしてワイヤーで固定する。

「・・・っとこんなものかな?」

たるんだワイヤーをきつく締め、動かないようにした。

そして格納庫の扉を閉めてロックを掛ける。

「・・・よし!完了!」

「お疲れ~!」

卓也とタカは手をパンパンと叩いて埃を払った。

全ての物を積み終えたのと同時に春樹達3人もやって来た。

「積み込み終わったようじゃな?よし!各員配置に着け!」

「「「「了解!」」」」

春樹の指示により、全員が配置に着いた。

司令塔にはベレッタが立ち、双眼鏡を首からぶら下げていた。

艦内の操縦室には、操縦席に卓也、そしてその隣の武器関係の操作を行う席にはこうきが座った。

そして機関室にはタカがいた。

春樹に説明を受けながら操作していた。

「そしてこのスイッチを押すと、艦のシステムをすべて起動できるんじゃ。早速やってみよう」

「了解」

春樹に指示され、タカは言われた手順通りにスイッチを押した。

すると、機関室にあるタッチパネル式のコントロールパネルのディスプレイに起動したことを知らせる文字とセレナが現れモーターが動くような音がした。

「よし!あとは操縦室にいる卓也たちがやってくれるはずじゃ!」

タカは目を輝かしていた。

「・・・すっげぇ!」

『驚くのはまだ早いですよ新米さん!この艦のシステムこそ最新テクノロジーなんですから!』

「え?」

タカは画面上に浮かぶセレナが話を聞いていて、さらには返答までしてきたことに驚いた。

「は、春樹!画面の向こうの女の子がしゃべったよ!」

『あ、申し遅れました。私はこの艦のシステムと乗組員をサポートしますセレナと言うものです!』

「お、俺はタカ・コレーゼです!」

『ではタカでよろしいですね?では早速ですがこの艦について話しましょう!』

「お、ではあとは任せて大丈夫じゃな?」

春樹はセレナに聞いた。

『任せてください!』

そう言ってタカに説明を始めた。

そして春樹は機関室を出た。

 

 

 

「電圧チェック、発電量チェック、バッテリーチェック、ダメコンチェック異常なし。各種計器異常なし」

操縦室では各種のチェックなどを行っていた。

卓也は機関始動の為に状況を確認していた。

「動力接続なし、モーター接続無し、スターターモーター始動確認、異常なし」

そして手元のスイッチを操作し始めた。

「始動用バッテリー充電完了、動力ニュートラル、各種電源オン、始動準備完了、オールグリーン」

卓也はふぅっと溜息をついた。

そしてその横ではこうきが準備していた。

「レーダーシステム起動、IFF起動、ソナーテスト、異常なし、武器安全装置確認、異常なしオールグリーン」

それぞれ作業していると、操縦室のドアが開いた。

「機関始動!出港用意!」

「了解!機関始動!」

卓也は手元のボタンを押した。

するとけたたましいタービンの音がした。

「スラスター起動!」

「了解!」

船体は桟橋からゆっくりと離れた、そしてある程度距離が開いた。

『離岸確認』

ベレッタの声が艦内放送で響く。

「よし。そのまま180度回頭!」

船体は港の出口を向く。

「出港!」

歯車がかみ合う音がし、卓也はスロットルレバーを前に倒す。

すると、タービンの音が上がった。

 

 

 

 

 

船体は港の外に向けて進みだし、タービンの唸り声をあげながら港を後にした。

 

5人は甲板に出て港の方を向いて、敬礼した。

 

「必ずや戻ってきます」

 

全員が同じ思いをしながら、艦はカスタエル王国に向けて針路をとった

 




あかん・・・文才が・・・

そして筋肉があぁぁぁぁ!

はい、久しぶりの投稿でした!
あとちょっと距離とか適当過ぎたので一部直しております。ご了承ください。


意見感想があればどしどし書いてください!
最後まで読んで頂きありがとうございました!

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