5人は言われるがままに馬車に乗せられ、リカとアンジェリカに連行されていた。
馬車は2台あり、先導する馬車に5人を乗せ、後ろの馬車に軍人2人が乗っている。
こうきとベレッタはお互いの身を寄せ合い怯えていた。
卓也とタカは険しい顔をして警戒していた。
そして問題の春樹は平然と座っていた。
卓也はそんな春樹を見て言った。
「・・・冷静だな春樹」
「ま、まぁな・・・」
しかし冷静そうな見た目とは違い、声は怯えていた。
「・・・実は怖いのか?」
「ギク!!」
タカに尋ねられた春樹は体が縮こまった。
「ま、まさかそ、そんなわけはn「「あるよな」」・・・はい」
2人に言われて春樹は認めた。
「あ、なんか今日一番安心した・・・」
タカは安心したように溜息をついた。
「そうだな」
卓也も胸をなでおろした。
「し、しかし王様の前じゃぞ!?緊張しない方がおかしいではないか!下手な事喋った暁には首切りじゃぞ!?」
「それは・・・そうだな」
「なら下手な事喋らなきゃいいじゃん!」
「「タカ(お主)は単純で良いな!」」
タカの言ったことに春樹と卓也は突っ込んだ。
程なくして馬車は王城の門をくぐり、敷地に入った。
「あ、あぁ・・・とうとうこんな所まで来てしまったぞ・・・」
春樹は頭を抱えて唸り始めた。
「安心しろ!俺たちがいるじゃねぇか!」
卓也は春樹を励ました。
「そうだよ!なんかあったら俺たちがフォローするからさ!」
タカも励まそうとする。
「あぁ・・・わが優秀な助手たちよ・・・」
春樹は震える手で二人を抱きしめた。
敷地に入ってから約十分、馬車は王城の前に停まった。
「着きました。私たちについて来てください」
リカとアンジェリカに案内され、王城の中へと入った。
「この部屋に、陛下がおられます。それでは中へ」
そう言って案内された部屋の前には大きな扉がついており、5人は思わず見上げてしまった。
扉を開くと入り口から一直線にレッドカーペットが伸びており、その伸び切った先には二つの椅子が置いてあり、男の人と女の人が座っていた。
そして男の人が言った。
「よく来たな!少年たちよ!」
その男の人は特徴的な紫の髪に鋭い目をしていた。
頭には王冠をつけており、堂々とした態度でいかにも王様感が出ていた。
そしてその男の人の隣に座っている女性もティアラをしており、恐らく王女であると思われる。
女王の方も同じく紫色の髪をしており、しかし王のように目つきは悪く無く、優しく5人に微笑んでいた。
5人は何かを察したのか、敬礼した。
「お会いできて光栄であります!陛下!」
春樹は陛下に言った。
すると陛下は驚いたような表情を一瞬みせ、しかしすぐに微笑んだ。
「そなたたちにいくつか聞きたいことがある。なかなか面白い事をやってのけたみたいではないか」
5人は陛下に陛下の前まで来るように促された。
レットカーペットの両脇には兵士が並んでいた。
そしてその後ろには貴族と思われる人たちが5人を睨みながら座っていた。
「私はテノール・テザヴェル。この国の国王だ」
5人の敬礼を真似たのか、少し不格好であるが敬礼し挨拶してきた。
すると今度は隣の王女が名乗った。
「私はこの国の王女、ジャリヴァーヌ・テザヴェルです」
王女は軽く長いスカートを持ち上げ、お辞儀した。
そして流れ的に5人も名乗った。
「わ、私はこのグループのリーダー兼艦長の辻春樹じゃ」
緊張しながらも春樹が名乗った。
「宮井卓也です」
「し、下川こうきです」
「ベレッタです・・・」
「タカ・コレーゼです」
テノールは名乗った5人に微笑んだ。
「なかなか面白い!少年たちよ!気に入ったぞ!」
(何が面白いんだろう・・・この人)
こうきは若干疑問に思った。
しかし、そんな疑問に答えるはずも無く、テノールは話し始めた。
「さて君たちは我々の国の戦闘艦が襲われているところを助けてくれた。間違いないか?」
「はい」
テノールの質問に春樹が答える。
「では次。そなたたちの艦が一隻で15匹の竜騎士団を数分足らずで片付けたと言うのは?」
「はい・・・」
するとテノールはフッと笑った。
「そうか・・・面白い!そこでなんだが・・・我々の軍に協力してくれないか?」
「・・・はい?」
思わず春樹は変な声を上げてしまった。
すると横に座っていた貴族の一人が立ち上がった。
「陛下に向かって何て口の利き方をしているんだ貴様!」
「ひッ!」
春樹は怒鳴られて、一瞬飛びあがった。
驚いた春樹を見てテノールはハハハと笑った。
「まぁ良いではないか!」
「しかし・・・」
貴族の男は何かを言おうとしたが、黙って座った。
「それで、返事の方はどうなのかね?」
「・・・因みに協力と言いますと?」
「何、常に軍隊に協力しろという訳じゃない。ただ依頼された時だけでいい」
「・・・いいでしょう」
「「「「え?」」」」
春樹の答えに4人は驚いた。
「しかし一つお願いしてよろしいでしょうか?」
「なんだね?」
王様は表情一つ変えずに微笑んだまま訊ねた。
「我々に土地をくれませんか?」
するとさっきの貴族の男が立ち上がった。
「ふざけるな!貴様らにやる土地などないわ!」
「調子に乗るな!」
一人が主張したことにより、他の連中も騒ぎ始めた。
「たかが竜を数分で落とした位で!」
「俺たちの軍に勝てるとでも思っているのか!」
口々に飛んでくる言葉に卓也とこうきとタカは怒りを覚えた。
テノールは席から立ち上がり、右手を斜め上に掲げた。
すると貴族たちは騒ぐのをやめた。
「良いだろう!少年たちの要望を呑もうではないか!」
「陛下!」
「構わん。そなた達は口出しするな」
「う・・・」
貴族たちは黙って座った。
「それでは以上だ!解散!」
(((((え?なにこれ・・・)))))
そしてこの集まりはそれで解散となった。
「すまないな。貴族の連中が見苦しいものばかりで」
「いえ・・・大丈夫ですが・・・」
その部屋に残っていた5人にテノールとジャリヴァーヌが近づいてきた。
その二人に卓也が対応した。
「それで・・・少年たちはこれからどうするんだね?」
「そうですね・・・艦に戻りますかね?」
春樹が答えた。
「そうか。暫くはこの国にいるつもりか?」
「はい。むしろこの国に活動拠点を置くつもりでしたから」
「そうか・・・因みにどのような拠点を?」
すると春樹は自信満々に言った。
「何でも屋です!」
((((・・・すみません。よく聞き取れませんでした))))
「ハハハ!そうか!では困りごとがあればそこに行こうかね!」
テノールは嬉しそうに言った。
「さて、出口まで見送るぞ!」
その後テノールと色々話をしながら出口に向かった。
しかし、その時こうきだけはどこか浮かない表情だった。
「今日は済まなかったな!」
「いえ・・・こちらこそ」
「そしてこれから宜しくな!少年たちよ!」
テノールは馬車の所まで見送りに来た。
そして春樹と話していた。
その間に4人は馬車に乗った。
その時、こうきは気づいた。
(あれ?・・・何かに見られて・・・)
王城の2階の窓からじっと彼ら・・・否・・・ずっとこうきを見ていた少女を。
そしてその少女と目が合った。
少女は慌てて視線をそらした。
しかし耳元はリンゴの様に赤くなっていた。
こうきも同じく顔を赤くしていた。
「あれ?こうき。何で耳赤いんだ?」
「何かあったのか?」
卓也とタカに言われて、こうきは慌てた。
「な、なんでもない!」
「あれ?おかしいな~」
「一体何を見たんだ?」
2人はニタニタしながらこうきを問い詰める。
「正直にいってm・・・イタタタタごめんなさい!」
卓也はこうきに締め上げられた。
「全く・・・ん?」
「む~!」
そしてなぜか不機嫌なベレッタであった。
「さてわが助手たちよ!帰るぞ!・・・てあれ?」
何故か春樹は忘れられていたのであった・・・・
最近色々忙しかったのであまりあげられてませんでした!
そして忙しかったせいで・・・胃がぁぁぁぁぁぁぁ!
意見感想があればどしどし書いてください!
読んで頂きありがとうございました!