iron whale   作:セメント工房

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21話 一方的な戦闘

ーービロテノス王国 300km海域ーーー

3隻のレソトノフ型駆逐艦が15匹のカスタエル王国軍竜騎士団のドラゴンと戦っていた。

駆逐艦から放たれる対空用魔力弾。

それをかわしながら接近し、魔力弾を投下するドラゴン集団。

駆逐艦はただ魔力弾で弾幕を形成し、敵の攻撃を防ごうとする。

 

そしてその中の一隻、駆逐艦レヴィーラは甚大な被害と大量の魔力を失い、撤退せざるを得ない状況に陥っていた。

「艦長!魔道エネルギーが底をつきそうです!」

「艦長!撤退しましょう!これ以上の戦闘は・・・」

艦橋にいる船員達は、船の被害状況を見て艦長に指示を求めていた。

「・・・うーむ。もはやここまでか・・・」

船員達に指示を求められ、艦長タルカ・カミフレンは溜息をついた。

そして、副長レイム・ホクウェルトに指示を出した。

「僚艦に撤退命令を出せ。これ以上の戦闘は危険だ。それに下がれば戦艦バルーナ級や重巡レイナース級もいる。保有数こそは少ないがあの魔力を使えば何とかなr・・・!」

何とかなるかもしれないと言おうとした時だった。

 

激しい衝撃と爆発音が響いた。

そして船員たちの叫び声が聞こえてきた。

「何があった!」

タルカは慌てて状況報告を命じた。

「左舷に被弾!副砲大破!その他にも甚大な被害が・・・」

「そうか・・・撤退を急ごう!航行に支障は?」

「それが・・・機関が死にました・・・自力での航行は不可能かと・・・」

「く・・・成す術なしか・・・ただの標的に成り下がるのも時間の問題か・・・」

タルカは顔に焦りを隠せずにいた。

(何としてでもこいつらを止めねばなるまい・・・娘たちが待つあの国を守る為に・・・)

 

しかしそんな願いも届くはずもなく、相手の攻撃は増すばかりであった。

 

ーー敵竜騎士ーーー

「所詮時代遅れの老朽艦しか持たぬ劣等国民が・・・」

「全く可愛いドブネズミたちですね、団長」

竜騎士団団長と副団長が逃げ惑う駆逐艦に攻撃を仕掛ける下級竜騎士たちを見ながら上で喋っていた。

「あんな骨董品風情で我々に勝てると思われているとは・・・舐められたものだ。まぁ下級たちの訓練には持って来いだな」

「違いありませんね。クックック」

「さて・・・このまま本土まで攻めてしまおうか?」

「有りかも知れませんね」

「どうせ最後の最後まで戦艦を隠しておくつもりだろうが・・・標的にしかすぎんわ。はっはっは!」

「仰る通りです。クックック」

2人は上空から観戦しながら戦況を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵は海の底にいるとも知らずに・・・

 

 

 

 

ーーーその戦場の海中10m付近ーーー

「・・・どうじゃ?」

『・・・実に話になりませんね・・・』

「と言うと?」

伊404は戦場から5km離れた海上に潜望鏡を上げて、敵データと味方の駆逐艦のデータを収集していた。

しかし、計測データは春樹たちにとっては驚くべきことばかりであった。

『そもそも駆逐艦や竜から放たれているのはすべて魔力の弾丸ばかりです。恐らく銃はまだ無いようです』

『まず攻撃に使用されている魔法ですが、威力が精々制度の良い手榴弾程度です』

「・・・え?それだと精々犬小屋が軽く吹き飛ぶだけの威力じゃないか」

『そしてそれがただあそこで飛び交っているだけです』

「・・・」

『さらにたまに放つ駆逐艦の主砲や副砲の威力ですが、手榴弾5個分くらいの威力です』

「うーむ・・・」

『そしてさっき敵が放って駆逐艦にそこそこのダメージを与えた魔力弾ですが手榴弾3個分です』

「微妙じゃな」

『そうですね・・・ただ私たちの・・・』

「敵では無いな」

春樹はニヤリと笑った。

「それに一回放ってからの次の攻撃までの時間が30秒はあるのぅ」

『こっちは主砲であれば3秒あれば発射可能です!』

「よし!ミサイルは最終手段のみでシーケンス1じゃ」

伊404に搭載されているECシステムは攻撃に使用する弾頭を10個のシーケンスに分けている。

そして今は4シーケンスまで搭載しており、その中の1番にはロケット弾が設定されている。

2番にはAHAX2、3番はハープーン、4番にはMJY3が設定されている。

『了解しました!』

「駆逐艦後方300m後方に急速浮上!武器システムセーフティーロック解除!』

『了解!僚艦300m後方に急速浮上!セーフティーロック解除!』

艦は海面めがけて急激に浮上し、海面に飛び出した。

 

 

 

ーー数分前 駆逐艦レソトノフーーー

「艦長!レヴィーラから撤退命令です!」

艦長リースベル・ノルードアは副長レイアンスの話を聞いてがっかりしたような表情を浮かべた。

「そうか・・・しかしあの様子だと・・・」

「・・・はい・・・おいて帰るしか・・・」

「仕方ない・・・僚艦レントルに入電。レヴィーラをおいて撤退する、と」

「了解・・・」

リースべルは小さくため息をつき、艦内放送を入れた。

「総員撤退用意。通信士は本土に連絡し、戦艦に待機命令を・・・」

待機命令を出せと言おうとした瞬間、レヴィーラを襲った悲劇がレソトノフにも襲い掛かる。

「各員被害報告!」

すると報告員がやってきた。

「主砲魔力貯蔵庫に被弾!出火有り!爆発の危険性もあります!」

「消火急げ!あと怪我人の数も確認してくれ!」

「了解!」

そう言ってくるっと向きを変えると走って行った。

「こっちも不味い事になった・・・」

すると今度は見張り員が叫んだ。

「後方に敵味方不明艦出現!」

「出現だと!?」

「はい!」

リースベルは信じられないと言わんばかりに聞き返した。

「何かの間違いでは!?」

レイアンスも聞き返した。

「間違いありません!海中から急に飛び出してきました!」

「「海中だと!?」」

「はい!」

リースベルは戸惑った。

(こんな状況では戦えん・・・しかし何もしなければやられる・・・)

双眼鏡を掴み、見張り台に立ち、敵味方不明艦の様子を見た。

「なん・・だ・・・あれ・・・」

リースベルは唖然とした。

「・・・最新鋭艦?いや兵装が少ない・・・」

(それに撃ってくる様子もない・・・一体何者なんだ!?)

 

 

 

ーーー伊404---

『ターゲット掌握!ナンバー1~15入力完了!』

「よし・・・」

 

春樹は深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。

「両舷にいる駆逐艦の前に出るのじゃ!」

『了解!』

艦は加速し、艦隊の前に出た。

そして・・・

 

 

 

 

 

「主砲、攻撃はじめ!」

『了解!主砲攻撃はじめ!』

 

艦内にブザーの音が鳴り、主砲が稼働した。

 

甲板の主砲は、長い砲身を素早く旋回させ、上に向け発砲を始めた。

辺りに腹を突き破る様な主砲の発砲音が響く。

そして大きな薬莢を甲板に捨てる。

重々しい金属音が響く。

砲身から放たれた砲弾は一直線に竜の腹めがけて飛んで行った。

 

そして砲弾は竜の腹を貫通し、腸をえぐり飛ばした。

「「「「!?」」」」

突然の出来事に竜騎士団は戸惑いを隠せなかった。

 

ーーー竜騎士団ーーー

「なんだ今のは!?」

「最新の武器でしょうか!?」

「分からん!ええい!お前たち!怯んでないで攻撃を続けろ!」

しかし、竜騎士達は下から聞こえる発砲音と共に落ちていく。

 

「一体何なんだあれは!?」

「まさかあの国に新兵器を開発する能力と金でもあったのか!?」

2人は顔面蒼白の状態で下の減りゆく味方を見ていた。

「・・・ありえん・・・ありえんぞぉぉぉぉぉぉぉ!」

「団長!」

団長は伊404めがけて突っ込み始めた。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

そして片手に持っている杖で魔力弾を作り放とうとした。

 

ーーー伊404---

『急接近する物体有り!本艦直上だよ!』

「機銃掃射!」

『了解!』

格納庫上に取り付けられた機銃が真上を向き火を噴いた。

大量の薬莢を捨てる金属音と機銃の発砲音が響く。

そして銃弾は迫り来る竜騎士の頭を打ち抜いた。

頭が吹き飛び、放とうとした魔力弾がその場で暴発し、空中で爆発した。

そして竜の体のパーツや騎士の胴体が空中から降ってきた。

 

ーーー残った騎士ーーー

「・・・あ。ああああああ・・・」

彼は恐怖で何も言えなかった。

そんな事とはお構いなしに彼にも銃弾が襲ってきた。

 

そして彼の乗る竜の体を打ち抜いた。

 

彼は落下し、他の仲間と同じように水面にたたきつけられ、死亡した・・・

 

 

ーーー伊404---

『空中に脅威なし!』

「戦闘終了!セーフティーロック!」

『セーフティーロック!お疲れさまでしたー!』

武器に安全装置をかけ、戦闘終了をつげ、艦内が明るくなると春樹は大きくため息をついた。

 

 

 

 

「覚悟はしていたが・・・・やはり少しきついモノじゃな・・・」

 

 

 

春樹は椅子の背もたれを倒し、大きく伸びをしてぼやいた・・・

 

 

 

 

 




今回は少しグロテスクかつマニアックにしました!
(あんまりグロく無くないか?分かりにくいし・・・By卓也)
それは言わないで!

という訳で次回 後始末です!

意見感想があればどしどし書いてください!
最後まで読んで頂きありがとうございました!

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