果たして逃げ切れるのか・・・
扉を出て、思わず進行方向とは逆の方向を向いてしまった・・・
「「「あ」」」
そこにはこの城に入って来る時、外の出入り口で眠っていた見張り員がいた・・・
「あ、あはははは・・・」
ベレッタは目が死んでおり、ひきつった笑みで笑っていた。
「あははは・・・お仕事お疲れ様ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
卓也はとっさにベレッタを抱え、「様ですぅ」のあたりで叫びながら全力疾走で走り始めた。
「待てぇぇぇぇぇぇ!」
監視員は叫びながら追いかけてきた。
しかし、監視員は鉄の鎧を着ているだけでなく、腰にはさらに重い剣がぶら下がっている。
それだけでなく、卓也たちにはこの時代にはないテクノロジーの塊を持ち歩いている。
卓也たちには有利な材料ばかりだ・・・と思っていたらそれは間違いであった。
「何事だ!?」
わらわらと監視員や使用人などが集まってきた。
その数は100人以上・・・
「やっべ!」
卓也は押し寄せる人混みに突っ込み、なんとか下を通って最後尾から脱出した。
「侵入者がでたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「何ぃ!?急いで捕まえろぉぉぉ!」
『『『『『『はっ!!』』』』』』
監視員が一斉に2人を追いかけ始めた。
「嘘だろ!?」
卓也はなんとか大広間まで走ってきた。
大量の大男達に追われながら・・・
大広間にはさっきとは違い明かりがともっており、黒い服装や顔隠しの為のニット帽や黒いマフラーは逆効果だ。
「ちっ!」
卓也は大広間に飛び出し、通ってきた通路の入り口左側面(卓也たち目線)にワイヤーアンカーを放ち、刺さると同時に巻き上げ、勢いよく階段に突っ込んだ。
アンカーを解除し、遠心力を利用して階段を駆け上がる。
『『うわ!』』
後ろから追ってきた監視員の集団は、突然の方向転換に戸惑い、先頭の方から総崩れを起こした。
「急に止まるな!」
「見失うだろ!」
下では集団でもめていた。
卓也は階段を駆け上がりながらその様子を見ていた。
「全く呑気な集団だぜ・・・」
卓也はそのまま2階に昇った。
「こちら卓也!こうき聞こえるか?」
『こちらこうき。そっちは大丈夫か?なにやら監視員が慌てだしてるけど・・・』
「すまん・・・見つかった」
『そうか・・・取り敢えず今からはお互いイニシャルで呼ぶこと。あとは対応しきれなくなるまで、発砲は認めず!』
「「了解!」」
『あと無線は常にオン状態で!』
「了解!」
卓也は通路を走り続けた。
「・・・ん、いたぞ!」
前から見張り員がやってきた。
卓也は迷わず突っ込み、相手を顎から上に殴り飛ばした。
「うわぁぁぁぁ!」
相手は宙を舞い、口から血を流しながら後ろに倒れた。
卓也は気にせず走って行った。
(一応は結構前に覚悟はできていたが・・・やっぱり少しキツいな・・・)
卓也は走りながら少し躊躇いを見せた。
城の内部構造は、複雑に作られており、1つの階ごとに構造がすべて違うため、迷路のようであった。
そして、卓也が3階の廊下を突っ走り、角を曲がろうとした時だった。
「のわっ!」
「きゃあっ!」
書物庫で本を読んでいた少女とぶつかった。
「いたた・・・って大丈夫!?」
「ごめんなさい・・・ってあなた達は!?」
「!?あ、いえ・・・取り敢えずごめんなさい!」
そう言って走り出そうとした時だった。
「待って!」
「ふぇ!?」
走り出そうとする卓也の手を少女は掴んだ。
「あなた達って・・・私はあなた達に協力してあげる!」
「何!?」
卓也はその少女の言葉に驚いた。
『信じるなT!所詮貴族の女の言う事だ!だまされるな!』
「違う!信じて!」
少女は一生懸命説得しようとした。
「T!騙されちゃダメ!貴族なんて嘘とか普通につくよ!」
「・・・すまんK、B!」
卓也は悩んだ末、無線を切った。
「すまないベレッタ!俺はこの子の言葉を信じてみたいんだ!」
卓也はつづけた。
「それにこの不利的状況・・・どうしようもできない!屋外ならまだしも、室内だとKの支援もできない・・・だから、ごめん!」
「・・・分かった・・・今回だけだからね」
「ありがとう・・・B」
卓也は情けないなと思いながらベレッタに頭を下げた。
そんな事をしているときだった・・・
廊下に集団で走ってくる音と金属がこすれる音が響いてきた。
「まずい!来ちまった!」
卓也は焦った。
「私に考えがあります!」
暫くして集団が目の前に来て止まった。
「お嬢!こんな所にいらっしゃったのですか!」
「えぇ。何かあったの?」
「あったも何も・・・侵入者が現れました」
「侵入者ですって!?」
「はい。のでここは危険です!早くお部屋にお戻りに!」
「分かったわ・・・それでは一刻も早く侵入者を捕まえてね・・・」
「はっ!」
そう言って集団は立ち去って行った。
「もう大丈夫ですよ・・・」
すると壁の一部がぐるりと回り、中から二人が出てきた。
「こういう城にはやっぱり隠し通路はあるんだな・・・」
「すごい・・・初めて見た・・・」
2人は隠し扉の奥で身を潜めていたのであった。
「この扉は、私たち一族にしか教えられていないので・・・使用人も知りません」
「よく隠し通せるな・・・」
その後、隠し通路を使って庭に降りるまで案内してもらった。
隠し通路を抜け、出た先は城の離れにある小さな塔の中だった。
「ここまで案内してくれてありがとう」
「いえいえ・・・私の好意でしたことですから」
「そっか・・・ありがとな」
卓也は二っと笑って手を差し出した。
少女はその手を握り握手を交わした。
「私はリゼサルヴァ・テザヴェル。この国の王女よ」
「俺はTだ。名前はまだ明かせない」
「私はBよ」
そう言って3人は二っと笑った。
2人は塔を出た。
「今度会うときは、こんな形では無く、隠し事もなく話せるといいな」
卓也はそう言って後ろを振り向かずに、手をひらひらと振った。
「そうね・・・今度来た時は、私を壁の外に連れ出してね」
王女の最後のセリフは、2人には届かなかった。
「こちらT。王城を脱出成功」
『了解。庭にいるのを確・・・行くな!』
「どうした!?」
『前方に騎士団と思しき集団!あと後方に同じく騎士団集団・・・幸いなことに全部歩兵だ』
「洒落にならねぇぜそんなのこられちゃぁ・・・」
「どうするT!?」
『こうなったら・・・』
「仕方ないか・・・」
卓也はアサルトライフルのグリップを握りしめた。
無線機越しに、こうきが深呼吸する音が聞こえてくる。
そして・・・
『・・・発砲を許可する』
「「了解!」」
卓也とベレッタは背中合わせになり、迫りくる集団に銃口を向けた。
「カウント3で開始だ・・・」
「了解」
ベレッタは深呼吸をした。
そしてお互いが背中越しに心拍が早まるのを感じていた。
「いくぞ・・・」
「3」
安全装置を解除した。
「2」
コッキングレバーを引いて、装弾する。
「1」
トリガーに指を掛けた。
「Fire!」
掛け声と共に、銃が火を噴いた。
響き渡る銃声と薬莢の落下音。
薬室が開く度に外へ薬莢がはじき出されていく。
卓也が放った銃弾は、外れることなく敵の腹部へ吸い込まれる。
ヘッドショットを狙わないのは、卓也の目的が殺戮ではない事と本人自身が人を殺すことへの恐怖の表れでもある。
遠く離れた所から狙撃していたこうきも、腹部を狙って撃っていた。
それはベレッタも同じであった。
敵が全員倒れたのを確認した卓也は合図を出した。
「攻撃やめ!」
それにより、全員が銃を降ろし、安全装置を掛けた。
「・・・ふぅ」
卓也は静かに溜息をした。
(あぁ・・・初めて人を殺した・・・)
そこには、罪悪感を通り越して、ただ妙な感情が入り混じっていた。
しかし、その感情と罪悪感は、一つの違和感によって消し飛んだ・・・
卓也はふと目の前に倒れていた騎士団の一人に目をやった。
どうやら入りたてらしく、まだ若かった。
「・・・俺と同じ年位か・・・幸せそうに・・・ん?」
卓也はどことない違和感を感じた。
「銃で撃ったのに・・・出血が無いし・・・貫通した様子もない」
卓也は考えた。
「確かにこの人の事撃ったよな・・・」
そしてポケットに入れてあったマガジンから銃弾を一個取り出した。
そしてそこから衝撃的な事実が浮上した。
「こちら卓也!こうき!銃弾のケースを確認してくれ!」
『こちらこうき。了解』
そしてそれから数秒後・・・
『こちらこうき!まさかこの銃弾・・・』
こうきが震えた声で言ってきた。
「あぁ・・・多分今回の上陸作戦で持って来た弾丸全部・・・」
そう言って銃弾を指でくるくる転がした。
そしてその銃弾には『SleepOnly』と書かれていた。
『つまりこれは・・・』
「ただの睡眠弾だ・・・」
『取り敢えずさっさとそこから離れた方がいいよ』
「了解した」
卓也は再びベレッタを抱え、走って行った。
それから数分後・・・
「こちら卓也、無事に城から脱出。ミッションコンプリート」
『了解。こちらも回収に向かう』
ーー山の中腹 車両ーーー
「ふぅ・・・ミッションコンプリート!」
こうきは無線を切って、車の屋根に寝そべった。
東の空が、少しずつ明るくなっていく。
そして屋根から降り銃を片付けようとした時、こうきは立ち止まった。
その視線の先には、昨日知り合った少年が立っていた・・・
「ど、どうも・・・」
「・・・」
こうきは何も言えず、手に持っていた銃を落としそうになった。
はい!
戦闘描写って難しいね!
それに色々難しいし・・・
次回は今度は春樹に危機が訪れます!
意見感想があればどしどし書いてください!
最後まで読んで頂きありがとうございました!