iron whale   作:セメント工房

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19話 おとぎの国で・・・スパイ活動!(その2)

ーーゴルバトゥーダ 王城裏の山ーー

「庭には監視員が数人・・・」

3人は、車の屋根に寝そべって王城の敷地を双眼鏡で覗きながら、侵入ルートを模索していた。

「侵入するのはあの監視員が一人しかいないあの扉が良いな」

卓也は、監視員が一人だけの、城側面に設けられた小さな扉を指さした。

「そうだね」

「あとは王城内の構造だな・・・」

「正直それは行ってみないと分からないね・・・」

「はぁ・・・」

「とりあえず侵入方法はこれでいいかな?」

「どれ・・・」

卓也は手書きの地図に侵入方法を書き始めた。

こうきはその様子をペンライトで当てながら確認した。

侵入方法はこうだ。

・まず下まで降りて城壁に近づく。

・そしてワイヤーアンカーを使って壁を昇る。

・壁を越えたら庭の木に隠れながら扉まで近づき、監視員を殴り倒したら侵入。

 

「どう?」

「いいんじゃないかな?」

「賛成~」

「これで行こう」

「そうと決まれば早速始めよう」

「「了解!」」

そう言って3人は準備に入った。

 

 

 

 

その様子を陰から見ている人物がいた。

「今から何するんだろう・・・それに手に持っているのはなんだ?」

タカは木の陰から侵入準備に取り掛かる3人を見ていた。

 

 

 

「弾、銃、ワイヤーアンカー装備。防弾チョッキもよし!」

「卓也ーこっちもできたよー」

卓也とベレッタは、それぞれの装備を確認した。

2人は黒いニット帽に、黒いマフラー、防弾チョッキに、腰にワイヤーアンカーを二つ装備し、アサルトライフルを肩にかけた格好だ。

「この格好不審者みたいだ・・・」

「なんだか怪しいね・・・」

2人は感想をぼやきながら車を降りた。

 

車の屋根の上には、こうきが狙撃銃を構えてスタンバイしていた。

「なんかその体制、様になってるな・・・」

「この体制憧れだったんだよね~」

こうきは嬉しそうに卓也にグーサインを出した。

「それじゃあ行ってくる。後方支援、頼んだぞ!」

「任された!」

そう言って3人は敬礼し、卓也とベレッタは山を下りた。

 

 

 

「・・・もうついてしまったな」

「案外近いね・・・」

卓也とベレッタは山を下りて10分、城壁の真下についていた。

「取り敢えず連絡しておくか・・・」

卓也はこうきに連絡した。

「こちら卓也。城壁の下に到着」

『もう着いたの!?了解!』

「思ったより早く着いたよ。これより城壁を越える」

『了解!』

卓也は無線を切り、ベレッタの方を見た。

「よし!登ろうか!」

「うん!」

卓也はワイヤーアンカーを上に向け、発射した。

バシュッと音がして勢いよく発射されたアンカーは、見事に城壁の上の方へと飛んでいき、壁に刺さった。

そしてもう一度トリガーを引くと、卓也の体は宙に浮き、あっという間に城壁の上に到達した。

ベレッタも後に続いた。

 

卓也は城壁の上に立ち、庭を見た。

「誰も気づいていないな・・・にしてもこれ凄いな!」

卓也はワイヤーアンカーをみて感心していた

そして横にベレッタが着地した。

「卓也!これすごいね!」

「あぁ!最初はなんだか分からなかったけど・・・これは便利だ!」

 

 

2人はワイヤーアンカーを駆使して、壁を下りた。

そして庭の樹木に隠れながら扉に近づいた。

木に隠れながらゆっくりと扉の方を見た。

「すぅ・・・すぅ・・・」

「なんと幸運な!」

扉の監視員は、壁にもたれて眠っていた。

「こんなんでこのお城を守れてるの!?」

「さぁ?どうだろう?何にせよ、人を傷つけずに助かったよ」

2人は監視員を起こさないように扉から城内に侵入した。

扉を閉めると薄暗く長い廊下が続いていた。

「こんな所だったら暗視ゴーグルの方が良かったかもな・・・」

そう言って卓也は進み始めた。

「なんか・・・不気味ね」

「みんなきっと寝ちゃったんだろ・・・」

卓也とベレッタはひそひそと話しながら廊下を進んで行く。

暫く進んで行くと、大広間に出た。

左側には、正面入り口の大きな扉があり、右側は二階へ続く大きな階段が伸びていた。

広間のあちこちに大きな石像が立っていて、壁には絵が描かれていた。

天井は高く、大きなシャンデリアがいくつもついていた。

しかしどれも明かりをともしておらず、ただ暗くぶら下がっていた。

「典型的な王城内部だな・・・まるでおとぎ話にでてくる城まんまじゃねぇか・・・」

「卓也はこういう城入った事あるの?」

「本ぐらいだったら何回かあるけど・・・シッ!」

卓也は突然話をやめ、慌ててベレッタを抱えて階段横の石像の裏に隠れた。

 

静かな大広間に、コツッコツっと一定のリズムで歩く音がする。

誰かが上から降りてきたようだ。

足音からしてハイヒールの音だった。

「・・・なんか声が聞こえた気がしたけど・・・誰かいるのか?」

大広間に女性の声が響く。

声からして卓也と同じ年位だろうか。

その声は、柔らかく透き通った良く響く声であった。

 

階段から降りてきたその女性は、大広間の真ん中まで来て立ち止まった。

月明かりに照らされ、その姿がはっきりとまではいかないが確認できた。

男子3人組の中で一番背が低いこうきよりも少し低めだろうか、きれいな紫がかったロングの髪に、白いドレス、後ろ姿だけでも美しいと感じるくらいの体系だった。

 

暫くしてその少女は、卓也たちの来た通路とは反対側の通路へ向かって歩いて行った。

「・・・死ぬかと思ったぜ・・・」

「危なかったね・・・」

「取り敢えず、後をつけてみない?」

ベレッタの思ってもいなかった提案に卓也は訊いた。

「どうしてだ?」

「だってこんな時間に出歩くなんて不自然じゃない?」

「確かに・・・」

「もしかしたらこんな静かな時間だからこそ、読書をするのかもしれないじゃん?」

「成程・・・よし!追うか!」

卓也たちは、静かに足音を立てないように、その少女を追った。

 

 

ベレッタの読み道理、小女は書物庫らしきところへ入って行った。

卓也たちも、ドアを静かに開け、身を伏せながら滑り込むように中に入った。

幸い、中は月明かりが窓から差し込んでいるだけで、本棚などで暗くなっているのでばれずに侵入できた。

 

書物庫の中は、図書館のように本棚がずらりと並んでおり、窓際に一人用の机といすが月明かりに照らされて置いているのが分かる。

そしてその椅子に腰かけて、少女は本を読んでいた。

卓也は、ここからは声を出しての会話はまずいと判断し、ベレッタとはメールで話すことにした。

『まず、ベレッタは部屋の一番左端の本棚から始めて。やる事は今から渡すスキャナーで本をスキャンする。スキャナーは本にライトを当てる感じで当てて、パラパラめくるだけらしい。』

卓也は文章を送信し、ベレッタの方を見た。

ベレッタは、文章を見て、頷いた。

そして返信が返ってくる。

 

『一回ここでやってほしいな~(*'ω'*)』

 

「・・・」

卓也は、顔文字を使って返信してきたベレッタに少し困惑しつつも、一度その辺にあった本を手に取り、スキャンにかける。

右手に本、左手にスキャナーを持ってパラパラと本をめくってスキャンを行う。

5秒で一冊のスキャンが終わり、卓也はベレッタに文を送る。

『分かったかな?』

そして数秒も立たないうちに返ってくる。

 

『サー!(`・ω・´)ゞ』

 

「・・・」

卓也は呆然とメールを見つめる。

『取り敢えず始めようか』

『了解!(*^▽^*)』

時刻は00:30。

2人は少女にばれないように静かに、そして手早くスキャンを開始した。

 

少女は机から立ち上がり、本棚に来ては本を取り、興味を持てばその本を持って机に戻るといった動作を繰り返している。

少女がいる付近の本棚は近づかず、立ち去ってからさっさと済ませるといった感じでサクサクと作業は進んで行った。

 

 

 

03:00。

大半のスキャンが終わり、残すは今少女のいる付近の本棚だ。

そしてタイミングよく少女は本を一冊持って机に戻った。

その間に、二人で本をスキャンした。

 

 

 

そして15分後、スキャンが完了した。

最後の本を片付け、さぁ帰ろうと扉に向かい始めた時だった。

後ろでがたっと音がして、こっちに足音が近づいてきた。

 

((やっやばいやばいやばいやばい!!!))

卓也は横にいたベレッタを慌てて抱え、いそいそと別の本棚の列へと身を潜めた。

少女は2人に気づくことなく、本棚に近づき本を片付けた。

「はぁ~・・・面白くない・・・」

彼女は思いつめた表情で、少し悲しそうに呟いた。

「この話みたいに、泥棒さんが私を連れだしてくれればいいのに・・・」

彼女は独り言を呟き、部屋から立ち去った。

部屋にはただ、彼女が廊下を歩く音だけが響いた。

 

 

「「・・・はぁ~助かったぜ(よ)~」」

2人は体全身の力が抜け、本棚に寄りかかった。

「死ぬかと思ったぜ」

「本当に・・・」

卓也は腕に着けた端末を操作し、艦にスキャンデータを送信しようとした。

「・・・あれ?」

「どうしたの卓也?」

「なぜだか分からないけど・・・艦本体データリンクと接続できない・・・」

卓也はスキャンデータを艦本体にあるデータリンク(ECシステム)に送信しようとしたのだが、ECシステムに接続できないのである。

「何故だ・・・こうきに連絡しよう」

卓也はこうきに繋がるか試した。

「こちら卓也。こうき聞こえるか?」

『こちらこうき。どうしたの?』

普通に繋がった。

「よかった・・・。ECシステムに接続できる?」

『えぇっと・・・ん?』

「どう?」

『・・・繋がらない・・・』

「そっちもか・・・ありがとう。あとすべての本スキャン完了した」

『了解!』

卓也は無線を切り、今度は春樹に無線をつないだ。

「こちら卓也。春樹聞こえる?」

少し遅れて返答が来た。

『こちら春樹。どうしたんじゃ?』

「ECシステムに接続できないんだが・・・」

『・・・あ。すまん・・・今お主らがいる所、圏外じゃ・・・』

「・・・え?」

 

それもそのはずである・・・

 

 

 

ーーー伊404ーーー

「わしがいるのは南に5000km離れた海域・・・他国との境目じゃ」

『じゃぁ何で無線は使えるんだ?』

「それはジープの無線機を経由しているからのぅ・・・ネットワークまでは間に合わなかったんじゃ」

『そ、そうか・・・了解・・・』

「すまんかった・・・」

そう言って春樹は無線を切った。

そして・・・

「のうわぁぁぁぁぁ!やってしもうたぁぁぁぁぁぁぁ!」

深度500mの海底で叫び散らすのであった・・・

 

 

 

ーーー王城 書物庫ーーー

「はぁ・・・」

「このデータを持ち歩かなきゃいけないんだね・・・」

「しかも結構容量大きいぞ・・・」

2人は溜息をついた。

 

「取り敢えずここから出ようか・・・」

「そうだね・・・」

2人は立ち上がり、書物庫の出口を目指した。

 

 

扉を静かに開き、外に出て扉を閉めた。

そしてふと進行方向とは逆の方を見た。

否、見てしまった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「あ・・・」」」

 

 

 

 

 

そこにはこの城に入って来る時、外の出入り口で眠っていた見張り員がいた・・・




だいぶ長くなってしまいました・・・
ドアを開けると敵が・・・ありがちですね・・・
次回は2人の逃走劇です!
そして衝撃的事実が・・・


意見感想があればどしどし書いてください!
最後まで読んで頂きありがとうございました!

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