コセラーム村を出て五時間位たった。
太陽は丁度真上辺りに来ており、時計を見れば丁度十二時を指していた。
「もうこんな時間か・・・」
高原を抜けたジープは、再び山間を走っていた。
「だんだん道が悪くなっていってるね・・・」
「あぁ。これがジープじゃなかったらあっけなく足を取られていたぜ」
今走っている道はぬかるんでおり、とても馬車では走るのが困難な道であった。
「でも馬車が通った跡があるよ」
「全く無茶する人もいるもんだぜ・・・」
そう言いながらも、ジープはグイグイと悪路をこなしていく。
「艦に戻ったら洗車しないとな・・・」
「そうだね」
暫く走り続けて、段々と木々の隙間からチラチラと町が見えてきた。
「卓也!町が見えたよ!」
こうきが嬉しそうに卓也に言った。
「本当だ!」
ベレッタはそれを聞いて町の方を双眼鏡で覗きながら喜んだ。
「あぁそうだな。でもなんかまだ距離がありそうな気がする・・・」
卓也は町の方向と道の方向からそう判断した。
卓也の予想通り、町が見え始めてから一時間近く走ってようやく山から下りた。
村を出て6時間、ようやく町に着いた。
町の入り口にはゲートがあり、『ルニマール』と書かれていた。
どうやらこの町はルニマールと言うらしい。
町並みはヨーロッパのコルマールに似ており、木でできた家に石畳で舗装された道路、川に架かる石橋、走り回る馬車に笑顔を絶やさない住民たち・・・。
どれをとってもきれいとしか言いようが無かった。
しかし、ここで問題が発生した。
「ねぇ。僕たち目立ちすぎじゃない?」
そう、この世界には存在しない乗り物が町のど真ん中、それもこの平和な街並みに不つり合いな色をしたものが馬車に紛れて走っているのだ。
「すっげぇ目立ってる気がする・・・」
しかし、意外にも町の人は気にする様子もない。
ただちょっと新しい乗り物程度にしか見られていなかった。
「うーん。そんなに交通量も多くないし・・・」
そんな事とはいざ知らす、二人は悩んでいた。
「取り敢えずマコリットから教えてもらった喫茶店に行こう」
そう言ってハンドルを握り直した。
「本当にこの道であってるんだよな・・・・」
「地図行くとあってるはずだよ・・・」
三人はマコリットお手製の地図を頼りに大通りを走っていた。
「それならこの道をずーっと真っ直ぐだよ。そして交番がある交差点を左じゃ」
「そうですか。ありがとうございます」
道中、通りすがりのおじさんに道を教えてもらい、走り続けた。
しかし・・・
「交番まだかな?」
「通りすぎちゃったかな?」
おじさんに教えてもらって走りだしてから五十分位たった。
しかし町並みはなおも変わることなく、ただ大通りが続いていた。
そしてそれから約十五分。
「お、これかな?」
ようやく交番のある交差点を見つけ、左に曲がった。
すると道幅は急激に狭くなり、対向車が来たらどっちかが譲らないと通れない位になった。
「道幅きつ!」
それでも何とか走り抜けた。
すると、少し広いT字路に出た。
「え~っと・・・その角の店か」
「やっと着いたぞ・・・」
そのT字路の角に、一軒の喫茶店が立っていた。
「店名は・・・『喫茶ドルフィン』」
「間違いないな。マコリットの言ってた喫茶店だ」
そう言って卓也は、右に曲がり、喫茶店の前に車を止めた。
「ちょっとこうきとベレッタ、先に降りて挨拶してきてくれないか?」
「了解。行こう?ベレッタ」
「うん」
こうきとベレッタは、車から自分のカバンを持ち、降りた。
二人は喫茶店の中に入った。
カランカラン~っと喫茶店特有のベルが鳴り店員が挨拶してきた。
「いらっしゃいませ」
その店員は、ベレッタと同じ年位の少女で、腰くらいの淡い青色の髪に青い瞳。いかにも大人しそうな少女であった。
「あの~すみません。ここのマスターさんに用があるのですが、いますか?」
「あ、もしかして・・・ちょっとお待ちください」
少女はそう言うと、スタスタと店の奥に戻っていった。
「おじいちゃん。言ってたお客さん来たよ~」
店の奥から少女の声が聞こえてきた。
暫くすると、中からマコリットと同じ年くらいのおじさんが出てきた。
「お主らがマコリットの孫か?」
「はい。まぁあれはマコリットさんが勝手に言ってるだけですが・・・」
「全くあいつらしいのぅ。あの能天気さはどんだけ年月が経っても変わらんわい」
そう言ってその人はフォッフォッフォと笑った。
「そう言えば三人と聞いておったが・・・」
「あぁ。そう言えば、僕たち車両に乗ってきたのですが・・・。それを止める場所が無くて、どこかありませんか?」
「ほぅ。そのしゃりょうとやらが何なのかは分からんが・・・」
そう言ってその人は外に出た。
そして外に出て見るなり驚いていた。
「これは新しい乗り物じゃな・・・」
マコリットほどではないが少し驚いていた。
「まぁよい。そこの広い所に停めてくれ」
そう言って道に面した広い駐車場のような所を指さした。
そこには車が三台は停めれるくらいのスペースが空いていた。
「分かりました。ありがとうございます」
こうきはお礼を言うと、ジープの運転席の窓を軽くノックした。
「卓也。そのままバックしてあそこのスペースに停めてくれだって」
「了解!ちょっと誘導してくれ!」
「了解」
そう言ってこうきはポケットから笛を取り出し、吹きながら手で卓也に合図を送って誘導してゆく。
「すごい機動力じゃな・・・それに全く無駄のない操縦じゃ・・・」
その場でバックをはじめたジープを見て、馬車しか知らないマスターはその光景を見て関心をしめした。
程なくして、ジープは駐車スペースに停め、エンジンを切った。
卓也はキーを抜いてジープから降り、カギを閉めてこうきとベレッタに合流した。
「やっと着いたな・・・」
「僕は一足先に降りたけどね?」
「仕方ないさ。何せあそこに停めたままだと邪魔だろ?すぐにどかせる人がいないと」
「それもそうだね」
そう言って二人はクスリと笑った。
「さて・・・」
そう言ってマスターの前に三人は並んだ。
「初めまして。俺の名前は卓也です。今日はお世話になります」
「こうきです」
「ベレッタです」
三人が自己紹介を終えるとマスターは少し驚いていたがすぐに微笑んだ。
「そんなにかしこまらんでよいわ。わしはここのマスター、レク・カミフレンじゃ」
「私は孫のチル・カミフレンです」
二人も自己紹介した。
「まぁ何じゃい。我が家じゃと思ってくつろいでくれ」
「ありがとうございます」
そう言って卓也は頭を下げた。
「あ、そうじゃ。あと二人この家に住んどるんじゃが・・・あとで紹介しようかの」
「そうなんですか」
「まぁ一人はお主らと同じように泊っているんじゃがな。ちょっと変わり者じゃ」
そう言ってフォッフォッフォと笑った。
「へぇそうなんですか」
その後、店に入ってレクと話をした。
「この町って広いですよね」
「そうじゃのぅ。何せ首都の隣じゃからのぅ。結講栄えとる訳じゃい」
それを聞いて卓也は驚いた。
「え!?そうなんですか!?」
「そうじゃよ。あの道をずーっと真っ直ぐ行くと着くぞ。まぁ結構先じゃがな」
そう言ってまた笑った。
「あの道をどの位走れば着きますか?」
今度はこうきが質問した。
「そうじゃな・・・。一日あれば着くんじゃないかのぅ?」
「そうですか・・・あと半日か・・・」
最後の言葉は小さくてレクには聞こえなかった。
「因みにサビット神話についてご存知でしょうか?」
「もちろん知っておるぞ」
その後レクからも色んな情報を聞き出した。
ーーー以下こうきメモーーー
サビット神話はサビット教の物であり、古くは4000年も前の話らしい。
この国ではこの宗教しか無く、全員がこの宗教に所属している。
首都にはいろんな施設があり、王城の他、軍港や軍関係施設、その他の政治的な施設から、市場や工場などの施設が集中している。船の建造ドックもある。王城には書物庫があり、これまでの国の歴史や様々な情報が手に入るらしい。
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「成程成程・・・」
「色々ありがとうございました」
「構わんよ。そうじゃ!ここでちょっとチェスでもやらんかのぅ?」
「いいですね~。やりましょう」
そう言ってこうきとレクがチェスを始めようとした時だった・・・。
「たっだいま~」
そう言って入ってきた少女は村で会ったモカレとよく似ていた。
しかし、髪の長さはセミロングで、モカレよりも小柄であった(胸部装甲を除いて)。
(まさか・・・いや、ないない!)
(偶然か?・・・いやありえないっしょ~)
彼女を見るなり、卓也とこうきは心の中で偶然を否定した。
「おぉ!帰ったか!紹介するよ。彼女がここで泊っている・・・」
「コア・ホクウェルトです!」
((えええええええええ!!!????))
偶然はいとも簡単に起こってしまった・・・
ダメだ・・・
眠い!
「寝ろよ!」(By卓也)
意見感想があればどしどし書いてください!
読んで頂きありがとうございました!