iron whale   作:セメント工房

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10話 上陸したのはいいけど・・・

朝日が水平線から顔を出す頃、ビロテノス王国付近の深度60mの海中では、一隻の潜水艦が身を潜めていた。

そして、その艦内では今夜行われる予定の上陸作戦の為に、着々と準備が行われていた。今は格納庫内で、ジープに積み込む荷物を確認していた。

「え~っと、食料にテント、後は・・・燃料かな?」

「あと武器もだな」

そう言って卓也はこうきに積み込む武器の一覧表を渡した。

「武器なんていつ作ったの?」

「昨日の夜中に徹夜で春樹が作ったんだ。だからほら」

そう言って格納庫の奥の方を指さした。

こうきはその方向を見てみると・・・

「すぅ・・・」

そこには春樹が格納庫内奥にあるビニールシートに覆われた物体にもたれかかって幸せそうに眠っていた。

「徹夜して作ってくれたのはいいけど・・・」

「なんかあの顔腹立つな・・・」

そう春樹とこうきが話していると、ベレッタがやってきた。

「こうき、これ持ってきたよ~」

「ああ、ありがとう」

そう言うとこうきはベレッタを撫でた。

ベレッタは、えへへっと嬉しそうに笑った。

「まるで兄妹だな」

その光景を見ていた卓也はそうつぶやいた。

「ところでなんだ、それ?」

卓也はベレッタの持ってきたものを見つめた。

少し大きめの段ボールだ。

「無線機だよ。これでこの艦と通信するんだよ」

「なるほど・・・」

 

 

 

「さてと、これで全部かな。食料、燃料、工具に無線・・・あと武器だな」

そう言ってこうきは武器一覧表を見た。

「武器は・・・アサルトライフル人数分、ハンドガン人数分、狙撃銃1、・・・」

「やけに物騒な装備だな・・・まるで軍人みたいだな」

「できれば使いたくないね・・・」

「使わないだろ、多分」

「あとは・・・ワイヤーアンカー・・・って何?」

「何じゃそりゃ」

そこには良く分からない装備名が書いてあった。

「これじゃない?」

そう言ってベレッタが持ってきたのは、ロケットランチャーを小型化したようなもので、後ろにワイヤーをまいたリールを付けたものだった。

「何に使うんだ?」

「分からない」

「まじか・・・。まあ取り敢えず積んでおくか」

「そうだね」

そう言ってジープの後部ドア前の荷物の山に置いた。

 

 

 

 

「よし!これで全部積んだね」

「そうだな。意外と少ないな・・・」

ジープの後ろに持っていく荷物を集めて、すべてのチェックをつけ終えた。

量はそれほどなく、普通に車に収まりきる位だった。

ジープは最大10人乗りで前シートが二つと後ろが四人掛けの横向きシートになっている。

後ろのシートは基本バックドアから乗車するようになっている。

屋根には中央に窓がついていて、そこから身を出すことができる。

「何かもう俺たち軍人になった気分だな・・・」

「そうだね・・・」

二人で呆れつつ、荷物をバックドアから積み始めた。

 

 

積み込みは30分足らずで終わった。

 

「何とか積めたな」

「そうだね。あとは助手席に無線を・・・」

そう言って今度は助手席に無線機を取り付け、車体後部にアンテナを立てた。

 

 

 

準備が着々と進みながら時間は過ぎて行った・・・

 

 

そして午後3時頃

 

 

「ふわ~良く寝た良く寝た・・・」

春樹が目覚めた。

「ようやく起きたか・・・」

「昨日は徹夜でやってたんじゃ。仕方ないじゃろ」

春樹は起きてくると卓也と話していた。

「にしてもあのワイヤーアンカーって何に使うんだ?」

「卓也よ。まさか知らんのか!?あれは先端のロケットを飛ばしてワイヤーを張るものじゃ。城壁とか昇るのに便利だとおもうんじゃが・・・」

「まぁ取り敢えず積んだけどさ・・・」

「そうか。よし、卓也よ。少し休んでおくとよい。もしかしたら今夜は寝れんかもしれんぞ」

「了解。こうきにも伝えとくよ」

「頼んだぞ」

卓也は格納庫を出て、自室に戻って行った。

「さて、少し寂しくなるのぉ・・・」

春樹は静かに呟いた。

 

 

 

そして日は沈みいよいよ午後10時になった・・・

 

 

 

 

 

「作戦開始!メインタンクブロー!浮上!」

「「了解!」」

艦は静かに動き出し、海面に向かって浮上し始めた。

 

静かに海面に長い潜望鏡から姿を現し、暗い海上にその巨体を現した。

 

こうきとベレッタは司令塔に立ち、暗視スコープで港を目視で確認し、卓也に指示する。

「取り舵15」

『了解。取り舵15』

こうきの指示に従ってゆっくり入港する。

 

「にしても暗い港だね・・・」

『まるで使われてないみたいだな』

「この港、確か使われていないよ」

「本当に使われてなかった・・・」

『まじか・・・』

「まじ」

『まあでも好都合じゃ。さっさと上陸してしまおうじゃないか』

『「「了解!!」」』

艦はゆっくりと突き出た桟橋に近づいて行った。

 

その港は灯台はあるものの点いておらずぼぅっとそびえたっているだけだ。

その他にも港町のような賑やかさはなく、ただ暗い闇が広がっているだけだ。

 

 

「両舷停止。スラスター左舷微速。もうちょっと桟橋に近づけて」

『了解。スラスター左舷微速』

艦はゆっくりと桟橋に近づていく。

「もうちょっと・・・ストップ!!」

こうきの合図で艦は桟橋の右側にきれいに着いた。

『こうきとベレッタちゃんよ!誘導ご苦労じゃった!急いで戻ってきて上陸準備にかかってくれ!』

「「了解!」」

二人は春樹の指示で艦内に戻り、自室に置いてある鞄を掴み格納庫へ走った。

 

 

格納庫につくと、すでに卓也がいて格納庫の扉を開けていた。

「二人とも、ジープを甲板に出すぞ」

「「了解」」

卓也の指示で二人は打ち合わせしておいた配置についた。

卓也はジープに乗り、こうきは甲板まで誘導、ベレッタはクレーンの操作だ。

 

 

「もうちょっと~、もうちょっと~・・・ストップ!!」

ジープは格納庫から出され、クレーンで吊り上げられる位置まで来た。

 

ジープにワイヤーが巻かれゆっくりと吊り上げられ、桟橋へ降ろされた。

 

作業が終了すると春樹がやってきた。

「いいかい、二週間と三日後じゃぞ。あとこれは護身用じゃ」

そう言ってサバイバルナイフを全員に渡した。

「また護身用か」

「こんなに武器はいらないよ」

「そうだよ春樹」

「まあそう言わずに」

そういってニヒヒと笑った。

「まあ、ありがとな」

「それじゃあ行ってくるね」

「見つからないようにね」

三人はそう言って敬礼した。

「そっちも無事に帰って来てくれ。あと定時連絡は忘れないでくれよな」

春樹も敬礼しながらそう言った。

「ああ・・・」

三人はジープを降ろしてる間に春樹が設置したラッタルを降りて上陸した。

 

三人が下りるとラッタルは格納され、艦はゆっくりと桟橋を離れた。

そして、離れていく艦に向けて三人は再び敬礼した。

それに返すように艦は警笛を鳴らした。

低い警笛が静かな港にこだました。

そしてそのまま向きを180度変え、暗い海に潜っていった・・・

 

 

「さて、どうする?」

「取り敢えずここから離れよう」

「確か首都は南の方のはず・・・」

「よし、南に向かうか」

「まずは道を探そうぜ、こうき」

三人はそんな会話をしながらジープに乗り込んだ。

卓也は運転席、こうきは助手席に乗り、ベレッタは助手席後ろの席に座った。

ブロロロッとエンジン音を立てて、ジープは走り出した。

 

 

 

 

しばらく走り続け、卓也が呟いた。

「にしても何だここは」

「まるで荒廃した町だね・・・」

「貧しい人がいっぱいいる街だからね・・・」

「スラム街か・・・」

そう、この街には朽ち果てた建物、傾いた看板にガタガタで雑草が生えて、いかにも整備されていないような道が続いていた。

そして何より、薄い布をまとって道端で寝ている人たちが何人もいる。

殆どの人が痩せこけていて、生活の苦しさが伝わってくる。

「社会の授業で見たことはあるけど・・・」

「どこの世界にもこういう人たちはいるんだな・・・」

「卓也やこうきのいた世界にも私たちみたいな人達はいたの?」

会話を聞いていたベレッタが尋ねてきた。

「ああ、何なら戦争でひどい事になった人達や、そういった人たちを差別するような最低な人もいたよ・・・」

「おまけにえらい人たちは税金を無駄遣いしていたくらいだ・・・」

「そうなんだ・・・」

車内は重い空気になっていった。

 

しかし、時間がたてばやがて二つの寝息に変わった。

「全く、やれやれ・・・」

卓也は寝ている二人を見て微笑み、前を向いて少しアクセルを抜いた。

 

 

 

 

暗い闇の中、舗装されていない道を一台のジープが南に向けて走っていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやく上陸しました!
さて、彼らはちゃんと首都に着けるのでしょうか!
意見、感想があればどしどし書いてください!

読んでくださり、ありがとうございました!

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