9話 ビロテノス王国
明け方、ゆっくりと水平線から太陽が昇ってくる。
朝日に照らされ、洋上を航行する一隻の潜水艦。
全長122m最大幅12m、船体中央には巨大な筒状の格納庫。
その上には、司令塔があり、そこから伸びる潜望鏡カメラとくるくる回る水上レーダー、無線アンテナ。
そして、前方甲板には格納庫から艦首に向けてカタパルトが伸びている。
後方甲板には実用性を求め、より素早く、正確に攻撃できるように魔改造されたセミオートマチック40口径14cm砲が睨みをきかせていた。そして格納庫上部にはCIWSに劣らない性能を持つ20mmフルオートマチック三連装機銃が三基つけられている。
その艦の司令塔の両舷には『I404』と記されていた。
そんな艦の前方甲板には4つの人影があった。
「やっぱり朝はいいな~」
「そうだね~」
「朝が嫌いな人なんていないよ」
「ふわ~朝は眠いから嫌じゃな~」
「「「あっいた・・・」」」
そんな会話を繰り広げるのは、宮井卓也、下川こうき、ベレッタ、そして艦長である辻春樹である。
「さて、今からこの艦について説明しようかの。この艦の兵装は前に説明したが、ミサイル関係については言ってなかったな。この艦の格納庫のある甲板の真下に右左舷についているんじゃ。使用するのはAHAX2(エーエイチエーエックスツー)多目的ミサイルだ。これは短距離だろと長距離だろうと水中だろうと宇宙だろうとどこにいようとも攻撃できるミサイルじゃ。そしてもう一本、ハープーン対艦ミサイルだ。これは主に艦に向けて発射するミサイルじゃ。そして最後、MJY3(エムジーワイスリー)対陸対空ミサイルじゃ。これは陸や空の敵に向けて撃つ奴じゃ。破壊力がすごいから、できれば使いたくないそれ以外にもあるんじゃが、できれば使いたくないやつばかりじゃ」
「ちなみにその破壊力ってどの位なの?」
ベレッタが質問した。
「あそこに島があるじゃろ」
春樹は水平線上にあるそこそこ大きい島を指さした。
そこには種子島位の島があった。
「あの島がこのミサイルで消えるくらい・・・」
するとそこにいた春樹以外全員青ざめた。
「まあ冗談じゃがなはっはっは」
「「「いやわらえねーよ(ないよ)」」」
まだ眠たいせいか、春樹は変なことを言っていた。
「さて、次は格納庫だ」
そう言ってタブレットを操作し格納庫を開けた。
「基本格納庫はタブレットで開けれるんじゃ。勿論艦内からも行き来できるぞ。格納庫内にはボート、ジープ、ヘリコプター、工作機械、その他いろいろなものがあるぞ」
「へ~」
全員志向が追い付かなくなっていった。
「次に艦内じゃ。大まかには前から魚雷発射管室、操縦室、作戦会議室、居住区、機関室兼後部魚雷発射管室じゃ。そしてこの艦は三階建て構造になっておる」
そのあといろんな説明を聞いて一時間過ぎた。
「・・・という訳じゃ」
「は、はあ・・・」
「疲れた・・・」
「だよね」
春樹はドヤっとした顔をしており、卓也は目を回しており、こうきとベレッタは疲れ果てていた。
「よし、疲れたから休憩もかねて朝食にしよう」
「おっ私もそう思っていた所じゃ」
「「賛成~」」
卓也の提案に全員が賛成し、いつも以上に心地よい朝食タイムとなった。
そして、全員が持ち場についた。
ベレッタはこうきの席の真後ろに折り畳み椅子を置き、タブレットでこうきに操作方法を教えてもらいつつ、針路を確認していた。
午前は穏やかに過ぎて行った。
そして午後の昼下がりのことである。
午後からは、こうきとベレッタは司令塔にいた。
周辺にちらほらと島が見るようになってきた。
「ねえこうき。向こうに大きな島があるよ」
ベレッタは双眼鏡を覗きながら言った。
「ん?あれって大陸かな?」
こうきはタブレットでこの世界の地図データを開き、近くの島の配置を確認し現在地を確認しつつ、前方の大陸のような島の正体を探っていた。
「ねえ、あれがビロテノス王国じゃないかな?ほら、そこの島がそれで、そこがそれで・・・」
「あっほんとだ」
二人は島の配置などから推測してあれが目的地であることを確認した。
「にしても、地図で見るとイルカの形してるよね」
「そうね、可愛いね」
こうきは、司令塔の壁にある艦内電話で操縦室と繋いだ。
「こちらこうき。前方の大陸はビロテノス王国と確認。距離、80km」
『こちら卓也。了解した、取り舵25度、速力15ノットから10ノットに下げる』
そう言って数分後、艦は左に旋回し終え、速力が落ちた。
『こちら春樹。どうやら目的地に着いたようじゃが・・・。とりあえず作戦会議室に集まってくれ』
「「了解」」
「さて艦内に戻ろっか」
「うん」
こうきとベレッタは、司令塔をおり、甲板のハッチのハンドルに手をかけた。
すると、ピッと音がし、ガチャンとロックが解除される音がした。
そしてそのハンドルを回して開けた。
二人はそのまま中に入り、ハッチを閉めた。
二人は作戦会議室に向かった。
中に入ると、いつも下ろされているスクリーンが上げられて、ホワイトボードがでていた。
「見張りご苦労じゃった。さて、第何回目かのミーティングを始めようかね」
「お題は上陸作戦っといったところかな?」
「さすが卓也、頭がきれるじゃあないか」
「いや、適当に言っただけじゃないか」
卓也は反応に困っていた。
「さて本題に入ろう。さっき卓也の言った通り、上陸作戦についてじゃ。正直、この艦で普通の港に入るのはまずい。敵襲と間違われるからのう。そこで何かいい考えがあるものはいないかね?」
三人はうーんとうなった。
「夜中にこっそり港に入ったら?」
こうきが言った。
「うーむ。いいかもしれんが、夜の見回りが怖いのう。しかし、夜に入る考えは悪くないのう」
春樹は夜中に上陸とホワイトボードに書いた。
「他には?」
「じゃあ、これは方法なんだけど、上陸するのは何人かで何人かは艦の見張りとするのはどうかな?」
「ほほう、なるほど!いいじゃあないか!」
今度は卓也の意見がホワイトボードに書かれた。
「じゃあ他には?」
だんだんみんなのテンションが上がってきた。
「じゃあ私の意見なんだけど、港は人の少ないほうがいいよね」
「なるほど!採用じゃ!いいよ、ベレッタたん!」
だんだん春樹のテンションもあらぬ方向へ転がりつつ、作戦の案は出てくる。
「他には他には?」
こんな乗りで会議は進んでいった・・・
そして・・・
「・・・という作戦で行こうと思いまーす!名付けて夜間上陸作戦!」
「まんまじゃねえか・・・」
「まあ楽しいからいいじゃん」
「私もそう思う!」
卓也は突っ込みに疲れ、こうき達はテンションが高く、春樹に至ってはもはや異常であった。
作戦はこうだ。
・まず、艦内の時計で午後11時になるまでに、ビロデノス王国デアルビーノ(背びれの部分)から約20km離れた海域まで行き、そこで休養のため、潜航状態で一日過ごす。
・そして翌日の午後10時頃に浮上し、そこの港に入港。
・桟橋にクレーンでジープを下ろし、卓也とこうきとベレッタを下ろす。(この時船体を桟橋に固定しないため、細心の注意を払うこと)
・三人を下ろした後、そこを出港後約20km離れたら潜航し、待機。
・その間に、速やかに港から離れ、王都のゴルバトゥーダまで行く。
・目的は政治的資料の採取と通貨や文化の調査。可能であれば、食料の調達(犯罪的行為は認めず)
・調査期間は二週間。二週間と三日後、浮上し、港で三人とジープの回収。
「という内容で決定じゃ。じゃあ今日の内にジープに荷物を積み込んでおいてくれ」
「「「了解!」」」
「よし。検討をいのる。全員が無事に戻って来てこそ作戦成功じゃ!帰ってくるまでが任務じゃ!」
「遠足じゃねえんだから・・・」
「卓也~。遠足って何?」
「ベレッタ?遠足ってのはね、みんなと一緒に遠くへ遊びに行くことなんだよ」
「へえ~。楽しそう!」
卓也はベレッタの頭を撫でた。
「さて、早速作戦開始じゃ!総員配置につけ!テアルビーノ近海までは潜航状態で行くぞ
!深度60まで潜航!」
「「「了解」」」
こうして艦内は作戦に向けて着々と動き出した・・・
日は少しずつ水平線に消えてゆく・・・
ーー夜中ーー 艦内時計23:00テアルビーノ近海
艦は予定通り、テアルビーノ近海まで来た。
「よし、作戦通りじゃ。卓也たちはもう寝たほうが良い。明後日は大変じゃぞ?休むのも作戦の内じゃぞ」
「ああ、すまないな。じゃあお言葉に甘えて」
「僕も寝るよ」
「私も」
「ああ、お休み」
こうして艦内は静かになった。
聞こえるのは、水中独特の空気が上がっていく音だけだ・・・
今回初めて、押絵を入れてみました
日本をいれたのは比較のためです。
赤い線は伊404の航路です。
字が汚いのはマウスのせいです・・・(マウスのせいにすんじゃねえ!)
結局上陸しませんでした・・・(;^ω^)(いつもそうじゃねえか!by卓也)
今度こそ、今度こそは、上陸します!多分・・・
感想いけんがあればどしどし書いてください!
では!