クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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友として

 念入りに朝から最終確認をする。機械のトラブルがあって失敗しては意味がないからな。

 

「サクラ」

 

 今度は誰だと思い、振り返るとリボーンだった。その手には服があったので届けにきてくれたのだろう。

 

「助かる」

 

 しっかり受け取りながら礼を言う。恐らくこれは特別製だ。私の話を聞いたリボーンが何もしていないわけがないからな。

 

「ディーノはもう来たのか」

 

 私の指を見て確信したようだったので、肯定も否定の返事もしない。その代わり1つ質問する。

 

「彼を止めないのか?」

「あれでもオレの元生徒だぞ。これぐらいの修羅場は何度も超えている。それにオレはあいつの覚悟を止める気はねーぞ。おめーだって諦めれるのか?」

 

 無理だな。私は1人でも実行する気だったのだ。可能性があるなら賭ける。ディーノもそういうことなのだろう。

 

「……協力、感謝する」

「オレとレオンより、ディーノに伝えるんだぞ」

 

 ぐっと言葉に詰まる。まだ言っていないことがバレていたようだ。小さな声になってしまったが「約束する」と返事をしたのだった。

 

 

 

 

 

「よっ、と」

 

 彼の過保護っぷりをどうにかしてほしい。確かに私は炎で急に移動させられることになるとは伝えていた。伝えていたが、移動する直前に横抱きにする必要はあるのだろうか。まぁ足をくじいてしまえば、絶望的になるのは事実だが……。

 

「大丈夫そうだな」

 

 いろんな意味で大丈夫じゃないが、頷く。彼も私の身体のことだけで言ったわけじゃない。超炎リング転送システムに炎を吸い取られてないかを確認したのだろう。急遽作ることになった手袋だったが無事に作用したようだ。

 

 もっとも、作り方を紙に書いていなければ出来なかった気がする。いったいどこまで私をのっとった人物は先をよんでいるのか。少々不気味に感じる。が、作らないわけにはいかなかった。恐らく白蘭に私達の策略が見つかる可能性を減らしたいがためにこの手袋はある。これで役割は十分果たしたのでもう必要はない。外しておこう。

 

「やっ♪ ようこそチョイス会場へ」

 

 白蘭の声に緊張が走る。ディーノもこの状態は良くないと思ったのか、すぐに降ろした。そして私を隠すように前に出た。

 

 この場では安全だと知っていたはずのディーノがなぜそんな動きをするのかと疑問に思ったが、すぐに答えはわかった。出来るだけ私に見せたくなかったのだろう。兄の姿を――。

 

「……お兄ちゃん」

 

 ポツリ呟いたが、兄は反応を示さない。ついディーノの服を掴んでしまった。こんなこと今まで一度もなかった。兄はどんなに小さな声でも私の言葉には反応した。

 

 背中をポンポンと叩かれ、息が止まっていたことに気付く。ゆっくりと深呼吸する。わかっていたことではないか。私は夢で見ていたのだから。

 

 私が落ち着いたころにはバトル参加者が決まっていた。

 

 ミルフィオーレは晴1、霧が2。

 

 ボンゴレは大空1、雨1、曇1、無属性2。

 

「……っ」

 

 息を呑んだのはディーノのようだ。このことに少なからず安堵した。私だけじゃなかったのだ。わかっていたのにショックをうけたのは彼も一緒だ。

 

「……無属性は僕とスパナが適任だ」

「却下だ。スパナじゃなく、私が出る」

 

 沢田綱吉達の驚いた顔が見える視界の端で、白蘭の薄気味悪い笑いがあった。彼は私と違った方法だが、わかっていたのだ。必ず私が出てくることに。

 

「ちょっと待って! そんなの絶対ダメだよ!」

「私が出ないといけないんだ。許可してくれ――ツナ」

 

 とっくの前から原作キャラとして見ていなかったし、友達と認めていた。だけど、フルネーム呼びをやめることは出来なかった。妙に照れくさくて。

 

 目を逸らさず言ったことで彼は気付いてくれるのだろうか。友として頼んでるということに。

 

「~~~っ! お願いだから無茶しないでよ!」

「努力はする」

 

 私の返答にどうして許可しちゃったんだろうという感じで頭を抱えたツナを見て、思わず笑ってしまった。

 

 ツナの許可が出たことで、参加するのは沢田綱吉・山本武・雲雀恭弥・入江正一、そして私ということになった。相手はトリカブト、猿(幻騎士)、兄。

 

 知識と違って相手はたった3人しかいないのだが、苦戦することになる。やはり本来ならこの場にいるはずのデイジーより兄が戦闘タイプというのが大きい。どれだけ大きいかというと、今回ミルフィオーレ側には拠点というものが存在していないほどだ。

 

 ふとデイジーはどうしてるのだろうかと思ったが、今の私に他人を気にしてるほど余裕はない。

 

 なぜなら……。

 

「ミルフィオーレの標的は桂。ボンゴレの標的はサクラちゃん♪」

 

 彼らから目を向けられたので、無言で頷く。わかっていたことなのだ。

 

「どうして――」

 

 黙っていた私を責めようとしていたツナの声も途中で止まる。私の胸から炎が出始めたのだから。

 

「ちょっと待って! こんなの……!」

「問題、ない」

「問題ないわけねーだろうが!」

「ああ! ヘタすら炎を出してるだけで死んじまうぞ!」

「いいから進めろ。そんなに……もたない」

 

 汗を流しながら話す私の言葉は重く、彼らは口を閉ざし一刻も早く終わらせようとしだした。それはありがたいのだが、相手の標的は誰かちゃんと理解しているのだろうか。必死になって進めようとしている彼らを横目に見ながら、ディーノに聞いてみた。

 

「あいつなら大丈夫だ。そんなことより、本当に大丈夫か……?」

 

 ダメだ。彼も同じタイプだったらしい。もしかするとディーノは彼らより酷いかもれしない。これから何が起きるのか教えているんだからな。

 

 しかし彼らが焦ってる様子を見れば見るほど、私は落ち着いてくる。だから今なら言える気がする。

 

「ディーノ、ありがとう」

「……バカやろう。不吉なことを言うな」

 

 ちょっと待て。誰も聞いていないと思ったので伝えたのに、それはないだろ。思わず睨んでしまった。

 

 

 

 

 

 基地ユニットの入り口をふさぐ。ルール上、この中に入らないといけない。なので必ず最後に入ろうとする彼に声をかけるためである。

 

「邪魔だよ」

「君に頼みがある」

「やだ」

 

 反応は予想していたが、イラッとする。

 

「スキを作るから、捕まえて」

「どうして僕が?」

「君は必ずする」

 

 話は終わりという意味で私は中に入る。そしてさっさと席に座る。出来るだけ消耗は避けたい。

 

「サクラ……」

 

 心配そうな表情のツナに心配するなと手を振る。知識と違い、獄寺隼人が居なくて良かった。彼が居れば怒られた気がする。そんなことを考えながら、入江正一に声をかける。

 

「私は、サポートしか出来ないと思う」

「大丈夫。僕らに任せて」

 

 私達が確認している間に、3分が経過した。チョイス開始である。

 

 ここから先は知っている。

 

「あ! ヒバリさん!」

 

 バトルが始まると彼がすぐに動こうとしたので、声をかける。

 

「彼の話を聞いた方が戦えるぞ」

 

 さらにムスっとした顔になったが、立ち止まったのでこれで大丈夫。彼は戦闘が出来るなら多少の我慢はする。それに群れて戦えという内容じゃないしな。

 

「僕達は時間との勝負になる。本当なら攻守にわかれて戦いたいけど、その時間も惜しい。一気に攻めたいと思う」

 

 話を聞きながら、私は炎のデータ解析をし囮の炎を飛ばす。これだけは急がないとまずい。

 

「僕が基地でデータを解析し、指示を出す。それに従ってほしい」

「解析は終わったぞ。いつでも大丈夫」

 

 私の言葉を聞いた途端に雲雀恭弥が動き出した。それを見て慌ててツナ達も動き出す。

 

「オレ達も急ぐぜ!」

「サクラ、気をつけて!」

 

 私は彼らの言葉に手を振ったりすることは出来なかった。なぜならそんな暇すらないのだ。

 

「は、はやい……」

 

 囮を片っ端から片付けるのは予想していたが、これほど早いとは思わなかったのだろう。一瞬だけ驚いて動きが止まった入江正一だったが、すぐに彼らは指示を出し始めた。もちろん囮を出しながらだ。

 

 それにしても、この量の囮を作るのにどれだけ時間をかかったのか兄に教えたい。片っ端から壊されると涙が出そうだ。炎を出しすぎて頭がボーッとしてるのも関係していると思うが。

 

「基地を動かせ」

「えっ?」

「動かさないといけないんだ」

「……もしや、未来がみえてるのかい?」

 

 ツナ達への通信を切る操作をしながら、彼と観覧席にいる味方に教える。チェルベッロにも聞こえているだろうが、もういいだろう。

 

「この勝負、負けるのが正解なんだ」

「それじゃぁ……!」

「兄の手によって、標的の炎が消されるのが正しいルートだ」

 

 具体的なことは言わなかったが、それはどういう意味なのかは理解しただろう。

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 サクラの声を聞いた観覧席側は静まり返った。サクラの予想通り彼らは理解はしたが、感情が追いついていないのだ。

 

「……どういうことだよ! 気付かなかったのかよ! 跳ね馬!?」

 

 真っ先に反応したのは獄寺だった。内容の濃さではディーノの方が上かもしれないが、サクラと過ごした時間は彼の方が長い。八つ当たりだと自覚しているが、怒らずにはいられなかった。

 

 そんな弟の暴走を止めようとビアンキが動こうとしたが、ディーノが手で制す。彼は知っていて黙っていたのだ。責められてもしょうがないと思っている。それでもこれだけは正さなければいけない。

 

「あいつを信じろ」

 

 サクラは再びみんなと過ごせる未来のために今あの場に立ってるのだ。

 

 ディーノの言葉を聞き、サクラの覚悟を感じ取ったのか画面を食い入るように見る。だから彼らは気付かなかった。ディーノの手にはサクラと同じ指輪がはまっていることに――。

 


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